ClaudeでSCAR是正要求書を作る — サプライヤー向けに不適合記録から起こす
受入検査の不適合記録から、サプライヤーへ出す是正要求書(SCAR)の下書きをProjectで起こす手順です。事実と要求を分け、原因は仕入先に書かせる形にします。
サプライヤー是正要求書(SCAR:Supplier Corrective Action Request)は、不適合の事実を仕入先に突きつけ、原因分析と再発防止の回答を期限つきで求める文書です。社内の不適合記録から起こす作業は、事実の転記と要求項目の整形が中心なので、Claudeに下書きさせやすい仕事です。
ただし、SCARは社外に出る文書です。原因を決めつける文や、社内の処置の事情が混ざると、そのまま仕入先との関係に響きます。この記事は、Projectに不適合記録と様式を置き、事実と要求を分けた下書きを作る手順です。ロット番号や寸法は、説明用の架空の数字です。
SCARに書くことは「事実」と「要求」の2つに分かれる
SCARの様式は会社ごと、取引先ごとに違います。それでも中身は、仕入先に伝える事実と、仕入先に求める行動の2つに分けられます。この線引きが、Claudeへの指示の土台になります。
| 区分 | 項目の例 | 元になる資料 | Claudeに頼めるか |
|---|---|---|---|
| 事実 | 項目の例品目、ロット、数量、検出日、検査方法、規格、測定結果 | 元になる資料受入検査の記録、不適合報告書 | Claudeに頼めるか頼める。転記後に人が突合する |
| 事実 | 項目の例影響範囲(使用予定、ライン停止の有無) | 元になる資料不適合報告書、生産計画 | Claudeに頼めるか資料にある範囲だけ頼める |
| 要求 | 項目の例暫定対策(封じ込め)の報告 | 元になる資料自社の様式、取引条件 | Claudeに頼めるか要求文の整形は頼める |
| 要求 | 項目の例原因分析、再発防止策、有効性の確認方法 | 元になる資料自社の様式 | Claudeに頼めるか要求文の整形は頼める。中身は仕入先が書く |
| 要求 | 項目の例回答期限、提出先、受領の確認方法 | 元になる資料取引基本契約、社内ルール | Claudeに頼めるか頼まない。人が決めて入れる |
最後の行が重要です。回答期限は、自社の購買・品質部門が、取引条件と案件の緊急度から決めます。Claudeが日付を作ると、根拠のない期限が文書に混ざります。
原因はこちらで書かず、仕入先に分析を求める
SCARで起きやすい失敗は、受入側が原因を推測して書いてしまうことです。「金型の摩耗が原因と思われます」と書けば、仕入先の分析の方向を縛り、違っていたときに責任の押し付け合いになります。
下書きでは、次の分担にします。
- 受入側が書くのは、測定で確認できた事実だけ
- 原因は「発生原因」と「流出原因(検査をすり抜けた理由)」の2つについて、仕入先に分析を求める
- 受入側が持つ仮説があるなら、事実欄でなく「参考情報」として分け、断定の語尾を使わない
流出原因は、不適合の出荷前検査がなぜ素通りしたかを問う項目です。自社の様式に欄があれば要求に含めます。無い欄は、Claudeに足させず、様式の側を直します。
Projectに置く資料
Projectは無料アカウントを含む全ユーザーが使え、Freeで作れるのは最大5つです。ここでは、この用途で何を置くかだけを決めます。
- 自社のSCAR様式(欄名と記入ルールをテキストにしたもの)
- 記入済みの過去のSCARと、それに対する仕入先の回答(社外秘の範囲を決めたうえで)
- 取引基本契約のうち、是正対応と回答期限に関わる条項の要点
- 受入検査基準書と品目別の規格
Projectの名前と説明はClaudeには渡りません。ルールは知識かプロジェクト指示に書きます。また、チャットをまたぐと文脈は残らず、知識に入れた内容だけが共有されます。決まった期限や仕入先からの回答は、履歴の一覧に1行足して入れ直します。
資料の置き方の詳細は、同じ不適合記録を社内の処置に使う受入検査の不適合品を整理する記事にあります。そちらは特採・返品・選別を決める社内向けの記録です。SCARでは、同じ事実を社外向けの要求文に直します。
様式が罫線や枠で作られていても、Projectの知識では文字として取り出されるのが基本です。Wordなどの文書は文字だけが取り出され、埋め込み画像は読み取られません。様式の見た目は再現されないので、欄名の一覧で渡します。1ファイルは30MBまでです。
プロジェクト指示に「社外文書」の線引きを書く
次は書き方の一例です(自社の規定に合わせて書き換えてください)。
あなたは製造業の購買・品質保証部の補助担当です。
受入検査の不適合記録から、サプライヤー是正要求書(SCAR)の
下書きを作ります。この文書は社外に出ます。
守ること:
- 事実は、入力された不適合記録と知識にある資料だけから書く
- 資料に無い数値・日付・ロット番号は書かず「要確認」と置く
- 不適合の原因は推測して書かない。発生原因と流出原因の
分析は、仕入先への要求事項として書く
- 回答期限・提出先・担当者名は空欄のままにする
- 自社の処置(特採・選別・返品の検討)、金額、他の仕入先の
情報は書かない
- 非難や断定の表現を避け、事実と要求を分けて書く「空欄のまま」と、自社の処置や金額を「書かない」の2点が、この用途の要です。社内の処置案は、記録の上では同じ不適合の隣に並んでいるため、指示が無いと外向きの文書に混ざることがあります。
不適合記録を入力して下書きを出す
Projectの中でチャットを開き、今回の不適合記録を貼ります。写真や検査成績書のスキャンは、今回の案件のチャットに直接アップロードします。1チャットに20ファイルまで、PDFは1000ページまでです。100ページ以下のPDFは文字と図表の両方が読まれ、101ページ以降は文字だけが対象になります。
次の不適合記録から、A工業向けのSCARの下書きを作って。
品目:ブラケットB-210
ロット:L2310-07、数量400個、抜取32個
検出日:10月12日(受入検査)
項目:外径 規格 φ10.00±0.05
結果:3個が10.06、10.07、10.08(規格上限10.05超過)
備考:同ロットの他の項目は規格内
使用予定:来週月曜から組立ラインで使用
出してほしいもの:
1. 事実欄(確認済み・未確認を分けて)
2. 仕入先への要求事項(暫定対策、発生原因、流出原因、再発防止策、
有効性の確認方法)
3. 回答期限・提出先は空欄返ってくる形は、次のようになります。公式の例ではなく、プロジェクト指示に沿った例示で、実際の文言は資料と入力で変わります。
1. 事実
確認済み:10月12日の受入検査で、抜取32個中3個が外径上限
(10.05)を超過(測定値10.06、10.07、10.08)
未確認:未抜取分の状況、不適合の発生した工程
2. 要求事項
(1) 暫定対策:同ロットおよび同期間の製造ロットの封じ込め状況
(2) 発生原因:外径が規格を超えた原因の分析結果
(3) 流出原因:出荷前検査で検出されなかった理由
(4) 再発防止策:恒久対策の内容と実施時期
(5) 有効性の確認:対策実施後の確認方法と結果
3. 回答期限:(空欄) 提出先:(空欄)この形なら、仕入先は、何が起きたかと、何に答えればよいかを分けて読めます。事実欄の個数と測定値は、Claudeの整理を信じず、元の検査記録と照らして確かめます。1桁の転記違いで、仕入先への要求の重みが変わります。
外に出す前の点検をClaudeにかけさせる
下書きができたら、社外に出すのに不適切な箇所を洗い出させます。
このSCARの下書きを、社外に出す文書として点検して。
- 原因を断定している文を一覧にして
- 社内の処置や金額に触れている文を一覧にして
- 事実欄の数量・日付・測定値が欄どうしで食い違っていないか調べて
- 要求事項のうち、仕入先が何を出せば完了か分からない項目を指摘して
修正案はまだ出さず、指摘だけにして。指摘だけにするのは、人が内容を理解したうえで直すためです。続けて「指摘2だけ修正案を出して」のように選んで頼みます。
海外の仕入先に出すときと、他の文書との境目
仕入先が海外の場合は、英文化が必要です。用語集を使った英文の作り方は海外サプライヤーへの英文メールとRFQの記事にあります。英訳後の事実欄の数値は、日本語の元の記録と必ず照らします。
SCARの前段になる監査の所見の整理はサプライヤー監査のチェックリストと所見の記事、顧客クレームから仕入先への是正につなげる場合の報告書は8D報告書の下書きの記事が起点になります。返品や検収の条件が争点になるときは、取引基本契約書の審査の記事の観点で契約条項を手元に置きます。
仕入先の回答が届いたら、要求との対応表で読む
SCARは出して終わりではなく、回答を読んで受理するか差し戻すかを決めるところまで続きます。回答は仕入先の様式で届くため、要求した項目が揃っているかを読み比べる手間がかかります。ここもProjectで下準備ができます。
回答のPDFを今回のチャットにアップロードし、出したSCARの要求事項と並べて、次のように頼みます。
添付はA工業からのSCARへの回答です。先に出した要求事項(1)〜(5)
それぞれについて、回答のどこに書かれているかを対応表にして。
- 回答に書かれていない項目は「記載なし」と置く
- 「作業者の不注意」のように、仕組みの原因まで届いていない
と思われる記述は、そう読める箇所を引用して指摘する
- 受理か差し戻しかは判断しない最後の行で、受理の判断は人に残します。対応表は、記載が抜けている項目と、原因が人の注意に止まっている記述を、見落とさないための下準備です。引用させるのは、Claudeの読みが回答の実際の文面と合っているかを人が確かめやすくするためです。
差し戻すときの返信文や、期限を過ぎた仕入先への催促文も、同じProjectで下書きできます。この場合も、新しい期限と、次の対応を誰が決めるかは空欄で出させ、人が埋めます。
同じ不適合が繰り返されたときの下書き
過去のSCARの履歴を知識に置いておけば、同じ品目・同じ項目の不適合が再び出たときに、前回の案件番号と回答内容を並べて引けます。再発のSCARでは、前回の再発防止策が実施されていたか、その有効性をどう確認したかを、要求事項に加える必要が出ます。
ただし、前回の回答が実施された記録は、受入側の履歴には無いことが多いはずです。Claudeが前回の対策の実施状況を埋めると、事実でない記述になります。資料に無い項目は「前回回答の実施状況:要確認」と置かせ、仕入先に確認を求める要求文にします。再発を理由に、取引条件の見直しや監査の実施に触れる場合は、文面を購買責任者が決めます。その手順の事前準備は、監査の所見の整理と同じ形で組めます。
つまずきやすい点
社内の事情が外向きの文書に混ざる
同じProjectに社内処置の履歴を置いていると、下書きに「特採を検討中」のような文が出ることがあります。SCARを作るProjectは、社内処置用のProjectと分けるのが無難です。分けない場合は、指示の「書かない」項目を保ち、点検の依頼で必ず洗い出します。
過去のSCARが古い様式のまま引かれる
様式を改訂したら、知識に入れた過去のSCARと様式が食い違います。旧様式のファイル名に「旧」を付けるか、知識から外します。ファイル名は「SCAR様式_最新」のように、中身が分かる名前にします。
履歴の検索は全件の確認ではない
有料プランでは、知識がコンテキストウィンドウの上限に近づくと、RAGモードが自動で有効になり、容量が最大10倍に広がります。取り出されるのは一部の記録なので、「同じ不適合の過去のSCARは無い」と返ってきても、全件を調べたとは限りません。仕入先ごとの不適合の累計は、品質データベースで人が見ます。
共有の権限で外向きの文書を壊さない
共有できるのはTeamとEnterpriseのプランです。「Can edit」のメンバーは、プロジェクトの指示と知識を変えられます。「書かない」項目を書いた指示が書き換わると、社内情報が漏れる下書きが出ます。編集者は絞り、閲覧が必要な人は「Can view」にします。
送付前の確認項目
- 品目、ロット、数量、検出日が、受入記録と一致している
- 不適合の個数と測定値が、元の検査記録と一致している
- 原因を断定する文が残っていない
- 社内の処置、金額、他の仕入先の情報が入っていない
- 回答期限と提出先が、人の記入で埋まっている
- 契約上、通知先と書式が決まっている場合は、それに従っている
まとめ
SCARは、事実を書く部分と、仕入先に答えさせる部分に分けて組みます。Claudeに任せるのは、不適合記録の転記と、要求項目の整形、そして外に出す前の点検までです。原因の分析は仕入先に求め、回答期限は人が決めます。この線をプロジェクト指示に書いておけば、下書きの段階から社外文書の形で出てきます。