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Cowork監査ログと権限管理 — 法人導入前に見える範囲

Cowork監査ログと権限管理 — 法人導入前に見える範囲

CoworkはOpenTelemetryとCompliance APIで何が見え、何が見えないか。Team/Enterpriseの権限設定と合わせて、法人導入前に確認したい可視性をまとめます。

Coworkの導入を情シス・セキュリティ部門が検討するとき、最初に聞かれるのは「誰が何をしたか、あとから追えるか」です。答えは1つではありません。記録の仕組みが3つに分かれていて、プランによって使えるものが違うためです。Teamプランで使えるのはOpenTelemetryだけで、組織管理の記録もセッション内容の取得も、Enterpriseに上げないと手に入りません。

追いたい内容ごとに、見る記録が違う

「誰が」「何を」のどちらを追うかで、見に行く先が変わります。

記録の種類

Coworkまわりの3つの記録

  • 監査ログ

    組織の管理操作が対象です。ログイン、招待、SSO設定の変更、プロジェクトの公開範囲の変更など。Enterprise限定です。

  • OpenTelemetry

    Claudeがセッション中に何をしたかが対象です。プロンプト、ツール呼び出し、ファイルアクセス、承認の判断。TeamとEnterpriseで使えます。

  • Compliance API

    セッションとチャットの内容そのものが対象です。Cowork・Claude Code・通常のチャットをまとめて取得できます。Enterprise限定です。

3つは補い合う関係で、置き換えは効きません。OpenTelemetryはコンプライアンス目的の監査ログの代替にならないと、ヘルプセンターは説明しています。Claudeがどのファイルを開いたかをOpenTelemetryで追えても、そのユーザーがいつSSOで入ってきたかは監査ログ(Compliance API経由でも取得可)にしか残りません。

監査ログの取り方と中身

監査ログはEnterpriseの組織だけが使えます。取得できるのはOwnerとPrimary Ownerで、Organization settings > Data and Privacyの「Export logs」を押します。過去180日分が集計され、依頼したOwnerにダウンロードリンクがメールで届きます。リンクの有効期間は24時間です。集計に時間がかかる場合があり、メールはすぐには届きません。

1行は次の9列で構成されます。

  • created_at(記録時刻)
  • actor_info(操作した主体)
  • event(イベント名)
  • event_info(イベントごとの詳細)
  • entity_info(操作された対象)
  • ip_address
  • device_id
  • user_agent
  • client_platform(iOSかAndroidのモバイルのときに入る値で、デスクトップやブラウザでは空になりえます)

記録されるイベントは組織管理が中心です。サインイン(SSO・Google・Apple・マジックリンク・電話コード)、招待の送信・再送・承諾・拒否・削除、SSO接続の有効化・無効化・削除、JITプロビジョニングの切り替え、ドメイン検証、プロジェクトの作成・改名・削除・公開範囲の変更、ファイルのアップロード、会話の作成・改名・削除、組織データのエクスポートの開始と完了です。Coworkのセッション内の操作は含まれず、実行内容はOpenTelemetryで追います。

もう1つの制約は、チャットとプロジェクトの扱いです。タイトルと本文は書き出されず、識別子だけが出力されます。本文が必要な場合は、Primary Ownerによるデータエクスポートの出番です。

顧客管理の暗号鍵を使っているEnterprise組織では、「Export logs」ボタンでの書き出し自体ができません。その場合の監査ログイベントはCompliance APIから取ります。

Compliance APIで取れる範囲と、有効化の条件

Compliance APIはEnterpriseプランの組織が対象です。Public Sector組織は対象外です。有効化できるのはPrimary Ownerだけで、Organization settings > APIで切り替えます。Ownerはこの画面を見られますが切り替えはできず、Adminにはページ自体が表示されません。アクセスキーは同じページの「+Create key」で作ります。Primary Ownerは紐づく全組織を対象にしたキーを、Ownerは自分の組織に限ったキーを作れます。親組織に紐づいている場合は、親組織のPrimary Ownerが有効化し、その設定が紐づく全組織に適用されます。セキュリティ・コンプライアンス製品がこのAPIの上に連携を作っており、すでに使っている監視ツールからClaudeの利用状況を見られます。

取得対象は、Cowork(Claude・Claude Desktop・Claude Mobile経由)、Claude Code(CLIとClaude Desktop経由)、通常のチャットです。すべてのセッションが個々のユーザーに帰属づけられます。前の節の監査ログイベントも、このAPIに含まれます。

対象外の経路もあります。

  • Claude Codeのクラウドセッション
  • Claude Platform経由のClaude Code
  • Amazon BedrockやGoogle Vertex AI上で動かしたセッション

OpenTelemetryとは並行運用できます。OpenTelemetry側はWebとモバイル経由のCoworkも対象に含みます。

OpenTelemetryで流れる6種類のイベント

OTelコレクタに接続すると、Coworkは次の6カテゴリのイベントを流します。

カテゴリ記録内容
ユーザープロンプト記録内容ユーザーがCoworkに送った指示の全文
ツール・MCP呼び出し記録内容MCPサーバー名・ツール名・パラメータ・成否・実行時間を含む、Claudeが行う全ツール呼び出し
ファイルアクセス記録内容Claudeが読み書き・操作したファイルパス(MCP経由・フォルダ限定のローカルファイルを含む)
Skills・Plugins記録内容セッション内でClaudeが呼び出したSkillとPlugin
人間の承認判断記録内容各ツール操作がユーザーに承認されたか、拒否されたか、既存の権限設定で自動実行されたか
APIリクエストとエラー記録内容リクエストごとのモデル・トークン数・推定コスト・所要時間・エラー

1件のユーザープロンプトに紐づく全イベントには共通のprompt.idが付きます。1つの入力に対してClaudeが何をしたかを、後から再構成できます。送信先は標準的なOTelコレクタに対応するものなら任意で、SplunkやCribl、ElasticsearchやLoki、ClickHouse、Honeycomb、Datadogが例に挙がっています。コレクタの設定次第で複数の宛先へ同時に流せます。

流す前に押さえる点が4つあります。

  • プロンプトの全文が既定で含まれます。SIEMに残したくない場合は、コレクタ側でフィルタか削除を設定します。
  • ツールパラメータはtool_parametersフィールドに出力され、ファイルパスやコマンド引数のような機密性のある値を含みえます。保持期間とアクセス権はそれを前提に決めます。
  • ユーザーのメールアドレスがイベント属性に入ります。
  • 管理者がOTLPエンドポイントを設定するまで、データは何も流れません。
手順

OpenTelemetryの設定

  1. 1

    エンドポイントを入力する

    Organization settings > Coworkを開き、OTLPエンドポイント(自社のOpenTelemetryコレクタのURL)を入れます。

  2. 2

    プロトコルを選ぶ

    コレクタが受けるHTTP/JSONかHTTP/protobufのどちらかです。

  3. 3

    認証ヘッダーを足す

    ベアラートークンなど、コレクタが要求するOTLPヘッダーを追加します。ヘッダーはAnthropicのサーバー上で暗号化されて保存されます。

  4. 4

    保存する

    保存した時点からイベントが流れ始めます。

監視にはデスクトップアプリのバージョン条件があります。クラウドセッションはClaude Desktop 1.22209.3以降、ローカルのデスクトップセッションは1.1.4173以降です。

クラウドとローカルで、記録の残る場所が違う

Coworkのセッションは動く場所が2通りあり、取りこぼしの出方もそれぞれ異なります。

くらべる

クラウドセッションとローカルセッション

Anthropicの基盤で実行

クラウド

エージェントのループとコードの実行は、セッションごとに作られて終了時に破棄されるサンドボックスで動きます。セッションとファイルはメンバーのClaudeアカウントに保存されます。サンドボックスから出る通信は必ずプロキシを通り、許可リストにある宛先にしか届きません。

メンバーの端末で実行

ローカル

エージェントのループは端末上でネイティブに動き、シェルコマンドやコードは専用のLinux VMの中で実行されます。会話履歴は端末に保存され、Anthropicの標準的なデータ保持ポリシーの対象外です。管理者が一元的に管理・削除することはできません。

ローカルセッションの内容は、Enterprise管理者ならCompliance API経由で取得できます。ただし、ローカルセッションを削除するエンドポイントはまだありません。

どの記録にも映らない領域

3つの記録を揃えても、見えない部分は残ります。

EDR(エンドポイント検知製品)は、VMの中を観測できません。VMはホスト側のセキュリティ製品から隔離される設計だからです。クラウドセッションは端末の外で動くため、同じくEDRの視界に入りません。端末側の証跡に依存する監査方針の組織は、導入前にこの点を織り込む必要があります。

ネットワークの制限にも例外があります。組織のネットワーク設定(Organization settings > Capabilitiesのコード実行)は、ウェブ取得・ウェブ検索・MCP(Claude in Chromeを含む)には効きません。ウェブ取得はサーバー側で動き、対象は検索結果とユーザーが共有したURLに限られます。ウェブ検索はCapabilitiesで、Claude in ChromeはOrganization settings > Claude in Chromeで、それぞれ別にオフにします。

組み込みブラウザを許可した場合、アクセス先のサイトにはユーザーの端末からの通信に見えます。WebやモバイルからCoworkを操作していても同じです。組み込みブラウザの既定はTeamがオン、Enterpriseは2026年9月10日からオンです(オフにしていない組織)。

ネットワーク設定が反映されるタイミングにも癖があります。設定は新しいセッションを作った時点で適用され、進行中の会話でアクセスモードや許可リストを変えても、その会話には効きません。変更後は新しい会話を始めます。

権限はトグルが重なる構造

Coworkの管理設定はOrganization settings > Coworkに集まっていますが、1つのスイッチでは決まりません。ロール設計とあわせた実装手順はClaude CoworkのRBAC運用にあります。ここでは、どの設定が何を止めるかを見ます。

設定既定オフにしたときの挙動
Enable for your organization既定オンオフにしたときの挙動Coworkを組織全体で使えなくする。Enterpriseはグループとカスタムロールで特定チームにだけ付与もできる
Run Cowork in the cloud既定Teamはオン、Enterpriseはオフオフにしたときの挙動クラウドセッションが止まり、ローカルのデスクトップCoworkは残る
Allow "Automatically approve" mode既定オンオフにしたときの挙動メンバーのモード選択に「Automatically approve」が出なくなる
Allow "Always allow" for connector tools既定オフオフにしたときの挙動「Allow for all tasks」がグレーアウトし、保存済みの常時許可も効かなくなる

最後の設定は、書き込みができるコネクタツールが対象です。読み取り専用として注釈されたツールだけが免除されます。注釈を付けていないカスタムコネクタが多く、その場合はツールすべてがタスクごとの承認を求められます。Enterpriseではカスタムロールの付与と併用でき、最も制限の強い層が勝ちます。ロールの付与でこの設定を上書きすることはできません。

クラウドセッションには、さらに固有の管理設定があります。許可が要るツール呼び出しのたびに承認を求める(永続的な「常に許可」を無効化する)設定と、信頼済みデバイスの登録と直近のサインインを必須にする設定です。後者を有効にすると、組織内のクラウドセッションすべてに適用されます。

端末側はMDMで制御します。isLocalDevMcpEnabledをfalseにするとプラグイン同梱・ローカル設定のMCPサーバーが止まり、isDesktopExtensionEnabledをfalseにするとMCPBとDXT拡張のサーバーが止まります。どちらも組織設定ではなく端末単位で、Claude Desktopを通じて動くものすべてに効きます。ローカルMCPを止めた端末では、クラウドセッションが使える端末側の手段はフォルダ限定のファイルツールだけになります。

プラグインの利用可否はCoworkと同じトグルで決まり、配布はプラグインマーケットプレイスで「既定でインストール」「任意」「必須」「非表示」から選んで制御します。Enterpriseではグループ別の上書きもできます。プロジェクトは組織単位で作成を制限できません。

自社の状況に当てはめる

状況使う記録注意点
TeamでCoworkの動きをSIEMに入れたい使う記録OpenTelemetry注意点プロンプト全文とメールが流れるため、コレクタ側で伏せ字化を決めておく
招待やSSO設定の変更を誰がしたかを追いたい使う記録監査ログ注意点Enterprise限定。Teamのままでは追えない
顧客管理の暗号鍵を使うEnterprise使う記録Compliance API注意点「Export logs」ボタンは使えない
Claude Codeをクラウドセッションで使う使う記録別途検討注意点Compliance APIの対象外
端末の証跡が監査の前提使う記録OpenTelemetryに加え端末側の対策注意点VMもクラウドもEDRの視界の外

まとめ

Teamのまま法人導入を進めるなら、可視性はOpenTelemetryで足りるかどうかが分かれ目です。足りない業務を見込むなら、Enterpriseへの移行を前提に計画する選択肢があります。Coworkの全体像はClaude Cowork(クロードコワーク)とは、デスクトップ・Web・モバイルでの使い分けはCoworkのウェブとモバイル対応にあります。

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