ClaudeとMicrosoft Purviewを連携する手順 — 監査とDSPMで利用を追う
Claude EnterpriseのチャットとActivity FeedをMicrosoft Purviewに取り込む手順。必要なプラン・権限・課金、DSPMと監査で見えるもの、対応しない機能までを扱います。
ClaudeのチャットとActivity FeedをMicrosoft Purviewで見るには、Purview側で「Anthropic Claude」データコネクタを作ります。コネクタはAnthropicのCompliance APIにつながり、取り込まれたデータは約1日後にDSPM(Data Security Posture Management)のレポートへ現れます。
押さえる点は3つです。Claude Enterpriseであること、Purview側で従量課金(pay-as-you-go)を有効にしていること、コネクタがプレビュー版であること。あわせて「何が見えて何が見えないか」を先に知っておくと、導入判断が早くなります。
Purviewに載ると何が見えるのか
PurviewはClaudeを、Copilotとは別の「Enterprise AI apps」に分類します。同じ区分にはChatGPT EnterpriseやEntra登録のAIアプリが入ります。Claudeのブラウザ利用を検知する「Other AI apps」とは別枠です。
Claudeのコネクタで対応する機能は、Claude専用ページの一覧にまとまっています。
| Purviewの機能 | Claudeの対応 |
|---|---|
| DSPM / DSPM for AI(classic) | Claudeの対応対応 |
| 監査(Audit) | Claudeの対応対応 |
| データ分類 | Claudeの対応対応 |
| Insider Risk Management | Claudeの対応対応 |
| コミュニケーションコンプライアンス | Claudeの対応対応 |
| eDiscovery | Claudeの対応対応 |
| データライフサイクル管理(保持・削除) | Claudeの対応対応 |
| Compliance Manager | Claudeの対応対応 |
| 秘密度ラベル | Claudeの対応非対応 |
| ラベルなしの暗号化 | Claudeの対応非対応 |
| データ損失防止(DLP) | Claudeの対応非対応 |
つまり、Claudeの利用を「記録して後から調べる」用途には広く対応し、「入力を止める」用途には対応しません。DLPが非対応なので、Claudeへの貼り付けをPurviewのコネクタ経由で警告・ブロックすることはできません。ブラウザ経由の生成AIサイトにはエンドポイントDLPという別の仕組みがありますが、対象サイトの一覧はコネクタとは別の資料で管理されています。
DSPMにも限りがあります。Claude向けの推奨事項やワンクリックポリシーはなく、見られるのはレポートのページ、アクティビティエクスプローラー(AI activitiesタブ)、Apps and agentsダッシュボードです。Claude側のエージェントも未対応で、AI observabilityには表示されません。
監査ログに残る内容
プロンプトと応答は、他のアクティビティと同じく統合監査ログに記録されます。残るのは、いつ・誰が操作したか、どのMicrosoft 365サービスで起きたか、操作中に触れたMicrosoft 365上のファイルへの参照です。ファイルに秘密度ラベルが付いていれば、それも記録されます。
同じイベントはアクティビティエクスプローラーのAI activitiesタブに流れ、Purviewポータルの「Audit」からも検索できます。
Microsoft以外のAIアプリの監査ログは従量課金の対象で、保持期間は180日です。記録はAIAppInteractionのレコードタイプ(またはAIAppワークロード)に入ると説明されています。Claudeのページにはレコードタイプの個別記載がないため、実際の検索条件は自分のテナントで試して確かめてください。
始める前にそろえる条件
必要なものはAnthropic側とMicrosoft側に分かれます。
事前に必要な4つの条件
Claude Enterpriseプラン
Microsoftの手順は「AnthropicのEnterpriseプラン」を前提にしています。Primary OwnerがCompliance APIを有効にし、アクセスキーを発行します。
Purviewの従量課金
Claudeのアクティビティを管理するには、組織で従量課金を有効にする必要があります。Purviewの課金モデルの同意手続きが前提です。
Data Connector Adminロール
コネクタを作るユーザーに、このロールが必要です。複数のロールグループが既定で含んでおり、カスタムのロールグループを作る方法もあります。
DSPMを見る権限
DSPM for AI(classic)を開く操作には、Microsoft Entraのコンプライアンス管理者グループなど相応の権限が要ります。
Anthropic側の補足があります。Compliance APIはClaude EnterpriseプランとClaude Platformの顧客向けです。Purviewの連携もサポート記事の一覧に載っていて、Claude EnterpriseとClaude Platformの両方のアクティビティを一元的に見られるとされています。
ただしClaude Platformでは、会話内容(プロンプトとモデルの応答)をCompliance APIで取得できません。Platform側で取れるのはActivity Feedのイベントだけです。チャットの中身までPurviewで見たいなら、Claude Enterpriseの組織が対象になります。Compliance APIそのものの仕組みはClaude Compliance APIとはで整理しています。
手順: Compliance APIの有効化からコネクタ作成まで
連携の流れ
- 1
Compliance APIを有効にする
Claude EnterpriseのPrimary Ownerが有効にします。有効化できるのはPrimary Ownerだけで、Ownerには切り替えが表示されません。
- 2
Compliance Access Keyを作る
同じ画面で「+Create key」からキーを発行します。必要なスコープは、取り込むデータの種類で決まります。
- 3
Purviewでコネクタを追加する
Purviewポータルの「Settings > Data connectors > All connectors」から「Anthropic Claude」を選び、「Add connector」へ進みます。
- 4
認証とデータ範囲を設定する
APIキーを入れて接続を検証し、組織IDと取り込むデータの種類、同期頻度を選びます。
- 5
確認して完了する
内容を確認して「Finish」。以降は「Data connectors > My connectors」で状態を見ます。
Anthropic側のキーとスコープ
Purviewのデータ範囲ページには2つの選択肢があり、必要なスコープがそれぞれ決まっています。
| 取り込むデータ | 内容 | スコープ |
|---|---|---|
| Activity Feed | 内容ログインなどの認証イベント、チャット操作、ファイルアップロード、管理操作、コンプライアンス監査イベント | スコープread:compliance_activities |
| Chat Conversations | 内容ユーザーのプロンプト、Claudeの応答、メタデータを含むメッセージ履歴 | スコープread:compliance_user_data |
注意したいのは、read:compliance_user_dataの範囲です。このスコープのキーは、リンクされた全組織のチャット・ファイル・プロジェクト・セッションの記録を読めます。Primary Ownerがまだ見ていない内容も含みます。Anthropicは、本番データベースの認証情報と同じ扱いでシークレットマネージャーに置くよう求めています。
Activity Feedだけで足りるなら、read:compliance_activitiesのみのキーで済みます。会話の中身まで調べる必要があるかどうかを、キーを作る前に決めておくと範囲を絞れます。キー作成の詳細はCompliance APIのセットアップとアクセスキー作成にあります。
Purviewに貼る前に、キーが通るかを手元で試せます。Activity Feedから1件だけ取る呼び出しです。
curl --fail-with-body -sS \
"https://api.anthropic.com/v1/compliance/activities?limit=1" \
--header "x-api-key: $ANTHROPIC_COMPLIANCE_ACCESS_KEY" \
--header "anthropic-version: 2023-06-01"data配列を含むJSONが返れば、キーとスコープは有効です。403が返るなら、スコープ不足やキーの種類違いを疑います。エラーの読み方はCompliance APIのエラー400/403/404に分けてあります。
Purview側の入力項目
認証ページの項目は3つです。
- API Key: Compliance APIのキーを入れ、「Validate connection」で検証する
- Organization IDs: Anthropicの組織識別子を選ぶ
- API Base URL: 既定は
https://api.anthropic.com
その次のデータ範囲ページで、取り込む種類(Activity Feed、Chat Conversations)と同期頻度を選びます。
公式ページ同士の食い違い
落とし穴
有効化の場所の表記が、MicrosoftとAnthropicで違う
MicrosoftのコネクタページはPrimary Ownerの操作場所を「Organization Settings > Data and Privacy」と書き、同じ画面で「Compliance access keys > Create key」からキーを取るとしています。AnthropicのCompliance APIのドキュメントとサポート記事は「Organization settings > API」で、キーの作成は「+Create key」です。
画面の名称は更新で変わりうるため、先にClaudeの組織設定を開き、Primary Ownerのアカウントで実際にCompliance APIの項目が見える場所を探すのが確実です。Ownerにはトグルが見えず、Adminにはページ自体が見えません。
データが出ないときの切り分け
コネクタを作った直後はレポートが空です。取り込みから反映まで約1日かかります。Microsoftの手順は「少なくとも1日待つ」ことを求めています。
Purviewにデータが出ないとき
- Qコネクタ作成から1日以上たっているか?答えがまず待つ答えがはい
Claudeのデータは、設定後およそ1日でDSPMのレポートに現れます。
- QMy connectorsで同期の状態は正常か?答えが認証を見直す答えがはい
「Data connectors > My connectors」で状態を確認します。異常なら、APIキーの検証とスコープを見直します。
- Qレポートのフィルターは正しいか?答えがフィルターを直す答えがはい
AIアプリのカテゴリを「Enterprise AI apps」、アプリを「Anthropic Claude」にして絞ります。
アクティビティエクスプローラーで中身を見る
各グラフの「View details」から、AI activitiesタブの個別のアクティビティへ進めます。
反映後は、DSPM for AI(classic)のレポートページで、総インタラクション数の推移とAIアプリ別の傾向を見ます。レポートを定期的に確認し、深く調べるときはアクティビティエクスプローラーを使う、というのがMicrosoftの推奨する運用です。
他のSIEM・監査基盤との使い分け
PurviewはCompliance APIを使う連携先の1つです。同じAPIを使うCribl、Datadog、Splunkなどの連携もサポート記事に並び、用途で選びます。
Microsoft 365のコンプライアンス体制にClaudeを載せたいなら、Purview経由が自然です。Copilotの利用ログと並べて、同じ監査・保持・eDiscoveryの手続きで扱えるためです。Claude Code側の詳細なイベントを自前のSIEMに送る構成は、Claude Code SIEM連携やCompliance APIのSIEM連携が向いています。
Claudeの組織設定から直接CSVで落とす監査ログとの違いは、Claude監査ログの見方にあります。CopilotとClaudeの機能差から考える場合は、ClaudeとMicrosoft 365 Copilotの比較が出発点です。
まとめ
Claude Enterpriseの利用を、Microsoft 365のコンプライアンス体制の側から見たい組織向けの連携です。有効にする順序は、Compliance APIの有効化、キー発行、Purview側の従量課金とロールの準備、コネクタ作成の4段階。
効くのは監査・保持・eDiscovery・Insider Riskといった事後の調査系です。DLPと秘密度ラベルは対象外で、コネクタはプレビュー版のため、仕様はMicrosoftのドキュメントで随時確かめる運用になります。