Claude Media
デマレージ請求を突合する手順 — Claude for Excelでフリータイムを再計算

デマレージ請求を突合する手順 — Claude for Excelでフリータイムを再計算

船会社のデマレージ・ディテンション請求を、契約のフリータイムと日額表で計算し直し、請求日数との差を行ごとに出す手順です。起算日と休日の扱いをセルに切り出してClaude for Excelに式を組ませます。

デマレージ請求の突合は、コンテナごとの起算日と終点日から経過日数を数え直し、フリータイムを引いた課金日数と日額表で請求額を再計算して、船会社の請求書と並べる作業です。Claude for Excelなら、契約条件を専用シートに切り出したうえで再計算の式を組ませ、日数または金額がずれた行だけを取り出せます。輸入側の物流・貿易実務担当が、船会社の請求書を受け取った日に最初のチェックをかけるための手順です。

ここでは、数え方の違いが差になる3つの箇所、契約条件シートの作り方、日数と金額の再計算式、3本のサンプルで見る差異の出方、Claudeへの依頼文、使えない場面を順に示します。通関書類の数量突合は通関書類3点をClaudeで突き合わせる手順、陸送の運賃表との突合は運賃請求書の突合にあります。

日数のずれは、起算日・終点日・休日の3か所で生まれる

請求日数が合わない原因の大半は、計算ミスではなく数え方の違いです。船会社の請求書は日数と金額しか載せないことが多く、どの日を1日目にしたかは請求書だけでは分かりません。突合では、次の3か所を契約書とタリフ(運賃・料金表)から拾い、セルに書き出します。

数え方

日数がずれる3つの箇所

  • 起算日

    荷揚げ日を1日目に含めるか、翌日から数えるか。本船の入港日や荷揚げ完了日など、起点にする出来事そのものが契約ごとに決まります。

  • 終点日

    デマレージならゲートアウト(搬出)の日、ディテンションなら空コンテナの返却日が終点になるのが一般的です。ただし、どの記録の日付を採るかは契約とターミナルの記録の取り方で変わります。

  • 休日の扱い

    土日祝日をフリータイムに数えるか、除くか。暦日で数える契約と営業日で数える契約があり、同じ滞留でも課金日数が大きく変わります。

デマレージとディテンションは、多くの契約で別々のフリータイムと別々の日額表を持ちます。ここでは同じ型のシートを2つ用意し、起点と終点の列だけを差し替える前提で進めます。どの出来事を起点・終点にするか、フリータイムが何日かは、手元の契約書とタリフの記載が唯一の基準です。以降の数値はすべて、手順を示すための仮の契約条件です。

契約条件を専用シートに切り出す

最初に、数え方と料率を請求明細から分離します。条件がセルにあれば、条件を変えたときの結果をその場で比べられます。船会社に照会するとき、どの前提で数えたかをそのまま見せることもできます。

セル項目仮の値
B2項目フリータイム(日)仮の値7
B3項目起算日を1日目に含める(1) / 翌日から(0)仮の値1
B4項目数え方(暦日 / 営業日)仮の値暦日
B7項目第1段階の日数(課金日の1〜5日目)仮の値5
B8項目第1段階の日額(USD)仮の値75
B9項目第2段階の日額(6日目以降、USD)仮の値150

休日は別シート「休日」のA列に日付を並べます。営業日で数える契約のときだけ使うシートですが、空でも式は動きます。シート名は「条件」「休日」「請求」の3つにそろえておくと、Claudeに依頼するときの指示が短く済みます。

契約書の条文からこの表を埋める段階は、人が行います。条文の読み違いは、以降の再計算すべてに波及するためです。Claudeに条文を貼って項目を抽出させる場合も、出てきた値は契約書の該当条項と1つずつ照らし合わせます。

請求シートの列を決める

「請求」シートは、1コンテナ1行で組みます。

列内容
A内容コンテナ番号
B内容起点日(荷揚げ日など契約が定める日)
C内容終点日(ゲートアウト日または返却日)
D内容請求書の課金日数
E内容請求書の金額(USD)
F内容経過日数(再計算)
G内容課金日数(再計算)
H内容再計算した金額
I内容日数差(D − G)
J内容金額差(E − H)

A〜E列は、船会社の請求明細から値だけを貼ります。F〜J列が再計算の列です。

日数と金額の再計算式

経過日数は、暦日と営業日で式を分けます。

F2: =IF(条件!$B$4="暦日",
        C2-B2+条件!$B$3,
        NETWORKDAYS(B2+1-条件!$B$3, C2, 休日!$A:$A))
G2: =MAX(0, F2-条件!$B$2)
H2: =MIN(G2,条件!$B$7)*条件!$B$8
      +MAX(0,G2-条件!$B$7)*条件!$B$9
I2: =D2-G2
J2: =E2-H2

F列の暦日側は、起点日を1日目に含める設定(B3が1)なら終点日との差に1を足し、翌日から数える設定(B3が0)なら差そのままです。営業日側のNETWORKDAYSは、土日と「休日」シートの日付を除いて数える関数で、開始日と終了日の両方を数えに含めます。そのため起点日を含めない設定のときは、開始日を1日後ろにずらしています。

G列は、フリータイムを超えた日数だけを課金日数にします。H列は、課金日の1〜5日目を第1段階の日額、6日目以降を第2段階の日額で積みます。日額が3段階以上の契約なら、段階ごとの日数と日額の行を条件シートに足して、式に項を追加します。

3本のサンプルで差異の出方を見る

仮の条件(フリータイム7日、起算日を含める、暦日、第1段階5日まで75USD、以降150USD)で、3本のコンテナを再計算します。曜日は2026年9月のカレンダーのとおりです。

コンテナ起点日終点日請求日数請求額再計算日数再計算額日数差金額差
A起点日9/1(火)終点日9/12(土)請求日数5請求額375再計算日数5再計算額375日数差0金額差0
B起点日9/3(木)終点日9/16(水)請求日数8請求額825再計算日数7再計算額675日数差+1金額差+150
C起点日9/5(土)終点日9/14(月)請求日数3請求額450再計算日数3再計算額225日数差0金額差+225

Aは経過12日、課金5日で、375USDとなり請求と一致します。Bは経過14日、課金7日で、5日分の375USDと2日分の300USDの合計675USDです。請求は8日・825USDなので、1日多く数えています。起点を荷揚げ日でなく別の日にしている、あるいは終点日の翌日まで数えている、といった数え方の違いが候補になります。Cは経過10日、課金3日で225USDですが、請求は課金日数こそ3日で合うのに450USDです。1日あたり150USDを課金1日目から掛けた形で、段階の当て方の違いと読めます。

BとCは同じ「差異あり」でも、船会社への照会内容がまったく違います。Bには起点日と終点日の記録を、Cには日額表の段階の適用を尋ねます。日数差と金額差を別列にした理由はここにあります。

営業日で数える契約だと結果が変わる

同じBのコンテナを、営業日で数える契約(B4を「営業日」)に切り替えると、9/3から9/16までの営業日は10日です。この期間に休日シートの日付は入っていません。課金日数は3日、金額は225USDになり、暦日の675USDから大きく下がります。船会社が暦日で請求していて、契約が営業日なら、この差が過請求の根拠になります。逆に契約が暦日なのに営業日で自社が数えていたら、自社の計算が誤りです。切り替えて比べられるように、B4を条件の1つとして残してあります。

Claude for Excelへの依頼文を段階に分ける

一度に「全部突合して」と頼むより、段階を分けたほうが検算しやすくなります。Claude for Excelは、回答にセル単位の根拠を付け、クリックで該当セルへ移動できます。各段階の依頼文の例を示します。

  1. 式を組ませる: 「『条件』シートの値を使って、『請求』シートのF〜J列に経過日数・課金日数・再計算額・日数差・金額差の式を入れてください。数え方がB4の暦日・営業日で切り替わるようにしてください」
  2. 式を検算させる: 「9行目のコンテナについて、F列の経過日数がどう導かれたか、根拠のセルを示してください」
  3. 差異を取り出させる: 「I列かJ列が0でない行を抽出して、日数差のみ・金額差のみ・両方に分けてください」
  4. 条件を振らせる: 「B3を0に変えたとき、差異のある行の件数がどう変わるか教えてください」

3の抽出は、フィルタや条件付き書式といった標準のExcel操作として頼めます。4の条件変更は、数式の関係を保ったまま値だけを更新する機能にあたり、下流のセルが再計算されます。船会社の数え方がB3のどちらに近いかを、請求日数との一致件数で探るのに使えます。

毎回の書式指定は追加の指示に置く

アドインのサイドバーの設定にある指示欄に書いた内容は、Excelでの全会話に適用されます。たとえば次のように置いておくと、依頼のたびに書式を書く手間が減ります。指示はPowerPointやWordとは別に保存されます。

日付はyyyy-mm-dd形式で表示する。金額はUSDで小数点以下2桁、
桁区切りを付ける。「条件」シートのセルは書き換えない。

最後の1行は、Claudeが条件シートの値を黙って変えて結果を合わせてしまう事態を避けるための保険です。上書きの前には警告が出ますが、指示でも明示しておくと意図しない編集が減ります。

差異を原因別に仕分けて船会社へ照会する

差異の出た行は、金額の大きさでなく原因で分けます。

原因の候補見分け方船会社に尋ねること
起点日の違い見分け方日数差が+1や+2で、金額差が日額の整数倍船会社に尋ねること起算に使った出来事とその日付
終点日の違い見分け方同上。ゲートアウト記録の日付とずれる船会社に尋ねること終点に使った記録の日付
休日の扱い見分け方日数差が休日の数に近い船会社に尋ねることフリータイムの暦日・営業日の別
日額の段階見分け方日数差が0で金額差だけ出る船会社に尋ねること段階表の適用日と段階の区切り
為替・税見分け方金額差が一定の比率で出る船会社に尋ねること換算レートの適用日、税の別建て

仕分けの案はClaudeに作らせられますが、この表の「候補」は推測です。確定には、船会社が持つ起点日と終点日の記録が必要です。照会文には、自社の再計算の前提(B2〜B4の値)と、差のあったコンテナ番号を添えると、先方が確認しやすくなります。

関連する取引書類の照合は、納品書のスキャン画像を使う納品書と請求データの照合手順や、発注書・納品書・請求書の三点照合の手順にあります。船会社請求との違いは、数量や単価でなく日数の数え方が焦点になる点です。

使えない場面と注意点

  • 外部のファイルをそのまま開かない: 船会社から届いた請求明細のExcelには、隠された指示が入っている可能性があります。外部由来のファイルでは、情報の持ち出しやデータの改変に誘導される恐れがあるため、信頼できる自分のブックに値だけを貼り付けます
  • VBAとマクロは扱えない: データテーブルとマクロ・VBAの操作は未対応です。請求明細の取り込みをマクロで自動化している場合は、その部分を人が行います
  • 請求の最終判断は人が行う: 監査で根拠になる計算は、検証なしでの利用が推奨されない用途に挙げられています。Claudeが組んだ式は、サンプル行を電卓で再計算して合わせます。船会社への支払い拒否や減額交渉の根拠にする前に、契約条項との照合を人が済ませます
  • 動作環境: Excelは、ウェブ版、Microsoft 365のWindows版(ビルド16.0.13127.20296以降)、Mac版(16.46以降)で動きます。Excel 2016・2019の買い切り版、iPad、Androidでは動きません。利用はPro、Max、Team、Enterpriseプランが対象です
  • 編集前にコピーを取る: 広い範囲を編集させる前に、元ブックのコピーを取ります

契約条件と請求額は取引上の機密です。会話の履歴は、ブラウザ内のIndexedDBにローカル保存されます。履歴には、Claudeが読んだ文書の内容が含まれ、端末ごとに保存されて同期されません。共用PCで作業する場合は、設定から履歴を消せます。保存先の詳細は、データの保存場所を説明した公式ページにあります。

まとめ

デマレージ・ディテンションの突合は、数え方(起算日・終点日・休日)と料率を契約条件シートに切り出し、請求シートの再計算式で日数差と金額差を別々に出す形に落とせます。Claudeには式の作成、セル根拠つきの検算、条件を振ったときの件数比較を任せ、条件シートに入れる値は人が契約書から決めます。差異は大きさでなく原因で分けると、船会社への照会が1回で済みます。ディテンションは、起点と終点の列を差し替えた同じ型のシートで同様に扱えます。

この記事を共有:XはてブLinkedIn