Claude Media
プレスキットのファクトシートの作り方 — Claudeで数字のずれを防ぐ

プレスキットのファクトシートの作り方 — Claudeで数字のずれを防ぐ

従業員数・売上・拠点・沿革をファクトシートに一本化し、ClaudeのProjectsに置いてリリース間の数字ずれを照合する手順。項目の書式と指示文の例つき。

リリースごとに従業員数や拠点数が微妙に違う。この食い違いは、数字の正本が1か所にないことから起きます。会社概要の数字を1枚のファクトシートにまとめてClaudeのProjectsに置き、「数字はこのシートからだけ引く」と指示しておけば、新しい文面の作成と過去リリースとの照合を同じ場所で回せます。

ここで扱うのは、シートの項目設計、Projectsへの置き方、照合の頼み方、数字が変わったときの更新です。リリース文面そのものの下書きはClaudeでプレスリリースの文面を下書きする手順にあります。

数字のずれが生まれる場所

食い違いの多くは、誰かの不注意というより仕組みの問題です。

原因

ずれが入り込む3つの経路

  • 前回のリリースからの流用

    前回の文面をコピーして書き換えると、直し忘れた数字がそのまま残ります。

  • 部署ごとに違う定義

    従業員数が単体か連結か、正社員だけか契約社員を含むか。定義が違えば、数字は両方「正しい」まま食い違います。

  • 更新が文書に届かない

    拠点が増えても、会社案内・IR資料・リリース末尾の会社概要が同時には直りません。

どの経路も、「この数字の正本はここ」と言えるファイルがあれば小さくできます。Claudeに任せる前に、人が正本を決めるのが先です。

ファクトシートに載せる項目と書式

数字だけを並べると、あとで根拠が追えません。1項目につき5つの欄を持たせます。

欄書く内容例
項目書く内容数字の名前例従業員数
値書く内容公表する表記そのまま例412名
基準日書く内容その数字がいつ時点か例2026年3月31日
定義書く内容何を含み何を含まないか例連結、役員・派遣を除く
出典書く内容社内の根拠資料例人事部の月次報告

載せる項目は、リリースの末尾やプレスキットで繰り返し使うものに絞ります。社名の正式表記と略称、設立年月、代表者名と肩書、資本金、従業員数、直近の売上、拠点、沿革の主要な節目、主要製品名あたりが中心です。

ファイルにするときは、表をそのまま文字で書いた形にします。次は架空の会社の例です。

# ファクトシート(株式会社サンプル)
最終更新: 2026-10-01 / 更新責任者: 広報部
 
## 基本情報
- 社名: 株式会社サンプル(略称: サンプル社。リリースでは初出のみ正式名)
- 設立: 2012年4月
- 代表者: 代表取締役社長 山田 太郎
- 資本金: 3億2,000万円(2026-03-31)
 
## 規模
- 従業員数: 412名 / 連結、役員・派遣を除く / 2026-03-31 / 人事部月次報告
- 売上高: 58億円 / 2026年3月期 / 億円未満は四捨五入 / 経理部決算資料
- 拠点: 国内4(東京・大阪・名古屋・福岡)、海外1(シンガポール)
 
## 沿革
- 2012-04 設立
- 2019-09 大阪支店を開設
- 2024-06 シンガポール拠点を開設

丸め方の欄を足しておくのがコツです。「58億円」が四捨五入なのか切り捨てなのかが決まっていないと、リリースごとに「約58億円」「57.8億円」と揺れます。

Projectsにファクトシートを置く手順

手順

ファクトシート用プロジェクトの作り方

  1. 1

    プロジェクトを作る

    Projectsの画面から新規プロジェクトを作ります。名前と説明は、Claudeには渡りません。ファクトシートの中身を説明欄に書いても無駄になるので、人が見分けるための名前だけにします。

  2. 2

    ナレッジにファクトシートを入れる

    プロジェクトのナレッジに、上のファイルをアップロードします。ナレッジに入れた資料は、そのプロジェクトのすべてのチャットで背景として使われます。

  3. 3

    カスタム指示で優先順位を決める

    ナレッジの数字をどう扱うかは、プロジェクトの指示に書きます。指示も、プロジェクト内のすべてのチャットに効きます。

  4. 4

    既存のチャットがあれば移す

    プロジェクト外で数字を詰めていたチャットは、「Add to project」でプロジェクトに移せます。

カスタム指示の例を示します。以下は書き方の一例で、自社の運用に合わせて直してください。

あなたは広報の数字チェック係です。
- 会社の数字は、ナレッジの「ファクトシート」だけを正とする。
- 過去リリースは文体と構成の見本としてのみ使い、数字は引かない。
- 文面に出てくる数字は、必ず「項目・値・基準日」を並べて示す。
- ファクトシートに無い数字は推測で埋めず、【シートに無し:○○】と残す。
- 基準日が古いと思われる数字は、書き直さずに指摘だけする。

最後の2行が効いてきます。Claudeに黙って最新値へ直させると、直した根拠が残りません。指摘にとどめ、更新は人がシートに反映する運用なら、変更履歴は常にシートの側に残ります。

無料プランと有料プランで変わること

Freeプランでも作れますが、プロジェクトは最大5つまでです。ファクトシート用に1つ使うと残りは4つになります。有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)では、ナレッジがコンテキストの上限に近づくとRAGが自動で有効になり、容量が最大10倍に拡張されます。ファクトシート自体は短いので、容量が問題になるのは過去リリースを大量に入れたときです。

過去リリースとの照合を頼む

シートができたら、過去のリリース文を貼って照合させます。いきなり直させず、まず差分の一覧だけを出させます。

次のリリース文に出てくる、会社に関する数字・日付・名称をすべて抜き出し、
ファクトシートと照合してください。
結果は表にして、判定は次の4種類で付けてください。
- 一致
- 値が違う(シートの値も併記)
- 定義が違う可能性(連結・単体、含む・含まない)
- シートに無い
直す案はまだ出さないでください。
 
【リリース文】
(ここに貼る)

返ってくる表は、次のような形になります。以下は形式の例で、実際の出力は文面とシートによって変わります。

文面の記載シートの値判定
従業員約400名シートの値412名(連結)判定値が違う(丸めの扱いを確認)
売上高57億円シートの値58億円(2026年3月期)判定値が違う
国内4拠点シートの値国内4判定一致
創業2012年シートの値設立2012年4月判定定義が違う可能性(創業と設立)

この表で見たいのは、判定そのものより「定義が違う可能性」の行です。「約400名」は古い数字のこともあれば、意図した丸めのこともあります。どちらかは人にしか決められません。

照合が済んだら、直す案を次の依頼で出させます。2段に分けておくと、どの数字が直ったのかを人が追えます。

過去リリースを同じプロジェクトに入れるときの注意

過去リリースをナレッジに入れる運用は、文体の見本として便利です。ただしその文面には、当時の古い数字が入っています。ファクトシートと過去リリースが同じナレッジにあると、Claudeが古い数字を拾う余地が生まれます。

対処は2通りあります。

くらべる

過去リリースの置き方

見本として併用

同じプロジェクトに置く

指示で「過去リリースの数字は引かない」と明記します。ファイル名に発表日を入れておくと、人が見ても古さが分かります。

混ざらない

別のプロジェクトに分ける

ファクトシートのプロジェクトには正本だけを置き、文面を作るときは別のプロジェクトで過去リリースを使います。数字の取り違えは構造的に減ります。

どちらを選ぶにしても、プロジェクトのチャット間でコンテキストは共有されません。「先週のチャットで直した」と言っても、ナレッジに入れていない情報は別のチャットには届きません。決まった数字は、必ずシートに戻します。

数字が変わったときの更新の流れ

四半期の決算や拠点の増減で数字が変わったら、シートを書き換えて入れ直します。次の順で進めると、リリース間のずれを後から追えます。

  1. 人事・経理などの根拠資料で新しい数字を確認する
  2. シートの値と基準日を更新し、「最終更新」を書き換える
  3. 古い値は沿革の下に「変更履歴」として1行残す(例: 従業員数398名 → 412名、2026-04-01)
  4. ナレッジのファイルを入れ替える
  5. 直近に出したリリース文を貼り、照合を再実行する

変更履歴を残しておけば、他社や記者から「前回は398名だったが」と聞かれたときに、変わった理由と時点を即答できます。

共有範囲と編集権限

Team・Enterpriseプランでは、プロジェクトを組織内で共有できます。権限は2段階です。

  • 閲覧のみ: ナレッジと指示を見て、プロジェクト内でチャットできる。編集はできない
  • 編集可: 指示とナレッジを変更でき、メンバー設定も更新できる

ファクトシートは、更新責任者だけが「編集可」で、他の広報メンバーや関連部署は「閲覧のみ」にする運用が考えられます。編集可のメンバーは共有メニューから他のメンバーのアクセスを外すこともできるため、付与は絞っておきます。

プロジェクトを組織全体に公開しても、プロジェクト内のチャットは他のメンバーには見えません。数字の確認でやりとりした内容は、共有しない限り手元に残ります。

終わったプロジェクトはアーカイブできますが、アーカイブしても共有の権限は外れません。退職や異動でアクセスを外したいときは、共有設定で個別に外します。

つまずきやすい点

落とし穴

シートを更新したのにチャットの回答が古い

ナレッジのファイルを入れ替えていないと、Claudeは古いファイルを参照し続けます。チャットで「更新した」と伝えるだけでは反映されません。ファイルの入れ替えを手順に含めておきます。

メモリーをオンにしている場合は、プロジェクトごとに別のメモリーが持たれ、プロジェクト外のチャットとは分かれます。数字の確認とは関係のない雑談がプロジェクトに混ざったときは、チャットをプロジェクトから外せば、プロジェクトのメモリーの要約から除けます。ただし、メモリーは数字の正本にはなりません。公表する数字は、メモリーに覚えさせずシートに書きます。

なお、Claude Codeを使う一部のPro・Maxユーザー向けには、スレッドで作業が進む新しい方式のProjectsがベータで提供されています。チャットとCoworkの既存のプロジェクトは、従来どおり動きます。この記事の手順は従来のプロジェクトを前提にしています。

定義の欄も落とし穴になります。シートに「従業員数: 412名」とだけ書くと、連結か単体かが分からず、Claudeは文脈から推測するしかありません。定義欄を埋めておくのは、Claudeのためというより、半年後の自分たちのためです。

年間計画や発表予定と合わせて管理したい場合はClaudeで広報の年間計画を組む手順、英文版を同じ数字で出したい場合はClaudeで英文プレスリリースを翻訳する手順が続きの作業になります。ナレッジの容量とRAGの挙動はClaude ProjectsのRAG検索の仕組みにまとめています。

まとめ

ファクトシートは、項目・値・基準日・定義・出典の5欄で作り、Projectsのナレッジに入れて、カスタム指示で「数字はこのシートだけ」と固定します。過去リリースとの照合は、直す前に差分表だけを出させる2段構えが追いやすい方法です。

Claudeは照合と整形を速くしますが、どの数字を公表するか、丸めをどうするかは人の判断です。正本を1枚に決めた時点で、リリース間のずれの大半は、「どの数字が新しいか」という議論から「シートを更新したか」という確認に変わります。

この記事を共有:XはてブLinkedIn