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総合的な探究の時間の評価規準をClaudeで組む — 問い立てからルーブリックまで

総合的な探究の時間の評価規準をClaudeで組む — 問い立てからルーブリックまで

高校の総合的な探究の時間は、評価の観点も内容も学校が定めます。生徒の仮テーマを問いに絞り、評価規準とルーブリックの下書きまで進める手順です。

総合的な探究の時間の評価規準は、教科のように学習指導要領から写して作れません。学習指導要領に「内容」が書かれておらず、評価の観点も各学校が定める枠組みだからです。Claudeに任せられるのは、学校が決めた目標と探究課題を三つの観点の文末に直す作業と、生徒の仮テーマを問いに絞る壁打ちです。ここでは、解説と参考資料をProjectsに置き、問い立て、内容のまとまりごとの評価規準、単元の評価規準、ルーブリックの順に進める手順を書きます。

流れ

仮テーマから評価場面まで

  1. 1

    素材をそろえる

    解説、参考資料、自校の全体計画をProjectsに置きます。

  2. 2

    仮テーマを問いに絞る

    生徒に返す質問をClaudeに出させます。

  3. 3

    内容のまとまりごとの規準にする

    探究課題ごとの資質・能力の文末を変換します。

  4. 4

    単元の規準に具体化する

    実際の活動と場面を入れて書き直します。

  5. 5

    ルーブリックと評価場面を決める

    「おおむね満足」の姿から段階を書きます。

総合的な探究の時間には「写せる内容」がない

教科の手順がそのまま使えない理由は、学習指導要領の解説(総合的な探究の時間編)に書かれています。他の教科等のように内容を明示せず、各学校が学習指導要領の目標を踏まえて内容を定める、という作りです。

各学校が定める内容は2つで構成されます。

  • 目標を実現するにふさわしい探究課題(何について学ぶか)
  • 探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力(どのようなことができるようになるか)

評価の観点も同じです。解説は、各学校が観点を設定するという枠組みを維持する、と書いています。そのうえで、改善等通知の「評価の観点及びその趣旨」(別紙5)を参考に定めます。趣旨は次の表のとおりで、第1の目標の(1)〜(3)と対応しています。

観点趣旨(要約)対応する目標
知識・技能趣旨(要約)探究の過程で課題の発見と解決に必要な知識・技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探究の意義や価値を理解している対応する目標(1)
思考・判断・表現趣旨(要約)実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現している対応する目標(2)
主体的に学習に取り組む態度趣旨(要約)探究に主体的・協働的に取り組もうとし、互いのよさを生かしながら、新たな価値を創造し、よりよい社会を実現しようとしている対応する目標(3)

この構造から、Claudeに頼む順序が決まります。最初に学校の目標と探究課題がなければ、評価規準は作れません。逆に言うと、それがそろっていれば、残りは文末の変換と具体化という、ルールの決まった作業です。

Claudeに渡す素材は3つ

素材は次の3つです。

  1. 学習指導要領の解説(総合的な探究の時間編)(文部科学省の解説一覧ページにPDFがあります)。第10章が評価の章です
  2. NIER(教育課程の研究を担う国の研究所)の「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」高等学校 総合的な探究の時間。評価規準の作り方の手順と事例が載っています
  3. 自校の全体計画。各学校において定める目標、探究課題、探究課題ごとの具体的な資質・能力

3つ目だけは公開資料になく、Claudeが知りようのない情報です。ここが空だと、解説の例文や他校の事例をなぞった規準が返ってきます。

Projectsは、この3つを置く場所に向いています。サポート記事によると、Projectsには知識ベースがあり、そこにアップロードした内容はプロジェクト内のすべてのチャットで使われます。プロジェクトの指示も設定できます。一方で、チャットをまたいだ文脈は、知識ベースに入れない限り共有されません。検算用に会話を分けるときも、素材は知識ベースから参照されます。

指示には、たとえば次のように書いておきます。これは筆者の例で、公式の文面ではありません。

あなたは高校の総合的な探究の時間の評価設計を手伝います。
- 根拠にするのは、知識ベースの解説・参考資料・自校の全体計画だけ
- 資料にない語句は補わず、「要確認」と書く
- 規準は生徒の姿を表す文末(~している)で書く
- 成果物の出来映えではなく、探究の過程で発揮された資質・能力を書く
- 評価の最終判断は教師が行う。段階づけは「案」と明記する

手順1: 生徒の仮テーマを問いに絞る

解説は、探究の出発点を「実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだす」ことに置いています。問いや課題は、生徒がもっている知識や経験だけからは生まれないこともある、というのが解説の見方です。そこで実社会や実生活と実際に関わることを求めています。

その中で問題意識になる場面として、解説は3つを挙げています。

  • 過去と比べて、現在に問題があること
  • 他の場所と比べて、この場所に問題があること
  • 自己の常識に照らして、違和感を感じる問題があること

この3つは、Claudeへの依頼の枠にそのまま使えます。仮テーマを渡して、3つの視点から「生徒に聞くとよい質問」を出させます。問いそのものをClaudeに決めさせないのがコツです。自己との関わりは生徒本人にしか答えられず、そこが抜けた問いは、解説の言う問いにならないからです。

仮テーマ: 「地元の商店街の空き店舗」(生徒A)
 
次の3つの視点それぞれで、生徒に投げる質問を3つずつ出してください。
1. 過去と比べて現在に問題があると感じる点を引き出す質問
2. 他の場所と比べてこの場所に問題があると感じる点を引き出す質問
3. 自分の常識に照らして違和感がある点を引き出す質問
- 質問は、生徒が自分の体験から答えられるものにする
- 問いの案は、生徒の回答が返ってきてから作る

生徒の回答を貼ったら、次に問いの候補を作らせます。解説は、探究が進む中で最初の問いや課題そのものが問い直され、質や精度が高まっていくことを想定しています。1回で完成させる前提にせず、「次の探究の段階で問い直す余地がある箇所」を添えさせると、授業の流れに合います。

前と後

仮テーマから問いへ(例示)

BEFORE

仮テーマ

地元の商店街の空き店舗

AFTER

生徒の回答を踏まえた問いの案

子どもの頃より空き店舗が増えたと感じる自分は、通学路の商店街で何が変わったのかを、誰に何を聞いて確かめられるか。

上は例示で、生徒の回答を前提にした書き方の見本です。評価の対象は問いの出来ばえではなく、問いを立てる力が発揮されたかどうかです。この点は手順3以降で扱います。

手順2: 探究課題ごとに「内容のまとまりごとの評価規準」を作る

参考資料では、総合的な探究の時間の「内容のまとまり」を、全体計画の探究課題1つと、その課題に応じて定めた具体的な資質・能力のセットと考えます。作り方は次の順序です。

  1. 学校の目標と「評価の観点及びその趣旨」を確認する
  2. 探究課題ごとの資質・能力が、三つの柱のどれに整理されているかを確認する
  3. 観点ごとのポイントに沿って文末を変える

観点ごとのポイントは文末の変換だけです。

観点元にする記載文末の変換例
知識・技能元にする記載「知識及び技能」文末の変換例「理解する」→「理解している」
思考・判断・表現元にする記載「思考力,判断力,表現力等」文末の変換例「できる」→「している」
主体的に学習に取り組む態度元にする記載「学びに向かう力,人間性等」文末の変換例「しようとする」→「しようとしている」

参考資料にはA高等学校第2学年の例があり、「自然環境とそこに起きているグローバルな環境問題」という探究課題に対して、たとえば「~を立案できる」の文末が「~を立案している」に変わっています。教科と違い、元の文を学習指導要領から探す必要はなく、自校の全体計画の記述が元になります。

添付の全体計画から、探究課題「(課題名)」の
「探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力」を
観点別に並べ、内容のまとまりごとの評価規準にしてください。
- 知識・技能: 「理解する」を「理解している」など、文末のみ変える
- 思考・判断・表現: 「できる」を「している」にする
- 主体的に学習に取り組む態度: 「しようとする」を「しようとしている」にする
- 語句は元の記述から変えない。変える必要があれば理由を添える
- 出力は、観点を列にした表にする

出力を受け取ったら、最初に項目数を数えます。元の記述より減っていれば脱落、増えていれば創作です。文末以外が変わっている箇所は、変換のルールに外れています。

教科の単元の評価規準については、学習指導要領から評価規準と単元計画をClaudeで組み立てる手順に別の流れを書いています。教科では元の文が学習指導要領にあり、探究では学校の全体計画にある、という違いに注意してください。

手順3: 単元の評価規準を探究の過程に沿って具体化する

単元の評価規準は、内容のまとまりごとの評価規準を参考に、単元で行う学習活動や重視する資質・能力に合わせて具体的に書きます。参考資料は観点ごとに、規準を設定する視点を示しています。

観点設定の視点
知識・技能設定の視点概念的な知識の獲得、自在に活用できる技能の獲得、探究の意義や価値の理解
思考・判断・表現設定の視点課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現
主体的に学習に取り組む態度設定の視点自己理解・他者理解、主体性・協働性、将来展望・社会参画

思考・判断・表現の4つの視点は、問い立てから始まる探究の過程と重なります。手順1で扱った問いの設定は「課題の設定」にあたり、参考資料は「複雑な問題状況の中から適切に課題を設定する」「仮説を立て、検証方法を考え、計画を立案する」などの視点を挙げています。

具体化の例も出ています。たとえば「○○市の自然環境の歴史的変遷に関する調査活動を通して、現在の環境における問題を明らかにし、未来のよりよい環境に向けて、仮説をもとに見通しをもって計画している」のように、実際の活動と発揮される資質・能力を一緒に書きます。

ここで人が書く部分は、単元の活動です。何を調べ、誰と関わり、どの場面で何を作るのかは、自校の事情そのものだからです。

単元の活動(私が作成):
(1) 商店街の店主3名へのインタビューと、空き店舗数の現地調査
(2) 調査結果を表にまとめ、仮説を立て直す
(3) 商店街振興会への中間報告
 
添付の内容のまとまりごとの評価規準を、この単元の評価規準案にしてください。
- 観点ごとに、参考資料が示す設定の視点を使う
  (知識・技能: 概念/技能/意義、思考・判断・表現: 課題の設定/情報の収集/
   整理・分析/まとめ・表現、態度: 自己理解・他者理解/主体性・協働性/
   将来展望・社会参画)
- 規準ごとに、上の活動のどの場面を指すかを括弧で添える
- 元の規準から離れた記述には「新規」と付ける

「新規」と付いた規準は、そのまま採らずに全体計画の記述と照らします。学校が育成を目指すと定めていない力を測る規準が混ざると、評価が目標から外れるからです。

手順4: ルーブリックと評価場面を決める

ルーブリックを作る前に、解説と参考資料の本文を確かめておきます。2つの資料には、ルーブリックという語が出てきません。学校が自分で作る道具として扱うことになります。そのうえで、守る枠は資料から読み取れます。

くらべる

総合的な探究の時間の評価で、資料が示す方向

避ける

外すこと

ペーパーテストなどで数値的に評価すること。成果物の出来映えをそのまま評価とすること。グループの成果に着目すること。

取り入れる

置くこと

探究の過程でどう学んだかを成果物から見取ること。一人一人の学びや成長を捉える個人内評価。事前・途中・終末の各過程への評価の位置づけ。

評価方法の例として、解説は発表や討論の記録、観察記録、レポートやポートフォリオ、記述テスト、自己評価や相互評価、第三者評価などを挙げています。いずれも、資質・能力が育っているかを見るためのものです。

段階の言葉は、参考資料の事例にある3つが使えます。「十分満足できる」「おおむね満足できる」「努力を要する」状況です。参考資料は、「十分満足できる」状況を、生徒が実現している学習の状況が質的な高まりや深まりをもっていると判断されるとき、と説明しています。

つまり、段階の差を量(調べた件数が多い、長く書けている)で書かないことがポイントです。Claudeの下書きは放っておくと量の差に寄りやすいので、指示に入れておきます。

手順3の単元の評価規準のうち、思考・判断・表現「情報の収集」の規準1つについて、
ルーブリック案を作ってください。
- 段階は「十分満足できる」「おおむね満足できる」「努力を要する」の3つ
- 「おおむね満足できる」は、規準の文そのものが実現している姿として書く
- 「十分満足できる」は、量が多いことではなく、質的な高まりや深まりが
  見える姿として書く
- 「努力を要する」には、次に取り組むとよい手立てを1つ添える
- 見取る資料(研究日報・インタビュー記録・ワークシートなど)を明記する

評価の場面も絞ります。解説は、観点を1時間ごとに全部評価しようとせず、年間や単元などのまとまりの中で、実現状況を把握できる段階で行うよう求めています。参考資料は、全員を見取りやすい場面、生徒の姿が表れやすい場面を選ぶ、としています。Claudeに指導計画を渡して「この単元で評価を記録する場面を、観点ごとに1〜2か所に絞った案」を作らせると、たたき台になります。

別の会話で検算する

出力は、作成に使った会話と別のチャットで点検します。作成の経過が残っていない状態で、規準だけを読み直せるからです。点検の観点は次のとおりです。

点検項目確かめること
文末確かめること規準が「~している」の形で、生徒の姿になっているか
観点との対応確かめること三つの観点の規準が、それぞれ元の資質・能力と対応しているか
出来映え評価確かめること成果物の見栄えや量を評価する書き方になっていないか
個人かグループか確かめること一人一人の姿を見取る書き方か
数値化確かめること点数やパーセントで差をつける書き方が混ざっていないか
場面確かめること規準ごとに、見取る場面と資料が決まっているか

点検用の会話では、規準と資料の該当箇所を貼り、「上の6項目で問題がある箇所を、箇所ごとに理由つきで出してください。直し方は書かないでください」と頼みます。直すのは人です。

つまずきやすい箇所

落とし穴

参考資料の事例の規準をそのまま写す

参考資料の事例は、特定の地域や学校を想定した例です。探究課題が違えば、規準の中身は変わります。写すのは文末と構造までに留め、中身は自校の全体計画から作ります。

落とし穴

問いのよしあしで評価してしまう

壁打ちで磨いた問いが良くても、それは評価の対象ではありません。評価するのは、課題を設定し、情報を集め、整理・分析し、まとめ・表現する過程で、生徒がどんな力を発揮したかです。

評価の解釈は教師間でそろえる必要があります。解説は、あらかじめ指導する教師間で評価の観点や評価規準を確認しておくことを挙げ、評価規準や評価資料を検討して妥当性を高めること(モデレーション)にも触れています。Claudeの下書きは、その検討会の材料として使えます。最終的な評価と、単位の認定は、学校が行います。

ルーブリックで採点をそろえる流れはClaudeで英作文を添削するに、教員を目指す人の面接練習は教員採用試験の面接・場面指導の練習手順にあります。

まとめ

総合的な探究の時間では、評価規準の元になる文章が、学習指導要領ではなく学校の全体計画にあります。Claudeの出番は、全体計画を観点別の文末に直す作業と、生徒に返す質問、ルーブリック案の下書きです。段階を量で書かせない指示と、別の会話での検算を入れておけば、教師が判断する材料として使えます。

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