Claudeで認定NPOのパブリックサポートテストをExcelで計算する — 算入できない寄附を除いた検算
寄附者名簿から相対値基準の判定表を作る手順です。1者ごとの上限、住所不明の寄附、1,000円未満の寄附を除いた割合を、Claude for Excelに数式で組ませて検算します。
認定NPO法人の認定要件のうち、数字で白黒がつくのがパブリック・サポート・テスト(PST)です。相対値基準では、実績判定期間の経常収入に占める寄附金等の割合が5分の1以上かどうかを見ます。ただし分子は「受け取った寄附金の合計」ではありません。1者からの寄附に上限があり、住所が分からない寄附や1,000円に満たない寄附は算入されません。
この記事は、寄附者名簿から相対値基準の判定表を作る手順です。Claude for Excelには、名簿の集計と判定の数式を組ませ、算入できない寄附を除いた割合を検算させます。どの寄附が算入できるかの判断は、人が名簿の列に入れます。数値例の金額と寄附者は説明用の仮の値です。
相対値基準は何を何で割るのか
PSTには「相対値基準」「絶対値基準」「条例個別指定」の3つがあり、いずれか1つを選んで満たせば足ります。相対値基準は、実績判定期間における経常収入金額のうち寄附金等の収入金額の占める割合が5分の1以上であることを求めます。絶対値基準は、各事業年度中の寄附金総額が3,000円以上の寄附者が、年平均100人以上であることを求めます。
割る数と割られる数は、法令でそれぞれ次のように定められています。
分子と分母に入るもの
分子(寄附金等の収入金額)
受入寄附金総額から、1者当たり基準限度超過額、同一者の合計が1,000円に満たない寄附、氏名と住所が明らかでない寄附、休眠預金の助成金を引いた金額です。
分母(経常収入金額)
総収入金額から、国の補助金等、国等からの委託の対価、臨時的な資産売却収入、分子から外れた1,000円未満と住所不明の寄附などを引いた金額です。
実績判定期間にも決まりがあります。認定を受けたことのない法人は、申請直前に終了した事業年度の末日以前2年内に終了した各事業年度のうち、最も早い事業年度の初日から末日までです。事業年度が1年なら2事業年度分になります。過去に認定を受けたことがある法人は、直前に終了した事業年度以前の5事業年度分です。特例認定を受けただけの法人は、前者の扱いになります。
なお、認定の更新では、認定時と異なるPST基準を選んでも差し支えありません。認定時は相対値基準、更新時は絶対値基準という選び方もできます。
1者ごとの上限を判定表に組み込む
分子を決めるのは、「一者当たり基準限度」です。施行規則は、同一の者からの寄附のうち、基準額を超える部分を算入しないと定めています。基準額は、受入寄附金総額から休眠預金の助成金(法令上は休眠預金の助成金)を引いた金額の100分の10です。寄附者が法人税法施行令に掲げる法人や認定NPO法人の場合は、100分の50になります。
具体的には、受入寄附金総額が約172万円なら、1者の算入上限は約17.2万円です。大口の寄附が1件あるだけでは、割合はあまり伸びません。一方で、総額が大きくなるほど上限も上がる仕組みです。
名簿に必要な列は、次の6つです。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| A受入日 | 内容実際に入金があった日 |
| B寄附者ID | 内容氏名と住所で1者に定まるID |
| C住所確認 | 内容氏名と住所が明らかなら「あり」、氏名しか分からなければ「なし」 |
| D金額 | 内容受け入れた金額 |
| E種別 | 内容「寄附金」または「休眠預金助成金」 |
| F寄附者区分 | 内容上限が10%なら「通常」、50%なら「50%」 |
受入日は、クレジットカード寄附で迷いやすい列です。原則は法人への入金があった日です。支払い手続きの完了で入金が確実で、一方的なキャンセルもできない場合は、寄附者が手続きをした日を入金日とみなす扱いも認められています。どちらを採るかは法人で決め、寄附金の受領証明書の日付とそろえます。
寄附者別シートと判定シートの式
名簿から寄附者別に集計するシートと、割合を判定するシートの2枚を足します。次は、列を割り当てた場合の式の例です。
【寄附者別シート】 A列=寄附者ID(重複なし) 2行目の式
B2 期間合計 =SUMIFS(名簿!$D:$D,名簿!$B:$B,A2,名簿!$E:$E,"寄附金")
C2 住所確認 =INDEX(名簿!$C:$C,MATCH(A2,名簿!$B:$B,0))
D2 上限額 =IF(INDEX(名簿!$F:$F,MATCH(A2,名簿!$B:$B,0))="通常",
判定!$C$4,判定!$C$5)
E2 算入額 =IF(OR(C2="なし",B2<1000),0,MIN(B2,D2))【判定シート】
C2 受入寄附金総額 =SUM(名簿!D:D)
C3 休眠預金助成金 =SUMIFS(名簿!D:D,名簿!E:E,"休眠預金助成金")
C4 基準限度額(10%) =(C2-C3)*0.1
C5 基準限度額(50%) =(C2-C3)*0.5
C7 分子(算入寄附金) =SUM(寄附者別!E:E)
C9 総収入金額 (活動計算書の経常収益計+経常外収益計を入力)
C10 国の補助金等 (入力)
C11 国等からの委託対価 (入力)
C12 臨時的な資産売却収入(入力)
C13 遺贈等の基準超過部分(入力)
C14 1,000円未満の寄附 =SUMIFS(寄附者別!B:B,寄附者別!B:B,"<1000",
寄附者別!C:C,"あり")
C15 住所不明の寄附 =SUMIFS(寄附者別!B:B,寄附者別!C:C,"なし")
C16 休眠預金助成金 =C3
C17 分母(控除後) =C9-SUM(C10:C16)
C18 補助金の戻し入れ =MIN(C10,C7)
C19 割合 =(C7+C18)/(C17+C18)
C20 判定 =IF(C19>=1/5,"適合","不適合")C14は、住所が分かっている1,000円未満の寄附だけを数えます。住所不明の寄附は、金額にかかわらずC15が受け持つので、二重に引かないためです。C18は、国の補助金等がある法人に認められた扱いで、国の補助金等のうち分子に達するまでの金額を、分子と分母の両方に戻し入れます。
Claude for Excelに任せる範囲
Claude for Excelは、ブックの内容について質問し、数式の関係を保ったまま値を更新し、新しいモデルを組めるExcelのアドインです。Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで使えます。上の判定表のように、列の意味さえ決まっていれば、集計の式はClaudeに組ませる作業と相性がよい部類です。
次は、指示文の例です。列の割り当てと判定ルールを先に書き、組んでほしい範囲と、手を触れない範囲を分けています。
名簿シートの列は A受入日 / B寄附者ID / C住所確認 / D金額 / E種別 / F寄附者区分 です。
次の手順で、相対値基準の判定表を組んでください。
1. 寄附者別シートに、寄附者IDごとの期間合計と算入額の列を作る。
算入額は、住所確認が「なし」なら0、期間合計が1,000円未満なら0、
それ以外は期間合計と上限額の小さいほう。
2. 判定シートに、分子・分母・割合・判定を式で組む。
上限額は受入寄附金総額から休眠預金助成金を引いた額の10%
(寄附者区分が「50%」なら50%)。
3. 名簿と活動計算書の入力欄は書き換えない。
4. 算入額の合計が、分子のセルと一致するかを確かめる式も足す。これは、指示文の一例です。同じ指示で同じ式が返るとは限らないので、出来上がった式は読み込んで確かめます。Claude for Excelは、既存データを上書きする前に警告を出し、回答にはセル単位の参照が付きます。参照を押して、式が指す範囲が想定どおりかを見てください。
寄附者名簿は仮名化して渡す
寄附者名簿には氏名と住所が並びます。Claude for Excelのサポート記事は、高度に機微なデータや規制対象のデータを、適切な管理なしに扱うモデルには勧められないとしています。名簿そのものを渡さなくても、判定表を組むことはできます。
- 氏名と住所の列は、IDと「あり/なし」のフラグに置き換えた作業用のコピーを作る
- 元の名簿には、IDと氏名・住所の対応表を別ブックで残す
- 作業用ブックで式が固まったら、本番のブックに同じ式を貼り直す
判定の根拠になるのは、あくまで氏名と住所が確認できているかどうかです。フラグの付け方を誤ると、判定表全体が誤ります。フラグは経理担当が名簿と突き合わせて入れます。
数値例で見る: 受取寄附金の割合は23.5%、算入後は17.9%
2事業年度(24か月)の実績判定期間を例にします。寄附者別の期間合計は、次のとおりです。
| 寄附者 | 期間合計 | 住所確認 | 算入額 | 算入されない理由 |
|---|---|---|---|---|
| 寄附者01(個人) | 期間合計600,000円 | 住所確認あり | 算入額172,080円 | 算入されない理由上限を超える427,920円 |
| 寄附者02(個人) | 期間合計300,000円 | 住所確認あり | 算入額172,080円 | 算入されない理由上限を超える127,920円 |
| 寄附者03(個人) | 期間合計150,000円 | 住所確認あり | 算入額150,000円 | 算入されない理由なし |
| 寄附者05(法人・通常) | 期間合計200,000円 | 住所確認あり | 算入額172,080円 | 算入されない理由上限を超える27,920円 |
| 30者の小口(いずれも3,000円以上と仮定) | 期間合計400,000円 | 住所確認あり | 算入額400,000円 | 算入されない理由なし |
| 寄附者06 | 期間合計800円 | 住所確認あり | 算入額0円 | 算入されない理由1,000円未満 |
| 振込で氏名しか分からない寄附 | 期間合計70,000円 | 住所確認なし | 算入額0円 | 算入されない理由住所が明らかでない |
受入寄附金総額は1,720,800円で、基準限度額は10%の172,080円です。算入額の合計は1,066,240円になります。
分母側は、活動計算書の収益から作ります。事業収益4,600,000円(うち国等からの委託の対価1,200,000円)、受取会費900,000円、受取寄附金1,720,800円、臨時的な固定資産売却益100,000円で、総収入金額は7,320,800円です。ここから、委託の対価、臨時の売却益、1,000円未満の800円、住所不明の70,000円を引くと、分母は5,950,000円になります。国の補助金等はない前提です。
同じ名簿から出る2つの割合
受取寄附金÷総収入
23.5%
1,720,800 ÷ 7,320,800
算入後の割合
17.92%
1,066,240 ÷ 5,950,000
受取寄附金を総収入で割っただけの粗い見積りでは、5分の1(20%)を超えて見えます。施行規則どおりに算入額だけを数えると、17.92%で届きません。判定表は、この差を数式の列として見せる道具です。
国の補助金等がある場合の検算
国の補助金等が500,000円あったとすると、総収入金額は7,820,800円に増えます。補助金は分母から引かれますが、令5条1項により、分子に達するまでの金額を分子と分母の両方に戻し入れられます。ここでは分子の1,066,240円が補助金を上回るので、戻し入れる金額は500,000円です。割合は、次のとおりに変わります。
(1,066,240 + 500,000) ÷ (5,950,000 + 500,000) = 1,566,240 ÷ 6,450,000 = 24.28%戻し入れの式(C18)を入れ忘れると、補助金のある法人で割合が不当に低く出ます。補助金等の有無が、分子の増減ではなく分母を通じて割合を動かす点も、表に出しておくと読み返しやすくなります。
算入できるか迷う寄附の仕分け
名簿の「種別」と「住所確認」の列に何を入れるかは、Claudeではなく人が決める部分です。内閣府のNPO法Q&Aに、迷いやすい例の判断があります。
| 受け入れたもの | 算入の扱い | 根拠のQ&A |
|---|---|---|
| 氏名のみ分かる口座振込 | 算入の扱い算入できない(住所も必要) | 根拠のQ&A3-2-3 |
| 海外在住の寄附者 | 算入の扱い氏名と住所が分かれば算入できる | 根拠のQ&A3-2-4 |
| 任意団体(自治会など) | 算入の扱い名称と住所が明確なら1者として扱える | 根拠のQ&A3-2-7 |
| 賛助会費 | 算入の扱い対価性がなければ寄附として扱える | 根拠のQ&A3-2-2 |
| 正会員の会費 | 算入の扱い表決権が反対給付とされる場合が多く、算入できない | 根拠のQ&A3-2-9 |
| 会費の2口目以降 | 算入の扱い区分して経理していれば寄附として扱える | 根拠のQ&A3-2-9 |
| 割引などの特典つきの賛助会費 | 算入の扱い全額が算入できない | 根拠のQ&A3-2-10 |
| 粗品が対価になる寄附募集 | 算入の扱い算入できない | 根拠のQ&A3-2-13 |
| 現物寄附(古本、車両など) | 算入の扱い受入時の時価で算入できる | 根拠のQ&A3-2-5、3-2-14 |
| 社会福祉法人などからの助成金 | 算入の扱い対価性がなければ寄附と同様に扱う | 根拠のQ&A3-3-2、3-3-3 |
返礼品は、お礼状や活動報告、法人の活動を周知する程度のものなら、算入の基礎となる寄附金として認められるとされています。書店で売っている書籍のような対価性のあるお礼を返すと、算入されない場合があります。個別のケースは所轄庁に相談する扱いです。
この表は、名簿の「種別」列の入力規則に反映すると使いやすくなります。入力規則(プルダウン)の候補に「寄附金」「賛助会費(寄附扱い)」「賛助会費(対価あり)」「正会費」「現物寄附」「国の補助金等」を並べ、集計の式は「寄附金」と「寄附扱い」だけを足す形にします。
落とし穴
口座振込の氏名だけでは、算入できない
寄附者を特定するには、氏名のほかに住所または主たる事務所の所在地が必要です。口座振込で氏名しか分からない寄附は、寄附者が特定されたとはいえないため、算入できません。振込名義と寄附申込書の突き合わせで住所を補える寄附は、補ったうえで「あり」を入れます。
判定表の検算を3段階で回す
式を組んだあとの確認は、次の順で進めると、誤りのある箇所を絞り込めます。
判定表の確認手順
- 1
寄附者別の算入額を3者だけ手計算する
上限に当たる大口、上限に当たらない中口、住所なしの寄附の3者を選び、電卓で算入額を出して表の値と照らし合わせます。
- 2
合計の突合を式で確かめる
寄附者別の期間合計の総和が、判定シートの受入寄附金総額から休眠預金助成金を引いた金額と一致するかを確かめます。一致しなければ、名簿の種別の入力漏れか、IDの揺れが原因です。
- 3
分母を活動計算書と突き合わせる
総収入金額に、前期繰越の正味財産を含めていないかを見ます。内閣府のQ&Aは、前期繰越の正味財産額を総収入金額に含めないと明記しています。
3つの確認がそろったら、Claudeに「この判定表で、寄附者06を1,000円以上に変えると算入額が変わるか」といった仮定の問いを投げます。式の挙動を確かめる使い方なら、結果を手計算と照らして検証できます。Claude for Excelのサポート記事も、監査上重要な計算を検証なしに任せる使い方は推奨しないとしています。所轄庁に出す書類は、人が最後まで見ます。
相対値で届かないときに比べる基準
17.92%のように相対値基準で届かない場合は、別の基準でも名簿から確かめられます。
- 絶対値基準: 各事業年度ごとに、同一の者からの寄附が3,000円以上になる寄附者を数えます。個人の場合は、生計を一にする者の寄附を合算します。法人の役員と、その役員と生計を一にする者は除きます。事業年度ごとの人数を合計して12を掛け、実績判定期間の月数で割った数が100以上なら適合です
- 条例個別指定: 申請書の提出前日までに、事務所のある都道府県または市区町村の条例で、個人住民税の寄附金税額控除の対象として個別に指定されていることが条件です
- 小規模法人の特例: 総収入金額の年換算が800万円未満で、3,000円以上の寄附者(役員と社員を除く)が50人以上の法人は、別の計算が認められます。この場合、住所不明の寄附も算入できます
絶対値基準の人数は、寄附者別シートに事業年度ごとの列を足せば、COUNTIFS で数えられます。
落とし穴
遺贈の基準超過部分は分母からも引く
遺贈などで受けた寄附のうち、1者当たり基準限度超過額に当たる部分は、分子だけでなく分母の総収入金額からも引きます。判定シートのC13がその欄です。遺贈を受けたことがある法人は、名簿に「遺贈」の種別を設けて区別します。
名簿の整備を進める段階では、活動計算書の収益の区分を整えておくと分母の突合が楽になります。手順はNPO法人会計基準の活動計算書の作成で扱っています。寄附者の継続と新規獲得の状況は寄附者維持と獲得の可視化で、上位の寄附が全体に占める偏りはギフトピラミッドによる目標設計で見られます。1者に偏った名簿は、上限の影響を大きく受けます。
判定表を毎期の見通しに使う
判定表は、申請の直前に一度だけ計算する道具ではありません。事業年度ごとに名簿と活動計算書を更新して割合を毎期出しておけば、申請が近づいたとき、あといくら足りないかが数字で分かります。
先の例で20%に届くには、分子が1,190,000円必要です。不足は123,760円ですが、新しい寄附は分母の総収入も同じだけ増やします。追加で受ける寄附をxとすると、(1,066,240+x)÷(5,950,000+x)が5分の1以上になるxは154,700円以上です。確かめると、1,220,940÷6,104,700でちょうど20%になります。
上限に達している寄附者01・02・05は、これ以上増やしても分子が伸びません。足りない分は、上限に届かない新しい寄附者の寄附で積むことになります。判定シートの入力欄にxを入れて割合を確かめる作業は、Claudeに頼める仮定の問いです。