Claude for Outlookの使い方 — 受信トレイ整理から返信作成まで
ベータ提供中のClaude for Outlookについて、導入手順・Microsoft Graph権限・受信トレイ整理や返信下書きの使い方、注意点をまとめます。
Claude for Outlookは、受信トレイとカレンダーの中にClaudeを組み込むアドインです。ベータ提供で、対象はPro・Max・Team・Enterpriseの各プランです。Claude for PowerPoint・Wordと違い、一般提供の前段階にあります。
導入前に決めることは3つあります。自分のOutlookで動くか、組織にどう配るか、管理者同意をどの経路で通すかです。この記事は、その判断と、詰まったときの切り分けを軸に進めます。
Claude for Outlookでできること
受信トレイの仕分け
未読メールと添付を読み、自分が対応する項目・Claudeが処理できる項目・アーカイブしてよいノイズに分けます。
返信・転送の下書き
文体に合わせた返信・転送を、未送信のまま作ります。
スレッド要約と検索
長いスレッドの要約と、過去の会話の検索です。
日程調整と事前ブリーフ
空き時間の確認と招待の下書き、会議前のブリーフです。
自分のOutlookで動くか
動作対象は、Outlook on the web、Microsoft 365サブスクリプション付きのOutlook on Windows(新Outlookとクラシックの両方)、Outlook on Macです。
非対応は、Outlook 2016 / 2019の永続ライセンス版・ボリュームライセンス版、iOS版、Android版、オンプレミスExchangeのメールボックスです。Microsoft 365経由のExchange Onlineが前提です。
自分だけで試す
Microsoft AppSourceの「Claude for Outlook」リスティングで「Get it now」を選んでインストールします。メールを1通開き、メッセージリボンのClaudeボタンからClaudeアカウントでサインインします。
Claudeボタンが見当たらないときは、閲覧ウィンドウのオーバーフローメニューで「Customize actions」を開き、Apps欄のClaudeにチェックを入れます。以降はすべてのメッセージとホームリボンに出ます。
組織に配るときの手順
配布は、Microsoft 365 Admin Centerでの作業とMicrosoft Graphの同意の2本立てです。片方だけでは使えません。
Admin Centerからの配布
- 1
Office Storeへのアクセスを許可する
Settings → Org Settings → User owned apps and servicesで「Let users access the Office Store」をオンにします。
- 2
Integrated appsで探して配布する
Settings → Integrated appsで「Claude for Outlook」を検索し、組織全体または特定のユーザーに配布します。
- 3
Graph管理者同意を通す
グローバル管理者が同意リンクを開きます。次の節で経路を選べます。
- 4
反映を待つ
同意はすぐ有効になります。アドイン自体の展開が全員に届くまでは、Microsoft 365側で最大24時間かかります。
Office Storeへのアクセスを止めている組織では、管理者が配布したアドインがユーザーに表示されないことがあります。この場合はマニフェストXMLを直接アップロードします。Integrated appsで「Upload custom apps」→「Office Add-in」→「I have a manifest file on this device」と進み、配布範囲を選んで展開します。
「Need admin approval」が出たとき
同意を飛ばすと、ユーザーが初めてメールやカレンダーを読み込む場面で「Need admin approval」と表示されます。組織展開でいちばん起きやすい停止点です。
同意の経路は2つあります。自社のポリシーで選び分けます。
Graph同意の通し方
Anthropicのアプリに同意
グローバル管理者が管理者同意リンクを開き、Mail.ReadWrite・Calendars.Read・User.Read・offline_access の4権限を確認して「Accept」を選びます。1回限りのテナント全体の同意です。
自社のEntraアプリを使う
サードパーティのマルチテナントアプリに同意できない場合の経路です。承認とConditional Accessが、自組織が持つアプリの下で完結します。同意リンクは使いません。
自社のEntraアプリを使う場合の手順は次のとおりです。
自社のEntraアプリで通す
- 1
単一テナントのアプリを登録する
Entra管理センターの「App registrations」で新規登録し、「Accounts in this organizational directory only」を選びます。
- 2
認証を設定する
Authenticationに「Single-page application」プラットフォームを追加し、リダイレクトURIを
brk-multihub://pivot.claude.aiにします。Advanced settingsの「Allow public client flows」はYesにします。 - 3
Graph権限を付けて同意する
API permissionsに、委任された権限として上の4つを追加し、「Grant admin consent」を選びます。
- 4
クライアントIDをマニフェストURLに付ける
OverviewのクライアントIDを、マニフェストURLの末尾に
?graph_client_id=YOUR_CLIENT_IDとして付け、そのURLでマニフェストを取得します。
GCC High・DoD・21Vianet(中国)のテナントでは、Anthropicのマルチテナントアプリがグローバルクラウドにしか存在しないため、この自社アプリの経路が前提になります。加えて graph_cloud を付けます。値は、GCC Highが us-gov-high、DoDが us-gov-dod、21Vianetが china です。
GCC HighとDoDは認証ホストが同じです。DoDだけは graph_cloud=us-gov-dod の明示が常に必要です。GCC High・21Vianetは省略でもサインイン時に検出されますが、審査済みのマニフェストにエンドポイントを固定したい場合は明示が推奨されています。
配布が失敗する原因はもう1つあります。PIM(Privileged Identity Management)で管理者ロールを一時的に有効化していると、Integrated appsがそのロールを認識できません。Microsoftの既知の不具合(トラッキングID 11126536)で、ロールを常時有効に割り当てた管理者アカウントから配布すると回避できます。個人でのインストールは影響を受けません。
Claudeが実際にできる操作の範囲
要求する権限に Mail.Send は含まれません。Claudeが自分でメールや招待を送ることはなく、下書きはOutlookの作成画面・予定表フォームに未送信で置かれ、送信ボタンを押すのは常にユーザーです。
一方で権限は Mail.ReadWrite です。開いているメール・予定はOffice.jsで読み、スレッド取得・検索・空き時間確認・移動やフラグ付けのようなメールボックス全体に及ぶ操作はMicrosoft Graphが担います。仕分けの提案どおりに「カレンダーの返信とニュースレターをすべてアーカイブして」と頼めば、送信はしなくてもメールボックスの状態は動きます。
Graphの呼び出しはすべてブラウザ内で動き、アクセストークンはブラウザのMSALキャッシュに留まってAnthropicには送られません。
コネクタとは何が違うのか
同じMicrosoft 365でも、Claude Microsoft 365コネクタとこのアドインは別物です。
アドインとコネクタの違い
Claude for Outlook(アドイン)
Outlookのサイドバーで、開いているメールを起点に動きます。導入にはMicrosoft Graphの管理者同意が要ります。
Microsoft 365コネクタ
SharePoint・OneDrive・Outlook・Teamsを横断して検索します。書き込みツールを組織側で有効にすれば、メール送信やTeamsへの投稿も任せられる設計です。
送信まで含めて自動化したい場合はコネクタ側の書き込みツール、送信は自分の手に残したい場合はアドインという分かれ方です。下書きどまりの設計の意図はClaude Microsoft 365の必須レビュー、本当に必須なのはどこかが詳しく扱っています。
使い方と、そのまま使える依頼文
公式ページが挙げている依頼文をもとに、場面別に並べます。
- 仕分け: 「何が自分宛てか」「対応できるものは全部返信を作って」。対応が必要な項目には理由が1行付き、日程調整の依頼・受領確認・定型書類は下書き済みで出てきます
- 返信: 「これに返信して、延長は了承、手数料は押し返して」。返信か全員へ返信かはClaudeが選び、スレッドにいなかった相手を足すときは事前に警告します
- スレッド: 「何が決まって何が残っている?」。各主張に根拠メールの引用が付き、引用を選ぶとOutlookで該当メッセージが開きます
- 添付:
.docxと.xlsxは開かずに読めます。.pptxはPowerPointでスレッドを文脈として読み込む形です。PDFはインラインでは読めず、保存してサイドバーからアップロードします - 日程: 「来週、Danaと先方チームで30分を探して」。勤務時間と既存の予定を踏まえた候補が出ます
- 事前準備: 「2時の打ち合わせの準備をして」。各参加者との直近のスレッドと添付が1ページになります
結びの言葉はあえて空欄で下書きされます。Outlookに設定した署名と重ならないためです。
Excel・Word・PowerPointと一緒に使う
Claude for Outlookは、Excel・PowerPoint・Wordのアドインと文脈を共有します。添付のレターオブインテントをメールスレッドの文脈つきでWordで開く、メール本文の数字をExcelのモデルに反映する、といった作業がコピー&ペーストなしで進みます。
有効にするのは各アドインの設定の「Let Claude work across files」です。Pro・Maxは既定オン、Team・Enterpriseは既定オフで、デバイスごとの設定になります。Team・Enterpriseの組織オーナーは、Organization settings → Office agentsの「Let Claude work across apps」で組織として切ることもできます。
制約もあります。Claudeが読み書きできるのは、いま開いているファイルと、Outlookで開いているメールまたは予定だけです。ファイルを自分で作成したり、開いたり、切り替えたりはできません。
選べるモデルとサードパーティ基盤
Claudeアカウントでサインインすると、Opus 4.7・Opus 4.6・Sonnet 4.6を選べます。Vertex AI・Azure AI Foundry・LLMゲートウェイ経由では、公式にサポートされるのはOpus 4.7だけです。
Amazon Bedrock・Google Cloud Vertex AI・Azure AI Foundry・社内LLMゲートウェイにAPIトラフィックを流している組織は、Claudeアカウントなしで使えます。ただしコネクタやスキルは、サードパーティ基盤経由では使えないことがあります。他アプリ連携も、この接続方式ではサポートされません。
メールの中身はどこへ行くか
Claudeアカウントでサインインした場合、読み取ったメールの内容は api.anthropic.com へのプロンプトの一部として送られ、通常のAPIデータ保持が適用されます。アドインがメールボックスのコピーや索引をサーバー側に持つことはありません。
サードパーティ基盤経由では、プロンプトは設定した推論エンドポイントにだけ送られます。Bedrock・Vertex AI、またはそれらへ流すゲートウェイなら、メールの内容がAnthropicに届くことはありません。Azure AI Foundryでは、AnthropicがMicrosoftの独立した処理者としてClaudeモデルを運用し、プロンプトを処理します。
チャット履歴はブラウザのIndexedDBに置かれ、Anthropicのサーバーには保存されず、デバイス間でも同期されません。アドインの画面・ユーザーID・組織IDの組み合わせごとに分かれるため、ExcelとOutlookの履歴は別です。
入出力は、受信または生成から30日以内にAnthropicのバックエンドから削除されます。
監査ログの扱いは3層に分かれる
- Enterpriseは、監査テレメトリを自前のOpenTelemetryコレクターへ送れます。Pro・Max・Teamでは、観測や監査エクスポートは使えません
- 組織のカスタムなデータ保持設定は、このアドインには引き継がれません。Enterpriseの監査ログやデータエクスポートにも含まれません
- Compliance APIを有効にしたEnterpriseでは、Outlookのセッションが対象に入ります。公開ベータで、追加設定なしに同じCompliance Access Keysが使えます
「監査ログに出ない」と「Compliance APIにも出ない」は別の話です。公式のWork across M365 appsのページにも同じ記述があり、後者は対象に入ります。
ベータ期間に向かない使い方
公式ドキュメントは、次の使い方をベータ期間中は推奨していません。
- 無人での送信(Claudeは自分では送らず、下書きは必ず未送信で置かれます)
- 下書きを読まないままのクライアント・相手方対応
- どのメールが重要か、関係をどう扱うかの判断の代替
- 適切な組織統制のない、特権情報や規制対象データを含むメールボックスでの利用
安全に使うための運用として、送信・招待の宛先リストを送る前に確認すること、重要なやり取りではスレッド要約を引用元のメールと突き合わせること、アドインにMicrosoft 365の権限とConditional Accessを適用すること、組織外に出るものは人が見ることが挙げられています。
つまずきの切り分け
| 症状 | 見る場所 |
|---|---|
| 初回の読み込みで「Need admin approval」 | 見る場所Graph同意が未実施です。配布とは別の手順です |
| 管理者が配布したのにユーザーに出ない | 見る場所「Let users access the Office Store」がオフではないか。オフならマニフェスト経由で配布します |
| Integrated appsで配布が失敗する | 見る場所PIMで一時有効化した管理者ロールではないか。常時有効なロールで配布し直します |
| Claudeボタンが見えない | 見る場所閲覧ウィンドウのオーバーフローメニューの「Customize actions」でClaudeにチェックを入れます |
| PDFの内容が読まれない | 見る場所仕様です。保存してサイドバーからアップロードします |
| 他アプリの内容が見えない | 見る場所各アドインで「Let Claude work across files」がオンか、対象ファイルが開いているかを確認します |
まとめ
組織のテナントでは、個人インストールでもGraph同意が済むまでメールを読み込めません。まず同意の経路を決めることが、導入の最初の判断になります。
Wordで同じ流れを試すならClaude for Wordの使い方、Coworkからの連携はClaude Cowork × Microsoft 365連携が入口になります。