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Claudeでスキルマップの人材棚卸しをExcelに作り、研修の優先順位を出す

Claudeでスキルマップの人材棚卸しをExcelに作り、研修の優先順位を出す

部署別の必要レベルと個人の保有レベルを行列にし、不足人数と事業上の重要度から研修の優先順位を出します。自己評価と上長評価のずれの扱いまで、Claude for Excelで進める手順です。

研修の予算は限られているのに、「何の研修から手を付けるか」が声の大きい部署の要望で決まっている。そうした状態から抜ける手段が、スキルマップによる人材棚卸しです。必要なスキルと個人の保有レベルを1枚の行列にして、足りていない人数が多いスキルから研修候補にします。

この記事では、その表をClaude for Excelで組み、研修の優先順位を数式で出すところまでを扱います。あわせて、自己評価が甘くなる問題を、上長評価との差で見分ける方法も書きます。

スキルマップの物差しは厚生労働省の裁量度を借りる

レベルの付け方を自社で一から決めると、定義の議論だけで数週間かかります。そこで物差しを借ります。厚生労働省は、現場人材のスキルと処遇の関係を調べる委託調査(2025年度)の結果として、ホテルスタッフ、旅館スタッフ、トラック運転手、倉庫スタッフのスキルチェックシートを公開しています。シートは自己チェック用と上司チェック用に分かれ、職務の一覧に対して、どの程度の裁量で遂行しているかを選ぶ形です。

この調査の報告書では、裁量度の選択肢を次の4段階とし、集計時に3点から0点へ置き換えています。

裁量度の選択肢スコア
他の従業員を指導しつつ、自身の判断で遂行しているスコア3点
自身の判断で遂行しているスコア2点
指導を受けながら遂行しているスコア1点
担当していないスコア0点

「できる・できない」の二択でなく、「誰の助けでできるか」で段階を切っているのが使いやすい点です。研修で埋めるべきなのは「指導を受ければできる」から「自分の判断でできる」への段差で、この段階分けはそこを直接指します。

調査は管理職以外を新人、一人前、グループリーダーの3レベルに分けています。自社の等級に合わせるときは、この3レベルをそのまま等級に対応させず、等級ごとに必要な裁量度の点数を決める形にします。次の節で作る「必要レベル」の表が、その役目です。

なお、厚生労働省のシートがあるのは上の4職種だけです。事務や営業、開発といった職種は、自社で職務の一覧を作ります。職務の一覧は、職務記述書があればそこから起こせます。作り方はClaudeで職務記述書を作成し、職務等級の定義とそろえる手順にあります。

使える環境と、人事データを扱うときの線引き

Claude for Excelは、Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで使えます。対応するExcelは、Excel on the web、Microsoft 365契約のWindows版(ビルド16.0.13127.20296以降)、Mac版(バージョン16.46以降、ビルド21011600以降)です。Excel 2016・2019の永続ライセンスやボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません。人事部の端末だけで作業を完結させれば、部署側の環境に左右されません。

評価データは個人に紐づく機微な情報です。次の点を先に確認します。

  • 入力と出力はバックエンドで30日以内に削除される扱いで、チャット履歴はブラウザ内に保存され、Anthropicのサーバーには保存されない
  • 組織で設定したデータ保持の設定は引き継がれず、アクティビティはEnterpriseの監査ログにも含まれない
  • 機微なデータや規制対象のデータを含むモデルは、適切な管理がないまま使うことが推奨されていない
  • 外部から来たファイルには、Claudeを意図しない操作へ誘導する隠れた指示が入っている場合があるため、信頼できるスプレッドシートだけで使う

社内の情報管理の規程と照らし、評価の実名を載せるか、社員番号に置き換えるかを先に決めます。置き換えるなら、番号と氏名の対応表は別ブックに置き、Claudeに渡すブックには入れません。

手順1: 3枚のシートで棚卸しブックを作る

シートは3枚です。

シート中身更新する人
必要レベル中身スキルごと・等級ごとに求める点数(0〜3)と事業上の重要度更新する人人事と部署長
評価中身個人ごとの自己評価と上長評価、採用値、不足点更新する人本人と上長が入力、不足点は数式
優先順位中身スキルごとの不足人数と研修の優先順位更新する人数式で自動計算

厚生労働省のシートを使う職種では、自己チェックの結果と上司チェックの結果を、それぞれ値だけ評価シートに貼り付けます。シートをまるごと開いてClaudeに読ませるより、値貼り付けのほうが安全です。外部のファイルから来た隠れた指示を持ち込まずに済むからです。

必要レベルの表は、人事と部署長が決めます。この記事の例では、4つのスキルと2つの等級で次のようにします。

スキル一般の必要点リーダーの必要点重要度(1〜3)
見積作成一般の必要点2リーダーの必要点3重要度(1〜3)3
契約書確認一般の必要点1リーダーの必要点2重要度(1〜3)2
データ集計一般の必要点2リーダーの必要点2重要度(1〜3)1
進捗管理一般の必要点1リーダーの必要点3重要度(1〜3)2

重要度は、そのスキルが足りないと事業にどれだけ響くかを部署長が付ける点数です。ここだけは数式でなく判断で決まります。不足人数が同じなら、重要度の高いスキルを先に研修へ回すための列です。

手順2: 評価シートの形をClaudeに組ませる

評価シートの列は、左から氏名(または社員番号)、等級、自己評価4列、上長評価4列とします。その右に、採用値4列、不足点4列、乖離フラグ4列を足します。

ここからはClaudeに頼みます。次のような依頼文で、列の見出しと数式を一度に作らせます。

評価シートのA2からJ9までに、氏名・等級・自己評価4列・上長評価4列を入れています。
右側に次の列を追加してください。数式はセル参照で書き、値の直書きはしないでください。
1. 採用値(K〜N列): 上長評価が空欄なら自己評価、入力があれば上長評価
2. 不足点(O〜R列): 必要レベルシートの点数から採用値を引いた値。マイナスは0
3. 乖離フラグ(S〜V列): 自己評価が上長評価より2点以上高いとき「面談」と表示
作成後、追加した列の数式を3行分、セル番地つきで見せてください。

返ってきた数式は、人が読んで確かめます。目安として、不足点の列は次の形になっているはずです。公式に載っている例ではなく、この記事の表の配置に合わせた一例です。

採用値  K2: =IF(G2="",C2,G2)
不足点  O2: =MAX(0, INDEX(必要レベル!$B$2:$C$5,
              MATCH(O$1,必要レベル!$A$2:$A$5,0),
              MATCH($B2,必要レベル!$B$1:$C$1,0)) - K2)
乖離    S2: =IF(C2-G2>=2,"面談","")

O列の見出しセルO1には、必要レベルシートのスキル名と同じ文字列を入れておきます。見出しが1文字でも違うと、MATCHが見つからずエラーになります。Claude for Excelは、こうしたエラーの原因をたどる用途にも使えます。#N/Aが出たら、そのセルを指して原因をたどらせ、どの見出しが一致していないかを確かめます。

手順3: 自己評価の甘さは上長評価との差で見る

自己評価は、本人の判断で付くため、甘く出る傾向があります。厚生労働省の活用方法でも、自己チェックは個人の主観によるものなので、上司にも同様のチェックをしてもらい、結果を照らし合わせてキャリア面談などで使うことが想定されています。ここでの狙いは、自己評価を削ることではなく、ずれた職務を面談の話題にすることです。

この記事の例では、8人の評価を次のように扱います。

  • 採用値は、上長評価があればそれを使い、なければ自己評価を使う
  • 自己評価が上長評価より2点以上高い組み合わせは、「面談」のフラグを立てて個別に確認する
  • スキルごとに、自己評価と上長評価の平均差を出し、部署全体の甘さの傾向を見る

例の8人(一般5人、リーダー3人)では、フラグが立つのは1件でした。Dさんの見積作成で、自己評価が3、上長評価が1です。「他の人を指導しつつ自分で判断できる」と本人は見ており、上長は「指導を受けながら」と見ている。この食い違いは、点数の補正より先に、具体的な案件を挙げて話し合う価値があります。

平均差は、4スキルとも0.5〜0.6点ほど自己評価が高く出ました。部署全体に同じ向きのずれがあるときは、個人の甘さというより、評価基準の読み方が部署で共有されていない可能性があります。このときは、点数を一律に引くのでなく、裁量度の選択肢の例を職務ごとに書き足してから付け直してもらいます。

手順4: 不足人数で研修の優先順位を出す

優先順位シートは、スキルごとに3つの値を出します。

不足人数  B2: =COUNTIF(INDEX(評価!$O$2:$R$9,0,MATCH(A2,評価!$O$1:$R$1,0)),">0")
重要度    C2: =INDEX(必要レベル!$D$2:$D$5,MATCH(A2,必要レベル!$A$2:$A$5,0))
優先点    D2: =B2*C2
順位      E2: =RANK(D2,$D$2:$D$5)

採用値(上長評価優先)で集計した例の結果は次のとおりです。比較のため、自己評価だけで集計した不足人数も並べます。

スキル不足人数(自己評価のみ)不足人数(採用値)重要度優先点順位
見積作成不足人数(自己評価のみ)0不足人数(採用値)3重要度3優先点9順位1
進捗管理不足人数(自己評価のみ)1不足人数(採用値)4重要度2優先点8順位2
契約書確認不足人数(自己評価のみ)1不足人数(採用値)2重要度2優先点4順位3
データ集計不足人数(自己評価のみ)0不足人数(採用値)0重要度1優先点0順位4

自己評価だけで集計すると、見積作成は「全員が足りている」ことになり、研修候補から外れてしまいます。上長評価を採用すると、一般のDさん、Eさんとリーダーのうち1人の計3人に不足が出ます。評価の取り方で、研修の第1候補が変わる例です。

不足人数だけで並べると、進捗管理(4人)が先です。重要度を掛けると見積作成(9点)が先に来ます。どちらを採るかは、研修の目的で決まります。人数の多い底上げを優先するなら不足人数、事業への影響を優先するなら優先点です。両方の順位を並べて、差が出たスキルだけ部署長と相談する運用が現実的です。

不足人数が同点のスキルが並んだときは、不足点の合計が大きい方を先にします。不足点の合計は、不足の深さを見る目安になるからです。この並べ替えもClaudeに頼めます。

手順5: 検算してから研修の候補に落とす

数式を入れたら、Claudeに検算を頼みます。人数が少ないうちは、人が手計算できる範囲で突き合わせると確実です。

優先順位シートのB2:B5の不足人数を、評価シートの不足点(O〜R列)から数え直してください。
1) スキルごとの、不足点が1以上の人数を、別の方法(フィルターの件数)で出す
2) B列の数式の結果と一致するか比べる
3) 一致しない場合は、評価シートのどの行が原因かをセル番地で挙げる

Claude for Excelの答えにはセルへの出典が付き、クリックで該当セルへ飛べます。件数が合わないときは、等級の入力ゆれ(「一般」と「一般職」など)が原因のことが多いので、等級の列から確かめます。

検算が済んだら、順位の上から研修候補にします。ただし、次の確認は表の外で人が行います。

  • 不足の原因が研修で埋まるものか。人員配置や権限の問題なら、研修では解消しない
  • 不足のある人が、同じ部署の特定の人に偏っていないか。偏りがあれば個別の育成計画のほうが合う
  • 研修を受けた後に、同じ表で評価を取り直す時期。半年後など、あらかじめ決めておく

研修を設計する段階に入ったら、座学とOJTの配分は新入社員研修のプログラム設計の考え方が使えます。研修後の効果は研修後アンケートの集計・分析で拾い、翌期の評価と突き合わせます。

つまずきやすい点

落とし穴

部署ごとに点数の付け方が違い、部署間の比較が崩れる

同じ「2点」でも、厳しい上長と甘い上長では中身が違います。部署をまたいで優先順位を出すなら、裁量度の選択肢に職務ごとの具体例を書き、上長評価の前に評価者同士で数件を付け合わせます。

  • 必要レベルの見直し漏れ: 等級定義や業務が変わったのに必要レベルが古いままだと、不足人数が実態からずれる。必要レベルのシートに改定日を併記する
  • 個人の評価を研修の合否に直結させる: この表は研修の優先順位を決める道具であって、個人の処遇を決める根拠にはならない。使い道を先に評価者と本人へ伝えておく
  • キャリア面談の材料と混ぜる: 個人のキャリア設計は別の話題になる。スキルギャップから行動計画を作る進め方はClaudeでキャリアパスを設計する方法にある

まとめ

スキルマップの価値は、評価の精度より、研修を決める根拠が表に残ることにあります。必要レベルを先に決め、自己評価と上長評価を並べ、採用値から不足人数を数える。見積作成のように、自己評価だけでは見えなかった不足が、上長評価を入れた途端に第1候補へ上がることもあります。Claudeには表の組み立てと検算を任せ、スキルの定義、重要度、研修で埋まる不足かどうかの見極めは、人が持ち続けるのがこの手順の線引きです。

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