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Claudeで保安規程と点検記録を突き合わせる — 絶縁抵抗の推移から抜けを洗う

Claudeで保安規程と点検記録を突き合わせる — 絶縁抵抗の推移から抜けを洗う

自家用電気工作物の月次・年次点検記録から絶縁抵抗値の推移をClaudeで時系列にし、保安規程の点検項目と実施記録の抜けを洗う手順です。電気主任技術者の判断との線引きも示します。

自家用の電気工作物の点検は、測って記録するところまでは回っていても、記録を並べて眺める時間が取れないことが多い仕事です。絶縁抵抗の値は毎回「合格」の欄に収まっていれば見過ごされがちで、少しずつ下がっていく傾向は表の外から見ないと気づけません。保安規程に書いた点検項目が、実際に記録として残っているかも同じです。

この2つの確認は、Claudeに任せやすい作業です。月次・年次の点検表をCSVにして時系列に並べ、回路ごとの傾向を出させ、保安規程の項目一覧と実施記録を突き合わせます。判断そのものは電気主任技術者の仕事のまま、下ごしらえだけを機械に回す線引きで進めます。

保安規程と主任技術者は法律上どこにいるか

事業用の電気工作物を設置する者は、電気事業法第42条で保安規程を定めて主務大臣に届け出る義務を負います。変更したときも遅滞なく届出が必要で、設置者とその従業者は保安規程を守らなければなりません。小規模事業用の電気工作物は、この条文の対象から除かれています。

主任技術者の選任は第43条です。保安の監督を行う職務を誠実に行うこと、工事・維持・運用に従事する者が主任技術者の指示に従うことも、同じ条文に書かれています。つまり保安規程は設置者が定める文書で、その運用の監督が主任技術者という分担です。

保安規程に何を書くかは、電気事業法の施行規則、第50条第3項が定めています。一般送配電事業などを除く事業用の電気工作物では、次の9項目です。

号規定する事項点検記録から見る観点
1規定する事項保安業務を管理する者の職務・組織点検記録から見る観点点検表の実施者・確認者欄が空でないか
2規定する事項従事者への保安教育点検記録から見る観点教育の実施日が記録に出てくるか
3規定する事項巡視、点検及び検査点検記録から見る観点規程に書いた頻度で実施日が並ぶか
4規定する事項運転又は操作点検記録から見る観点操作記録・停止復電の記録があるか
5規定する事項運転を相当期間停止する場合の保全点検記録から見る観点停止期間中の点検の扱いが残っているか
6規定する事項災害その他非常の場合の措置点検記録から見る観点訓練・連絡体制の見直し記録があるか
7規定する事項保安についての記録点検記録から見る観点記録様式と保存の実態が合っているか
8規定する事項法定自主検査等の実施体制と記録の保存点検記録から見る観点対象設備を持つ場合の検査記録があるか
9規定する事項その他保安に関し必要な事項点検記録から見る観点規程独自の追加項目が実施されているか

右の列は、規則の文言を点検記録の側から言い換えた見方です。規則自体が観点を示しているわけではない点に注意してください。実際の規程は設備と組織ごとに項目の粒度が違うので、自社の規程の目次を左の列に置き換えて使います。

Claudeに任せる範囲と、任せない範囲

線引きは次の表のとおりです。

くらべる

下ごしらえと判断の分担

整理・照合

Claudeに任せる

CSVの整形と時系列化、前回比と傾きの計算、規程の項目と実施日の突合、記録の空欄や日付の飛びの拾い出し。

保安上の判断

主任技術者が決める

値の傾向が機器の劣化を意味するかの評価、再測定や精密点検の要否、停電を伴う作業の判断、規程の改定そのもの。

電気事業法第43条第1項は、保安の監督を主任技術者にさせると定めています。Claudeの出す「下がり傾向にあります」は、記録の数字から計算した結果であって、設備が危ないという診断ではありません。結果は主任技術者に渡す資料の位置づけにとどめます。

点検記録を機械が読める形にする

点検表が紙やPDFのままだと、最初の関門は転記です。Excelに起こしたうえで、1行が1回の測定になる縦持ちのCSVにします。列は次のくらいで足ります。

測定日,回路名,使用電圧区分,測定電圧V,絶縁抵抗MΩ,判定下限MΩ,気温,湿度,測定者,備考
2026-04-10,動力盤A-1,300V以下・対地150V超,500,12.0,0.2,18,55,山田,
2026-05-12,動力盤A-1,300V以下・対地150V超,500,11.5,0.2,21,60,山田,
2026-06-10,動力盤A-1,300V以下・対地150V超,500,9.8,0.2,24,78,山田,梅雨時

数値は説明用の架空の例です。実データでは、回路名の表記ゆれ(「動力盤A-1」と「動力A1」など)が最初に邪魔をします。CSVを作る前に名寄せ表を1枚作り、Claudeに「回路名の表記ゆれを候補として列挙して」と頼むと、直す箇所の見当がつきます。

判定下限の列は、自分で埋めます。低圧の電路については、電気設備に関する技術基準を定める省令の第58条に値があります。開閉器または過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに、電線相互間と電路・大地間の絶縁抵抗が次の値以上であることが求められます。

電路の使用電圧の区分絶縁抵抗値
300V以下で対地電圧150V以下絶縁抵抗値0.1MΩ以上
300V以下でその他絶縁抵抗値0.2MΩ以上
300V超絶縁抵抗値0.4MΩ以上

この表は低圧電路の値です。高圧の受電設備や機器ごとの管理値は別の基準で決まるため、ここに載せていません。管理に使っている値が規程や自社基準にあれば、そちらを判定下限の列に入れてください。Claudeに値を推測させないことが、この手順の前提です。

測定日の欄には、気温・湿度の列も残しておきます。梅雨時と冬で値が動いたとき、記録に条件があれば「条件の違いか、傾向か」を主任技術者が見分ける材料になります。

絶縁抵抗の推移を時系列にして読む

CSVができたら、Claudeにファイルを渡して回路ごとの推移を出させます。コード実行が使える環境では、CSVやExcelの分析ができます。APIのコード実行ツールの案内にも、アップロードしたCSVとExcelをPython環境で処理できると書かれています。

プロンプトは、次のように「何をしてほしいか」と「やってはいけないこと」を並べます。

添付のzetsuen.csvは、自家用の電気工作物の絶縁抵抗の測定記録です。
次の3点を計算して、回路ごとの表にしてください。
1. 直近の測定値が判定下限MΩの何倍か(余裕倍率)
2. 前回測定からの変化率
3. 測定回数が4回以上の回路について、値の対数を測定順に直線で
   当てはめた傾き(負なら下がり傾向)
判定下限MΩ列の値は変更せず、そのまま使ってください。
劣化の原因や再測定の要否は書かないでください。数字の並びだけを報告します。

自分の手元で再現したいときは、同じ計算を次のスクリプトでも書けます。Claudeに頼んだ結果と見比べると、計算が合っているかを確かめられます。

import numpy as np
import pandas as pd
 
df = pd.read_csv("zetsuen.csv", parse_dates=["測定日"])
df = df.sort_values(["回路名", "測定日"])
 
col = "絶縁抵抗MΩ"
df["前回比"] = df.groupby("回路名")[col].pct_change()
df["余裕倍率"] = df[col] / df["判定下限MΩ"]
 
def log_slope(s):
    if len(s) < 4:
        return np.nan
    return np.polyfit(np.arange(len(s)), np.log(s.values), 1)[0]
 
slope = df.groupby("回路名")[col].apply(log_slope).rename("対数傾き")
latest = df.groupby("回路名").tail(1).set_index("回路名")
print(latest[["測定日", col, "余裕倍率", "前回比"]].join(slope))
python3 trend.py

出力に「対数傾き」が負で、余裕倍率が小さい回路が並んだら、そこが主任技術者に見せる候補です。傾きの閾値は決まった値がなく、設備と測定頻度で意味が変わります。Claudeに「異常」と判定させず、傾きの大きい順に並べるところまでにしておくのが安全です。

値が動いたときの切り分け

グラフで落ちて見える点には、劣化以外の理由も紛れ込みます。切り分けの順番は次のとおりです。

切り分け

絶縁抵抗が下がって見えたとき

  1. Q測定電圧は他の回と同じか?
    答えが違う

    電圧が違う回の値は、別の系列として分けて見ます。

    答えがはい
  2. Q気温・湿度は大きく違うか?
    答えが違う

    条件の違いとして備考に残し、次回以降の傾向を見ます。

    答えがはい
  3. Q測定した回路の範囲は同じか?
    答えが違う

    分岐の接続状態が違えば値も変わるため、範囲をそろえて見直します。

    答えがはい

主任技術者に渡す

条件をそろえてなお下がる回路を、値・日付・条件の表にして渡します。

年次の測定は、傾きが出るまで数年かかる

月次点検の表と年次の測定記録では、傾向を読める速さが違います。絶縁抵抗を年1回だけ測る回路は、4回分の測定がそろうまで4年かかります。先のスクリプトが測定回数4回未満の回路に傾きを出さないのは、そのためです。

測定が少ない回路は、傾きを求めるより、余裕倍率と前回比の2つを見るほうが実態に合います。前回の約半分になっている、判定下限との差が年々縮んでいる、といった読み方です。記録を十年分さかのぼれるなら、過去の紙の点検表をスキャンしてCSVに足すと、傾きの精度が上がります。測定の頻度を変えるかどうかは、規程の改定にもつながるため、主任技術者と設置者が決めます。

主任技術者に渡す資料の型

Claudeの出力は、そのまま報告書にせず、次の4列に整えて渡すと読まれやすくなります。

列内容
回路名内容名寄せ後の表記
直近の値と日付内容数字と測定日
前回比・余裕倍率内容計算した値
測定条件の差内容電圧・気温・湿度・範囲の違い

原因の列は作りません。「なぜ下がったか」は点検の現場を見た人の領域で、資料に推測が混ざると、主任技術者が自分の目で確かめる手間が増えるためです。

保安規程の項目と実施記録を突き合わせる

もう一つの確認が、規程に書いた項目と記録の突き合わせです。規程の「巡視、点検及び検査」の章を、項目ごとの表にします。

項目ID,規程の項目,規程上の頻度,対象設備,記録様式名
P-01,受電設備の月次点検,毎月,キュービクル,月次点検表
P-02,絶縁抵抗測定,年1回,低圧分電盤全回路,絶縁抵抗測定記録
P-03,接地抵抗測定,年1回,A種・B種接地,接地抵抗測定記録

実施記録の側は、記録様式名と実施日の一覧にします。そのうえでClaudeに、項目ごとの実施日が規程の頻度で並んでいるかを確認させます。

規程項目表(kitei.csv)と実施記録一覧(jisseki.csv)を突き合わせてください。
- 項目IDごとに、規程の頻度から期待される実施回数と、実際の記録件数を並べる
- 記録が1件もない項目、期待より少ない項目、日付が飛んでいる月を挙げる
- 記録様式名が規程にない行は「規程外の記録」として別に挙げる
規程の頻度の読み替えは行わず、頻度欄の文字をそのまま使ってください。

ここで拾えるのは、記録の有無と日付の飛びです。点検が実施されなかったのか、実施したが記録されていないのかは、現場の人に聞かないと分かりません。規程と運用が食い違う項目が見つかったとき、第42条第2項は変更を届け出るよう定めています。実態に合わせて規程を直すのか、実態を規程に戻すのかは、設置者と主任技術者の判断です。

保安規程の「記録に関すること」(第7号)は、記録様式と保存の実態が合っているかも含みます。突合で記録様式名のばらつきが見つかったら、様式の整理自体が次の改善項目になります。

Claude Codeで繰り返し回すとき

月次で同じ突合を回すなら、Claude Codeにリポジトリのような作業フォルダを持たせる方法があります。CLAUDE.mdに規約を書いておくと、毎回の指示が短くなります。

# 点検記録の突合ルール
- data/ のCSVは読み取り専用。元データを書き換えない
- 判定下限MΩ列は人が管理する。値を推測して補わない
- 出力は reports/ に、数字の表だけを書く。原因・要否の判断は書かない
- 回路名の表記ゆれは直さず、候補として報告する

元データを書き換えない、判断を書かない、の2点を規約に入れておくと、出力が主任技術者への資料として使いやすくなります。

結果を使うときの注意

出力を点検の根拠にしないことが一番の注意点です。計算が合っているかは、数回分を手計算かスクリプトで照合してください。「直近の値」と「判定下限」だけは、元の点検表の紙と見比べて、読み違いがないかを確かめます。

また、点検表には設備の配置や運用が詳しく書かれています。外部に出したくない情報は、CSVに入れる前に回路名を記号に置き換えておくと安全です。名寄せ表を手元に残しておけば、結果を元の名前に戻せます。

最後に、この手順の出力を保安規程の届出や変更の資料にそのまま使うことは想定していません。届出は様式第41・第42に沿って設置者が作る書類で、Claudeが作るのは下調べの表です。同じ「台帳と記録の突き合わせ」は、医療機器の保守点検記録や介護の法定研修記録でも扱っています。点検の履歴を溜めて次の行動を出す流れは空き家の点検記録の整理に近く、表の作り方の参考になります。

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