Claudeで海外サプライヤーへの英文メールとRFQを用語集付きで作る
社内用語集と過去のやり取りをClaudeのProjectに置き、仕様書の日本語から英文のRFQ、納期の督促、値引き交渉のメールまで同じ用語で出す手順です。
RFQと英文メールで起きがちなぶれは用語集で止める
海外サプライヤーへの見積依頼(RFQ、Request for Quotation)は、1通ごとに訳し直すと用語がぶれます。先月は「公差」をtoleranceと書き、今月はallowanceと書く。部品の呼び名が変わると、相手は別の仕様だと受け取りかねません。
Claudeの翻訳力そのものより、毎回ゼロから頼む運用のほうが問題です。Projectに社内用語集と過去のやり取りを置けば、チャットを新しく開くたびに同じ前提から文面を出せます。この記事では、Projectの準備、RFQの作成、納期の督促、値引き交渉、送る前の点検までを順に扱います。
見積書が届いた後の比較はClaudeでベンダー見積もりを比較・正規化する方法が受け持ちます。ここでは、送る側の文面づくりに絞ります。
この手順で作る3種類の文面
RFQ(見積依頼)
日本語の仕様書から、数量・納期・品質条件を入れた英文の依頼文を作ります。
納期の督促
過去の約束を引用しながら、角を立てずに回答期限を示す文面にします。
値引き交渉
根拠となる数量や継続取引を示し、条件を段階的に提示する文面にします。
用語集と過去のやり取りをProjectに置く理由
Projectは、チャット履歴と知識ベースを持つ独立した作業場です。知識ベースに入れた資料は、そのProject内のすべてのチャットで使われます。逆に言えば、Projectの外で開いたチャットには届きません。
もう1点、見落としやすい仕様があります。同じProject内でも、チャット同士で文脈は共有されません。先週のチャットで「この部品はbracketと呼ぶ」と決めても、知識ベースに書かなければ次のチャットには残りません。決めた用語は必ず用語集のファイルへ戻します。
Projectは無料アカウントでも使えますが、作れるのは最大5つです。調達の英文用に1つ、販売先向けに別の1つ、といった分け方は5つに収まる範囲で考えます。
Projectの作り方
手順は次のとおりです。
Projectを作って資料を入れる
- 1
Projectを新規作成する
左側の「Projects」から「New Project」を選び、名前と説明を付けます。名前と説明はClaudeには渡りません。自分や同僚が見分けるための札として付けます。
- 2
用語集と過去メールを知識ベースに追加する
知識ベースの「+」から、用語集と過去のやり取りをアップロードします。
- 3
プロジェクト指示を保存する
「Set project instructions」に、文面の作法を書いて保存します。この指示はProject内のすべてのチャットに効きます。
- 4
新しいチャットを開いて依頼する
Projectの中でチャットを始め、仕様書を貼って依頼します。
TeamまたはEnterpriseプランでは、作成時に公開範囲を選べます。本人と招待した人だけが使う非公開か、組織全体に共有するかです。購買部門で用語集を共有する場合は、閲覧のみの権限(Can view)で配ると、チャットはできても指示と知識を書き換えられません。
知識ベースに入れる2種類のファイル
用語集
用語集は、表形式のテキストかCSVのような単純な形が扱いやすいです。列は日本語、英語、使ってはいけない訳、備考の4つで足ります。
| 日本語 | 英語(採用) | 避ける訳 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 公差 | 英語(採用)tolerance | 避ける訳allowance | 備考図面の寸法公差を指す |
| 最小発注数量 | 英語(採用)MOQ | 避ける訳minimum order | 備考略語で統一 |
| 納期 | 英語(採用)lead time | 避ける訳delivery date | 備考発注から出荷までの日数 |
| 支給品 | 英語(採用)free-issue material | 避ける訳customer parts | 備考当社が無償で渡す材料 |
| 受入検査 | 英語(採用)incoming inspection | 避ける訳receiving check | 備考当社側で行う検査 |
上の表は書き方の例です。実際の語は、自社が過去に使ってきた表記を優先してください。ここで大事なのは「避ける訳」の列です。採用する訳だけを渡すより、過去に混ざっていた別の訳を挙げておくほうが、揺れを止めやすくなります。
過去のやり取り
過去のメールは、うまくいった例を選んで入れます。同じサプライヤーとの往復を時系列でまとめたファイルがあれば、督促や交渉の文面で「前回の約束」を踏まえた書き方ができます。
入れる前に、個人名・社外秘の単価・口座情報など、文面づくりに不要な情報は伏せます。Projectに置いた資料は、そのProjectの全チャットから参照されます。共有するProjectなら、権限を持つ同僚からも見えます。
ファイルを増やしすぎて容量が気になる場合は、有料プラン(Pro、Max、Team、Enterprise)なら、知識がコンテキストの上限に近づくとClaudeが検索モード(RAG)に自動で切り替えて容量を広げます。仕組みはClaude ProjectsのRAG検索の仕組みと全文投入との違いにまとめています。検索モードでは必要な箇所だけが引かれるため、用語集のような「全部守ってほしい資料」は、ファイル名を分かりやすく付けておくことが効きます。
プロジェクト指示に文面の作法を書く
プロジェクト指示には、用語集の使い方と文面のルールを書きます。次は書き出しの例です。
あなたは日本の製造業の調達担当者の代わりに、海外サプライヤー宛ての
英文ビジネスメールを下書きします。
# 用語
- 知識ベースの「用語集」を最優先で使う。「避ける訳」は使わない。
- 用語集に無い専門語は、訳を決めずに【要確認】として列挙する。
# 文面
- 件名は内容が一目で分かる英語にする(例: RFQ - Part No. XXXX - Qty 5,000)。
- 冒頭で依頼内容を1文で述べる。回答期限は日付で示す。
- 数量・納期・品質条件は箇条書きにする。
- 感情的な表現や断定的な非難は使わない。
# 出力
- 英文の下書き、続けて日本語の逆訳を付ける。
- 下書きの末尾に、原文に無い前提を足した箇所を列挙する。「用語集に無い語は訳を決めずに【要確認】で挙げる」という一行が要点です。この指示がないと、用語集に無い語に自然な訳が当たり、社内の用語と食い違っても文面だけでは気づけません。
RFQを作る
最初の依頼では、日本語の仕様書をそのまま貼ります。要約せず、元の文面を渡します。
次の仕様書をもとに、〇〇社(ベトナム)宛てのRFQを作ってください。
- 数量: 初回5,000個、年間20,000個の見込み
- 希望納期: 発注から6週間
- 見積の有効期間と、価格条件(貿易条件)の提示を求める
- 回答期限: 今月末
用語集に無い語は【要確認】で挙げてください。
(ここに仕様書の本文を貼る)返ってきた下書きでは、まず【要確認】の一覧を見ます。ここで挙がった語を用語集に追記し、その場で訂正を依頼します。追記は、Projectの知識ベースにファイルを入れ直して行います。チャット内で「この語は今後こう訳す」と伝えただけでは、別のチャットには残らないためです。
貿易条件は、FOBやCIFのようなインコタームズの略語で書くのが通例です。どれを求めるかは会社の取引方針で決まります。Claudeの判断に任せず、指示文の中で「求める条件」として明記してください。
数量の書き方も確かめます。「年間20,000個の見込み」は、確約ではなく見込みです。英文で「annual volume」と断定的に書かれていないか、逆訳で見ます。
納期を督促する
督促では、過去のやり取りが効きます。前回の約束を引用できれば、相手は「何を」「いつまでに」答えればよいかを迷いません。
知識ベースの「〇〇社_やり取り.txt」を踏まえて、納期の督促メールを作ってください。
- 発注番号 PO-XXXX、先方が回答すると約束した日は10日前
- 今回は、出荷日の確定と、遅れる場合の理由を求める
- 次の回答期限は3営業日後
- 関係を損ねたくないので、語調は丁寧にする売掛金の督促を日本語で下書きする手順はClaudeで売掛金の年齢調べをして督促メールを下書きする手順で扱っています。調達側の督促は、お金ではなく納期が論点になるため、期限と確認事項を分けて書く点が違います。
段階を踏む場合は、1回目、2回目、最終の3本を一度に頼みます。ただし、強い表現が入った文面は、そのまま送らずに必ず自分で読み直してください。
値引きを交渉する
値引き交渉は、根拠を先に渡すと文面が安定します。数量、継続取引、他社の見積など、使ってよい材料をあらかじめ書きます。
次の条件で値引きを求める英文メールを作ってください。
- 現在の単価と数量は添付の見積書のとおり
- 使ってよい材料: 年間数量が2倍になる見込み、2年間の継続取引
- 使ってはいけない材料: 他社の具体的な社名・単価
- 提案は2段階にする(第1案は単価の引き下げ、第2案は支払条件の変更)「使ってはいけない材料」を書く点がポイントです。Project内に他社の情報があると、それを交渉材料として文面に使われかねません。外に出せない情報は、入れないか、使用を明示的に禁じます。
送る前の点検
下書きは、そのまま送らずに次の4点で見ます。
- 逆訳が元の意図と合っているか(数量、期限、条件の取りこぼしがないか)
- 【要確認】の語が残っていないか
- 原文に無い前提が足されていないか(下書きの末尾に列挙させた箇所)
- 数字、型番、発注番号が元資料と一致しているか
英語が得意な同僚がいる場合は、最終確認を頼めます。ただ、逆訳を付けておけば、英語に自信がなくても、意図のずれを日本語で確かめられます。
相手からの返信を読むときは、別の使い方になります。英文メールを日本語で読み解く手順はClaudeで英語メール要約にあります。返信を同じProjectに貼れば、次の督促や交渉でそのやり取りを踏まえられます。
用語を翻訳エンジンに効かせたい場合は、ClaudeとDeepLを連携する方法の用語集機能も選択肢です。ただし、使えるプランに条件があるため、記事で確認してください。
よくあるつまずき
チャットを変えたら用語が戻った
同じProjectの中でも、チャット同士で文脈は共有されません。チャット内で決めた用語は、用語集のファイルに書き戻して、知識ベースに入れ直してください。
用語集があるのに無視される
用語集に無い語を、Claudeが自然な訳で補っていることが多いです。指示に「用語集に無い語は【要確認】で挙げる」と書くと、補われた語が見えるようになります。ファイル名が曖昧な場合も取りこぼしが増えるため、「用語集_調達」のように、中身が分かる名前を付けます。
仕様書のPDFの図面や表が読まれない
アップロードした資料は、形式によって読める範囲が変わります。PDFは100ページ以下なら本文と図表を読みますが、101〜1000ページでは本文のテキストだけです。PDF以外の文書は、テキストだけが抽出され、埋め込まれた画像は読まれません。図面の寸法が画像に入っている場合は、数値を文字で書き出して渡す必要があります。
共有したProjectから過去の単価が見えてしまう
共有したProjectの知識は、閲覧権限の同僚にも見えます。社外秘の単価や契約書は、文面づくりに必要な範囲に絞って入れてください。
まとめ
英文の質を決めるのは、プロンプトの工夫より、用語集と過去のやり取りを同じ場所に置き続けることです。決めた訳は用語集のファイルに戻し、知識ベースを入れ直す。この一手間が、RFQも督促も交渉も同じ用語にそろえる土台になります。
最初は用語集を5〜10語から始め、【要確認】に挙がった語を足していく進め方なら、準備に時間をかけずに始められます。