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Claudeで通訳の準備用語集を作る — 登壇資料から肩書と数字の読みまで一枚に

Claudeで通訳の準備用語集を作る — 登壇資料から肩書と数字の読みまで一枚に

登壇資料と過去の議事をClaude Projectsに置き、頻出語の訳語、登壇者の肩書と読み、数字と単位の言い方をA4一枚の準備シートにまとめる手順と、資料に根拠がない語の扱い方を示します。

通訳の準備シートは3つの表に分けると一枚に収まる

会議や登壇の通訳で、当日に手元で引けるのは短い紙一枚です。そこに載せるものは、頻出語の訳語、登壇者の肩書と読み、数字と単位の言い方の3種類に絞れます。登壇資料と過去の議事から、この3つの表をClaudeに起こさせる手順を示します。

表載せる中身資料のどこから拾うか
用語表載せる中身頻出する専門語・社内用語・略語と、採用する訳語資料のどこから拾うかスライド本文、過去議事の発言
登壇者表載せる中身氏名の読み、所属、肩書の言い方、呼び方資料のどこから拾うか登壇者紹介のスライド、名簿、署名欄
数字表載せる中身大きな数・単位・日付・割合の言い方資料のどこから拾うか実績や計画の数字を載せたスライド

Claudeに任せる範囲は「資料から拾って整理する」ところまでです。資料に書かれていない訳語や読みをClaudeが自信ありげに埋めると、通訳者が現場で信じてしまいます。表のすべての行に「資料のどこに出たか」を付けさせ、出典のない行は印を付けて別に分けます。この一点が、準備シートを使える紙にするか、危ない紙にするかの分かれ目です。

登壇資料はClaudeが読める形に直してから渡す

最初のつまずきは資料の形式です。スライド資料はPPTXで届くことが多いのですが、アップロードできる書類の形式の一覧にはPDF、DOCX、CSV、TXT、HTML、ODT、RTF、EPUB、JSON、XLSXが並び、PPTXはありません。XLSXは、コード実行とファイル作成を有効にしたアカウントでのみ使えます。

そのため、スライドはPDFに書き出してから渡します。画像はJPEG、PNG、GIF、WebPなら読めるので、図の中の文字が重要なページはスクリーンショットで足す手もあります。

資料の種類渡し方
スライド(PPTX)渡し方PDFに書き出す
登壇者名簿・日程表渡し方XLSXかCSV、またはPDF
過去の議事録渡し方DOCXかテキスト
図の中に重要な語があるページ渡し方画像で別に渡す

プロジェクトに置くファイルには上限があります。1ファイル30MBまでで、ファイル数に制限はないものの、内容の合計がコンテキストウィンドウに収まる必要があります。さらにプロジェクトのファイルは、テキストを抽出して読まれます。例外はマルチモーダルなPDFだけです。図表の中の語を拾わせたいページは、PDFで渡すか、画像にして会話に直接貼ります。

有料プランでは、知識が多くなるとRAG(検索で必要な部分だけ読む仕組み)が自動で有効になり、容量が最大10倍に広がります。RAGが働くと、Claudeはプロジェクトの知識検索ツールで該当箇所を引く形になります。通訳準備では資料が数十ページになりがちなので、次の2点が効きます。

  • ファイル名を内容が分かる名前にする(例: 01_登壇スライド_基調講演.pdf、02_登壇者名簿.xlsx)
  • 質問や指示でファイル名を指定する(「02_登壇者名簿.xlsxの2列目を使って」)

プロジェクトに資料と指示を置く

プロジェクトは、チャット履歴と知識ベースを持つ独立した作業場です。作り方は、claude.ai/projectsを開いて「+ New Project」を押し、名前を付けるだけです。名前と説明文はClaudeには見えないので、指示に書くべき内容は説明欄ではなくプロジェクト指示に入れます。

資料は知識ベースの「+」から追加します。チャットごとに文脈は引き継がれず、知識ベースに入れた内容だけが全チャットで共有されます。会議の日付や案件名のような前提は、毎回書くより指示に置くのが確実です。

プロジェクト指示には、次のような内容を入れます。

あなたは会議通訳の準備を手伝う編集者です。
- 資料に書かれていない訳語・読み・数字は作らない
- 資料にない場合は「資料に記載なし」と書く
- すべての行に出典(ファイル名とページ)を付ける
- 訳語が資料内で複数見つかった場合は、候補を並べて採用しない
- 人名の読みは、資料に振り仮名がある場合のみ記載する
- 出力は表形式。1行は短く、通訳者が目で拾える長さにする

これは例として組んだ指示で、そのまま使う必要はありません。要点は「作らない」「出典を付ける」「複数候補は並べて止める」の3つです。通訳の現場では、1つに決められない語を決めたふりで渡されるより、迷いが見えている方が助かります。

Team・Enterpriseプランなら、プロジェクトを同僚に共有できます。「Can view」は閲覧とチャットのみ、「Can edit」は指示と知識の編集もできます。通訳者に確認してもらうときは閲覧権限で足りますが、訳語の訂正を直接入れてもらうなら編集権限が要ります。組織の管理者が共有を止めている場合は共有できません。

用語表: 頻出語と訳語を資料から拾う

最初に作るのは用語表です。登壇資料と過去の議事を知識ベースに入れたうえで、次のように依頼します。

知識ベースの全資料から、2回以上登場する専門語・略語・社内用語を
抜き出して、用語表を作ってください。列は次の5つです。
語 / 初出ページ / 資料内の英語表記 / 資料内の日本語表記 / メモ
資料に両言語の表記がない語は、訳語欄を空にして「要確認」としてください。

「2回以上」という条件を付けるのは、一度しか出ない語まで載せると一枚に収まらなくなるためです。逆に、1回しか出なくても通訳者にとって危ない語(固有の製品名、略語など)は、あとで追加依頼をします。

出てきた表では、次の3種類の行に注意します。

行の種類見分け方対応
両言語の表記が資料にある見分け方日英が同じスライドに併記されている対応そのまま採用候補
片方の言語しかない見分け方訳語欄が空、または推測と書かれている対応主催者に確認する
資料内で表記が揺れている見分け方同じ語に複数の訳語がある対応候補を並べたまま残す

揺れの扱いは、同じ会議で社内資料と対外資料の訳語が違う場合に特に重要です。英文で資料を揃えるときの考え方はClaudeで英文プレスリリースを翻訳する手順で詳しく扱っています。固定する表記と使わない表記を2列で持つ用語集の型は、通訳準備にもそのまま使えます。

訳語を機械翻訳側で揃えたい場合は、DeepLの用語集連携という選択肢もあります。ただ、通訳の準備では「当日に紙で引ける」ことが目的なので、まずClaudeで表を作り、必要なら翻訳ツール側に移す順番が現実的です。

登壇者表: 肩書は資料の表記を優先し、読みは確認欄を設ける

次は登壇者表です。登壇者紹介のスライドや名簿から、氏名・所属・肩書を拾わせます。

登壇者名簿とスライドの紹介ページから、登壇者表を作ってください。
列: 氏名(資料表記) / 氏名の読み / 所属 / 肩書(日本語) /
肩書(資料内の英語表記) / 出典 / 確認欄
読みは資料に振り仮名がある場合だけ記入し、無ければ「要確認」にします。

ここでのルールは次の3つです。

  1. 肩書の英語は、本人の名刺や登壇者紹介にある表記をそのまま使う。同じ「専務執行役員」でも会社によって英語表記は異なり、Claudeが一般的な訳語を当てると本人の公式表記とずれる
  2. 氏名の読みは、振り仮名が資料にある場合だけ書く。漢字の人名は複数の読みがあり、推測の読みは危険度が高い
  3. 「確認欄」を空欄で残す。主催者や本人に電話やメールで確認した結果を手で書き込む場所になる

人名の読みを間違える失敗は、通訳者が単独で防ぐのが最も難しい種類のものです。確認欄は、Claudeに完璧な表を出させるためではなく、確認が必要な行を目立たせるために置きます。

数字表: 大きな数と単位の言い方を先に決めておく

日本語と英語で最も頭の切り替えが要るのが数字です。日本語は万・億・兆と4桁ごとに区切り、英語はthousand・million・billionと3桁ごとに区切ります。同時通訳では換算が追いつかないので、資料に出てくる数字の「言い方」を前もって決めておきます。

英語数値日本語での言い方
1 million数値1,000,000日本語での言い方100万
10 million数値10,000,000日本語での言い方1,000万
100 million数値100,000,000日本語での言い方1億
1 billion数値1,000,000,000日本語での言い方10億
1 trillion数値1,000,000,000,000日本語での言い方1兆

この換算表自体は、Claudeに作らせるまでもなく手元で確認できます。Claudeに頼むのは、「この会議の資料に実際に出てくる数字を全部拾い、日本語と英語の言い方を並べる」ことです。

全資料から、金額・件数・割合・日付・期間を表にしてください。
列: 数字(資料表記) / 単位 / 日本語の言い方 / 英語の言い方 /
出典 / 注意(桁・年度・通貨の曖昧さ)
million・billionと万・億の換算は、桁を一つずつ書いて計算過程を示してください。

換算過程を書かせるのは、桁の取り違えを後から目で追えるようにするためです。「注意」欄には次のような曖昧さを書かせます。

  • 年度が暦年か会計年度か分からない
  • 通貨が資料内で明記されていない(円なのかドルなのか)
  • 割合の分母が書かれていない(前年比か、全体比か)
  • 日付の形式が混在している(2026/10/20と20 Oct 2026など)

Claudeが出した数字表は、必ず元のスライドと突き合わせます。数字の読み取りミスや、図の中の数値の見落としは起こり得るためです。表の数字は元資料のページ番号とセットで確認し、ずれがあれば表を直します。

一枚にまとめる: 優先順位を付けてA4に収める

3つの表ができたら、A4一枚に収めます。全部入れると文字が小さくなりすぎるので、次の順で絞らせます。

3つの表をA4一枚にまとめます。通訳者が当日に手元で引くことを
前提に、次の順で優先して残してください。
1. 資料に両言語の表記がなく、訳語が未確定の語
2. 読みが要確認の人名
3. 桁や単位に注意が要る数字
4. 登場頻度が高い語
行数は用語30行、登壇者10行、数字15行までとし、
溢れた分は別紙の一覧に回してください。

この行数は例です。通訳の形式(逐次か同時か)や会議の長さで変わるため、通訳者の希望を聞いて調整します。優先順位の考え方は、「資料に書いてあって迷いのない語」ほど準備シートには要らない、という発想です。迷いのある語、確認が済んでいない語こそ紙に載せる価値があります。

Claudeに表を作らせたあとに、出力をそのまま印刷しないでください。次の3点を確認してから紙にします。

  • 「資料に記載なし」「要確認」の行が、そのまま残っているか(消されていないか)
  • 出典のページ番号が、元資料と合っているか(数行を抜き打ちで開く)
  • 同じ語に別々の訳語が付いていないか

つまずきやすい場面

スライドの図の中の語が拾われない。プロジェクトのファイルはテキスト抽出で読まれる(マルチモーダルなPDFを除く)ため、図に埋め込まれた文字が落ちることがあります。図表が多いページは、画像として会話に貼って「このページの語を用語表に追記して」と頼みます。

過去の議事の訳語と、今回の資料の訳語が食い違う。新しい資料を優先するのが原則ですが、主催者の判断が要ります。両方を表に並べ、判断が出るまで残します。

資料が更新される。登壇資料は直前まで差し替わります。新版が届いたら、旧版と同じ名前で上書きするのではなく、日付を付けた新しいファイルとして追加し、旧版はプロジェクトから外します。ファイル名に版が入っていないと、どちらの版の語を拾ったかが追えなくなります。

知識が大きくなりすぎる。有料プランではRAGが自動で働きますが、質問のたびに探し直すため、拾い漏れは起こり得ます。用語を網羅的に拾う依頼は、ファイルを1つずつ指定して回すと漏れが減ります。

守秘が必要な資料を入れてよいか迷う。未公開の発表資料や機密扱いの数字を外部サービスに置くことは、組織ごとの規程に左右されます。主催者や自社の情報管理の担当者に、資料の取り扱いを確認してから進めます。

議事の蓄積で次回の準備が短くなる

同じ主催者の会議が続くなら、プロジェクトを使い回します。今回の確認結果(確定した訳語、読みの確認が済んだ人名、数字の言い方)を、確認済みの用語集としてファイルにまとめ、知識ベースに加えます。次回は、新しい資料からその用語集に無い語だけを拾うよう指示すれば、準備シートの対象が差分に絞られます。

登壇者の名簿や数字の整合を一つの文書で固める作り方は、プレスキットのファクトシートの考え方と重なります。会議後に議事要旨まで続けるなら、住民説明会の想定問答と議事要旨の手順が参考になります。

準備シートは、Claudeが答えを出す道具ではなく、通訳者が迷うところを先に見せる道具です。資料に根拠がある行と、根拠がなく確認が要る行を分けて渡すことが、紙の価値を決めます。

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