Claudeで受入検査の不適合品を整理する — 特採・返品・選別の処置記録
受入検査で見つかった不適合品の処置案と根拠欄を、検査記録・規格・過去の特採履歴を置いたProjectで下書きさせる手順です。判定を人に残す線引きまで扱います。
受入検査で不適合品が出ると、処置を決める前に、検査記録、規格、過去の似た案件を集める作業が待っています。この集める作業と、処置案の選択肢を並べて根拠欄を埋める作業は、Claudeに下書きさせられます。特採にするか、返品か、選別かを決める判定は、品質責任者の仕事のままです。
手順は、検査基準書・処置の権限表・過去の不適合報告書をProjectに置き、今回の不適合報告書をチャットに入力するだけです。以下のロット番号や寸法は、説明用の架空の数字です。
Claudeに頼む作業と、人が決める作業
不適合の処置では、材料を揃える作業と、責任を負って決める作業が混ざっています。先に分けておくと、プロジェクト指示も書きやすくなります。
| 作業 | Claudeに頼めるか | 理由 |
|---|---|---|
| 検査記録から不適合の事実を整理する | Claudeに頼めるか頼める | 理由記録に書かれた数値と個数の転記と整理 |
| 規格との差(超過量・不適合率)を示す | Claudeに頼めるか頼めるが再計算は人 | 理由数値の転記違いが処置に直結する |
| 処置案の選択肢と、それぞれに要る材料を並べる | Claudeに頼めるか頼める | 理由判断材料の抜けを見つける用途に向く |
| 過去の似た案件を引く | Claudeに頼めるか頼めるが候補止まり | 理由条件の違いは人が見る |
| 根拠欄の下書き | Claudeに頼めるか頼める | 理由空欄と「要確認」が見た目で分かる形にする |
| 特採・返品・選別のどれにするか | Claudeに頼めるか頼まない | 理由品質上の責任と、取引先との取り決めを伴う |
| 特採の承認 | Claudeに頼めるか頼まない | 理由承認者の記録が要る |
Claudeが書けるのは、渡された記録から言える範囲の文章です。現物の状態、組付け側の許容、取引先との取り決めは、渡さなければ知りようがありません。
処置の選択肢と判断に要る材料
処置の呼び方と区切りは、会社の不適合品の管理規定と取引条件で決まります。この記事では、次の意味で使います。自社の用語に置き換えて読んでください。
| 処置 | この記事での意味 | 判断に要る材料 |
|---|---|---|
| 特採(特別採用) | この記事での意味規格を外れているが、用途上支障がないと判断して受け入れる | 判断に要る材料使用箇所での影響の評価、承認者、必要なら取引先や設計部門の了解 |
| 選別 | この記事での意味全数または追加の検査で、適合品だけを受け入れる | 判断に要る材料検査の方法と工数、納期、選別後の不適合率 |
| 返品 | この記事での意味仕入先に戻す | 判断に要る材料契約上の返品条件、代替品の納期、仕入先への通知 |
| 手直し | この記事での意味加工や修正で規格内にする | 判断に要る材料手直しの可否、手直し後の再検査 |
| 廃棄 | この記事での意味使えないものとして処分する | 判断に要る材料数量と金額、仕入先との費用負担 |
返品や検収の取り決めは、取引基本契約書の条項で決まっている場合があります。契約書側の点検は取引基本契約書の審査をClaudeでで扱っています。Claudeに処置案を出させる前に、その品目の契約条件を人が手元に置いておくと、返品の案が現実から外れません。
Projectに置く資料
過去の特採履歴や検査基準書を毎回チャットに貼るのは手間です。Projectの知識に置けば、そのProjectの全チャットから参照されます。ProjectはFreeを含む全ユーザーが使えます。Freeで作れるのは最大5つです。作り方と共有の手順は、8D報告書をProjectで下書きする記事に画面の流れがあります。
この用途で知識に入れる資料は、次の4種類です。
- 受入検査基準書と品目別の規格(測定項目、規格値、抜取の条件)
- 不適合品の管理規定と、処置ごとの承認者がわかる権限表
- 自社の不適合報告書の様式と、記入済みの過去の報告書
- 過去の特採の履歴を一覧にしたテキスト(案件番号、品目、不適合の内容、処置、承認者、後日の不具合の有無)
Projectの名前と説明はClaudeには渡らないので、規定の中身は知識かプロジェクト指示に書きます。
過去の履歴は、表計算からCSVなどのテキストに書き出して置きます。Projectのファイルは1ファイル30MBまでで、内容は基本的に文字として取り出されます(PDFは図表も読まれる場合がありますが、様式の見た目を再現させる前提にはしません)。画像だけの資料は文字にならず、WordやExcelに埋め込んだ画像も読み取られません。不適合品の写真や、スキャンした検査成績書は、今回の案件を扱うチャットに直接アップロードします。
チャットへの直接アップロードは、1チャットに20ファイル、1ファイル500MBまでです。PDFは1000ページまで受け付けます。100ページ以下のPDFは文字と図表の両方が読まれ、101〜1000ページでは文字だけが対象になります。成績書のPDFで特定のページを指すときは、書類に印字されたページ番号ではなく、PDFビューアーの通し番号で伝えます。成績書と規格の合否突合そのものは、検査成績書とミルシートのPDFを規格値と突合する手順で組んだ表を使うと、この記事の入力がそのまま作れます。
プロジェクト指示に線引きを書く
プロジェクト指示は、Project内の全チャットに効きます。処置案の出し方と、決めてはいけない事項をここに書いておきます。次は書き方の一例です(自社の規定に合わせて書き換えてください)。
あなたは製造業の品質保証部の補助担当です。
受入検査で見つかった不適合品について、処置案の整理を手伝います。
守ること:
- 事実は、入力された不適合報告書と、知識にある資料だけから書く
- 資料に無い数値・日付・ロット番号・寸法は書かず「要確認」と置く
- 処置は「特採」「選別」「返品」「手直し」「廃棄」の案を並べ、
どれが適切かは結論づけない
- 各案に、判断に必要で、まだ手元に無い材料を書く
- 過去案件を引くときは、案件番号と、今回との違いも添える
- 承認欄と、承認者の名前は空欄のままにする最後の2行がこの用途の要です。指示がないと、報告書らしく整った文章にするために、一つの処置を推してしまうことがあります。「結論づけない」と「承認欄は空欄」を書いておけば、人が決める箇所が見た目で分かる下書きになります。
不適合報告書を入力して処置案を出す
準備ができたら、Projectの中でチャットを開き、今回の不適合報告書を貼ります。検査記録の数値も一緒に入れます。
受入検査で不適合が出ました。処置案を整理して。
品目:ブラケットB-210(仕入先:A工業)
ロット:L2310-07、数量400個、抜取32個
項目:外径 規格 φ10.00±0.05
結果:3個が10.06、10.07、10.08(規格上限10.05超過)
使用予定:来週月曜から組立ラインで使用
備考:同ロットの他の項目は規格内
出してほしいもの:
1. 事実の整理(確認済み・未確認を分けて)
2. 処置案の選択肢と、それぞれに必要な材料
3. 過去の似た案件(案件番号と、今回との違い)
4. 報告書の根拠欄の下書き(承認欄は空欄)返ってくる形は、例えば次のようになります(指示と資料に沿った例示で、実際の文言は資料と入力で変わります。数値は架空です)。
1. 事実の整理
確認済み:抜取32個中3個が外径の上限を超過(超過量0.01〜0.03mm)
未確認:未抜取分の不適合率、組付け相手の寸法、仕入先の原因
2. 処置案
選別:全数400個の外径測定で適合品のみ受入。測定工数と納期に要確認
特採:組付け側の許容寸法が資料に無く、影響を評価できない。要確認
返品:契約上の返品条件と代替品の納期が資料に無い。要確認
3. 過去の似た案件
NC-2208-003(外径+0.06、特採)。今回と違う点:使用箇所が別製品
4. 根拠欄(下書き)
外径が上限を超えた個体が抜取で確認された。全数の状況は未確認。
処置:(責任者が選択) / 承認者:(空欄)この形にしておくと、判断に足りない材料が「要確認」として並びます。選別するにしても、特採を検討するにしても、人が先に集める材料の一覧になります。測定した個数と超過量は、Claudeの整理を信じずに、元の検査記録と照らして確かめます。1桁の転記違いで、処置の重さが変わるためです。
過去の特採履歴は前例ではなく候補として使う
過去案件を引かせると、今回と似た不適合に前回どう処置したかが分かります。ただし、前例があることは、今回も特採してよいという根拠になりません。使用箇所、取引先の了解の有無、数量、後日の不具合の有無が違えば、同じ数値でも結論は変わります。
そのため、プロジェクト指示では「今回との違いも添える」ようにしています。さらに、返ってきた案を、点検用の依頼で一度ふるいにかけます。
次の処置案の下書きを点検して。
- 根拠が書かれていない断定を一覧にして
- 「要確認」のまま残っている材料を一覧にして
- 過去案件との違いが書かれていない引用を指摘して
- 数量・個数・日付が欄どうしで食い違っていないか調べて
修正案はまだ出さず、指摘だけにして。指摘だけにするのは、人が内容を理解したうえで直すためです。続けて「指摘2だけ修正案を出して」のように選んで頼みます。この点検は、指摘が出なくなるまで繰り返します。
判定と承認は品質責任者が行う
下書きは、判定の材料です。次の線を引いておくと、運用が安定します。
- 処置の選択は、不適合品の管理規定で定められた権限者が行い、Claudeには選ばせない
- 特採の承認欄と承認日は、人が自分で記入する
- 過去案件から出た処置の例は「候補」と呼び、報告書の根拠欄にそのまま移さない
- 根拠欄の数値は、元の検査記録と照らした人が確認済みにする
- 取引先の了解が要る特採は、了解を得た記録が揃うまで、受入扱いにしない
Claudeは、整った根拠欄の文章を書けます。その内容が現物と記録で裏づけられているかは、Claudeには分かりません。記録を持つ人が確かめて、はじめて報告書の事実になります。
出荷済みの製品に同じロットが使われている場合は、処置と並行して、どの製品に入ったかをたどる作業が要ります。ロットの結合の手順はロットトレーサビリティで回収の対象範囲を洗い出す記事にあります。
つまずきやすい点
チャットをまたぐと文脈は残らない
Projectで共有されるのは知識に入れた内容だけです。別のチャットで決まった今回の処置は、次のチャットに自動で入りません。決まった処置と承認者は、履歴の一覧に1行足し、知識として入れ直します。履歴が増えるほど、次の案件で引ける前例が増えます。
履歴の検索は全件の確認ではない
有料プランでは、知識がコンテキストウィンドウの上限に近づくと、RAGモードが自動で有効になり、容量が最大10倍に広がります。RAGモードでは知識に入れられる履歴の量が大きく増えます。一方で、取り出されたのは一部の記録です。「同じ不適合は過去にない」と返ってきても、全件を調べたとは限りません。重大な案件は、品質データベースの検索結果を人が見ます。ファイル名には「不適合履歴_2023_ブラケット系」のように中身が分かる名前を付けると、拾われやすくなります。
共有の権限で履歴を壊さない
共有できるのはTeamとEnterpriseのプランです。「Can view」のメンバーは、内容と知識と指示を見て、チャットもできます。「Can edit」のメンバーは、プロジェクトの指示と知識を変えられます。特採の履歴や権限表を載せたProjectは、閲覧が必要な人を「Can view」にして、編集者を絞ります。仕入先の機密情報を含む記録は、共有の範囲も決めておきます。
様式の見た目は再現されない
Projectに置いたファイルは文字として取り出されるのが基本なので、表の枠や罫線、チェックボックスは伝わらないと考えておきます。様式の欄名と記入のルールを一覧にしたテキストを別に入れておくと、欄の順番や名称のずれが減ります。
点検してから報告書に載せる
処置案を報告書に写す前に、人が確かめる項目を並べます。
- 品目名、ロット番号、数量が、受入記録と一致している
- 不適合の個数と測定値が、元の検査記録と一致している
- 「要確認」と「推定」の語が、根拠欄に残っていない(残すなら案件の注記に書き直す)
- 選んだ処置の判断材料が、手元の記録に紐づいている
- 承認者の欄が、規定の権限者の記入になっている
- 仕入先への通知や是正の依頼が、処置と別に必要か決まっている
仕入先への是正依頼まで進む場合は、起点が顧客クレームの報告書と考え方がつながります。クレーム側の整理は顧客クレームの8D報告書を過去の不良記録から下書きする記事にあります。
まとめ
検査記録、規格、過去の特採履歴をProjectに置くと、不適合の事実、処置案の選択肢、足りない判断材料、根拠欄の下書きが同じ形で並びます。特採・返品・選別を選ぶ判定と、特採の承認は、プロジェクト指示でも「結論づけない」「承認欄は空欄」と書いて、人の手に残します。処置が決まったら履歴に1行足して知識を入れ直すと、次の案件で引ける前例が積み上がります。