Claude監査ログの見方 — Enterprise組織の変更履歴を追跡する
Enterprise組織の監査ログをエクスポートする手順、ログの列構造とエンティティ、記録される主なイベントのカテゴリー分けをまとめます。
Claudeの監査ログは、Enterprise組織の操作履歴を過去180日分まとめて取り出す機能です。取得できるのはOrganization OwnerとPrimary Ownerで、Teamプランにはありません。ただし中身は「誰が何をしたか」の記録に限られ、チャットやプロジェクトの本文は入りません。この記事は、取りたい情報ごとの窓口の選び方から始めて、エクスポート手順、ログの列とイベントの読み方、公式のイベント一覧に見られる食い違いまでを書きます。
何を知りたいかで、取得方法は変わる
監査ログのボタンを押す前に、欲しい情報がそこにあるかを確かめます。取得方法は3つあり、対象が重なりません。
知りたいことごとの取得方法
誰がいつ何を操作したか
Enterpriseの監査ログが窓口です。サインイン、招待、SSO設定、プロジェクトや会話の作成・削除が、時刻とIPアドレスつきで残ります。
会話の中身そのもの
監査ログには入りません。チャットの入出力は、Primary Ownerが実行するデータエクスポートで取ります。手順は組織データエクスポートの記事にあります。
CMEKを使っている組織
「Export logs」ボタンが使えません。監査ログのイベントは、Compliance APIから取ります。
ボタンを押さずに繰り返し取りたい
Export logsは手動の操作で、範囲は直近180日です。自分たちのツールへプログラムから取り込みたい場合は、Compliance APIが選択肢になります。
Compliance APIは、監査ログのイベントに加えて、チャットデータとファイルの内容もプログラムから取れる仕組みです。Claudeのチャットに加え、Cowork、Claude Codeも対象に含まれます。ただしClaude Codeのクラウドセッション、Amazon BedrockやGoogle Vertex AIで動かしたセッション、Claude Platform経由のClaude Codeは対象外です。EnterpriseでもPublic Sector組織は対象外です。
有効化できるのはPrimary Ownerだけで、画面はOrganization settings > APIにあります。Ownerはそのページを見られますが、オン・オフのトグルは操作できません。キーの作成はOwnerにもでき、その場合は自分の組織に限ったキーになります。Adminにはこのページ自体が表示されません。Compliance APIの設計と運用はCompliance APIの解説記事にまとまっています。
監査ログをエクスポートする手順
Enterprise組織のOwnerまたはPrimary Ownerが、Organization settings > Data and Privacyから実行します。
監査ログのエクスポートの流れ
- 1
Data and Privacyを開く
Organization OwnerまたはPrimary Ownerでサインインし、Organization settingsからData and Privacyを開きます。
- 2
Export logsを押す
ボタンを押すと、組織の過去180日分のログが集約されます。即時には終わりません。
- 3
メールのリンクからダウンロードする
依頼したOwner宛てにダウンロードリンク付きのメールが届きます。リンクは24時間有効です。
集約に時間がかかる分、ボタンを押してからメールが届くまでにはラグがあります。過去180日分をボタン1回でまとめて取る形なので、常時更新されるダッシュボードのように使うことはできません。インシデント対応で証跡が急ぎなら、待ち時間を見込んで早めに押します。リンクが切れたときは、もう一度ボタンを押して取り直します。
だれがエクスポートできるか
ロールと権限の一覧表で、「Request audit logs」に印が付いているのはOwnerとPrimary Ownerです。同じ表で「Request data exports」に印が付くのはPrimary Ownerだけなので、監査ログのほうが実行できる範囲は広くなっています。
カスタムロールを使う組織では、少し判断が要ります。カスタムロールのPrivacy権限には、保持設定、エクスポート設定、データエクスポートの実行が含まれ、Data and Privacyページの表示はこの権限のViewまたはManageで決まります。一方で、Export logsボタンがこの権限で使えるかどうかは、カスタムロールのページに書かれていません。「監査ログの取得担当をOwner以外に任せられるか」は、実際にカスタムロールを付けたアカウントで画面を確かめるまで分かりません。
同じ表の中で、SSOや認証の管理(Manage SSO / auth)もOwnerとPrimary Ownerの権限です。委譲できる権限の範囲は、組織のモデルアクセス制限やClaude CoworkのRBAC運用と同じ考え方で設計します。
ログの列とエンティティ
ログの各行は、次の9列で構成されます。
| 列名 | 型 | 内容 |
|---|---|---|
| created_at | 型datetime | 内容ログが記録された日時 |
| actor_info | 型dict | 内容操作を行ったアクターの情報(取得できる場合) |
| event | 型AuditEventType | 内容イベントの種類 |
| event_info | 型dict | 内容イベント種別ごとの付随情報 |
| entity_info | 型dict | 内容操作の対象となったエンティティの情報 |
| ip_address | 型str | None | 内容該当する場合のIPアドレス |
| device_id | 型str | None | 内容該当する場合のデバイスID |
| user_agent | 型str | None | 内容実行に使われたプログラムを特定するUser-Agent情報 |
| client_platform | 型str | None | 内容モバイルのプラットフォーム(iOS・Android)情報 |
entity_infoは、対象の種類(type)・UUID(uuid)・名前(name)・メタデータ(metadata)という共通構造です。nameとmetadataは、取得できる場合だけ入ります。エンティティの種類は7つあり、種類ごとにメタデータの中身が違います。
| type | メタデータ | 対象 |
|---|---|---|
| account | メタデータemail_address | 対象ユーザーアカウント |
| invite | メタデータrole | 対象組織への招待 |
| chat_project | メタデータis_private | 対象チャットをまとめるプロジェクト |
| chat_project_document | メタデータproject_uuid | 対象プロジェクトの知識ベースの文書 |
| chat_conversation | メタデータproject_uuid(該当する場合) | 対象会話。プロジェクト内でも単独でもよい |
| file | メタデータなし | 対象アップロードされたファイル |
| sso_connection | メタデータconnection_type / state / domains | 対象SSO接続 |
event_infoはイベントごとに中身が変わります。org_sso_toggledならSSOを必須化したかどうかのsso_enforced、org_jit_toggledならJITプロビジョニングを有効にしたかどうかのjit_provisioning_enabledが入ります。user_name_changedならold_nameとnew_nameの組です。同じevent列だけを見て判断せず、event_infoの中身まで開いて確かめると、調査の精度が上がります。
記録されるイベントと、追加された時期
一覧にあるイベントは、認証、招待、SSO・JIT・ドメイン、データエクスポート、プロジェクト・会話・ファイルの5系統です。追加された時期は3つに分かれ、後から足された系統は、その日より前のログには存在しません。
イベント系統が追加された時期
- 2024-09-04最初のイベント群
サインイン、招待、プロジェクト、会話、ファイル、ドメイン、JITなど、一覧の大半がこの日付です。
- 2024-09-10SSO接続の3イベント
org_sso_connection_activated・org_sso_connection_deactivated・org_sso_connection_deletedが追加されました。 - 2025-07-15データエクスポートの2イベント
org_data_export_startedとorg_data_export_completedが追加されました。日付は公式の一覧では07/15/2025の形式で書かれています。
記録されるイベントの全一覧(系統別)
認証・サインイン
| イベント | 内容と付随情報 |
|---|---|
user_signed_in_sso | 内容と付随情報SSO経由でサインイン(domain) |
user_signed_in_google | 内容と付随情報Googleアカウントでサインイン(email_address) |
user_signed_in_apple | 内容と付随情報Appleアカウントでサインイン(email_address) |
user_signed_out | 内容と付随情報サインアウト |
user_sent_phone_code | 内容と付随情報電話番号確認コードを送信(phone_number / channel) |
user_verified_phone_code | 内容と付随情報確認コードで認証(phone_number / channel) |
user_requested_magic_link | 内容と付随情報マジックリンクをリクエスト(email_address / is_successful) |
user_attempted_magic_link_verification | 内容と付随情報マジックリンクでの認証を試行(email_address / is_successful) |
user_name_changed | 内容と付随情報アカウント名を変更(old_name / new_name) |
組織メンバー・招待管理
| イベント | 内容と付随情報 |
|---|---|
org_user_invite_sent | 内容と付随情報組織への招待を送信 |
org_user_invite_re_sent | 内容と付随情報招待を再送信(invited_email_address / invited_role / invite_uuid) |
org_user_invite_accepted | 内容と付随情報招待が承認された(invited_role) |
org_user_invite_rejected | 内容と付随情報招待が拒否された(invited_role) |
org_user_invite_deleted | 内容と付随情報送信済みの招待を削除(invited_email_address / invited_role) |
org_user_deleted | 内容と付随情報組織からユーザーを削除 |
SSO・JIT・ドメイン設定
| イベント | 内容と付随情報 |
|---|---|
org_sso_toggled | 内容と付随情報SSOの強制設定を切り替え(sso_enforced) |
org_sso_add_initiated | 内容と付随情報SSO接続の追加を開始 |
org_sso_connection_activated | 内容と付随情報SSO接続を有効化 |
org_sso_connection_deactivated | 内容と付随情報SSO接続を無効化 |
org_sso_connection_deleted | 内容と付随情報SSO接続を削除 |
org_jit_toggled | 内容と付随情報JITを切り替え(jit_provisioning_enabled) |
org_domain_add_initiated | 内容と付随情報ドメインの登録を開始 |
org_domain_verified | 内容と付随情報ドメインの検証が完了(domain) |
データエクスポート
| イベント | 内容と付随情報 |
|---|---|
org_data_export_started | 内容と付随情報組織データのエクスポートを開始(export_type / initiated_by_anthropic) |
org_data_export_completed | 内容と付随情報エクスポートが完了(同上) |
プロジェクト・会話・ファイル
| イベント | 内容と付随情報 |
|---|---|
project_created | 内容と付随情報プロジェクトを作成 |
project_renamed | 内容と付随情報プロジェクト名を変更 |
project_visibility_changed | 内容と付随情報公開範囲を変更(updated_privacy) |
project_deleted | 内容と付随情報プロジェクトを削除 |
project_document_created | 内容と付随情報ドキュメントを追加 |
project_document_deleted | 内容と付随情報ドキュメントを削除 |
conversation_created | 内容と付随情報会話を作成 |
conversation_renamed | 内容と付随情報会話名を変更(new_name) |
conversation_deleted | 内容と付随情報会話を削除 |
file_uploaded | 内容と付随情報ファイルをアップロード |
一覧を通して読むと、載っていない操作も見えてきます。ユーザーのロール変更、データ保持設定の変更、監査ログ自体のエクスポートに対応するイベントは、一覧にありません。マジックリンクは要求と検証の試行が別イベントで、成功したかどうかはis_successfulに入ります。サインインのイベントも、SSO・Google・Appleの3種です。これらの操作を追跡する前提で運用を組む場合は、実際のエクスポートに該当行が出るかを先に確かめます。
公式の一覧と実物がずれていそうな箇所
公式の一覧表には、そのまま鵜呑みにしにくい箇所があります。
org_user_invite_sentの対象エンティティが、招待(invite)ではなくchat_projectと書かれている。付随情報の欄も空で、同じ招待系の他のイベントと形が揃っていませんorg_user_invite_re_sentの対象はaccountと書かれている。承認・拒否・削除はinviteなので、再送だけ別ですorg_domain_verifiedの説明文は「Domain capture was verified」で、対応する開始側のorg_domain_add_initiatedも「Domain capture was initiated」と書かれている。イベント名は「ドメイン検証」でも、説明はドメインキャプチャです- 対象エンティティの欄が空欄なのは
org_sso_toggledだけ(ほかのエンティティを持たないイベントは「n/a」)
これらが表記上の誤りか、実際の出力に表れる挙動かは、公式の記述だけでは判断できません。招待の集計を作るなら、entity_info.typeを前提にせず、実データでtypeの値を確認してから条件を書きます。
ログを使う場面
セキュリティインシデントの調査では、ip_address・device_id・user_agentの3列が起点になります。見慣れないIPアドレスからのuser_signed_in_ssoやuser_signed_in_googleがないかを見て、不審な行が見つかればactor_infoから関係するアカウントを特定します。
退職者のアクセスが止まっているかの確認では、org_user_deletedと、それ以降の該当アカウントのサインインを突き合わせます。IdP側のアカウント削除と、Claude側の記録にずれがないかのクロスチェックになります。
IdPを切り替える作業では、org_sso_connection_deactivated・org_sso_connection_activated・org_domain_verifiedを時系列に並べます。どの時点で切り替わり、途中で止まった形跡がないかを追えます。切り替えの手順そのものはIdPの切り替え手順にあります。
なお、監査ログを外部に提出する場面では、ログにemail_addressやphone_numberが含まれます。組織外に渡す前に、この2つの扱いを確認します。データ共有の全体像はClaudeのビジネスデータ共有チェックリストで確認できます。
まとめ
監査ログが答えるのは「誰が、いつ、どの対象に触ったか」で、会話の本文や180日より前の履歴は別の窓口です。実行権限や個別のイベントの出方はカスタムロールと実データで確認しておくと、証跡が必要になった日に慌てません。