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Claudeで英文プレスリリースを翻訳する — 用語集で日本語版とずらさない手順

Claudeで英文プレスリリースを翻訳する — 用語集で日本語版とずらさない手順

日本語で確定したリリースから英文を起こすとき、社名・役職・引用句・数字が日英でずれないよう、用語集とProjectsを使ってClaudeに照合表まで作らせる手順です。

英文リリースで日英がずれるのは4か所に集まる

日本語で確定したプレスリリースから英文を起こすとき、読みやすさはあまり問題になりません。問題になるのは、日本語版と英文版で同じ事実が違う形で出てしまうことです。ずれは社名・役職・引用句・数字と日付の4か所に集まります。

この4か所を、Claudeに任せる前に「固定するもの」と「照合するもの」に分けます。社名や役職は用語集で固定し、引用句と数字は英文を起こしたあとに日本語原文と突き合わせます。

ずれる箇所典型的な症状防ぐ方法
社名・製品名典型的な症状段落ごとに綴りや語の順が変わる防ぐ方法用語集で英語表記を固定
役職・部署典型的な症状同じ人物の肩書が本文とコメントで違う防ぐ方法用語集で固定し、人物ごとに一行で持つ
引用句典型的な症状意訳で語気が強まり、言っていないことが入る防ぐ方法日本語原文を逐語で抜き出し、英文と並べる
数字・日付典型的な症状億とmillionの取り違え、日付形式の混在防ぐ方法数字を一覧にして日英で照合

日本語の下書きを作る段階はClaudeでプレスリリースの文面を下書きする手順にまとめています。ここでは、日本語が確定した後の英文化に絞ります。

用語集は「固定する表記」と「使わない表記」の2列を軸に作る

用語集は表で作ります。採用する英語だけでなく、過去に混ざった別表記を「使わない表記」として並べるのがコツです。揺れの原因は、Claudeが自然な別の訳を選ぶことにあるため、選ばせない表記を名指しします。

次は書き方の例です。社名と人物は架空のものです。

日本語英語(固定)使わない表記使う場面
株式会社みなと電機英語(固定)Minato Denki Co., Ltd.使わない表記Minato Electric使う場面初出の正式名称
みなと電機英語(固定)Minato Denki使わない表記the company使う場面2回目以降の社名
代表取締役社長 山田花子英語(固定)Hanako Yamada, President and CEO使わない表記Representative Director使う場面本文とコメントの双方
見守りセンサー「ミマモル」英語(固定)MIMAMORU sensor使わない表記Watching Sensor使う場面製品名はローマ字を固定
提供開始英語(固定)general availability使わない表記launch使う場面一般提供の開始を指すとき

実際の英語表記は、登記や商標の登録、自社の英語サイト、名刺に載っている形を優先します。Claudeに英語名を考えさせると、もっともらしい訳が作られるだけで、社内で使ってきた形とは一致しません。

役職は特に注意が要ります。日本の「代表取締役社長」は、英語圏の会社でどの肩書に当たるかが会社ごとに違います。人物ごとに、本人の英文プロフィールにある形を一行ずつ用語集に書いておきます。

用語集と日本語の確定版をProjectに置く

用語集をチャットに貼るだけだと、次のチャットでは消えます。プロジェクト内でも、知識ベースに追加した情報でなければチャット間で文脈は共有されません。固定したい情報は知識ベースに置きます。

Projectに置くのは3種類です。

  • 用語集(上の表を、CSVかTXTで保存したもの)
  • 過去に配信した英文リリース(会社概要の英文と文体の見本)
  • 今回の日本語の確定版

ファイルはDOCX、CSV、TXTなどに対応し、Projectのファイルは1ファイル30MBまでです。用語集は容量を食わないため、形式は扱いやすさで選べます。Projectの作り方と、ファイルが増えたときの検索モードの動きはClaudeで海外サプライヤーへの英文メールとRFQを用語集付きで作るとClaude ProjectsのRAG検索の仕組みと全文投入との違いで説明しています。

共有Projectに置いた日本語の確定版は、編集権限を持つ同僚が書き換えられます。発表前のリリースを置くなら、共有範囲を先に確かめます。

プロジェクト指示に英文化の規則を書く

プロジェクト指示は、そのProjectのすべてのチャットで使われます。用語集の扱いと、英文化の規則をここに書きます。次は書き出しの例です。

日本語のプレスリリース(確定版)から、英語(米国式表記)のプレスリリースを作成します。
 
# 用語
- 知識ベースの「用語集」を最優先で使う。「使わない表記」は出さない。
- 用語集に無い固有名詞・肩書は訳さず、【要確認:○○】として列挙する。
 
# 引用・数字
- 経営陣コメントは、日本語原文の語気を変えずに訳す。原文にない形容を足さない。
- 数字・日付・金額は日本語原文と同じ値にする。単位換算(円→ドル等)はしない。
- 億は100 million、万は10 thousandの単位で書く。
 
# 出力
- 英文リリース。続けて「照合表」(後述の形式)を付ける。
- 日本語原文に無い情報を足した箇所があれば、末尾に列挙する。

「用語集に無い語は訳さず列挙する」と「換算しない」の2行が効きます。1行目は、社内の用語と食い違う自然な訳が黙って入るのを止めます。2行目は、一次資料にない為替レートや派生の数字が混ざるのを防ぎます。

会社概要と問い合わせ先は過去の英文を逐語で使う

英文リリースには、本文のほかに毎回ほぼ同じ形で付く部分があります。見出しとサブ見出し、冒頭の発信地と日付、末尾の会社概要(About)、報道関係者向けの問い合わせ先です。会社概要と問い合わせ先を毎回訳し直させると、語の選び方が少しずつ変わり、配信のたびに別の会社のように読めてきます。

Projectの知識ベースにある直近の英文リリースから、この2か所をそのまま写させます。プロジェクト指示には次の2行を足します。

# 定型部分
- 会社概要と問い合わせ先は、知識ベースの直近の英文リリースから逐語でコピーする。再翻訳しない。
- 日本語版の会社概要が過去の版から変わっていたら、変更箇所だけを【要確認:会社概要】として列挙する。

会社概要に設立年や従業員数のように更新される数字がある場合は、日本語版の最新値と過去の英文の値が食い違いやすい箇所です。【要確認】に挙がった行を人が直し、直した英文を次回の見本として知識ベースに差し替えます。見出しは用語集の表記で起こさせ、日本語の見出しにない形容を足さないよう指示します。

日本語版から英文を起こす流れ

手順

日本語の確定から英文の確定まで

  1. 1

    日本語版を先に確定する

    英文化を始める前に、日本語版の数字・日付・引用を確定させます。日本語を直しながら英文を作ると、片方だけ直ったまま残ります。

  2. 2

    用語集を適用して英文を起こす

    Projectのチャットに日本語の確定版を渡し、英文リリースを作らせます。

  3. 3

    照合表を同時に出させる

    英文の各引用句と数字を、日本語原文の該当箇所と並べた表を出させます。

  4. 4

    人が表を見て差し戻す

    食い違いのある行だけを、日本語の原文と見比べて直します。

  5. 5

    ネイティブか翻訳者の確認に回す

    配信前に、英語を母語とする人に読んでもらいます。社外に出る文面です。

指示は、翻訳元と翻訳先の言語を名指しして書きます。多言語対応のドキュメントには、翻訳では2つの言語を名前で指定する例があり、応答言語は明示したほうが安定するとあります。次はチャットに貼る依頼文の例です。

<release_ja>
(日本語の確定版をここに貼る)
</release_ja>
 
上の日本語リリースを、日本語から英語(米国式)へ翻訳してください。
用語集に従い、末尾に照合表を付けてください。

プロンプトを区切るタグの使い方はClaudeへのプロンプトをXMLタグで構造化する書き方にあります。

引用句と数字は照合表で突き合わせる

英文を作らせるだけでは、ずれは見つかりません。ずれを表に出させるために、照合表を作らせます。

照合表では、日本語原文から数字と引用句を逐語で抜き出し、対応する英文の箇所を横に並べさせます。次は出力の形の一例です。

種別日本語原文(逐語)英文の該当箇所判定
金額日本語原文(逐語)売上高1億2,000万円英文の該当箇所JPY 120 million in revenue判定一致
日付日本語原文(逐語)2026年11月5日英文の該当箇所November 5, 2026判定一致
発表日時日本語原文(逐語)2026年11月5日 午前10時英文の該当箇所November 5, 2026, 10:00 a.m. JST判定一致
数量日本語原文(逐語)累計3万台英文の該当箇所30,000 units判定一致
引用日本語原文(逐語)「現場の声から生まれた製品です」英文の該当箇所"It was born out of feedback from the field."判定一致
引用日本語原文(逐語)「業界を変えたい」英文の該当箇所"We will revolutionize the industry."判定語気が強い

最後の行のように、判定の列に「語気が強い」「原文にない語がある」と書かせます。逐語の抜き出しを先にさせると、英文のほうが原文から離れたときに表の上で見えます。

この進め方は、幻覚を減らす方法をまとめた開発者向けドキュメントにある手法と同じ向きです。長い文書では先に逐語の引用を抜き出させる方法と、出力した主張の一つずつに裏付けの引用を探させ、見つからなければ取り下げさせる方法が挙がっています。プレスリリースを題材にした例もあり、裏付けのない主張は削除して空の[]で印を残す指示が載っています。

照合表もClaudeが作るため、取りこぼしは起こります。これらの技法で幻覚を大きく減らせても無くすことはできず、重要な情報は必ず検証する必要があります。照合表は「人が見る場所を絞る道具」として使います。

数字・日付・肩書は人が最後に見る

照合表が一致と判定した行でも、次の点は人の目で確かめます。

金額の桁: 日本語の億・万と英語のmillion・thousandは区切りの位置が違います。取り違えは桁が一つ違うだけで気づきにくいため、換算を明示して確認します。

日本語英語数字
1,000万円英語10 million yen数字10,000,000
1億円英語100 million yen数字100,000,000
12億円英語1.2 billion yen数字1,200,000,000
1兆円英語1 trillion yen数字1,000,000,000,000

通貨: 円のまま書くか、ドル換算を併記するかは広報の判断です。Claudeに換算させると、為替レートの前提が文面に書かれないまま数字が出ます。換算値を添えるなら、レートと基準日を同じ文に書きます。

日付と時刻: 米国式は月が先で、2026年11月5日はNovember 5, 2026です。時刻を書くなら、日本時間ならJSTと明記します。発表日時が日本語版にあるときは、英文でも日付のあとに時刻とJSTを並べ、照合表に行を足して突き合わせます。解禁日時(報道機関に公開を待ってもらう時刻)を英文に載せるかどうかは、広報が日本語版と合わせて決めます。決算期は、日本の「2027年3月期」をFY2026とするかFY2027とするかが会社ごとに違うため、用語集に決めを一行置きます。

肩書: 本文の肩書とコメントの肩書が同じ人物で同じ形か、一覧にして見ます。

よくあるつまずき

用語集があるのに別の表記が出る

プロジェクト指示に「使わない表記は出さない」と書いていないと、用語集を参考程度にしか使わないことがあります。指示で優先順位を明記し、出力に使った用語の一覧を付けさせると、守られたかを確かめやすくなります。

日本語を直したのに英文だけが古い

日本語版の修正が入ったら、英文を直接いじらず、修正後の日本語を貼り直して英文と照合表を再生成します。英文だけを直すと、次に日本語を直したとき、どちらが正か分からなくなります。

コメントの語気が変わる

経営陣のコメントは、意訳されると言った覚えのない主張になります。コメント部分は「語気を変えず、形容を足さない」と指示し、発言者本人か広報責任者が英文を見て承認します。

用語集に無い人名や地名が勝手に訳される

用語集に無い固有名詞は【要確認】で列挙させます。列挙された語を用語集に追記すれば、次回以降は固定されます。用語集は配信のたびに育てるものです。

まとめ

英文リリースの日英のずれは、社名・役職を用語集で固定し、引用句と数字を照合表で突き合わせると、人が見る場所が絞れます。Claudeに任せるのは英文の起草と照合表の作成までで、金額の桁、日付の形式、コメントの語気は、配信前に人が確定します。専門用語の翻訳を翻訳サービス側で固定したい場合は、ClaudeとDeepLを連携する方法で用語集の使い方が比較できます。一般の業務文書の翻訳精度はClaudeの翻訳精度をビジネス文書の実例で検証するで扱っています。

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