Claudeで交差比率と在庫回転率を売場別に出す — Excelで残す棚を決める手順
売場ごとの売上・売上原価・期首期末在庫から、在庫回転率と粗利益率を掛けた交差比率をClaude for Excelで数式つきに出し、残す棚と絞る棚を分ける手順です。
売場ごとに「どの棚を残し、どの棚を絞るか」を決めるとき、売上の順位だけでは足りません。売上が大きくても在庫を重く抱えている売場もあれば、売上は小さくても少ない在庫で粗利を稼ぐ売場もあります。この差を1つの数字にするのが交差比率です。
交差比率は、粗利益率に商品の回転率を掛けて求めます。Claude for Excelに売場別の表を読ませ、数式つきで計算させ、基準を下回る売場を理由つきで挙げさせるところまでが、この記事の手順です。使う数字は架空の6売場のもので、特定のPOSや会計システムには依存しません。
売上順に区分するABC分析はClaudeでABC分析 — 売れ筋と死に筋をPOSのCSVからExcelで出す手順が扱っています。交差比率は、その区分に在庫と粗利を重ねる見方です。
交差比率は何を掛け合わせた数字か
交差比率は、粗利益率と商品回転率の積です。式にすると次のとおりです。
交差比率 = 粗利益率 × 商品回転率
粗利益率 = (売上高 − 売上原価) ÷ 売上高
商品回転率 = 売上原価 ÷ 平均在庫(原価)回転率は、売上原価をたな卸資産(商品の仕入れ値の合計)で割る形が経営分析の基本です。海洋大学の講義資料も、商品回転率を売上原価÷たな卸資産と示しています。売上高を在庫で割る定義もあるので、社内でどちらを使うかを先に決めます。
回転率だけを見ると、値引きで回転を上げて粗利を削る売場が高く見えます。粗利益率だけを見ると、高い値付けで動かない棚が良く見えます。2つを掛けると、薄利で速く回る売場と、厚利で遅い売場が同じ物差しに乗ります。
回転率だけ・粗利益率だけ・交差比率の見え方
回転率だけ
値引きで回しても高く出ます。粗利の薄さが見えません。
粗利益率だけ
動かない在庫でも高く出ます。資金が寝ていることが見えません。
交差比率
2つの積です。薄利多売と厚利少売を同じ表で比べられます。
比べてよい範囲と、基準をそろえる点
講義資料は回転率について、相対的な指標なので同種のアイテム間で比較するよう述べています。菓子と家電小物のように性格の違う売場を並べるときは、交差比率の大小がそのまま優劣にならない点に注意が要ります。
そろえておく点は3つあります。
- 在庫を原価で数えるか売価で数えるか(売上原価を使うなら原価に統一)
- 平均在庫を期首と期末の2点で取るか、月末在庫の12点で取るか
- 売場の区切りを、棚卸や会計の部門コードと同じにするか
平均在庫の取り方は、講義資料も注意点に挙げています。季節で在庫が大きく動く売場は、2点平均だと実態からずれます。この記事の例は2点平均で進めますが、月末在庫が取れるなら12点平均のほうが安定します。
売場別の入力シートに置く列
1行1売場で、次の列を置きます。金額は千円、期間は直近12か月とします。
| 列 | 内容 | 入れる人 |
|---|---|---|
| A | 内容売場名 | 入れる人店舗運営 |
| B | 内容売上高 | 入れる人POSの集計から |
| C | 内容売上原価 | 入れる人仕入・棚卸の数字から |
| D | 内容期首在庫(原価) | 入れる人棚卸表から |
| E | 内容期末在庫(原価) | 入れる人棚卸表から |
| F〜I | 内容平均在庫・粗利益率・回転率・交差比率 | 入れる人数式 |
| J | 内容全体比・順位・判定 | 入れる人数式 |
売上原価は、期首在庫に期中の仕入を足し、期末在庫を引いた値です。会計上の数字と食い違うと、回転率が実態とずれます。経理の月次と一致しているかを、入力の段階で見ておきます。
数式の列は、Claudeに任せる前に自分で置いておきます。数式があれば、Claudeの答えと見比べて食い違いを見つけられます。
数式で先に計算する
2行目が1売場目、8行目を全体の合計行とします。
F2 (平均在庫): =AVERAGE(D2:E2)
G2 (粗利益率): =(B2-C2)/B2
H2 (回転率): =C2/F2
I2 (交差比率): =G2*H2
J2 (全体比): =I2/$I$8
K2 (順位): =RANK(I2,$I$2:$I$7)
L2 (判定): =IF(I2>=$I$8,"基準以上","基準未満")合計行は、売場の値を平均せず、合計から計算し直します。
B8: =SUM(B2:B7) C8: =SUM(C2:C7)
D8: =SUM(D2:D7) E8: =SUM(E2:E7)
F8: =AVERAGE(D8:E8)
G8: =(B8-C8)/B8 H8: =C8/F8 I8: =G8*H8交差比率の単純平均を全体の値にすると、売場ごとの規模の違いが消えます。次の節の例で、平均と合計計算の差を示します。
Claude for Excelに頼む
数式を置いたら、Claude for Excelのサイドバーで頼みます。答えにはセル単位の引用が付き、クリックすると該当セルへ移動できます。
売場別シートの2〜7行目について、次をやって。
- G列・H列・I列の数式が、B〜E列を正しく参照しているか点検する
- 合計行(8行目)が、売場の平均ではなく合計から計算されているか見る
- 交差比率が全体(I8)を下回る売場を挙げ、その粗利益率と回転率を並べる
- 下回る理由が回転率にあるのか、粗利益率にあるのかを売場ごとに言う
- 根拠にしたセル番地を必ず示す
- 数式の列は書き換えない最後の1行は、既存の数式を守る指示です。Claude for Excelは、既存データを上書きする前に警告を出す仕組みを持っています。それでも、数式の列は先に「触らない」と書いておくほうが安全です。
毎回同じ基準で回すなら、サイドバーの設定にある指示欄に、原価ベースで計算することや、合計行は合計から出すことを書いておきます。指示欄の内容はExcelにだけ効き、PowerPointやWordの指示とは別に保たれます。
売場の並べ替えや、基準未満の行の色分けも、ソート・フィルター・条件付き書式として直接頼めます。ピボットテーブルの編集にも対応しています。
6売場の結果の読み方
架空の6売場に当てはめた結果です。単位は千円で、回転率は1年あたりの回数です。
| 売場 | 売上 | 売上原価 | 平均在庫 | 粗利益率 | 回転率 | 交差比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 飲料 | 売上60,000 | 売上原価48,000 | 平均在庫2,400 | 粗利益率20.0% | 回転率20.0 | 交差比率4.00 |
| 菓子 | 売上48,000 | 売上原価36,000 | 平均在庫3,000 | 粗利益率25.0% | 回転率12.0 | 交差比率3.00 |
| 冷凍食品 | 売上20,000 | 売上原価14,000 | 平均在庫1,750 | 粗利益率30.0% | 回転率8.0 | 交差比率2.40 |
| 日用品 | 売上30,000 | 売上原価21,000 | 平均在庫3,500 | 粗利益率30.0% | 回転率6.0 | 交差比率1.80 |
| 家電小物 | 売上24,000 | 売上原価18,000 | 平均在庫4,500 | 粗利益率25.0% | 回転率4.0 | 交差比率1.00 |
| 文具 | 売上12,000 | 売上原価7,200 | 平均在庫3,000 | 粗利益率40.0% | 回転率2.4 | 交差比率0.96 |
| 全体 | 売上194,000 | 売上原価144,200 | 平均在庫18,150 | 粗利益率25.7% | 回転率7.9 | 交差比率2.04 |
全体の交差比率は、合計から計算すると約2.04です。6売場の値を単純平均すると約2.19になり、数字が食い違います。売場の規模が違うので、合計行は必ず合計から出します。
基準の約2.04を下回るのは、日用品・家電小物・文具の3売場です。ただし、同じ「基準未満」でも中身は違います。
- 日用品は粗利益率が30%と高く、回転率が6.0で全体の7.9を下回っています
- 文具は粗利益率が40%と最も高いのに、回転率が2.4と最も低い売場です
- 家電小物は粗利益率も回転率も全体を下回っています
在庫の持ち分と粗利の持ち分を並べると、家電小物の重さが見えます。
| 売場 | 平均在庫の構成比 | 粗利益の構成比 |
|---|---|---|
| 飲料 | 平均在庫の構成比13.2% | 粗利益の構成比24.1% |
| 菓子 | 平均在庫の構成比16.5% | 粗利益の構成比24.1% |
| 冷凍食品 | 平均在庫の構成比9.6% | 粗利益の構成比12.0% |
| 日用品 | 平均在庫の構成比19.3% | 粗利益の構成比18.1% |
| 家電小物 | 平均在庫の構成比24.8% | 粗利益の構成比12.0% |
| 文具 | 平均在庫の構成比16.5% | 粗利益の構成比9.6% |
家電小物は在庫の約4分の1を持ちながら、粗利は約12%です。在庫の構成比が粗利の構成比を大きく上回る売場が、資金を寝かせている売場です。
残す棚と絞る棚を分ける
交差比率が低い売場を、そのまま切るわけではありません。粗利益率と回転率の高低で、打つ手が変わります。全体の粗利益率(25.7%)と回転率(7.9)を線にして、4つに分けます。
| 区分 | 売場の例 | 打つ手の方向 |
|---|---|---|
| 粗利益率も回転率も高い | 売場の例冷凍食品 | 打つ手の方向棚を残し、面を広げる余地を見る |
| 回転率が高く、粗利益率が低い | 売場の例飲料・菓子 | 打つ手の方向棚を残す。値引きの深さと仕入条件を見直す |
| 粗利益率が高く、回転率が低い | 売場の例日用品・文具 | 打つ手の方向品揃えと発注量を絞り、在庫を軽くする |
| 粗利益率も回転率も低い | 売場の例家電小物 | 打つ手の方向棚の縮小と品目の入れ替えを最優先で検討する |
文具は、在庫を3,000から1,800に減らして売上を保てれば、回転率は4.0、交差比率は1.6になります。品目を絞っても売上が落ちないかは、品目別の売上で確かめる必要があります。そこはABC分析の出番です。
Claudeには、この区分を作る依頼もできます。
全体の粗利益率(G8)と回転率(H8)を線にして、6売場を4つに分けて。
- 各売場の区分と、その根拠になるセル番地を示す
- 文具の平均在庫を1,800にした場合の回転率と交差比率を、
数式を書き換えずに別の列で試算する
- 売場の入れ替えを決める数字は出さない。候補を挙げるまでにする試算を別の列で行わせるのは、元の表を壊さないためです。
交差比率だけで棚を決めないために
交差比率は、在庫と粗利の効率だけを見る指標です。次のようなことは数字に出ません。
- 集客のために置いている売場(飲料や日用品が客を呼ぶ場合)
- 欠品で売上が伸びていない売場(講義資料も欠品率の確認を注意点に挙げています)
- 季節品の売場(年間の2点平均では山と谷がならされる)
- 棚の面積あたりの稼ぎ(同じ在庫でも棚の広さで効率が違う)
棚の面積を含めて変更案を作るなら、Claudeで棚割の変更案を作るが写真と売上CSVの突き合わせを扱っています。絞る売場の在庫に評価損の問題がないかは、滞留在庫の評価損をClaude for Excelで仕分ける手順で見られます。
仕入の値上げが粗利益率にどう響くかはClaudeで仕入の値上げを粗利に換算し転嫁案を試算する手順に数値例があります。回転率を上げるときに欠品が出ないよう、安全在庫と発注点をClaudeにExcelで計算させ検算する手順も合わせて見ておくと、絞りすぎを防げます。
使えないこと・注意すること
Claude for Excelを使えるのは、Pro、Max、Team、Enterpriseのプランです。Excel on the web、Microsoft 365契約のWindows版(ビルド16.0.13127.20296以降)、Mac版(16.46以降、ビルド21011600以降)で動きます。Excel 2016・2019の永続ライセンス版、iPad、Androidでは動きません。
データテーブルと、マクロ・VBAの操作には対応していません。売場の集計をマクロで組んでいるブックでは、数式への置き換えが先に必要です。
公式の説明は、監査上重要な計算を検証なしで使うことや、最終的な成果物を人の確認なしで出すことには向かないとしています。交差比率で棚の削減を決めると、仕入先や店舗の運営に影響します。Claudeの出力は下書きとして扱い、数式と根拠セルを確かめてから使います。
外部から受け取ったファイルにも注意が要ります。仕入先や本部から届いた売場別の集計ファイルには、Claudeを操作する隠れた指示が含まれることがあると警告されています。信頼できるコピーのブックで作業を始め、外部の数字は値だけを貼り付ける運用が向きます。
入力と出力は、バックエンド側では受領または生成から30日以内に削除される扱いです。チャット履歴はブラウザ内に保存されます。売場別の原価と在庫は社内の機微な数字なので、導入前に自社の情報管理のルールと照らします。
まとめ
交差比率は、売場の稼ぎを売上順位ではなく在庫に対する効率で見る指標です。粗利益率と回転率を掛けるだけなので、数式をExcelに置いてからClaude for Excelに点検と分類を任せると、食い違いに気づきやすくなります。
下位の売場は、粗利益率が低いのか回転率が低いのかで打つ手が変わります。切る棚を決める前に、集客役か、欠品中か、季節品かを人が確かめます。