Claude Media
Claudeで取材記事のゲラを事実照合する — 修正依頼の文面まで

Claudeで取材記事のゲラを事実照合する — 修正依頼の文面まで

記者から届いた掲載前原稿の数字・肩書・固有名詞・発言を、Projectsのファクトシートと取材メモに突き合わせ、直してほしい箇所を修正依頼にする手順。

取材を受けたあと、掲載前の原稿(ゲラ)が届くことがあります。返信までの時間は短く、目で追うだけでは従業員数の桁や肩書の細部を見落としがちです。自社の公式数字をまとめたファクトシートをClaudeのProjectsに置き、届いた原稿を貼って突き合わせれば、数字・肩書・固有名詞の食い違いを表で拾えます。

直すかどうかを決めるのは人です。Claudeには「食い違いの洗い出し」と「修正依頼の下書き」までを任せます。

ゲラ確認で見るのは4種類の記述

ゲラの記述は、照合の相手によって4つに分かれます。相手が違うと、置く資料も変わります。

照合先

ゲラの記述と照合の相手

  • 数字・日付

    従業員数、売上、設立年月、拠点数など。照合先は自社のファクトシートです。

  • 肩書・社名・製品名

    正式表記、略称、役職名の表記。これもファクトシートの「社名」「代表者」欄で見ます。

  • 発言の引用

    カギ括弧で載る自分の発言。照合先は取材メモや録音の文字起こしです。

  • 解釈・評価の記述

    「業界最大手」「急成長」など記者の表現。照合先の資料がなく、事実誤認かどうかを人が判断します。

最初の2つは資料と機械的に突き合わせられます。3つ目は取材メモがあれば照合でき、4つ目は照合の対象外です。この線引きを最初に決めておくと、Claudeの出力を読むときに迷いません。

置く資料と置き場所を分ける

資料はProjectsの「ナレッジ」に置くものと、チャットに貼るものに分けます。

資料置き場所理由
ファクトシート置き場所プロジェクトのナレッジ理由取材のたびに使う正本で、全チャットに効かせたい
照合のルールを書いた指示置き場所プロジェクトの指示理由毎回同じ判定基準で動かしたい
届いた原稿(ゲラ)置き場所チャットに貼る理由案件ごとに別物で、他の案件に混ぜたくない
取材メモ・文字起こし置き場所チャットに貼る理由同上。発言の照合はその案件の中で完結する

ナレッジに置いた内容はプロジェクト内のすべてのチャットで使われ、ナレッジに入れていない情報はチャット間で共有されません。案件ごとの原稿をナレッジに入れ続けると、別の取材の原稿と混ざります。案件の資料はチャット側に置き、1取材につき1チャットを使うのが整理しやすい形です。

ナレッジとは別に、プロジェクトには独自のメモリーがあります。Free・Pro・Maxでは既定でオンで、Team・Enterpriseではオーナーが有効にしている場合に使えます。新しいメモリーはプロジェクトに保存され、アカウントのメモリーをオンにしていると、プロジェクト外のチャットからも参照されることがあります。ゲラの内容を他のチャットに持ち出したくない場合は、プロジェクトのページのMemoryで「Use account memory」をオフにします。1つのチャットだけ切り離すなら、最初のメッセージを送る前に「+」メニューで「Memory」をオフにします。そのチャットはプロジェクトのメモリーを使わず、書き込みもしません。

ファクトシートの作り方と項目設計は、プレスキットのファクトシートの作り方にあります。基準日・定義・丸め方の欄を持たせたシートだと、ゲラの「約400名」が古い数字なのか意図した丸めなのかを、根拠つきで判断できます。

照合用プロジェクトの用意

プロジェクトの作成画面で入力する名前と説明は、Claudeには渡りません。この点は公式の注記にもあります。照合の基準は説明欄ではなく、指示とナレッジに書きます。

手順

照合用プロジェクトの作り方

  1. 1

    プロジェクトを作る

    「+ New Project」から新規作成し、人が見分けられる名前を付けます。Freeプランで作れるプロジェクトは最大5つなので、ファクトシートと兼用にするかどうかもここで決めます。

  2. 2

    ファクトシートをナレッジに入れる

    「+」ボタンからファイルを追加します。プロジェクトのファイルは1つ30MBまでで、内容は基本的にテキスト抽出されます。ただしPDFは例外で、図表も含めて読める形式(multimodal PDF)があります。

  3. 3

    指示に判定のルールを書く

    「Set project instructions」から指示を保存します。この下に例を載せます。

指示の例です。書き方の一例なので、自社の運用に合わせて直してください。

あなたは広報の掲載前チェック係です。
- 会社の数字・社名・肩書は、ナレッジの「ファクトシート」だけを正とする。
- 原稿の記述は、判定を次の5種類で付ける。
  一致 / 値が違う / 定義が違う可能性 / シートに無い / 照合対象外(記者の評価)
- 「値が違う」は、シートの値と基準日を併記する。
- 発言の引用は、同じチャットに貼られた取材メモと照合する。メモに無い発言は「メモに無し」と書く。
- ファクトシートにも取材メモにも根拠が無いものを、推測で正誤判定しない。
- 原稿を書き直さない。直し案は、頼まれたときだけ出す。

最後の2行が運用の要です。根拠のない記述を「たぶん正しい」と判定させず、「根拠なし」のまま残させます。

原稿を貼って洗い出させる

案件ごとに新しいチャットを開き、原稿と取材メモを貼ります。依頼文は、洗い出しと直し案を分けます。

次の原稿は、取材記事の掲載前原稿です。
会社に関する数字、日付、社名、製品名、肩書、人名、そして私の発言(カギ括弧)を
すべて抜き出し、ファクトシートと取材メモに照合してください。
結果は表にして、列は「原稿の記載(段落番号つき)/ 照合先の値 / 判定」にしてください。
直し案はまだ出さないでください。
 
【原稿】
(ここに貼る)
 
【取材メモ】
(ここに貼る)

段落番号を求めるのがコツです。記者への依頼文に「第3段落の」と書けるので、あとで修正依頼にそのまま使えます。

返ってくる表は、次のような形になります。以下は架空の原稿を使った形式の例で、実際の出力は原稿とシートによって変わります。

原稿の記載照合先の値判定
第1段落「従業員約400名」照合先の値412名(連結・2026-03-31)判定値が違う(丸めの扱いを確認)
第2段落「2011年創業」照合先の値設立2012年4月判定値が違う
第3段落「山田太郎取締役」照合先の値代表取締役社長 山田 太郎判定値が違う(肩書)
第4段落「『顧客の7割が継続』」照合先の値取材メモに「約7割」判定定義が違う可能性(「約」の欠落)
第5段落「業界最大手」照合先の値なし判定照合対象外(記者の評価)

肩書の取り違えは、役員の書き分けでよく起きます。ファクトシートの代表者欄が「代表取締役社長 山田 太郎」の形で入っていれば、「取締役」との違いを拾えます。

発言の行は特に丁寧に見ます。「約7割」が「7割」になるだけでも、数字の強さが変わります。Claudeが付けた判定は、原稿と取材メモを自分の目で見て確かめてください。

添付ファイルで届いたゲラの扱い

ゲラは、Wordファイルやメール本文、PDFで届きます。チャットにはPDF・DOCX・TXTなどを添付でき、1チャットのファイル数は20まで、1ファイル500MBまでです。PDFは1,000ページまで。ゲラは数ページから十数ページが普通なので、この上限に当たることは考えにくい範囲です。

PDFのゲラは、紙面レイアウトのまま届くことがあります。段組みや図版キャプションの読み順が崩れると、段落番号がずれます。ずれが出たら、本文をテキストで貼り直して再実行すると、依頼文に書く番号と原稿の番号を揃えられます。

修正依頼の文面を作る

洗い出しの表を人が確認し、直してほしい行に印を付けます。そのうえで、印を付けた行だけを使って依頼文を作らせます。

上の表のうち、私が「直してほしい」と印を付けた行だけを使い、
記者宛ての修正依頼メールを書いてください。
- 冒頭は掲載前に確認の機会をもらったことへのお礼
- 修正は「段落番号 / 原稿の記載 / 正しい記載 / 根拠(社内資料名と基準日)」の箇条書き
- 表現や論調の変更依頼は入れない。事実の訂正だけにする
- 判断が分かれる点は、修正ではなく「確認させてください」の形で書く
- 敬体で、前置きは短くする

依頼を事実の訂正に絞るのは、相手との関係のためです。媒体によっては、掲載前の確認で受け付けるのは事実関係の訂正だけで、文章表現の変更は受けないと決めている場合があります。受け付け範囲は、記者から原稿が届いたときの案内で確かめてください。案内がない場合は、依頼を書く前に記者へ受け付け範囲を尋ねる選択肢があります。

使い分けを表にしておきます。

洗い出しの判定修正依頼での扱い
値が違う修正依頼での扱い「正しい記載」と根拠つきで修正を依頼する
定義が違う可能性修正依頼での扱い修正でなく「定義を確認させてください」とする
シートに無い修正依頼での扱い社内で根拠を確かめてから、依頼に入れるか決める
メモに無し(発言)修正依頼での扱い自分の記憶と録音で確かめ、違和感が残る分だけ確認を求める
照合対象外(記者の評価)修正依頼での扱い原則、依頼に入れない。事実と異なる場合のみ個別に相談する

発言の言い直しは慎重に

自分の発言が誤って載っているときと、載った発言が「言い過ぎだったと後から思った」ときは別の話です。前者は事実の訂正ですが、後者は発言内容の変更になります。取材メモと録音で言った内容が確認できる場合は、前者として根拠つきで依頼します。言った内容そのものを変えたい場合は、依頼文をClaudeに作らせる前に、広報責任者や関係部署と相談します。

機密と共有範囲の注意

掲載前の原稿は、記者が取材先に確認のために渡した未公開の文書です。Claudeに貼る前に、次を確認します。

  • 記者や媒体から、原稿を社外に出さないよう指示されていないか
  • 自社の情報システム部門が、外部AIサービスへの貼り付けを制限していないか
  • Team・Enterpriseのプロジェクトを共有している場合、プロジェクトのメンバーが誰か
  • プロジェクトのメモリーとアカウントのメモリーがオンのままで、ゲラの内容が他のチャットから参照されうる状態になっていないか

Team・Enterpriseプランのプロジェクトは組織内で共有でき、「Can view」でも内容と指示を見られます。「Can edit」ではナレッジと指示を変更できます。原稿はチャットに貼る運用にし、ファクトシートのプロジェクトに他の案件の資料を溜めないでおくと、共有範囲を意識しやすくなります。

照合で起きやすい2つの失敗

落とし穴

原稿を直させると、記者の文章が変わる

「この原稿を正しい内容に直して」と頼むと、数字以外の言い回しまで整った文に変わります。記者に返す対象は事実の訂正だけです。洗い出しと依頼文の作成を別の依頼に分けておくと、直す範囲が広がりません。

落とし穴

古いファクトシートで照合し、正しい記述を誤りと判定する

決算や人事異動の直後は、ゲラの数字のほうが新しいことがあります。判定が「値が違う」でも、シートの基準日が古ければ、原稿が正しいかもしれません。基準日を併記させる指示を入れておくのは、この見落としを防ぐためです。

取材の前後で1周する

取材から掲載までの流れに、この手順を組み込むと次のようになります。

手順

取材から掲載までの流れ

  1. 1

    取材の前

    ファクトシートの基準日が最新かを確かめ、必要なら更新しておきます。想定問答の練習は取材対応のメディアトレーニングの手順が使えます。

  2. 2

    取材の直後

    取材メモを整えます。録音がある場合は、文字起こしを残しておくと発言の照合が速くなります。

  3. 3

    ゲラが届いたら

    案件用のチャットを作り、原稿とメモを貼って洗い出します。期限が短いので、届いたその日のうちに表まで出しておきます。

  4. 4

    返信の前

    表の印付けは人が行い、修正依頼の文面を作らせます。送る前に、依頼の根拠が社内資料で追えるかを確かめます。

取材依頼そのものへの返信については、取材依頼への回答可否メモと返信下書きで扱っています。

数字が変わったとき

ゲラで見つかった食い違いが、実はシートの古さに原因があった場合は、記者への返信と同時にシートも直します。値と基準日を更新し、ナレッジのファイルを入れ替えます。入れ替えを忘れると、次の案件でも同じ食い違いが出ます。

手順の最後に、返信した修正依頼の内容を1行ずつ記録しておくと、掲載後に記事が出たときの確認が楽になります。直った箇所と直らなかった箇所が、記録と並べてすぐ見分けられるからです。

この記事を共有:XはてブLinkedIn