Claude Media
取材対応のメディアトレーニングをClaudeで行う — 記者役に追及させて採点

取材対応のメディアトレーニングをClaudeで行う — 記者役に追及させて採点

発表資料とNG回答をProjectsに置き、Claudeに記者役を演じさせて追及質問を重ねる練習の型です。採点は別のチャットで、伝えたい要点と答えない線を基準に行います。

取材対応の練習で一番足りなくなるのは、しつこく聞き返してくれる記者役です。社内の同僚は、回答が多少ずれても「なるほど」と流してしまいます。Claudeに記者役を任せれば、同じ質問を言い方を変えて何度でも重ねてくれます。

この記事では、発表資料と「答えない線」をProjectsに置き、記者役のチャットで追及を受け、別のチャットで採点するまでの型を扱います。記者の質問を先に洗い出して回答を固める作業はClaudeで記者会見の想定問答集を作る手順にあります。ここで扱うのは、固めた回答を口に出して耐えられるか確かめる側です。

想定問答だけでは足りない理由

想定問答集は、1問目への答えを用意する道具です。ところが取材では、答えた直後の聞き返しで崩れることが多くあります。

  • 同じ質問を言い換えて繰り返され、言い回しが毎回変わって矛盾が出る
  • 数字の根拠を聞かれ、資料に無い数字を口にしてしまう
  • 答えない項目を「では、していないということですか」と詰められ、肯定も否定もしてしまう
  • 仮定の質問に乗って、会社として言っていないことを話してしまう

どれも、台本を読むだけでは起きません。対話の形で、聞き返される圧を受けて初めて出ます。Claudeに記者役を任せる価値はここにあります。

役割は記者役・採点役・本人の3つに分ける

記者役を演じたチャットで、そのまま採点まで頼むのは避けます。演じている間は、役の流れに引きずられて講評がぶれやすいためです。

役場所渡す材料
記者役場所ロールプレイ用のチャット渡す材料発表資料、記者プロフィール、追及の型
採点役場所別のチャット渡す材料やり取りの全文、採点基準
広報・本人場所基準づくりと最終判断渡す材料伝えたい要点、答えない線

プロジェクト内のチャットどうしは、情報を知識ベースに追加しない限り文脈を共有しません。この性質のおかげで、記者役の記憶が採点役に混ざらず、練習のたびに白紙から始められます。

手順1: Projectsに素材を置く

プロジェクトを作り、知識ベースに素材を入れます。プロジェクト名と説明欄の内容はClaudeには渡らないため、振る舞いのルールは次の手順で指示欄に書きます。

知識ベースに置くもの:

  • 発表資料(プレスリリース、会見の配布資料)
  • 伝えたい要点(キーメッセージ)を3つ以内に絞った1枚
  • 答えない線の一覧(NG回答と、その理由、代わりに言うこと)
  • 数字の出典表(どの数字がどの資料のどこにあるか)
  • 記者プロフィール(媒体の関心、過去の記事の論調)

答えない線の一覧は、次のような形にすると記者役にも採点役にも使えます。

## 答えない線(例。自社の判断で書き換える)
| 話題 | 言ってはいけないこと | 代わりに言うこと |
| 他社との契約条件 | 金額、期間の推測 | 守秘義務のため差し控える |
| 原因が調査中の件 | 原因の断定 | 調査中で、判明次第公表する |
| 今期の業績見通し | 未公表の数字 | 次回の決算発表で説明する |

Freeユーザーが作れるプロジェクトは最大5つです。有料プランでは、知識ベースが文脈の上限に近づくとRAGモードが自動で有効になり、容量が最大10倍まで広がります。資料が多い案件でも置き続けられますが、数字の出典を聞く練習では、記者役が参照した箇所を人が確かめる前提にします。

手順2: 指示欄に記者役のルールを書く

Claudeの手引きには、役割を1文でも与えると振る舞いと口調が絞られること、指示・資料・入力はタグで分けると取り違えが減ること、指示の理由を添えると意図に沿いやすいことが書かれています。指示欄には、役の設定と追及のルールを理由つきで書きます。

このプロジェクトは取材対応の練習用です。
 
- 「記者役で」と言われたら、指定された媒体の記者を演じる
- 質問は1回に1つ。回答を受けたら、次の型から1つ選んで追及する
  1. 言い換え: 同じ内容を別の言葉で聞き直す
  2. 根拠: 数字や断言の出どころを聞く
  3. 矛盾: 前の回答や過去の発表とのずれを突く
  4. 仮定: 「もし〜なら」で未発表のことを言わせにいく
  5. 二択: 「はい、いいえで」と迫る
- 受講者が「答えない線」を理由つきで守っても、一度は食い下がる。
  ただし二度目以降は、質問を変える
- 記者役の間は助言をしない。理由: 本番では誰も助けてくれないため
- 「採点して」と言われたら記者役をやめ、知識ベースの採点基準だけで評価する

「二度目以降は質問を変える」は大事です。入れないと、記者役が同じ質問を延々と繰り返し、練習が消耗戦になります。

手順3: 記者を媒体ごとに変えて回す

記者のタイプを変えると、同じ回答でも突かれる点が変わります。例えば次の3種を用意します。

記者のタイプ関心主な追及の型
経済紙関心数字、業績への影響、他社比較主な追及の型根拠、矛盾
業界専門紙関心技術、規格、取引先との関係主な追及の型言い換え、仮定
Webメディア関心批判的な切り口、見出しになる一言主な追及の型二択、仮定

始め方は短くて構いません。

記者役でお願いします。媒体は「経済紙」のカードで、
今日の題材は新サービスの発表です。最初の質問から始めてください。
私が広報担当として答えます。

回すときのルールは次のとおりです。

  • 声に出して答える代わりに文字で打つ場合も、本番で話す長さに揃える
  • 1回の回答は、本番で話す30秒ほどを目安にする
  • 詰まっても、助言を求めずに最後まで続ける
  • 5〜10往復で止め、そのまま採点のチャットに移る

「30秒」は練習の目安として置いた数字で、公式の推奨ではありません。自社の会見の持ち時間に合わせて変えてください。

追及の型ごとの受け方を先に決めておく

採点基準だけでなく、型ごとの「崩れない受け方」を人が決めておくと、記者役の追及が練習として意味を持ちます。受け方は広報の方針なので、次は書き換える前提の例です。

追及の型崩れる典型受け方の例
言い換え崩れる典型言葉を変えるうちに中身まで変わる受け方の例核になる一文を決め、聞かれ方が変わっても同じ一文に戻る
根拠崩れる典型出典表にない数字を口にする受け方の例出典表にある数字だけを言い、無ければ「確認して後ほど回答する」
矛盾崩れる典型過去の発表を否定するか、慌てて言い訳する受け方の例過去の発表の趣旨を確認してから、変わった点と変わらない点を分けて答える
仮定崩れる典型「もし〜なら」に乗って未発表のことを話す受け方の例仮定には答えず、確定している範囲に戻る
二択崩れる典型「はい」か「いいえ」で言い切って後で困る受け方の例二択に乗らず、事実を一文で述べてから理由を足す

この表を知識ベースに置けば、記者役は型を選んで仕掛け、採点役は受け方に照らして崩れを指摘できます。同じ表を二つの役が読むので、練習と採点の物差しがずれません。

やり取りのイメージ

次は、型の使われ方を示すための例示です。実際の出力ではなく、指示欄のルールに沿うとこういう流れになる、という想定の一場面です。

記者役: 新サービスの初年度の売上目標は、いくらを見込んでいますか。
広報:   目標額は公表していません。まず、今回の発表の狙いは〜です。
記者役: 公表していないということは、社内にはあるのですか。
広報:   今期の見通しは、次回の決算発表で説明します。
記者役: 先月の説明会では「年内に黒字化」とお話しでしたが、
        今回の発表と整合しますか。

2問目は「答えない線」を踏ませにいく型、3問目は過去の発表との矛盾を突く型です。1問目の回答を受けて次が決まる構造は、想定問答集の「質問一覧」からは出てきません。これが対話で練習する意味です。

難易度を段階で上げる

最初から厳しい記者役を回すと、受講者が萎縮して練習になりません。次の順で上げます。

  1. 初回: 型を「言い換え」と「根拠」の2つに限定し、記者役は穏やかな口調にする
  2. 2回目以降: 「矛盾」と「仮定」を足し、過去の発表を知識ベースに入れる
  3. 仕上げ: 「二択」を入れ、記者役の口調も厳しめにする

指示欄の「使う型」の一行を書き換えるだけで切り替えられます。受講者ごとに崩れる型が違うので、採点結果の「崩れた型」を見て、次回の型を選びます。

手順4: 別のチャットで採点する

終わったら新しいチャットを開き、やり取りの全文を貼ります。採点基準は、伝えたい要点と答えない線から作ります。

採点して。知識ベースの採点基準だけを根拠にしてください。
 
<transcript>
(記者役とのやり取りの全文)
</transcript>
 
出力の形式:
1. キーメッセージごとに、回答中で伝わったか(○/△/×)と根拠の引用
2. 答えない線を踏んだ発言の一覧(引用と、言い換え案)
3. 資料に無い数字、または資料と違う数字を口にした箇所
4. 追及の型ごとに、崩れた回答の引用(崩れていなければ「なし」)
5. 次の練習で直す点を2つだけ

採点基準は5項目ほどに絞ります。

項目見るポイント
要点の到達見るポイントどの回答でも、伝えたい要点に戻れたか
答えない線見るポイント一覧の話題を理由つきで断れたか
数字の一致見るポイント出典表と違う数字を口にしていないか
一貫性見るポイント言い換えで聞かれても、同じ内容を答えたか
仮定への対応見るポイント未発表のことを話さず、確定している範囲に戻せたか

根拠の引用を必須にすると、Claudeが印象で採点していないかを人が検証できます。直す点を2つに絞るのは、講評が長くなって受講者が受け止めきれなくなるのを防ぐためです。

取材の形式に合わせて記者役の指示を変える

同じ発表でも、取材の形式で必要な練習が変わります。形式は記者役の指示欄に一行足すだけで切り替えられます。

形式記者役への指示の例重点を置く点
記者会見記者役への指示の例複数の記者が交互に質問する設定にする重点を置く点質問者が変わっても一貫して答える
囲み取材記者役への指示の例短い質問を立て続けに投げ、1問ごとの間を空けない重点を置く点短く言い切り、要点に戻る
個別取材記者役への指示の例1つのテーマを深掘りし、5往復以上追う重点を置く点根拠と矛盾への耐性
電話・書面での確認記者役への指示の例事実確認の質問を並べ、数字と固有名詞を問う重点を置く点出典表との一致

会見形式では、受講者の集中が切れる後半の質問に難しいものを置くよう頼むと、本番に近づきます。囲み取材の練習では、1回の回答を一文から二文に絞ることを採点項目に足します。

練習の記録を残して弱点を追う

採点結果は、その場で読んで終わらせず、短い台帳に残します。受講者と日付、使った記者タイプ、崩れた型、直す点の4列があれば十分です。

| 日付 | 受講者 | 記者タイプ | 崩れた型 | 直す点 |
| 10/13 | 広報A | 経済紙 | 根拠 | 資料にない数字を口にした |

数回分たまったら、台帳をプロジェクトの知識ベースに入れ、「崩れた型の傾向を受講者ごとにまとめて」と頼みます。傾向が出れば、次の練習で重点的に仕掛ける型を指示欄に書けます。台帳に受講者の実名を入れる場合は、閲覧できる範囲を共有設定で確かめてから置いてください。

採点を鵜呑みにしないための点検

Claudeの採点は、広報担当が確認する下書きとして扱います。

  1. 最初の数回は、広報担当が同じやり取りを採点して並べる。食い違った項目は、基準の文を行動で書き直す
  2. 同じやり取りを別チャットで2回採点させ、判定が変わる項目を探す。変わる項目は基準が曖昧な可能性が高い
  3. 答えない線を踏む回答をわざと作って採点させ、見逃しがないか確かめる

また、記者役のClaudeは実在の記者ではありません。実際の記者がどの媒体でどんな聞き方をするかは、過去の記事や会見録を知識ベースに入れた範囲でしか寄せられません。本番直前には、広報経験者が見る回を1度は挟んでください。

共有と情報の扱い

発表前の資料を入れるプロジェクトは、非公開にするのが基本です。Team・Enterpriseプランでは、作成時に「招待した人だけ」か「組織全体」かを選べ、作成後に切り替えることもできます。非公開のプロジェクトは、チャット、ナレッジ、Artifactsとも、招待していない人には見えません。

権限は「閲覧のみ」と「編集可」です。登壇者には閲覧のみで共有すれば、答えない線や採点基準を書き換えられずに練習できます。広報担当は編集可のままにして基準を更新します。公開プロジェクトでも、各自のチャットは本人だけのものです。

受講者の失敗した応対は、本人にとって見られたくない記録にもなります。練習のやり取りを個人のメモリに残したくないときは、最初のメッセージを送る前に「+」メニューでメモリをオフにします。このチャットは、メモリを使わず、プロジェクトのメモリにも追加されません。

よくあるつまずき

  • 記者役がすぐ納得して終わる: 指示欄に「一度は食い下がる」を入れたか確認する。型を指定して「根拠で追及して」と頼む方法もある
  • 記者役が資料に無い事実を持ち出す: 「資料にある事実だけで質問する」を指示欄に足す。本番の記者は外部情報を使うため、練習用に外部情報を足したい場合は、その旨を明示して知識ベースに入れる
  • 記者役が途中で助言を始める: 「記者役の間は助言をしない」の行が指示欄に残っているか確かめる。助言が欲しい場合は、採点のチャットで頼む
  • 採点が毎回甘い: 基準に「引用がない判定は無効」と書く
  • 古い回答案で練習している: 修正版を知識ベースに入れ直していない。古いファイルは外す
  • 発表後の反応まで備えたい: 炎上リスクの見立てはClaudeでSNS投稿前の炎上リスクをチェックする手順が続きの作業になる

まとめ

取材対応の練習は、答えを用意することと、聞き返されても崩れないことの2段で考えると整理しやすくなります。後者を担うのが記者役のロールプレイで、記者役、採点役、人の3つに分ければ、練習のたびに同じ基準で見直せます。基準と答えない線を決めるのは人で、Claudeには聞き返しの回数と採点の手間を任せます。プロジェクト機能の全体像はClaude Projects完全ガイドにあります。

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