Claudeで自動車事故報告規則の要否を判定し速報を下書きする
事故の状況メモを自動車事故報告規則の第二条の区分に当て、30日以内の報告書と24時間以内の速報の要否を表にするまでの手順です。速報の下書きと期限計算、入力する情報の扱いも扱います。
バスやトラックの事故が起きたとき、運行管理者が最初に迷うのは「報告が要るのか」「速報も要るのか」の2点です。自動車の事故報告規則は、この2点を別々の条文で定めています。報告書は第三条で事故から30日以内、速報は第四条で24時間以内です。
事故の状況メモを条文の区分に当てはめる作業は、Claudeが得意とする形の整理です。ここでは、規則の条文をClaudeに渡し、事案ごとの要否表と速報の下書きを作る流れを示します。判定の最終確認は、人が条文の原文で行います。
要否は2段階で決まる — 報告書は広く、速報は狭い
規則の構造は単純です。第二条が「事故」を15の号で定義し、該当すれば第三条の報告書が要ります。そのうち第四条の5つの類型に当たるものだけ、報告書に加えて速報が要ります。
報告書と速報の違い
報告書(第三条)
第二条の各号のどれかに該当する事故が対象です。事故のあった日から30日以内に、使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部長または運輸支局長を経由して、国土交通大臣に提出します。
速報(第四条)
第四条第一項の各号に該当する事故が対象です。報告書とは別に、電話などの適当な方法で、24時間以内にできる限り速やかに運輸監理部長または運輸支局長へ事故の概要を伝えます。
速報の対象になるのは、次の5類型です。
| 第四条第一項の号 | 対象となる事故 | 旅客と貨物の違い |
|---|---|---|
| 第一号 | 対象となる事故転覆・転落・火災・鉄道車両との衝突や接触 | 旅客と貨物の違い旅客運送の事業者等の自動車に限る |
| 第二号 | 対象となる事故死者・重傷者を生じたもの | 旅客と貨物の違い死者は貨物で2人以上、旅客で1人以上。重傷者は5人以上、または旅客に1人以上 |
| 第三号 | 対象となる事故10人以上の負傷者 | 旅客と貨物の違い区別なし |
| 第四号 | 対象となる事故危険物などの飛散・漏えい | 旅客と貨物の違い転覆や衝突などに起因するものに限る |
| 第五号 | 対象となる事故酒気帯び運転を伴うもの | 旅客と貨物の違い区別なし |
読み落としやすいのは、報告書だけで速報が要らない事故が多いことです。例えば貨物のトラックで死者1人の事故は、報告書の対象ですが、速報の対象は2人以上なので速報は条文上の対象外です。同じ死者1人でも、旅客の事故なら速報が要ります。
判定表の例 — 3つの事案を条文に当てる
実際の事案をどう振り分けるか、架空の3件で示します。いずれも条文の区分に当てた結果の例で、実際の事故の判定ではありません。
| 事案(架空) | 第二条の該当号 | 報告書 | 速報 |
|---|---|---|---|
| 貸切バスが高速道路でガードレールに衝突し、乗客2人が重傷 | 第二条の該当号第三号(重傷者) | 報告書要 | 速報要(第四条第二号ハ) |
| 貨物トラックが追突し、相手方の運転者1人が死亡 | 第二条の該当号第三号(死者) | 報告書要 | 速報対象外(死者2人未満) |
| 貨物トラックからコンテナが落下したが、負傷者なし | 第二条の該当号第六号 | 報告書要 | 速報対象外 |
3行目のコンテナ落下は、第二条第六号に当たるので報告書は要ります。一方、第四条第四号が指すのは第二条第五号の飛散・漏えいだけです。コンテナの落下は速報の類型に入っていません。
1行目のように、1つの事故が複数の号に当たることもあります。高速自動車国道や自動車専用道路を3時間以上通行止めにした場合は、第二条第十四号にも該当します。表には該当する号を全部書かせると、後で報告書の事故区分を書くときに迷いません。
Claudeに条文を渡す — Projectsに規則を置く
条文は、Projectsの資料として最初に置いておきます。毎回の会話に貼り直すより、条文の版を固定できるからです。
Projectsを使った準備の流れ
- 1
条文を用意する
e-Govの法令検索から、事故報告規則の本文を取り出してテキストにします。法令番号は昭和26年運輸省令第104号です。
- 2
Projectsの資料に追加する
テキストを1つのファイルにして、事故報告用のProjectに置きます。改正で条文が変わったら、資料を差し替えます。
- 3
指示文を書く
判定の手順と出力の形を、Projectの指示に固定します。次の節に例を示します。
条文の版には注意が要ります。この規則は令和6年10月1日の国土交通省令第90号で別記様式が改正されており、附則で旧様式の自動車の事故報告書も当分の間は使えるとされています。報告書の様式は、提出時点で運輸支局が受け付ける版に合わせてください。
指示文の例
Projectの指示には、次のような規約を入れます。条番号の根拠を必ず出させ、判定できないものは「不明」として止める点が肝心です。
あなたは運行管理者を補助するアシスタントです。
添付の事故報告規則の条文だけを根拠にします。
手順:
1. 事故の状況メモから、事実(日時・場所・車両の種別・死傷者数・
積載物・酒気帯びの有無・通行止めの時間)を抜き出す。
2. 第二条の第一号から第十五号まで順に、該当・非該当・不明を判定する。
3. 該当した号がある場合のみ、第四条第一項の各号に当てる。
4. 結果を表にする。列は「条・号」「該当の根拠(メモの記述)」
「報告書」「速報」。
5. 事実がメモに無い項目は「不明」とし、推測で埋めない。
死傷者数が足りず判定できないときは、確認すべき事実を質問として返す。出力を確認するときは、表の「根拠」欄にメモのどの記述が引かれているかを見ます。メモに書いていない事実を根拠にしている行があれば、そこで判定が崩れています。
速報を下書きする — 規則に書式が無いので項目を固定する
第四条は、速報の方法を「電話その他適当な方法」としています。報告書のような様式は置かれていません。そのため、速報の項目は事業者側で決めます。24時間という時間のなかで抜けを出さないためには、あらかじめ項目を決めておくのが安全です。
次の指示を追加すると、電話で読み上げられる長さの下書きを作らせられます。
判定表で速報が「要」の事故について、運輸支局への速報の下書きを作る。
- 事業者名、報告者の氏名と連絡先
- 事故の日時と場所(道路名・方面まで)
- 自動車の種別と、旅客・貨物の別
- 死者・重傷者・負傷者の人数(分かっている範囲。未確認は「確認中」)
- 事故の概要を3文以内で
- いまの対応(救護、警察への通報、運行の停止など)
メモに無い数字は書かず、「確認中」とする。人数が確定していない段階でも、速報は出せます。「確認中」と書いたうえで、後から報告書で確定値を出す流れになります。Claudeには、確定していない数字を埋めさせないことが大切です。
期限を計算する — コード実行で日付の取り違えを防ぐ
30日以内と24時間以内は、数え間違いが起きやすい期限です。日付計算は、会話の中の暗算ではなく、コードで行わせると取り違えを減らせます。
規則が起算日として書いているのは、原則として「事故があつた日」です。例外が2つあります。第二条第十号の救護義務違反は「事業者等が救護義務違反のあったことを知った日」、第十五号の国土交通大臣の指示は「当該指示があつた日」です。
次のPythonは、起算日から30日後の日付を出す例です。
from datetime import date, timedelta
# 起算日: 事故があった日(救護義務違反は、事業者が知った日)
kisanbi = date(2026, 10, 20)
print(kisanbi + timedelta(days=30))python3 deadline.py初日を算入するかどうかは、規則の本文に記載がありません。上の計算は単純な30日後を出すだけなので、提出期限の確定は運輸支局に確かめてください。
APIでコード実行ツールを使う場合、Claudeは計算やデータ処理が役に立つときと、「実行して」と明示されたときにコードを動かします。簡単な算術は、コードを動かさずに直接答えます。境目の依頼では「コードを実行して確認して」と書き添えると確実です。
入力する情報の扱い — コード実行の保持期間
事故のメモには、運転者や被害者の氏名、傷病の状況が含まれます。APIのコード実行ツールを使う場合、コンテナのデータは作成から30日間保持されます。アップロードしたファイルと出力も、この保持の対象です。このツールは、ゼロデータ保持(ZDR)の対象外にも分類されています。
Claudeに渡すメモは、氏名を「運転者A」「被害者B」のような記号に置き換えると、判定に必要な事実だけが残ります。判定に使うのは人数、車種、積載物、酒気帯びの有無といった事実で、個人を特定する情報は要りません。
APIでは、コード実行を使わない構成にすることもできます。条文と匿名化したメモだけを渡し、期限の計算は手元のスクリプトで行えば、サンドボックスにファイルを置く必要はありません。
故障が原因の事故は添付書類が増える
第二条の第十一号(装置の故障で運行できなくなったもの)と第十二号(故障による車輪の脱落、被牽引自動車の分離)は、報告書に書面と図を添える決まりがあります。第三条第二項が求める添付は次のとおりです。
- 自動車検査証の有効期間
- 使用開始後の総走行距離
- 最近の大規模な改造の内容、施行期日、施行工場名
- 故障した部品と部位の名称(前後左右の別がある場合は前進方向を基準に明記)
- 部品を取りつけてから事故までの走行距離
- その部品を含む装置の整備と改造の状況
- 部品の製作者(不明なら販売者)の氏名または名称と住所
- 故障の状況を示す略図または写真
整備記録を別のファイルで持っている事業者は、Claudeに「第十一号か第十二号に該当したら、この8点のうちメモに無いものを一覧にする」と指示しておけば、集め忘れた資料が早い段階で分かります。判定表の備考欄に出させる使い方が向いています。
隣接する記事との使い分け
事故後の作業は、報告のほかにも続きます。貨物の損害に対する荷主への賠償は貨物事故の賠償額を運送約款に照らして整理する手順が扱っています。事故の前段にあたる点呼記録の確認は点呼記録と日報の点検の記事にあります。
報告書を様式に落とす書き方は、別の業種の記事が参考になります。時系列メモから様式の欄へ移す流れは介護事故報告書の下書きと、期限を条文で決めて報告要否を表にする点は重大製品事故の報告要否の整理と共通しています。
つまずきやすい点
落とし穴
対象の自動車に除外がある
第三条と第四条の対象は、事業者等が使用する自動車です。自家用自動車(自家用の有償旅客運送の用に供するものを除く)のうち、軽自動車、小型特殊自動車、二輪の小型自動車は対象から外れます。車種が書かれていないメモでは、Claudeに判定させず「不明」で止めてください。
もう一つは、第二条第十五号です。ほかの号に当たらなくても、国土交通大臣が特に必要と認めて報告を指示した事故は対象になります。メモの範囲では判定できない号なので、指示文では「第十五号は人が確認する」と書いておくと、判定表が全部非該当で埋まるのを防げます。
まとめると、報告書の要否は第二条の15号で広く決まり、速報はそのうち第四条の5類型だけです。Claudeには「条番号つきの該当表」と「メモに無い事実を埋めない下書き」を作らせ、期限と様式は人が運輸支局の案内と条文の原文で確定してください。