Claudeで内装制限と避難規定の該当を洗う — 用途・規模から階段の要否まで
用途・階数・面積を入力票にして、建築基準法の施行令の内装制限と直通階段・避難階段の条文に当てる手順です。入口の条件が条文ごとに違う点と、読み落としやすい除外も挙げます。
計画の初期に、用途と階数と床面積だけが決まっている段階で「内装制限はかかるか」「階段は2本要るか」を洗い出す場面があります。答えは建築基準法の施行令の第5章と第5章の2にありますが、条文ごとに入口の条件が違い、頭の中で突き合わせると抜けが出ます。そこで、案件の条件を入力票にまとめ、条文の本文をClaudeに渡して、条番号つきの該当表を作らせる手順を示します。作るのは「どの条文に当たるか」の洗い出しまでです。仕上げ材の選定や避難安全の検証は設計者の判断になります。
内装制限と避難規定は入口の条件が違う
内装制限の根拠は建築基準法35条の2、避難施設の根拠は35条です。どちらも「政令で定める技術的基準に従って」と書かれ、中身は施行令に委ねられています。ここで注意したいのは、法の段階から対象が少しずつ違う点です。
| 条文 | 対象になる建築物 |
|---|---|
| 法35条(避難・消火) | 対象になる建築物別表第一(い)欄(一)〜(四)項の特殊建築物、階数3以上の建築物、政令で定める無窓の居室を有する建築物、延べ面積1,000㎡超の建築物 |
| 法35条の2(内装) | 対象になる建築物別表第一(い)欄の特殊建築物、階数3以上の建築物、政令で定める無窓の居室を有する建築物、延べ面積1,000㎡超の建築物、火気使用室 |
35条は(一)〜(四)項に限られ、35条の2は(い)欄全体に及びます。さらに内装には、調理室など火を使う室という別の入口があります。施行令で見ても、避難施設の節(第2節)の冒頭の117条は、別表第一(い)欄(一)〜(四)項、階数3以上、前条1項1号に当たる無窓居室を有する階、延べ面積1,000㎡超に限って適用すると定めています。
つまり「階数3以上なら両方かかる」という大まかな理解は合っていても、倉庫や自動車車庫のような(五)(六)項の建築物、火気使用室だけの建築物は、片方にしか入らないことがあります。入力票には、この入口の差を見分けられる項目を入れておきます。
別表第一(い)欄の(一)〜(四)項の用途は次のとおりです。
| 項 | 用途の例(別表の記載) |
|---|---|
| (一) | 用途の例(別表の記載)劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場 |
| (二) | 用途の例(別表の記載)病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎 |
| (三) | 用途の例(別表の記載)学校、体育館 |
| (四) | 用途の例(別表の記載)百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場 |
(五)項は倉庫、(六)項は自動車車庫と自動車修理工場です。事務所は別表に載っていません。
内装制限の対象を施行令128条の4で洗う
内装制限がかかる特殊建築物は、施行令128条の4第1項に列挙されています。表の形をした一号は、用途ごとに「この規模以上なら制限を受ける」という下限を、建築物の構造の区分別に定めています。
128条の4第1項一号の表で見る規模の下限
(一)項の用途
耐火建築物等で1時間準耐火基準に適合するものは400㎡以上です。準耐火建築物などで1時間準耐火基準に適合しないものと、その他の建築物は100㎡以上です。
(二)項の用途
1時間準耐火基準に適合するものは3階以上の部分が300㎡以上です。適合しないものは2階の部分が300㎡以上(病院・診療所は患者の収容施設がある場合)です。その他の建築物は用途部分の合計が200㎡以上です。
(四)項の用途
1時間準耐火基準に適合するものは3階以上の部分が1,000㎡以上です。適合しないものは2階の部分が500㎡以上です。その他の建築物は200㎡以上です。
表に載るのは(一)(二)(四)項だけで、(三)項の学校や(五)項の倉庫は、この表では対象になりません。一号に当たらない場合でも、次の各号が別の入口になります。
- 二号: 自動車車庫と自動車修理工場の用途の特殊建築物
- 三号: 地階または地下工作物内の居室で、(一)(二)(四)項の用途に使うものを持つ特殊建築物
- 2項: 階数3以上で延べ面積500㎡超の建築物(学校等を除く)
- 3項: 階数2で延べ面積1,000㎡超、または階数1で延べ面積3,000㎡超の建築物(学校等を除く)
- 4項: 火を使う設備を設けた調理室、浴室、ボイラー室などで、住宅の最上階以外や住宅以外の建築物にあるもの(特定主要構造部を耐火構造としたものを除く)
条文の見出しは「制限を受けない特殊建築物等」ですが、本文は「次に掲げるもの以外のもの」という言い方で、列挙した側が制限を受ける側になります。Claudeに読ませると、この否定の二重構造を取り違えて、列挙を「除外」と解釈することがあります。プロンプトで向きを明示しておくと防げます。
無窓の居室も別の入口です。128条の3の2は、床面積50㎡超で開放できる部分が床面積の50分の1未満の居室などを挙げています。ただし天井の高さが6mを超えるものは除かれます。
仕上げの要求は128条の5で決まる
該当したあとの仕上げは128条の5にあります。要点は部位ごとの材料の格です。
| 対象 | 居室の壁・天井 | 居室から地上へ通ずる廊下・階段 |
|---|---|---|
| 128条の4第1項一号の特殊建築物 | 居室の壁・天井難燃材料(3階以上に居室を有する場合の天井は準不燃材料) | 居室から地上へ通ずる廊下・階段準不燃材料 |
| 同項二号(車庫等) | 居室の壁・天井該当部分と通路とも準不燃材料 | 居室から地上へ通ずる廊下・階段準不燃材料 |
| 同項三号(地階の居室) | 居室の壁・天井準不燃材料 | 居室から地上へ通ずる廊下・階段準不燃材料 |
| 階数・延べ面積による建築物(4項) | 居室の壁・天井難燃材料 | 居室から地上へ通ずる廊下・階段準不燃材料 |
| 無窓の居室(5項) | 居室の壁・天井準不燃材料 | 居室から地上へ通ずる廊下・階段準不燃材料 |
| 火気使用室(6項) | 居室の壁・天井準不燃材料 | 居室から地上へ通ずる廊下・階段― |
壁は床面からの高さ1.2m以下の部分を除きます。回り縁や窓台のような部分も対象外です。
読み落としやすいのは、この表に必ず穴があることです。(二)項用途で主要構造部を準耐火構造とした建築物は、床面積100㎡(共同住宅の住戸は200㎡)以内ごとに準耐火構造の床・壁か防火設備で区画された部分の居室を除けます。階数による4項にも、区画と高さ31m以下を条件とする除外があります。さらに7項で、煙やガスの降下が避難上支障のない高さまで生じない部分として国土交通大臣が定めるものには、各項が適用されません。大臣告示の中身は施行令の本文には含まれないため、ここは設計者が告示で判断する領域になります。
直通階段と避難階段の要否を120〜122条で洗う
避難階段の側は、三つの条文が段階的に絞り込む構造です。
階段の洗い出しの順序
- 1
歩行距離の上限を決める(120条)
避難階以外の階では、居室から直通階段までの歩行距離を表の数値以下にします。
- 2
直通階段が2本要るかを見る(121条)
用途と階の居室床面積で判定します。2本設ける場合は、重複区間の長さにも上限があります。
- 3
避難階段・特別避難階段にするかを見る(122条)
階数で判定します。5階以上と地下2階以下で避難階段、15階以上と地下3階以下で特別避難階段です。
120条の歩行距離は用途と構造で3通りに分かれる
120条の表は、居室の種類と構造で歩行距離が決まります。単位はメートルです。
| 居室の種類 | 主要構造部が準耐火構造等 | その他 |
|---|---|---|
| 無窓の居室(116条の2第1項1号に該当)、または別表(四)項の用途の居室 | 主要構造部が準耐火構造等30 | その他30 |
| 別表(二)項の用途の居室 | 主要構造部が準耐火構造等50 | その他30 |
| 上記以外の居室 | 主要構造部が準耐火構造等50 | その他40 |
ここに内装との接点があります。2項は、主要構造部が準耐火構造等の建築物で、居室と主たる通路の壁・天井の仕上げを準不燃材料にした場合に、表の数値へ10を加えると定めています。ただし15階以上の階の居室は対象外です。3項は、15階以上の居室について、2項に当たらないときに10を減じます。
つまり内装の仕上げ材を準不燃に上げるかどうかが、階段の配置計画に効いてきます。内装制限の洗い出しと避難規定の洗い出しを別々に行うと、この連動を見落とします。入力票を1枚にして同じ前提で2つの検討をさせる理由がここにあります。
121条は用途ごとに階の床面積で2本以上を求める
121条1項は、2以上の直通階段を設けなければならない階を六つの号で定めています。主なものを挙げます。
- 劇場や集会場などで客席・集会室を持つ階
- 物品販売業の店舗(床面積の合計が1,500㎡を超えるもの)で売場を持つ階
- 病院・診療所の病室の床面積の合計、または児童福祉施設等の主たる居室の床面積の合計が50㎡を超える階
- ホテル・旅館・下宿の宿泊室、共同住宅の居室、寄宿舎の寝室の床面積の合計が100㎡を超える階
- 上のどれにも当たらない階で、6階以上で居室を持つ階、または5階以下で居室の床面積の合計が避難階の直上階は200㎡、その他の階は100㎡を超える階
2項により、主要構造部が準耐火構造等なら「50」は「100」、「100」は「200」、「200」は「400」に読み替えます。この読み替えは、Claudeに計算させるときに最も取りこぼしが出る箇所です。条件ごとに「読み替え前の数値」「読み替え後の数値」を別の列に出させると、検算がしやすくなります。
122条は階数で避難階段の種類を決める
5階以上の階、または地下2階以下の階に通ずる直通階段は、123条による避難階段か特別避難階段にします。15階以上または地下3階以下に通ずるものは、特別避難階段です。ただし、5階以上(地下2階以下)の床面積の合計が100㎡以下で主要構造部が準耐火構造等の建築物は、この規定から除かれます。また特定主要構造部が耐火構造の建築物で、床面積100㎡(共同住宅の住戸は200㎡)以内ごとに耐火構造の床・壁か特定防火設備で区画されている場合も、適用されません。
物品販売業の店舗は、これと別枠です。3階以上の階を店舗に使う建築物は、各階の売場と屋上広場に通ずる2以上の直通階段を設け、避難階段か特別避難階段にします。5階以上の売場に通ずるものは1本以上、15階以上なら全てを特別避難階段にします。
入力票と指示文をClaudeに渡す
条文の洗い出しは、入力票の項目が決まっていれば再現できます。まず案件側の入力票を作ります。
【案件条件】
- 用途(別表第一(い)欄の項番号。該当なしなら「該当なし」):
- 各階の用途と、各階の居室の床面積の合計:
- 階数(地上・地下):
- 延べ面積(同一敷地内に他の建築物があれば合計も):
- 主要構造部の構造(耐火 / 準耐火 / 不燃材料 / その他):
- 火を使う設備のある室の有無と所在階:
- 無窓の居室の有無(開口部の開放できる部分の面積と床面積):
- 居室の天井高さ:次に指示文です。条文の本文をそのまま貼り付けるのが肝心で、Claudeの記憶に頼ると条番号の誤りや数値のずれが出ます。
添付の建築基準法35条・35条の2・別表第一と、施行令117条・120〜122条・128条の3の2〜128条の5を唯一の根拠にしてください。
1. 入力票の案件が、35条と35条の2のそれぞれの対象に入るかを、入った理由(用途・階数・延べ面積・無窓居室・火気使用室)とともに表にしてください。
2. 128条の4の「次に掲げるもの以外のもの」は、列挙された側が制限を受ける側です。向きを取り違えないでください。
3. 120条、121条、122条を階ごとに当て、条番号・項・号・数値(読み替え前後)・結果を列にしてください。
4. 数値の読み替え(準耐火構造等で2倍、準不燃仕上げで+10)は、適用した根拠を一文で添えてください。
5. 条文に書かれていない判断(国土交通大臣の告示の内容、条例などの施行令の外の定め)は、結論を出さず「要確認」にしてください。出力の形は、例えば次のようなものです(以下は説明のための仮の条件で、実在の案件でも実際の出力でもありません)。事務所用途の地上4階建て、延べ面積1,200㎡、主要構造部が準耐火構造、4階の居室床面積の合計が280㎡という想定です。
| 検討項目 | 当たる条文 | 結果 |
|---|---|---|
| 内装制限の入口 | 当たる条文128条の4第2項 | 結果階数3以上かつ延べ500㎡超で対象(学校等ではない) |
| 居室の仕上げ | 当たる条文128条の5第4項 | 結果難燃材料(区画による除外は別途確認) |
| 通路の仕上げ | 当たる条文128条の5第4項 | 結果準不燃材料 |
| 歩行距離 | 当たる条文120条1項・2項 | 結果事務所は表の「上記以外」で50m。居室と通路を準不燃にすれば60m |
| 直通階段の本数 | 当たる条文121条1項6号ロ・2項 | 結果4階は避難階の直上階でないため、準耐火構造等の読み替え後の基準は200㎡。280㎡は超えるため2本以上 |
| 避難階段 | 当たる条文122条 | 結果4階建てで5階以上の階がなく、地階もないため対象外 |
この表は、各行の根拠が条文から追えます。逆に、条文番号が書かれない行や、数値だけが出ている行は、条文を貼り直して再確認させます。
条文本文の取得はe-Govで行う
本文は、e-Gov法令検索で施行令(昭和25年政令第338号)と建築基準法の最新の条文を取得して貼ります。API経由で条を取り出す方法はe-Gov法令APIとClaude Codeで条文を辿るで扱っています。条文が改正されると表の数値が変わるため、古い本文を貼り続けないようにします。
洗い出しで取りこぼしやすい箇所
- 別の建築物とみなす部分: 117条2項は、開口部のない耐火構造の床・壁で区画された部分などを、避難施設の節の適用では別の建築物とみなします。内装側は128条の6が同じ扱いを定めています。区画の取り方次第で、入口の条件(階数・延べ面積)が変わります。
- 1,000㎡の数え方: 法35条の延べ面積は、同一敷地内に2以上の建築物があるときは合計です。1棟ずつの図面しか渡さないと、この合算が抜けます。
- 学校等の除外: 128条の4第2項・3項は、学校等の用途の建築物を除きます。ただし学校は(三)項の用途でもあり、法35条の側には入ります。
- 用途の主従: 120条の表は「主たる用途に供する居室」で見ます。複合用途の建築物は、階ごと・居室ごとに入力票を分けて当てます。
- 耐火構造の言い方: 条文は「特定主要構造部を耐火構造とした」と「主要構造部が準耐火構造」を使い分けます。入力票で一括りに「耐火系」とすると、どちらの読み替えが働くか曖昧になります。
用途地域や容積率の側の調べ方は用途地域と容積率をAPIで引くに、確認申請の書類をそろえる側の点検は建築確認申請の添付図書を施行規則でClaudeに点検させる手順にまとめています。
条文に書かれていない判断は人が行う
この手順で出る表は、条文の入口と数値を当てただけのものです。次の判断は、Claudeの出力があっても設計者と審査側が行います。
- 128条の5第7項に当たる大臣告示の適用
- 仕上げ材の個別の認定や不燃性能の確認
- 避難上の安全の検証を行う場合の判断(施行令第5章の3の領域)
- 施行令の本文の外にある、地方公共団体の条例などの上乗せ
入力票の記入が誤っていれば、表は誤った前提のまま整って見えます。表を受け取ったら、数値を含む行だけでも条文と1行ずつ照らします。階数と延べ面積の入口を取り違えると、後ろの行がすべてずれるためです。
まとめ
内装制限と避難規定は、どちらも用途・階数・面積から入るため同じ入力票で洗えますが、入口の条件は条文ごとに違います。法35条は(一)〜(四)項、35条の2は(い)欄全体と火気使用室まで及び、施行令128条の4は「列挙された側が制限を受ける」という向きに注意が要ります。仕上げを準不燃に上げると120条の歩行距離が10m延びるので、内装と階段は同じ前提で検討します。Claudeには条文本文を貼り、条・項・号つきで数値の読み替えまで出させ、告示と条例の部分は「要確認」として人に戻します。