Claudeでプレスリリースの文面を下書きする手順
発表メモと会社概要を渡してClaudeにプレスリリースの下書きを作らせる手順。定型構成への落とし込み方と、数値・引用・日付を人が確定させる線引きをまとめます。
プレスリリースの下書きでClaudeに任せる範囲
Claudeにプレスリリースを下書きさせるときの要点は一つです。文章の形を整える作業は任せ、事実を確定させる作業は人が持ちます。
プレスリリースは、発表の要点、見出し、リード文、本文、会社概要、経営陣のコメントという定型に沿って書きます。この骨組みへ手元のメモを流し込む作業は、Claudeがもっとも得意な部分です。一方で、売上や提携先の名称、発表日、役員の発言は、間違えると訂正リリースになります。ここはClaudeが書いた文面を、人が元資料と突き合わせて確定させます。
この記事では、入力メモの作り方、指示文の書き方、Projectsへの定型情報の置き方、Word形式での受け取り方、そして公開前の確認表までを順に扱います。
入力メモは5W1Hの素材にそろえる
下書きの質は、渡すメモでほぼ決まります。文章の指示より先に、素材を5W1Hに分けて用意します。
| 項目 | 渡す内容の例 | 確定させるのは |
|---|---|---|
| いつ | 渡す内容の例発表日、提供開始日 | 確定させるのは広報担当 |
| だれが | 渡す内容の例会社名、部署、発表者 | 確定させるのは広報担当 |
| なにを | 渡す内容の例製品名、サービス名、機能 | 確定させるのは事業責任者 |
| どこで | 渡す内容の例提供地域、提供チャネル | 確定させるのは事業責任者 |
| なぜ | 渡す内容の例開発の背景、解決する課題 | 確定させるのは事業責任者 |
| どのように | 渡す内容の例価格、提供方法、利用条件 | 確定させるのは事業責任者・法務 |
メモは箇条書きで構いません。文章になっていなくても、Claudeは断片を読み取って構成に並べ直せます。ただし、メモに無い情報をClaudeが補うと、もっともらしい数値や固有名詞が混ざる恐れがあります。次の一文を必ず指示に入れておきます。
メモに書かれていない数値・固有名詞・日付は本文に入れないでください。
不足している項目は「【要確認:○○】」と書いて残してください。「要確認」の印を本文に残させると、人が確定する箇所が探しやすくなります。空欄のまま推測で埋められるより、印のついた空欄のほうが安全です。
定型構成へ落とし込む指示文
構成は指示で固定します。順番と各パートの分量を先に決めておけば、出力のぶれが小さくなります。
以下のメモから、プレスリリースの下書きを作成してください。
構成:
1. 見出し(全角30字前後)と副見出し
2. リード文(発表日・発表主体・発表内容を1段落で)
3. 本文(背景 → 製品・サービスの特徴 → 提供条件の順)
4. 経営陣コメント(コメント案。発言者名は【要確認】のまま)
5. 会社概要(末尾に置く定型欄)
6. 問い合わせ先
条件:
- 敬体ではなく、報道向けの常体(だ・である調)で書く
- 形容詞による誇張(「画期的」「業界初」など)は根拠がメモにあるときだけ使う
- メモにない数値・日付・固有名詞は書かず、【要確認:○○】と残す
メモ:
(ここに5W1Hの素材を貼る)文体の指定は、社内の過去リリースに合わせます。常体と敬体のどちらを使うかは会社ごとに違うため、指示で明示しておくと後の直しが減ります。
「業界初」「国内最大」のような最上級の表現は、根拠となる調査や出典が必要です。Claudeに任せず、根拠資料が手元にあるときだけ人が加えるほうが安全です。
会社概要と過去リリースはProjectsに置く
毎回貼り直す情報は、Projectsのナレッジとして置いておけます。Projectsは、独自のチャット履歴とナレッジベースを持つ、閉じた作業空間です。文書やテキストをアップロードしておけば、そのプロジェクト内のチャットで背景として使われます。プロジェクトごとにカスタム指示も設定でき、公式の例には「より丁寧な口調で答える」「特定の役割や業界の視点で答える」があります。
プレスリリース用のプロジェクトには、次の3種類を入れておくと運用が楽になります。
- 会社概要の最新版(boilerplateと呼ばれる定型欄の原稿)
- 過去に公開したリリース数本(文体と構成の見本)
- 社内の表記ルール(社名の正式表記、製品名の大文字小文字、禁止語)
カスタム指示には、次のように役割と禁止事項を書いておきます。以下は指示の一例です。
あなたは自社の広報担当の下書き係です。
- 会社概要は、ナレッジの「会社概要_最新版」をそのまま転記する。書き換えない。
- 文体は、ナレッジの過去リリースに合わせる。
- 事実が不明な箇所は推測で埋めず、【要確認:○○】を残す。会社概要を「そのまま転記する」と指定するのが肝です。定型欄は一字一句が法務・広報の確認済みであることが多く、Claudeが言い換えると設立年や資本金のような数字がずれる余地が生まれます。
Team・Enterpriseプランでは、プロジェクトを組織内で共有できます。「閲覧のみ」の権限ならナレッジと指示を見てチャットできますが編集はできません。「編集可」なら指示やナレッジも変更できます。広報部門だけが編集し、他部署は閲覧にとどめる運用が考えられます。
有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)では、ナレッジがコンテキストの上限に近づくとRAGが自動で有効になり、容量が最大10倍まで拡張されます。過去リリースを大量に入れても扱えますが、見本は数本に絞ったほうが文体の参照先が明確になります。
資料を読み込ませてWordで受け取る
メモが手元の資料に散らばっているときは、ファイルを直接アップロードできます。対応する形式にはPDFやDOCXが含まれ、1つのチャットにつき最大20ファイル、1ファイル30MBまでです。PDFは、100ページ以下なら文章と図表の両方が、101〜1000ページなら文章だけが解析されます。DOCXなど非PDFの文書は文章だけが抽出され、埋め込まれた画像は読み取られません。図表に発表の根拠となる数字がある場合は、その数字を文章で書き写して渡してください。
下書きの受け取りには、ファイル作成機能を使います。「コード実行とファイル作成」を有効にすると、Claudeが会話の中でWord(.docx)やPDFのファイルを作り、ダウンロードできます。Googleドライブへ直接保存する方法もあります。Free・Pro・Maxでは、Settings > Capabilitiesで「Code execution and file creation」をオンにします。TeamとEnterpriseは組織の既定で有効ですが、オーナーが無効化していることがあります。ファイル作成の全体像はClaudeでファイル作成・編集ができる範囲とセキュリティ設定にまとめています。
指示は次のように足します。
上の下書きを、A4縦・1ページ半程度のWord文書(.docx)にしてください。
【要確認】の箇所は黄色でハイライトしてください。ハイライトの実現方法は公式ドキュメントに記載がないため、出力を開いて確認してください。ファイルの生成は通常のチャットより使用量の上限を消費しやすい点にも注意が必要です。文面の推敲は通常のチャットで済ませ、最終版を作るときだけファイル作成を使うと消費を抑えられます。
Wordの上で直接仕上げたいときは、Claude for Wordの使い方にある追跡変更モードでの提案が使えます。修正履歴を残しながら、広報・法務の確認を回せます。
リード文と見出しを書き分けさせる
リード文は、記事の冒頭で「いつ・だれが・なにを発表したか」を一段落で言い切る部分です。ここが弱いと、続きを読まれずに終わります。見出しとリード文は役割が違うため、指示も分けます。
- 見出し: 発表の核心を一文で。社名と製品名を先頭近くに置く
- 副見出し: 見出しに入りきらない補足(提供開始時期や対象)を一行で
- リード文: 発表日、発表主体、発表内容の三点を含め、背景は本文へ回す
見出しは案を3本出させ、人が選ぶ運用が向いています。一本だけ出させると、それが妥当かどうかの比較ができません。
見出し案を3本、それぞれ違う切り口(製品名を主語にする/課題を主語にする/
提供開始日を主語にする)で出してください。各案は全角35字以内にしてください。下書きをメモと突き合わせる点検を、Claudeにも回させる
人の照合の前に、Claudeへ一次点検をさせると、見落としが減ります。下書きに含まれる数値・固有名詞・日付を一覧にし、メモのどの行が根拠かを対応づけさせる方法です。
下書きに登場する数値・日付・固有名詞をすべて抜き出し、
メモのどの記述が根拠かを表にしてください。
根拠が見つからないものは「根拠なし」と書いてください。「根拠なし」と返ってきた項目は、本文から削るか、メモに事実を足して書き直します。この点検はあくまで補助です。メモ自体が間違っていれば、対応づけは成立しても誤りは残ります。最終的な突き合わせは、決裁記録や集計資料といった元の資料で人が行います。
人が確定させる項目の確認表
Claudeの下書きを社外へ出す前に、次の項目を元資料と1件ずつ照合します。
| 確認項目 | 見る場所 | 起きがちなずれ |
|---|---|---|
| 発表日・提供開始日 | 見る場所社内の決裁記録 | 起きがちなずれ「本日」「来月」の相対表現が残る |
| 数値(売上・件数・価格) | 見る場所元の集計資料 | 起きがちなずれ桁や単位、円とドルの取り違え |
| 社名・製品名・役職 | 見る場所表記ルール | 起きがちなずれ正式名称と略称が混在する |
| 提携先・顧客名の記載 | 見る場所契約書、先方の許諾 | 起きがちなずれ先方の承諾なしに名前が入る |
| 経営陣コメント | 見る場所本人の承認 | 起きがちなずれ本人が言っていない発言が入る |
| 最上級・比較の表現 | 見る場所根拠となる調査 | 起きがちなずれ根拠のない「初」「最大」 |
| 将来予測の記述 | 見る場所事業計画 | 起きがちなずれ確定事項のように書かれる |
このうち経営陣のコメントは、Claudeがコメント案を出せても、発言として公開してよいのは本人が承認した文面だけです。案を作るときは「発言者の名前と役職は【要確認】のまま残す」と指示しておき、本人の確認を経て確定させます。
数値は、Claudeに計算させた結果も含めて再確認します。ファイル作成機能でExcelを扱えるとはいえ、リリースに載せる数字は元の集計資料と一致していなければなりません。
個人情報や未公開情報を扱うときの注意
発表前のリリースは、その時点では未公開の情報です。Team・Enterpriseの組織では、ネットワークアクセスの設定が既定でオフまたはパッケージ管理ツールのみに制限されており、外部への通信を抑えられます。ただし、MCP連携を有効にしている場合は、ネットワークの設定にかかわらず、その連携を通じた通信が可能なままです。
公式ドキュメントは、外部のファイルやウェブサイトに仕込まれた指示でClaudeが意図しない動きをする可能性に触れ、作業を見守り、想定外のデータ参照があれば止めるよう勧めています。取引先から受け取った資料を読み込ませるときは、出所の分からないファイルを混ぜないようにします。
よくあるつまずき
- 本文に「要確認」が残ったまま公開してしまう: 印は本文を検索して消し込みます。Wordの検索で「要確認」を探し、ゼロ件になるまで確認します。
- 会社概要が言い換えられる: 指示に「転記のみ」と書いていないと起きます。Projectsのカスタム指示に入れておくと、毎回書かずに済みます。
- 文体が過去のリリースと合わない: 見本のリリースを2〜3本添え、「この文体に合わせる」と指示します。
- ハイライトや余白が期待どおりにならない: 体裁の直しは、文面を確定させたあとの最終工程に回します。
似た流れで、確認が必須の届出書類を下書きする方法は個人情報の漏えい報告をClaudeで下書きする際の注意点でも扱っています。事実の確定を人が握る点は、プレスリリースと同じ考え方です。
まとめ
プレスリリースの下書きでは、Claudeに構成の型と文章の整形を任せ、数値・日付・引用・最上級表現を人が確定させます。メモに無い情報は書かせず、印を残させる。会社概要は転記に固定する。この二点を指示に入れるだけで、確認の手間は大きく変わります。発表資料をスライドにも展開したいときは、Claudeでプレゼン資料を作るワークフローが続きの手順になります。