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Claudeで取引先の値上げ通知を契約・単価表と照合する手順

Claudeで取引先の値上げ通知を契約・単価表と照合する手順

取引先から届いた価格改定の通知PDFを、基本契約書と過去の単価表に突き合わせる手順です。ClaudeのProjectsに資料を置き、改定率・適用日・通知期間を照合して交渉メモにします。

取引先から「価格改定のお知らせ」が届いたら、まず確かめるのは三つです。改定率は妥当か、適用開始日は契約の通知期間を守っているか、過去の単価からの上げ幅は通知の書きぶりと合っているか。Claudeには、基本契約書と単価表をProjectsに置いておき、届いた通知PDFをその都度突き合わせさせる使い方が合います。

この記事では、その照合の組み方を順に説明します。ゴールは判定ではなく、交渉の前に使える論点メモです。契約の解釈が割れる箇所は、人が読んで決めます。

照合は「資料を常備し、通知だけ差し替える」形で組む

値上げ通知の照合は、毎回ほぼ同じ作業です。基本契約書の価格改定条項を探し、単価表の数字を拾い、通知の数字と並べる。この「毎回同じ資料」の部分をProjectsに常備しておけば、通知が届いたときは新しいPDFを渡すだけで済みます。

Projectsは、独自のチャット履歴と知識ベースを持つ作業スペースです。知識ベースにアップロードした資料は、そのプロジェクト内のすべてのチャットで使われます。取引先ごとに1つのプロジェクトを作ると、A社の契約条件がB社の照合に混ざる心配もありません。

手順

値上げ通知を照合するまでの流れ

  1. 1

    取引先ごとにプロジェクトを作る

    名前は取引先と対象品目が分かるものにします。

  2. 2

    基本契約書と単価表を知識ベースに置く

    契約書は別紙ごと、単価表は版ごとにファイルを分けます。

  3. 3

    プロジェクト指示に照合の型を書く

    照合する項目と出力の形を先に決めておきます。

  4. 4

    通知PDFを渡して照合を依頼する

    新しい通知のたびに、新しいチャットで始めます。

  5. 5

    結果を確かめ、論点メモを保存する

    数字を元資料と照らし、メモを知識ベースに戻します。

プロジェクトの作り方と、置く資料

Projectsは無料アカウントでも使えます。無料では作れるプロジェクトが最大5つまでです。

作成は、左側の「Projects」から「+ New Project」を選び、名前と説明を入れます。この名前と説明はClaudeには渡りません。Team・Enterpriseプランでは、公開範囲を「自分と招待したメンバーだけ」か「組織全体」から選びます。価格条件は取引先との機密に当たることが多いので、調達担当の少人数に絞る「招待したメンバーだけ」を選ぶ使い方が合います。

知識ベースに置くファイル

知識ベースの右側にある「+」から、文書・テキスト・コードのスニペットを追加します。値上げ通知の照合では、次の4種類が土台になります。

置く資料照合で使う場面ファイルの分け方
基本契約書照合で使う場面価格改定条項・通知期間・上限の有無ファイルの分け方本体と別紙を別ファイルに
個別契約・覚書照合で使う場面基本契約を上書きする特約ファイルの分け方締結日の新しい順に名前を付ける
単価表照合で使う場面改定前の単価との比較ファイルの分け方改定の版ごとに1ファイル
過去の通知・合意メモ照合で使う場面前回の改定率と交渉の経緯ファイルの分け方年月を名前に入れる

ファイル名は、中身が分かるものにします。たとえば A社_基本契約書_2024-04.pdf や A社_単価表_2025-10版.xlsx のような形です。RAGの公式ヘルプも、分かりやすいファイル名はClaudeが適切な情報を探す助けになると説明しています。

XLSXの単価表を使うときは、アカウント側でコード実行とファイル作成を有効にする必要があります。無効のままだと、Excelの単価表はアップロードできません。

資料が増えたときの動き

有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)では、知識ベースがコンテキストの上限に近づくと、ClaudeがRAGモードに自動で切り替わります。容量は最大10倍まで広がり、Claudeは「プロジェクト知識検索」ツールで必要な箇所を取り出して答えます。

この切り替わりは契約書の照合では少し気をつけたい点です。RAGモードでは資料の全体を一度に読むのではなく、検索で取り出した箇所をもとに答えます。根拠の条文が答えに出ているかは、人が確かめます。依頼文に「第○条と別紙2を読んで」のように文書名と条番号を書くと、Claudeが探す範囲を絞れます。公式ヘルプにも、質問のときに特定の文書名を挙げると検索の焦点が合うという説明があります。

プロジェクト指示に「照合の型」を書く

「Set project instructions」から、そのプロジェクトのすべてのチャットに効く指示を保存できます。毎回依頼文に書くと抜けやすい照合項目は、ここに固定します。

以下は書き方の一例です。取引先や契約の条件に合わせて書き換えてください。

あなたは調達担当の補助役です。取引先から届く価格改定の通知を、
このプロジェクトの基本契約書・個別契約・単価表と照合します。
 
照合する項目:
1. 通知の発信日と、契約が求める事前通知期間(根拠条文を引用)
2. 通知が示す適用開始日と、通知期間を満たす最短の日付
3. 品目ごとの旧単価・新単価・改定率(単価表の数字から計算し、式を示す)
4. 通知の改定率と、単価表から計算した改定率の差
5. 契約に価格改定の上限・指標連動・協議義務の条項があるか
 
ルール:
- 数字と条文は、必ず出典のファイル名と条番号を付ける
- 契約書に書かれていないことは「契約書に記載なし」と書く。推測で補わない
- 契約の有効性や法的な結論は述べない。論点として列挙するにとどめる

出典のファイル名と条番号を求めておくと、後で人が原本に当たって確かめやすくなります。「書かれていないことは推測しない」の一行は、条項が見つからないときにもっともらしい文面で埋められるのを避ける狙いです。

通知PDFを渡して照合を依頼する

通知が届いたら、プロジェクトの中で新しいチャットを開き、PDFを添付します。ここで知っておきたいのは、プロジェクトの知識ベースとチャットの添付で、扱いが違う点です。

くらべる

資料の置き場所で変わる扱い

常備する資料

プロジェクトの知識ベース

1ファイル30MBまで。ファイル数に制限はなく、総量がコンテキストに収まる範囲です。中身は文字の抽出が基本で、マルチモーダルPDFだけが例外です。

今回の通知

チャットへの添付

1ファイル500MB、1チャット20ファイルまで。PDFは1000ページまで読めます。100ページ以下のPDFなら、文字に加えて図・グラフも解析されます。

値上げ通知は、料金表が画像として貼られていることがあります。Wordで作られた通知に画像の表が埋め込まれていると、Claudeはその画像を読み取れません。PDF以外の文書は文字だけが抽出されるためです。画像の表が入った通知は、PDFに書き出してからチャットに添付します。100ページ以下のPDFなら、表の図も解析の対象です。

添付したら、依頼文を送ります。

添付の「価格改定のお知らせ」を、プロジェクトの基本契約書と
2025-10版の単価表に照合してください。
指示にある5項目を、次の表の形で出してください。
 
| 項目 | 通知の内容 | 契約・単価表の内容 | 出典 | 差・論点 |
 
最後に、交渉で確認したい論点を重要な順に5つまで挙げてください。

照合する項目と、見るポイント

照合の中身は、項目ごとに見る箇所が決まっています。Claudeに任せる前に、人の側でも目安を持っておくと、出力の良し悪しを判断しやすくなります。

項目通知側で拾うもの契約・単価表側で拾うもの差が出やすい点
改定率通知側で拾うもの「約10%の改定」などの書きぶり契約・単価表側で拾うもの旧単価と新単価の実数差が出やすい点率の分母が品目平均か個別単価か
適用開始日通知側で拾うもの「○月○日出荷分から」など契約・単価表側で拾うもの価格改定の事前通知期間差が出やすい点発信日から数えた日数が足りるか
対象範囲通知側で拾うもの対象品目・対象拠点契約・単価表側で拾うもの単価表の品目コード差が出やすい点通知に載らない品目が含まれていないか
上げ幅の根拠通知側で拾うもの原材料費・為替などの説明契約・単価表側で拾うもの指標連動や協議義務の条項差が出やすい点契約が根拠の提示を求めているか
従前の合意通知側で拾うもの通知では触れられない契約・単価表側で拾うもの覚書・特約・過去の合意メモ差が出やすい点通知より契約上の特約が優先する場合

どこまでが契約上有効かは、契約の書き方と取引の経緯で変わります。この表は論点を漏らさないための目安で、法的な判断を示すものではありません。

改定率の計算は式ごと確認する

通知の「約10%」と、単価表の実数から計算した率が一致するとは限りません。たとえば仮の数字で、ある品目が1,200円から1,320円になるなら改定率は10%です。1,200円から1,350円なら12.5%になります。通知が品目の平均で書かれていると、個別品目の上げ幅は10%を超えているかもしれません。

Claudeには、計算の式を必ず出させます。出力された式の数字が単価表の値と合っているかを、人が数品目だけ電卓や表計算で確かめれば、計算の取り違えは見つけられます。

適用開始日は通知期間から逆算する

仮に契約が「価格改定は適用の90日前までに書面で通知する」と定めていたとします。通知が7月1日の発信で、適用開始が9月1日なら、期間は62日です。契約が求める90日に届きません。

この場合、論点は「通知期間が足りない」ことです。契約上、いつから新単価が有効になるかは契約の読み方次第なので、Claudeには「通知期間を満たす最短の適用日」を日付で出させます。その日付を交渉の起点にできます。契約書に「書面」「到達」「発信」のどれを基準にするかが書かれている場合は、その語も引用させます。

結果を交渉の論点メモにまとめる

照合の表が出たら、続けて論点メモを依頼します。メモに入れる項目は、交渉の場で使う順に並べます。

照合結果をもとに、取引先との協議用の論点メモを作ってください。
次の4部構成で、各部は3項目以内にしてください。
 
1. 契約上の事実(条文と日付。出典付き)
2. 通知とのずれ(改定率・適用日・対象品目)
3. 取引先に確認したい根拠資料
4. 当社として検討する選択肢(受け入れ・条件付き・協議要請)
 
「合意すべき」「拒否すべき」のような結論は書かないでください。

最後の一行が肝心です。選択肢を並べさせるところまでをClaudeの役割にして、どれを採るかは担当者と上長が決めます。

メモはプロジェクトに戻す

プロジェクトでは、同じプロジェクト内のチャット同士でも、コンテキストは自動では共有されません。公式ヘルプも、情報を知識ベースに追加しない限りチャット間でコンテキストは共有されないと説明しています。

ですから、確定した論点メモと合意内容は、ファイルとして知識ベースに追加します。たとえば A社_2025-10改定_論点メモ.docx のように保存すると、次回の改定通知のとき「前回はこの条件で合意した」をClaudeが参照できます。前回の改定率や交渉の経緯を、毎回担当者の記憶に頼らずに済みます。

つまずきやすい点

つまずき

照合がうまくいかないときの原因

  • 条項が見つからないと返ってくる

    契約書が画像だけのスキャンPDFのときは、中身が読み取られているかをまず確かめます。知識ベースは文字の抽出が基本のためです。読み取れていなければ、文字を含むPDFに作り直すか、必要な部分だけをチャットに直接添付します。

  • 別紙の単価が拾われない

    別紙の単価が答えに出てこないときは、別紙を別ファイルにして、依頼文で名前を指定します。

  • 前回の合意が反映されない

    前回の合意メモが知識ベースに入っていないと、Claudeは知りません。確定した合意は、ファイルにして置きます。

  • 他の取引先の条件が混ざる

    1つのプロジェクトに複数の取引先の契約を置くと、照合の対象が混ざりやすくなります。取引先ごとにプロジェクトを分けます。

プロジェクトごとの記憶(メモリー)にも注意が要ります。Team・Enterpriseプランでは、オーナーが有効にしていればメモリーが使えます。プロジェクトのメモリーは、プロジェクト外のチャットとは別に保たれます。別の取引先の話題を誤ってこのプロジェクトで始めたときは、そのチャットを「Remove from project」で外せます。記憶に残したくない照合は、最初のメッセージを送る前に「+」メニューでメモリーをオフにして始められます。

共有と保管の扱い

Team・Enterpriseプランでは、プロジェクトを共有できます。「Can view」は内容を見てチャットできるが編集はできない権限で、「Can edit」は指示や知識の変更までできる権限です。契約書の実物が入るプロジェクトでは、編集権限を調達担当の最小限にとどめ、閲覧権限で法務や上長に共有する形が扱いやすいでしょう。

組織全体に公開したプロジェクトでも、各自のチャットは他のメンバーには見えません。ただし価格条件は取引先との機密情報に当たる場合が多く、組織全体への公開は取引先ごとの秘密保持条項と照らして判断します。

取引が終わったプロジェクトは、アーカイブで一覧から外せます。アーカイブしても共有権限やメンバーは解除されません。アクセスを取り消したいときは、共有設定でメンバーを外します。

専門家に確認したい場面

照合が示すのは、通知と契約・単価表のずれです。ずれが契約違反に当たるか、新単価の適用を拒めるかは、契約全体の読み方と取引の経緯で決まります。次のような場面では、法務や弁護士に確認する選択肢があります。

  • 契約に価格改定の条項がなく、通知の根拠が読み取れないとき
  • 通知期間を満たさない通知を、取引先が「すでに有効」と主張しているとき
  • 継続的な取引で、取引先が供給の停止を示唆しているとき

契約書をAIに読ませる際の法的な線引きは、弁護士法72条とAIの契約書レビューが整理しています。条項の読み方そのものは、Claudeに契約書を読ませてわかりにくい条項を確認する方法が手順を示しています。

隣り合う作業との使い分け

新規の見積もりを比べる作業は、値上げ通知の照合とは別の手順です。複数社の提案書を同じ軸に揃える方法は、Claudeでベンダー見積もりを比較・正規化する方法にあります。

照合の結果から契約書の修正案に進むなら、Claude契約書レッドラインの手順が続きになります。契約の更新日を毎朝照合して通知を逃さない仕組みは、Coworkで契約更新日をリマインドする手順で組めます。

まとめ

値上げ通知の照合は、資料の常備と出力の型を決めておくほど楽になります。基本契約書と単価表を取引先ごとのプロジェクトに置き、照合の5項目をプロジェクト指示に固定する。通知は新しいチャットで渡し、結果の論点メモを知識ベースに戻す。この循環ができると、改定のたびに前回の経緯を参照できます。

Claudeに任せるのは、数字と条文を並べて差を出すところまでです。受け入れるか、協議を求めるかの判断は人が持ちます。

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