Claudeで職務記述書を作成し、職務等級の定義とそろえる手順
現場の業務メモと既存の等級定義をProjectsに置き、職務の目的・責任範囲・要件を分けて書かせてから、等級間の差が出ているかを比較させる手順です。
職務記述書(ジョブディスクリプション)は、ある職務の目的・責任範囲・求める要件を文書にしたものです。ジョブ型の人事制度では、職務等級の定義と並べて運用されます。書く側の悩みは、現場の業務メモは具体的なのに、等級の定義は抽象的で、両者がうまくつながらないことです。
Claudeに「職務記述書を書いて」とだけ頼むと、どの会社にも通る一般論が返ってきます。材料が少ないからです。この記事では、現場の業務メモと既存の等級定義をProjectsに置き、職務記述書を書かせたうえで、等級間の差が文面に出ているかを比較させる手順をまとめます。
職務記述書に書く3つの要素を先に分ける
職務記述書の文面が曖昧になる原因の多くは、目的・責任範囲・要件が一つの段落に混ざることです。依頼の前に、3つを別の欄として扱うと決めておきます。
職務記述書の3つの欄
職務の目的
その職務が組織の中で何のために存在するか。1〜2文で言い切れる粒度にします。
責任範囲
どの業務を担い、どこまで判断し、何に責任を負うか。「担当する」ではなく成果物と判断の範囲で書きます。
要件
その職務を担うのに必要な経験・知識・スキル。人の属性ではなく、職務から導く条件として書きます。
等級の差が最も表れやすいのは、責任範囲の「判断の範囲」です。担当業務の一覧が同じでも、自分で決められる範囲が違えば等級は違います。この差を文面に残せるかが、後の比較の成否を分けます。
手順1: 材料をProjectsに置く
材料は2種類です。現場の業務メモと、既存の等級定義です。チャットに貼り付けて終わりにせず、Projectsに置きます。
Projectsは、専用のチャット履歴とナレッジベースを持つ作業スペースです。ナレッジに入れたファイルは、そのプロジェクトのすべてのチャットで使われます。一方で、チャットどうしの文脈は共有されません。ナレッジに入れていない情報は、別のチャットには引き継がれない点に注意が要ります。
等級定義は職務記述書ごとに何度も参照します。毎回貼り直す代わりにナレッジへ置いておけば、職種が増えても同じ物差しで書かせられます。
置く資料の例は次のとおりです。
| 資料 | 内容 | 置く理由 |
|---|---|---|
| 等級定義 | 内容各等級の求める役割・判断範囲・影響範囲 | 置く理由職務記述書を等級の物差しで書かせる |
| 現場の業務メモ | 内容担当者が書いた日々の業務・判断した場面 | 置く理由抽象語を現場の事実に置き換える |
| 既存の職務記述書 | 内容書式と文体の見本になる1〜2本 | 置く理由社内の書き方にそろえる |
ファイル名は中身が分かる名前にします。たとえば「等級定義_総合職_2026.pdf」「業務メモ_経理課_決算.txt」のようにします。有料プランでは、ナレッジが上限に近づくとRAGが自動で働きます。RAGは、質問に関係する部分だけを検索して取り出す仕組みです。このとき公式は、分かりやすいファイル名を付けること、質問で特定の資料を名前で指すことを勧めています。
RAGの仕組みと全文投入との違いは、Claude ProjectsのRAG検索の仕組みで扱っています。
手順2: プロジェクト指示に書き方の規則を置く
Projectsには、プロジェクト指示を設定できます。指示は、そのプロジェクトのすべてのチャットで使われます。公式の例は「より形式的な口調で」「特定の役割や業界の視点から答える」といったものです。ここに職務記述書の書き方の規則を置きます。
プロジェクト名と説明文は、Claudeには渡りません。規則は説明文ではなく、指示の欄に書きます。
指示の例を示します。自社の用語に合わせて直して使います。
あなたは人事部の職務記述書の作成を支援します。
- 出力は「職務の目的」「責任範囲」「要件」の3欄に分ける。
- 責任範囲は、成果物と、自分で判断できる範囲を分けて書く。
- 等級は、ナレッジの等級定義の言葉をそのまま使う。
- 業務メモにない業務・数字・資格を補わない。不足は「要確認」と書く。
- 個人名は書かない。役割名で書く。「業務メモにない内容を補わない」の一行が効きます。職務記述書の下書きは補完が効きやすく、実際には任せていない業務が自然な文章で足されがちです。不足を「要確認」と書かせておけば、現場に聞くべき点がそのまま一覧になります。
手順3: 業務メモから3欄を書かせる
指示を置いたら、1職種分の業務メモを渡して最初の下書きを作らせます。いきなり完成形を求めず、業務メモを3欄に仕分けさせてから文章にします。
添付の業務メモ_経理課_決算.txtから、経理課の決算担当の職務記述書を作ります。まず、メモの各項目を「職務の目的」「責任範囲」「要件」のどれに入るか仕分けた表を出してください。どれにも入らない項目は別に並べてください。文章にするのは、私が表を確認してからです。
仕分けの表を挟む理由は2つあります。一つは、現場の記述が3欄のどこに落ちるかを人が先に確かめられることです。もう一つは、どの欄にも入らない項目が見えることです。「どれにも入らない」に残った項目は、職務の外の雑務か、まだ言葉にできていない責任のどちらかです。
表を確認したら、文章化を依頼します。
仕分けを承認します。ナレッジの等級定義の「G3」に対応する職務記述書として、3欄の文章にしてください。責任範囲は、成果物と判断できる範囲を分けて書いてください。
等級を明示するのがここでのコツです。等級を指定せずに書かせると、Claudeは一般的な職務像に寄せて書きます。等級定義がナレッジにあるなら、依頼文で等級名を名指しします。
手順4: 等級間の差が出ているかを比較させる
職務記述書が1本できただけでは、等級の定義とそろったかは分かりません。そろっているかは、隣の等級と並べて初めて分かります。同じ職種の隣り合う等級の職務記述書を並べ、差が文面に出ているかを比較させます。
先ほどのG3と、G4の職務記述書を比べてください。次の観点で表にし、差がはっきり出ている観点と、差が薄い観点を分けて教えてください。観点は、判断できる範囲、影響する範囲(自分・チーム・部門)、求める経験の深さです。差が薄い観点には、等級定義のどの言葉を使えば差が出るかも示してください。
比較表は、次のような形になるのが狙いです。以下は形式を示す例で、中身は自社の等級定義と業務メモから出てきたものに置き換わります。
| 観点 | G3 | G4 | 差の出方 |
|---|---|---|---|
| 判断できる範囲 | G3定型の処理方法を決める | G4処理方針と例外の扱いを決める | 差の出方出ている |
| 影響する範囲 | G3自分の担当 | G4課全体 | 差の出方出ている |
| 求める経験の深さ | G3実務経験の年数で書いている | G4実務経験の年数で書いている | 差の出方薄い |
最後の行のように、差が薄い観点は「年数」だけで書いてあることが多くなります。年数で等級を区切ると、職務の違いが文面に現れません。薄い観点は、等級定義の言葉に戻って書き直させます。
差が薄い記述と、差が出ている記述
差が薄い記述
G3「決算業務を担当し、資料を作成する」/G4「決算業務を担当し、資料を作成する」。等級の違いが読み取れず、昇格の根拠にも使えません。
差が出ている記述
G3「決算資料を、定められた手順で作成する」/G4「決算資料の作成手順を見直し、例外処理の扱いを課内で決める」。判断できる範囲の違いが言葉に出ています。
手順5: 等級定義との食い違いを点検する
比較の次は、職務記述書が等級定義に反していないかの点検です。等級定義のどの記述を根拠にその責任範囲を書いたのかを、Claudeに答えさせます。
作成したG3の責任範囲の各項目について、ナレッジの等級定義のどの記述に対応するかを示してください。対応する記述がない項目は、等級定義を超えているか、定義に書かれていない業務のどちらかとして別に挙げてください。
対応する記述がない項目は、2通りの原因が考えられます。
- 現場の業務メモにあった業務が、そのまま責任範囲に入っている。等級定義より上の判断を含んでいないか確かめます
- 等級定義に、その種類の業務を表す言葉がそもそもない。等級定義の側を見直す材料になります
後者は、職務記述書の問題ではなく制度の側の問題です。Claudeの指摘をそのまま直さず、人事が等級定義の側を直すかどうかを決めます。
作成した後に人が決めること
Claudeが出すのは下書きと比較表までです。次の判断は人が持ちます。
- 等級の格付け、つまりその職務を何等級に置くか
- 「要確認」と書かれた項目を現場に確かめた結果
- 労務・法務の観点で、文面が就業規則や労働条件の説明とずれていないか
職務記述書は、一度作ると採用・評価・昇格の根拠として使われます。Claudeが書いた文章は、現場の担当者に読んでもらい、実際の仕事とずれていないかを確かめてから確定します。
複数の職種で使い回すときの運用
職種が増えるときは、同じプロジェクトにメモを足し続けるか、職種ごとにプロジェクトを分けるかを決めます。Freeプランでは作成できるプロジェクトは5個までです。有料プランではナレッジが上限に近づくとRAGが働くので、メモが多くても置けます。ただ、職種が混ざると、ナレッジの中身を人が把握しにくくなります。職種の系統(経理、営業、開発など)ごとにプロジェクトを分け、等級定義は各プロジェクトに同じものを置く構成が、管理しやすい形です。
TeamとEnterpriseのプランでは、プロジェクトを組織のメンバーと共有できます。権限は「閲覧のみ」と「編集可」の2段階です。等級定義は人事部門の外に出したくない場合もあるため、共有範囲を最初に決めます。組織全体への公開は、管理者が無効にしている場合は選べません。手順はClaude組織のプロジェクト公開を無効化する方法にまとめています。
関連する人事領域の文書として、求人票はCowork人事の実務が扱っています。職務記述書が先にあれば、求人票は同じ責任範囲と要件から起こせます。就業規則との照合は就業規則PDFをClaudeに読ませる方法の手順が使えます。
まとめ
職務記述書の質は、依頼文より先に、材料の置き方で決まります。目的・責任範囲・要件の3欄に分け、等級定義をナレッジに固定し、隣の等級と並べて差を見る。この順で進めると、抽象的な等級定義と具体的な業務メモが一つの文面でつながります。