竣工図書・引渡し書類の漏れをClaudeで点検する手順 — 建設業法40条の3と契約図書
引渡し書類は契約図書で決まり、建設業法40条の3は自社の保存図書を定めます。2つを分けてClaudeに突き合わせさせ、納品済みとの差分と保存期限を表にする手順です。
引渡し書類の一覧を決めるのは法律ではなく契約図書
竣工時に発注者へ何を納めるかは、契約書・特記仕様書・共通仕様書といった契約図書が決めます。建設業法40条の3と施行規則26条は、その一覧を定める条文ではありません。定めているのは、建設業者が自社の営業所に備える帳簿と、保存しておく図書です。
この2つを同じリストに混ぜると点検が崩れます。発注者に納めたのに自社に控えがない書類も、控えはあるのに納品を求められていた書類も、混ぜた表からは見えなくなるからです。
この記事は、リストを次の3つに分けてClaudeに突き合わせさせる手順です。
- 発注者の要求一覧(契約図書から拾う)
- 法定の保存図書(40条の3と施行規則26条から拾う)
- 納品済みの台帳(自社で付けている引渡し記録)
出力は点検の下書きです。契約解釈や、発注者の検査に通るかどうかの判断は担当者に残ります。工事写真の整理は施工写真の台帳づくり、施工体制台帳や安全書類は施工体制台帳・安全書類の作成範囲で扱っています。ここでは竣工時に集まる書類の漏れだけを見ます。
40条の3が求めているのは自社での備付けと保存
40条の3は、建設業者に対し、営業所ごとに帳簿を備え、帳簿と営業に関する図書を保存することを求めています。何を記載し、何を保存するかは国土交通省令に委ねられ、施行規則26条が具体的に定めます。
| 区分 | 中身(施行規則) | 保存期間(28条) |
|---|---|---|
| 帳簿 | 中身(施行規則)営業所の代表者、請負契約の名称・相手方・締結日、完成検査の完了日と引渡し日など(26条1項) | 保存期間(28条)目的物の引渡しから5年(発注者と結んだ住宅新築工事は10年) |
| 帳簿の添付書類 | 中身(施行規則)19条の契約書面またはその写し、施工体制台帳の一部など(26条2項) | 保存期間(28条)帳簿と同じ |
| 図書 | 中身(施行規則)完成図、打合せ記録、施工体系図、見積書など(26条5項) | 保存期間(28条)目的物の引渡しから10年 |
帳簿の記載事項には、注文者と結んだ工事について「完成を確認するための検査が完了した年月日」と「目的物の引渡しをした年月日」が入っています(26条1項2号ハ)。竣工時に引渡し日が台帳に記録されていなければ、5年や10年を数える起点が定まりません。
保存の義務に違反して帳簿を備えない、記載しない、虚偽の記載をする、帳簿や図書を保存しないといった場合は、55条5号により10万円以下の過料の対象です。
保存図書は工事での立場によって対象が変わる
施行規則26条5項は、図書の対象を建設業者の立場ごとに分けています。5つの図書のどれが自社に当てはまるかを、先に表で固めておきます。
| 図書 | 発注者から直接請け負い、施工体制台帳を作る | 発注者から直接請け負い、台帳は作らない | それ以外(下請など) |
|---|---|---|---|
| 完成図 | 発注者から直接請け負い、施工体制台帳を作る対象 | 発注者から直接請け負い、台帳は作らない対象 | それ以外(下請など)対象外 |
| 発注者との打合せ記録 | 発注者から直接請け負い、施工体制台帳を作る対象 | 発注者から直接請け負い、台帳は作らない対象 | それ以外(下請など)対象外 |
| 施工体系図 | 発注者から直接請け負い、施工体制台帳を作る対象 | 発注者から直接請け負い、台帳は作らない対象外 | それ以外(下請など)対象外 |
| 材料費等を記載した見積書 | 発注者から直接請け負い、施工体制台帳を作る対象 | 発注者から直接請け負い、台帳は作らない対象 | それ以外(下請など)対象 |
| 見積書の内容に関する注文者との打合せ記録 | 発注者から直接請け負い、施工体制台帳を作る対象 | 発注者から直接請け負い、台帳は作らない対象 | それ以外(下請など)対象 |
条文上の区分名は、1列目が「作成建設業者」、2列目が「発注者から直接建設工事を請け負つた建設業者(作成建設業者を除く)」です。作成建設業者とは、24条の8第1項により施工体制台帳を作成する建設業者を指します。台帳を作る工事の範囲は施工体制台帳の記事に条件を整理しています。
下請として入った工事では、完成図が保存図書の対象に入りません。それでも元請から完成図の納品を求められていれば、それは契約上の要求です。この区別が、先ほどの3つのリストを分ける理由になります。
「必要に応じて」「作成したとき」の図書は、無いこと自体が漏れとは限らない
26条5項の図書には条件が付いています。
- 完成図は「施工上の必要に応じて作成し、又は発注者から受領した」もの
- 打合せ記録は「施工上の必要に応じて作成した」もので、契約の当事者が相互に交付したものに限る
- 20条1項の材料費等を記載した見積書は、作成したときに保存する
- 見積書の打合せ記録は、契約締結前に必要に応じて作成したもの
したがって、見積の打合せを文書にしていなければ、その記録が無いこと自体は保存義務違反を示しません。Claudeには「無い」とだけ報告させず、「条件に当たる事実があったか」を担当者に確認する行を出させると、点検表が実態に近づきます。
3つのリストをClaudeで突き合わせる
ここから実作業です。ファイルのアップロードには上限があります。1チャットあたり1ファイル500MB、20ファイルまで、PDFは1000ページまでです(Claudeのファイルアップロードの説明より)。PDF以外の文書は文字のみが読み取られ、埋め込み画像は解釈されません。図面や写真のスキャンは、読めているかを先に確かめます。
突き合わせの流れ
- 1
契約図書から要求一覧を作らせる
契約書、特記仕様書、共通仕様書を渡し、納品を求められている書類を条項ごとに拾わせます。
- 2
法定の保存図書の行を足す
26条5項の5図書を、自社の立場に合わせて表に加えます。
- 3
納品台帳と突き合わせる
自社の引渡し記録(CSVや表計算)を渡し、要求一覧との差分を出させます。
- 4
引渡し日から保存期限を付ける
帳簿と添付書類、図書で期間が違うので、列を分けて計算させます。
要求一覧を作らせるプロンプト
契約図書は、書いてある内容だけを根拠にさせます。特記仕様書にない書類を、一般的な慣行から補わせないことがポイントです。
添付の契約書・特記仕様書・共通仕様書から、引渡し時に発注者へ
提出する書類を、すべて表にしてください。
列: 書類名 / 根拠(ファイル名と条項番号) / 部数・形式 /
提出期限 / 原文の該当箇所(そのまま引用)
条件:
- 仕様書に書かれていない書類は、慣行から補わない
- 「別途監督員の指示による」のように範囲が曖昧な書類は、
別表にして「担当者に確認」と書く
- 条項番号が読み取れないときは、ページ番号を書く条項番号とページ番号を出させるのは、人が原文に戻って確かめられるようにするためです。引用欄が空の行は、Claudeが推測した可能性があるので、そこから見直します。
納品台帳との差分を出させるプロンプト
自社の台帳は、書類名の表記が仕様書と揃っていないのが普通です。「竣工図」と「完成図」のように、同じものを別の名前で呼んでいる行を、Claudeに揃えさせます。
先ほどの要求一覧と、添付の納品台帳(CSV)を突き合わせて、
次の3つに分けて表にしてください。
1. 納品済みと判断できる(台帳のどの行か併記)
2. 台帳に見当たらない(要求一覧の根拠を併記)
3. 名称が違うだけで同じ書類か判断できない(候補の行を併記)
「納品済み」は、台帳に提出日が入っている行だけにしてください。
提出日が空の行は2に入れます。3つ目の区分を設けておくと、似た名称を勝手に同一視されるのを防げます。
出力例と、保存期限の持たせ方
次は、仮の工事で出力を想定した例です。書類名や日付は説明用に作ったもので、実在の案件ではありません。
| 書類名 | 要求の根拠 | 台帳の状況 | 保存区分 | 確認事項 |
|---|---|---|---|---|
| 完成図 | 要求の根拠特記仕様書 第3章 | 台帳の状況提出日あり | 保存区分図書(10年) | 確認事項なし |
| 試験成績書 | 要求の根拠特記仕様書 第5章 | 台帳の状況提出日なし | 保存区分要求のみ | 確認事項提出予定日 |
| 打合せ記録 | 要求の根拠(要求なし) | 台帳の状況台帳に記載なし | 保存区分図書(10年) | 確認事項相互に交付した記録が存在するか |
| 施工体系図 | 要求の根拠(要求なし) | 台帳の状況台帳に記載なし | 保存区分図書(10年) | 確認事項施工体制台帳を作成する工事か |
「保存区分」の列を置くと、要求一覧にしかない書類(試験成績書)と、法定の保存図書にしかない書類(打合せ記録)が、1枚の表で見分けられます。
保存期限は、引渡し日を起点にします。帳簿と添付書類は5年(住宅新築工事で発注者と結んだものは10年)、図書は10年です。Claudeに日付の足し算を任せる場合は、引渡し日と期間を列に分け、計算結果は担当者が数件を手で検算します。起点を引渡し日に取る点と、債権債務が消滅した場合の扱い(28条1項のかっこ書き)に当たる工事は、台帳に注記しておきます。
検査完了日と引渡し日は別の記録として持つ
帳簿には、完成確認の検査が完了した日と、目的物を引き渡した日が別々の事項として並んでいます(26条1項2号ハ)。台帳に「竣工日」1列しかないと、どちらの日付か分からなくなり、保存期間の起点である引渡し日が曖昧になります。
契約の側にも対応する定めがあります。19条1項11号は、注文者が完成を確認する検査の時期と方法、そして引渡しの時期を、契約書面に書く事項として挙げています。契約書の11号の記載と、台帳に入れた2つの日付が食い違っていないかも、Claudeに照合させる価値のある点です。
契約書の検査の時期・引渡しの時期の記載と、台帳の
「検査完了日」「引渡し日」を並べて、次の点を表にしてください。
- 契約上の期日より後ろにずれている工事
- 検査完了日が引渡し日より後になっている行
- どちらかが空欄の行下請の立場なら、元請の検査期限も台帳に入る
下請として工事を完成させた側には、24条の4が関わります。元請負人は、下請から完成の通知を受けた日から20日以内で、できる限り短い期間内に、完成を確認する検査を完了しなければなりません。検査で完成を確認した後、下請が申し出たときは、直ちに目的物の引渡しを受ける必要があります。ただし、工事完成の時期から20日を過ぎた日以前の一定の日に引渡しを受ける旨の特約があるときは例外です。
完成通知の日付を台帳に持たせておくと、検査が期限内に行われたか、引渡しが申出から遅れていないかを、あとから表で確かめられます。
保存を電子データで行うときの条件
26条は、帳簿の記載事項や添付書類、図書を、ファイルや電磁的記録媒体に記録して代えることを認めています(6項から8項)。条件は、営業所で必要に応じて電子計算機などを使い、明確に紙面または画面に表示できることです。契約書の写しはスキャナで読み取って記録する方法も同じ扱いです。
Claudeに整理させた点検表そのものは法定の保存図書ではありませんが、元の書類が電子ファイルなら、点検表の「ファイルの場所」列に保存先のパスを持たせておくと、監督官庁の立入検査などで求められたときに、表示できる状態かを確かめやすくなります。
Claudeに任せない範囲
- 発注者の検査基準を満たすかどうかの判断。仕様書の解釈は、監督員や発注者への確認が必要です
- 契約図書に書かれていない要求の推定。公共工事の発注機関ごとの提出要領は、渡していない資料からは分かりません
- 住宅の新築工事に当たるかどうか、施工体制台帳を作る工事かどうかの判断。事実関係を見て担当者が決めます
- 契約書や図面に含まれる発注者の情報の取り扱い。外部サービスに載せてよいかは、秘密保持条項と社内規程に従います
19条の契約書面そのものの点検は、工事請負契約書を建設業法19条で点検する手順にまとめています。契約書面は26条2項で帳簿に添付する書類でもあるため、竣工時の点検表とあわせて使えます。
まとめ
引渡し書類の一覧は契約図書から、保存図書は施行規則26条から、それぞれ別の表として作ります。1枚に混ぜず、突き合わせは3区分(納品済み・見当たらない・同一か判断できない)で出させると、漏れと名称の揺れが分かれて見えます。
迷いやすいのは、26条5項の図書が立場と作成の有無で変わる点です。要求一覧の「無い」と、保存図書の「無い」は意味が違うため、後者には必ず「条件に当たる事実があったか」の確認欄を付けておきます。