Claudeで土壌分析の診断書PDFを読み、施肥設計の案を作る手順
土壌分析の診断書PDFを都道府県の施肥基準・土壌診断基準値と突き合わせ、不足成分と施用量の案を作る手順です。読み取り、突合、案の作成を分け、根拠の読み違いを人が検証する流れを示します。
土壌分析の診断書PDFと、都道府県の施肥基準をClaudeに渡すと、不足成分と施用量の「案」までは短時間で出せます。使い方のコツは、一度に答えを求めないことです。診断書の数値を読み取る、基準と突き合わせる、施用量の案にする。この3段を別々の依頼にして、各段の出力を人が見てから次へ進みます。この記事では、その分け方と頼み方の例、根拠の読み違いを見つける検証の手順をまとめます。
案はあくまで下書きです。最終の施用量は、地域の普及指導員やJAの営農指導員など、圃場を知る人と決めます。
診断書を渡す前に、手元で決めておく3点
Claudeは診断書に印字された数値を読めますが、その圃場が何を作るのか、前作は何だったのか、堆肥をどれだけ入れたのかは知りません。次の3点を先に文字にしておくと、案のぶれが減ります。
- 作物と作型(例: 露地の春まき、施設の促成など)
- 圃場の土壌の種類と、直近の堆肥・資材の投入履歴
- 基準の出どころ(どの都道府県の、どの年版の施肥基準か)
3点目は特に大切です。施肥基準は都道府県ごとに作られています。農林水産省の「全国の施肥基準・土壌診断基準・減肥基準」のページは、各都道府県の施肥基準、土壌診断基準値、減肥基準へのリンクを掲載しています。どこの基準を使うかをこちらで決めて、そのPDFや抜粋をClaudeに渡す形にします。「一般的な基準で」と任せると、基準そのものがどこの数字か分からなくなります。
3種類の基準は、役割が違う
同じページは、適正な施肥の流れを次のように説明しています。ここがそのまま作業の骨格になります。
基準3種の使い順
- 1
施肥基準で標準の施肥量を見る
都道府県の施肥基準には、必要な施肥量や施肥の時期のほか、施肥に関する基本知識や効率的に施肥する技術も載っています。
- 2
診断結果を土壌診断基準値と照らす
定期的に土壌分析を行い、その結果を土壌診断基準値と照らして、圃場の状態をつかみます。
- 3
過剰蓄積なら減肥基準で見直す
肥料成分が圃場に過剰にたまっているときは、減肥基準を参考に、肥料の種類や施肥量を見直します。
Claudeに頼む順番も、この3段に合わせます。標準の量を出す前に診断値を基準値に当て、過不足を判定してから量を調整する、という順です。逆に「標準の量だけ出して」と頼むと、診断書を渡した意味が消えます。
土壌診断基準値や減肥基準は、策定していない県や、一部の作物にとどまる県があります。その場合は近隣の県の基準を参考にできることがあるとされ、使うときは普及指導員など地域の施肥指導者に相談するよう案内されています。Claudeに「近い県の基準で補って」と任せず、補う判断は人が行います。
渡せるファイルと、Projectの使い分け
ファイルのアップロードにはClaudeのヘルプが定める範囲があります。診断書でよく使う形式は次のとおりです。
| 渡すもの | 形式 | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 診断書(PDF) | 形式PDF | 押さえる点100ページ以下は文字と図表の両方を解析する |
| 診断書(スキャン画像) | 形式JPEG/PNG/GIF/WebP | 押さえる点1000x1000ピクセル以上が推奨 |
| 診断値を転記した表 | 形式XLSX/CSV | 押さえる点XLSXはコード実行とファイル作成の有効化が必要 |
| 都道府県の施肥基準 | 形式PDF | 押さえる点Project内ならファイルあたり30MBまで |
チャットに添付する場合は、1ファイル500MB、1チャット20ファイル、PDFは1000ページまでです。101〜1000ページのPDFは文字のみの処理になり、図表は解析されません。施肥基準の冊子は100ページを超えることがあるため、作物の章だけを抜き出したPDFを作って渡すと、表の読み落としを避けられます。
使い分けは次の形が扱いやすくなります。
- 施肥基準・土壌診断基準値・減肥基準の抜粋は、Projectのファイルに入れる。複数の会話で参照し続けられる
- 圃場ごとの診断書は、チャットに添付する
Projectのファイルは、本文をテキストとして取り出して使う方式です(マルチモーダルPDFを除く)。基準値が画像として貼られた表だと読めない場合があるので、Projectに入れたら「対象作物の土壌診断基準値の表を、項目・下限・上限・単位の列で書き出して」と頼み、原本と見比べます。
手順1: 診断書を表に読み取らせる
最初の依頼では、判断を求めません。印字された値を、印字どおりに表へ写させるだけです。
添付の土壌分析の診断書PDFを読み、次の列の表にしてください。
列: 項目名 / 診断値 / 単位 / 分析法(印字があれば) / 診断書の判定欄の記載 / PDFのページ
- 数値は印字のまま写し、単位は診断書の表記を変えない
- 読み取れない、またはかすれている箇所は「判読不能」と書く
- 推測で補わない。診断書に無い項目は行を作らない
- ページ番号はPDFビューアの通し番号で答えるページ番号を「PDFビューアの通し番号」と指定しているのは、ヘルプが「特定のページを参照するときは、書類に印字されたページ番号でなくPDFビューアのページ番号を使う」と案内しているためです。診断書に印字された番号とビューアの番号がずれると、後で原本を開いても該当の位置に着けません。
返ってきた表は、診断書と並べて目で確かめます。見るのは3点です。
- 数値の桁と小数点
- 単位の表記(診断書に書かれた単位のまま写っているか)
- 判定欄の記載(診断書側で「適」「やや不足」などと判定されている場合、その言葉が転記されているか)
ここで直した表を、次の依頼の入力にします。この表が正しくないまま進めると、以降の計算はすべて誤った数字の上に乗ります。
手順2: 基準値と突き合わせて、過不足を判定させる
次の依頼では、確定した表を基準値の表と照合させます。ここでも施用量の話はまだしません。
先ほどの確認済みの表(診断値)を、Projectにある
「<県名>土壌診断基準値」の<作物名>の行と突き合わせてください。
出力列: 項目 / 診断値 / 基準値の下限 / 基準値の上限 / 判定(不足・適正・過剰)
/ 基準値の出典ページ / 単位と分析法が一致しているか
- 基準値が見つからない項目は「基準なし」と書き、判定しない
- 単位または分析法が診断書と基準で異なる項目は、判定せず「要確認」にする
- 基準の作物名・土壌の種類が条件と一致しない場合も「要確認」にするこの依頼のポイントは、判定を出せない行を「要確認」「基準なし」として返させることです。Claudeに空欄を埋めさせると、近い項目の基準を当てはめてしまう可能性があります。診断値と基準値の単位や分析法の表記が食い違うとき、数字を比べた結果は意味を持ちません。その行は人が基準の注記を読んで決めます。
基準値が無い成分は「基準なし」のまま残し、近隣県の基準を借りるかどうかは地域の指導者と相談します。
手順3: 施用量の案を、根拠の行と一緒に出させる
過不足の表を人が確かめたら、最後に施肥量の案を作らせます。ここで出力に要求するのは「数字」より「どの行を根拠にしたか」です。
確認済みの過不足表と、Projectの「<県名>施肥基準」の<作物名>の項を使い、
施肥設計の案を作ってください。
- 基準にある標準施肥量を最初に書き、そこからの増減とその理由を成分ごとに書く
- 増減の根拠は、過不足表のどの行と、施肥基準・減肥基準のどのページかで示す
- 計算式を省かない。堆肥由来の成分を差し引く場合は、基準の記載方法に従う
- 基準に書かれていない補正は、案に入れず「別途相談」の欄に分ける
- 最後に、人が確かめるべき点を箇条書きで挙げる「基準に書かれていない補正を別の欄に分ける」ことが肝心です。Claudeが一般的な栽培知識から補正を足す可能性があります。それを基準の記載と混ぜると、読む側はどこまでが基準の数字か分からなくなります。分けておけば、別途相談の欄だけを指導者に見せれば済みます。
返ってきた案では、標準量・診断値に応じた増減・減肥基準の適用の有無のそれぞれに、根拠のページが付いているかを見ます。付いていない数字は、基準由来と見なさず捨てます。
根拠の読み違いを検証する
案ができたら、その場で信用せず、次の表で検証します。ここで見つかる誤りは、数字の桁や条件の取り違えといった型が中心です。
| 検証する点 | やり方 | 見つかりやすい誤り |
|---|---|---|
| 診断値の転記 | やり方診断書の原本と表を並べる | 見つかりやすい誤り桁のずれ、小数点の抜け |
| 単位と分析法の一致 | やり方診断書と基準値の注記を読み比べる | 見つかりやすい誤り単位が違う数値同士の比較 |
| 基準の条件 | やり方作物、土壌の種類、作型が合う行か見る | 見つかりやすい誤り別の作物の行を使っている |
| 引用ページの実在 | やり方示されたページを開く | 見つかりやすい誤り存在しない表への言及 |
| 計算 | やり方式を別の電卓や表計算で再計算する | 見つかりやすい誤り掛け算、単位換算の誤り |
| 基準外の補正 | やり方「別途相談」欄の中身を指導者に見せる | 見つかりやすい誤り基準に無い増減が本文に混入 |
もう一段安全にするなら、別の会話で2回目の独立した読み取りをさせ、1回目の表と差分を取る方法があります。数値が一致しない行だけを原本で確かめれば、全行を見直すより早く終わります。同じ会話の続きで「もう一度確認して」と頼むと、前の答えに引きずられやすいため、新しい会話で同じ診断書だけを渡します。
基準値や診断書の表がうまく読めないときの手当ては、PDFの扱い方で変わります。表を含む複雑なPDFを構造化して読ませる方法は、ClaudeにLlamaParseを接続して複雑なPDFを構造化して読ませる手順で扱っています。
診断書を出した分析機関の位置づけを押さえる
施肥設計のための土壌分析は、計量法上の扱いが通知で整理されています。農林水産省は「施肥設計のための土壌分析の計量法上の扱いについて」のページで、計量法を所管する経済産業省の計量行政室長から、農林水産省の担当課長への通知(平成28年6月28日付け)があったことを周知しています。同じ内容を各都道府県の計量行政部局にも通知したとしています。
また、このページには、平成25年12月10日付けの「JA等が行う農業分野の土壌分析の計量法上の扱いについて」の通知が廃止されたことも書かれています。診断書を依頼する側は、通知本体(ページに掲載された別添のPDF)を読んで、依頼先の分析がどの扱いになるかを確かめる必要があります。Claudeに「この診断書は計量法上問題ないか」と尋ねても、通知を渡さない限り答えの根拠がありません。通知のPDFを添付して要点を読ませる、という使い方になります。
つまずきやすい点
診断書が画像だけのPDFのとき。100ページ以下のPDFは文字と図表の両方が解析されるため、スキャンされた診断書も読めます。ただし、かすれた数値や手書きの追記は読み違えやすい部分です。手順1の「判読不能と書く」の指定を外さないでください。
Excelに転記した表を使うとき。XLSXを添付するには、コード実行とファイル作成を有効にする必要があります。有効にしていない場合は、CSVで保存し直して渡す方法があります。なお、XLSXやCSVなどPDF以外の書類は、埋め込まれた画像をClaudeが読めない点に注意が要ります。診断書のスキャン画像をExcelに貼り込んだファイルは、画像のまま渡す方が確実です。
複数の圃場をまとめて処理するとき。圃場ごとに別の会話にしておくと、数値が混ざる事故を避けられます。1つの会話に診断書を並べる場合は、手順1の表に「圃場名」の列を足し、各行にページ番号を持たせます。
基準の版が古いとき。都道府県の施肥基準は適宜見直されており、掲載ページも更新される予定と書かれています。ProjectのファイルにPDFを入れたら、ファイル名に発行年を残しておきます。Claudeに年版を答えさせても、PDFに印字がなければ答えられません。
農薬や資材の記録も一緒に点検したいとき。圃場の管理記録は、施肥以外にも防除の記帳があります。基準の数字と記帳を突き合わせる点検は、農薬の使用基準と防除記録をClaudeで点検する手順が同じ考え方で整理しています。
分担の整理
Claudeと人の分担
Claudeに任せる
診断書の数値を表へ転記する。診断値と基準値を並べて過不足を仮判定する。標準施肥量からの増減を、根拠ページと計算式付きの案にする。
人が持つ
診断書原本との照合。基準の版、作物、土壌条件の一致。基準にない補正の採否。近隣県の基準を借りるかどうか。最終の施用量の決定。
まとめ
時間が掛かるのは計算ではなく、転記の確認です。計算式は短く再計算できますが、手順1の表が一つ間違うと以降すべてが狂うので、検証の手間は手順1の表と原本の照合に厚く振ります。基準にない補正は別の欄に隔離し、地域の指導者に見せる材料にします。
最初に用意するのは、使う県の施肥基準と土壌診断基準値の作物の項です。これをProjectに入れておけば、圃場が増えても、同じ3段の依頼を診断書ごとに回せます。測定値の帳票を規格表と突き合わせる別の例は、検査成績書とミルシートのPDFを規格値と突合する手順にあります。