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Claudeでサプライヤーの排出量データ収集を進める — Scope3カテゴリ1の回答票から集計まで

Claudeでサプライヤーの排出量データ収集を進める — Scope3カテゴリ1の回答票から集計まで

サプライヤーへのCO2排出量データ依頼を、依頼先の絞り込み・回答票・依頼文面・返答の点検・原単位での補完の順に進める手順です。単位とバウンダリのずれの見つけ方つき。

サプライヤーから返ってきた排出量の数字は、そのまま足し合わせられません。単位がkgとtで混ざり、算定範囲が製品の廃棄まで含んでいたり、期間が会計年度とずれていたりするためです。Claudeに任せられるのは、依頼文面の下書きと、返ってきた回答票の不整合の洗い出しです。依頼先の選定、配分方法、原単位の選択は人が決めます。

この記事は、Scope3カテゴリ1(購入した製品・サービス)で、サプライヤーに排出量データを依頼して集計する担当者向けです。依頼先の絞り込み、回答票の設計、依頼文面、点検、配分と原単位での補完の順に進めます。データの拠り所は、環境省の「1次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド」(Ver.1.0)と、同省の排出量算定Q&Aです。

カテゴリ1の算定でClaudeに任せる範囲

カテゴリ1の対象は、自社が購入・取得した原材料、中間製品、最終製品(仕入れ商品を含む)と、ソフトウェア等のサービスです。事業に直接関わる直接調達だけでなく、事務用品などの間接調達も入ります。

算定の方法は大きく2つです。取引先から排出量の提供を受ける方法(1次データ)と、活動量を自社で集めて排出原単位を掛ける方法(2次データ)があります。環境省の1次データ活用ガイドは、1次データ方式の利点を「サプライヤーの削減努力が算定結果に反映される」点に、欠点を「データが入手できない・入手コストが高い場合がある」点に置いています。一方、2次データ方式は排出量の多いカテゴリを大まかに掴むのに向く反面、削減努力は反映されません。

この2つは併用できます。ガイドも、1次データを集めるサプライヤーの比率を徐々に高める進め方を認めています。つまり全社から回収する必要はなく、回収できた分だけ2次データを置き換えていく運用です。

作業ごとの分担は次のとおりです。

作業Claudeに任せるか理由
依頼文面・回答票の説明文の下書きClaudeに任せるか任せる理由条件を箇条書きで渡せば文面にできる
返ってきた回答票の読み取りと突合Claudeに任せるか任せる理由単位・期間・バウンダリの記載を拾う作業
不整合の洗い出しと問い合わせ文Claudeに任せるか任せる理由点検ルールを渡せば機械的に当てられる
依頼先の選定基準の決定Claudeに任せるか人が持つ理由調達戦略と算定目的で変わる
配分方法の選択Claudeに任せるか人が持つ理由因果関係を最もよく反映する指標の判断
排出原単位の選定・開示の判断Claudeに任せるか人が持つ理由算定結果の責任は算定事業者にある

Claude for Excelをシートの点検に使う場合は、公式の案内にある制限も押さえておく必要があります。同アドインはPro・Max・Team・Enterpriseの各プランで使え、マクロとVBA、データテーブルには対応しません。監査で問われる計算を検証なしに任せる使い方は推奨されていません。数値の最終確認は人が持つ、という分担はこの記述とも合います。

依頼先は支出上位から絞る

サプライヤー全社に依頼すると、回答の質の確認が追いつきません。1次データ活用ガイドも、全サプライヤーで1次データを使うのは現実的でないとし、2次データによる算定結果に占める割合や、支出額に占める割合で対象を選ぶよう勧めています。

絞り込みの基準として、環境省のQ&Aは、GHGプロトコルのScope3基準が示す考え方を紹介しています。

  • 総支出額の80%に届くまで、支出額の大きいサプライヤーを上から選ぶ
  • 残り20%の中でも、個々に総支出額の1%を超えるものは対象に加える

この手順の前半、つまり購買明細をサプライヤー別に集計して累積構成比を出す作業は、ABC分析で仕入先を絞る手順と同じ形です。表記ゆれの統合までそちらで済ませたリストを、そのまま依頼先リストにできます。

注意点が1つあります。同じ品目でも、サプライヤーによって返せるデータの種類が違います。製品ごとの排出量を出せる会社もあれば、会社全体の排出量しか出せない会社もあります。依頼先リストの段階で、どちらを求めるかを品目ごとにメモしておくと、次の回答票の設計が楽になります。

回答票の列を決める

回答票は、最初に列を決めてしまうのが肝心です。Claudeに「適当に作って」と頼むと、後で突合できない自由記述の表が返ってきます。

サプライヤーから受け取るデータには2種類あります。

種類中身自社での使い方
製品ベース中身単位量あたりの排出量(L・kg・m3・個などあたり)自社での使い方自社の調達量を掛ける
組織ベース中身会社全体のScope1・2・3排出量(t-CO2e)自社での使い方取引額などで配分して使う

どちらを求めるにしても、算定範囲(バウンダリ)はCradle-to-Gateです。カテゴリ1が見るのは購入した製品の上流の排出量、つまり原材料の調達から生産までだからです。製品カーボンフットプリントやLCAの数字は、廃棄までを含むCradle-to-Graveの場合があります。ガイドは、その場合はCradle-to-Gateの値を改めて依頼するよう求めています。

あわせて聞いておきたい項目を、ガイドの補足情報の例から回答票の列にすると次のようになります。

列聞くこと空欄だったときの扱い
排出量の値と単位聞くこと製品ベースは何あたりか、組織ベースはt-CO2e空欄だったときの扱い受け付けない
バウンダリ聞くことCradle-to-Gateか。組織ベースなら含むScopeとカテゴリ空欄だったときの扱い受け付けない
算定期間聞くこと年度か暦年か空欄だったときの扱い再依頼
保証・検証の有無聞くこと第三者の検証を受けているか、その範囲空欄だったときの扱い「なし」として扱う
除外項目・カットオフ聞くこと算定から外した活動と判断基準空欄だったときの扱い任意
依拠した基準聞くこと算定に使った標準やガイドライン空欄だったときの扱い任意
使用した排出原単位聞くことGWP値や2次データDBの種類空欄だったときの扱い任意
1次データ比率聞くことさらに上流から直接入手したデータの割合空欄だったときの扱い任意

必須と任意を分けているのは、ガイドが「初めから全項目で収集するのは実務上難しい」としているためです。バウンダリのように、カテゴリ1の定義そのものに関わる項目は必ず把握する項目に、それ以外は経年で徐々に増やす項目に置いています。入手できない項目があるからといって1次データの活用を断念しない、という整理です。

依頼文面をClaudeで下書きする

回答票の列が決まれば、依頼文は条件の差し込みで作れます。次は、Claudeに渡す指示の一例です。

サプライヤー向けに、CO2排出量データの提供依頼メールを作ってください。
- 目的: 当社のScope3カテゴリ1の算定に使う
- 対象品目: (品目名を入れる)
- 求めるデータ: 製品ベースなら単位量あたりの排出量。
  難しければ組織全体のScope1・2・3排出量
- 算定範囲: 原材料の調達から生産まで(Cradle-to-Gate)。
  廃棄・リサイクルは含めない
- 期間: (年度を入れる)
- 同時に回答票の必須列を埋めてほしいこと
- 提出期限は「(日付を入れる)」の空欄にする
- 宛名と署名は空欄にする
- 回答が難しい項目は空欄のまま提出してよいと書く

最後から2行目の「空欄のまま提出してよい」は、回収率を左右します。全項目を必須にすると、小規模なサプライヤーが回答自体を見送ることがあります。必須の列は先ほどの表の上3つに絞り、残りは任意で受け付けます。

下書きを確認するときの観点は2つです。依頼する範囲がCradle-to-Gateと明記されているか。期限や宛名の空欄が残ったまま送られないか。ここは人の目で見ます。

返ってきた回答票の点検

回答は、サプライヤーごとにファイル形式も書式もばらばらで届きます。点検で見るのは、先ほどの回答票の必須列が整っているかと、数字が前年と大きく離れていないかです。

ガイドは、サプライヤーのデータ品質を確かめる方法として、補足情報の収集に加えて、前年度の同じサプライヤーの値と比べて著しい乖離がないかを確認することを挙げています。乖離があれば要因を聞く、という流れです。

次の分岐は、Claudeに点検させる際のルールをそのまま図にしたものです。

切り分け

返ってきた値の切り分け

  1. Q単位は自社の調達量の単位と揃っているか?
    答えがいいえのとき

    t・kg・個の換算を依頼するか、受け取った値を換算して出典を記録します。tとkgの取り違えは1,000倍のずれになります。

    答えがはい
  2. QバウンダリはCradle-to-Gateか?
    答えがいいえのとき

    廃棄まで含む値は、カテゴリ1には使えません。Cradle-to-Gateの値を再依頼します。

    答えがはい
  3. Q算定期間は自社の報告期間と合っているか?
    答えがいいえのとき

    期間のずれは注記して使うか、同じ期間の値を再依頼します。

    答えがはい
  4. Q前年の値と大きく離れていないか?
    答えがいいえのとき

    離れている場合は、事業の変化なのか算定範囲の変更なのかをサプライヤーに聞きます。

    答えがはい

集計に回せる

保証・検証の有無を記録したうえで、製品ベースは調達量を掛け、組織ベースは配分の計算へ進みます。

ルールを機械的に当てる部分は、スクリプトにしておくと毎回同じ結果になります。次は、回答票をCSVに書き出した前提の点検スクリプトです。Claudeのコード実行ツールやClaude Codeで走らせる使い方を想定しています。自社の調達量がt単位の場合の例なので、単位の許容値は自社の事情に合わせて書き換えてください。

import csv, sys
 
# 列: supplier,item,basis,value,unit,boundary,period,assurance,prev_value
# 自社の調達量が t 単位なら、製品ベースは t-CO2e/t で揃える
EXPECTED_UNITS = {"product": {"t-CO2e/t"}, "org": {"t-CO2e"}}
 
def flags(row):
    out = []
    basis, unit = row["basis"].strip(), row["unit"].strip()
    if unit not in EXPECTED_UNITS.get(basis, set()):
        out.append(f"単位が {unit}(換算が必要)")
    if row["boundary"].strip().lower() != "cradle-to-gate":
        out.append(f"バウンダリが {row['boundary']}")
    if not row["period"].strip():
        out.append("算定期間が空欄")
    if not row["assurance"].strip():
        out.append("保証・検証の有無が空欄")
    try:
        cur, prev = float(row["value"]), float(row["prev_value"])
        if prev > 0 and abs(cur - prev) / prev > 0.3:
            out.append(f"前年比 {cur / prev:.2f} 倍")
    except ValueError:
        out.append("数値として読めない値がある")
    return out
 
with open(sys.argv[1], newline="", encoding="utf-8") as f:
    for row in csv.DictReader(f):
        fl = flags(row)
        print("要確認" if fl else "OK", row["supplier"], row["item"],
              "; ".join(fl), sep="\t")

架空のサプライヤー3社の回答を入れて実行すると、次のように出ます。前年比のしきい値(ここでは30%)は例示用の値で、公式の基準ではありません。

python3 check_responses.py sample.csv
OK	A製鋼	鋼板
要確認	B樹脂	樹脂ペレット	単位が t-CO2e/kg(換算が必要); バウンダリが cradle-to-grave; 保証・検証の有無が空欄; 前年比 1.70 倍
要確認	C精密	切削部品	算定期間が空欄; 前年比 1.71 倍

B樹脂のように指摘が重なる行は、問い合わせ文を1通にまとめて送れます。Claudeには、この出力を渡して「指摘された項目だけを尋ねる問い合わせメールを作って」と頼みます。抜けた項目の再依頼を文面にする流れは、Claudeで不使用証明書の回収漏れを確認すると同じです。

受け取ったExcelをそのままClaudeに開かせない

サプライヤーから届いたExcelは、外部由来のファイルです。Claude for Excelの案内は、外部のファイルには隠れた指示が仕込まれ、アドインがデータの抜き出しや書き換えに誘導される可能性があるとして、信頼できるスプレッドシートでだけ使うよう求めています。リスクのある操作を提案するときは確認が出るので、外部ファイルでは特に確認画面を読み飛ばさないでください。回答票を自社の様式に転記してから点検にかける、という手順を挟むと安全です。

組織ベースの値は配分して使う

会社全体の排出量しか出せないサプライヤーには、自社向けの分を切り出す配分が必要です。Scope3基準は、製品の製造と排出の因果関係を最もよく反映する指標を使うよう求めています。物量で配分する方法と、市場価値で配分する方法があります。複数の製品を扱う会社の組織全体の値を物量で割るのは難しいため、ガイドは実務上、売上金額で配分する場合が多いとしています。

計算式はガイドのパターンAに沿うと、次のとおりです。

自社分の排出量 = サプライヤーの排出量(t-CO2e)
               × 自社との取引額(円) ÷ サプライヤーの総売上高(円)

架空の数字で確かめます。サプライヤーの排出量が12,000 t-CO2e、総売上高が300億円、自社との取引額が1.5億円なら、12,000 × 1.5 ÷ 300 = 60 t-CO2eです。サプライヤー側で排出量を総売上高で割った原単位(t-CO2e/円)を出してもらい、取引額に掛けるパターンBでも結果は同じになります。

売上高は、排出量の算定期間と同じ期間の値を使います。回答票に算定期間の列を設けたのは、この計算で期間をそろえるためでもあります。ここまでの数式の組み立てや検算は、Claudeにコード実行を任せられます。表計算の自動化の例は、トンキロ法のCO2排出量を月次集計する手順にあります。

売上金額で配分すると、単価の高い製品を買うほど排出量が大きく出ます。物量で配分できる情報がサプライヤーにあるなら、そちらを優先します。

回答が来ない分は排出原単位で補う

依頼しても返事のないサプライヤーや、依頼先から外した少額の取引は、2次データで埋めます。環境省の排出原単位データベースはVer.3.6(2026年4月リリース)が最新版で、Excelで公開されています。

活動量が支出額なら、産業連関表ベースの原単位を使います。ここで迷いやすい点がQ&Aに載っています。

  • 生産者から直接買うなら生産者価格ベース、商社や小売を介して買うなら購入者価格ベースの原単位を、それぞれ購入額に掛ける
  • 産業連関表ベースの原単位は輸送の排出を除いてあるため、サプライヤーからの輸送はカテゴリ4で別に算定する
  • 品目がぴったり当てはまらなければ、国の標準的な商品分類で上位の項目を探し、その原単位を使う
  • 海外から調達しているなら、データベースにある海外の原単位データベースから選ぶ

この段階で、回答の来た分と来ない分が混在します。環境省のQ&Aは、同じカテゴリの中で複数の算定方法が混ざること自体は問題としていません。ただし、どのサプライヤーを1次データで算定し、どれを2次データで置いたかは、後から追えるように台帳へ残します。

つまずきやすい点

OEM製品の扱いは、原材料の調達者で変わります。委託先が原材料を調達して製造する場合は、OEM製品という物品の購入です。自社が原材料を調達して委託先に供給する場合は、原材料という物品とOEM製造というサービスの購入になります。この違いで、サプライヤーに求める排出量の範囲が変わります。

資本財との線引きも見落としがちです。会計上の固定資産に当たるものはカテゴリ2で、それ以外の購入製品がカテゴリ1です。設備メーカーに排出量を依頼するときは、依頼の目的欄にカテゴリを書いておくと、返ってくる範囲が揃います。

二重計上を心配して依頼を控える必要はありません。Q&Aによれば、Scope1・2・3の定義の都合上、複数の企業が同じ排出を各社のScopeやカテゴリで計上することは、そもそも起こりうるとされています。自社のカテゴリに該当する活動なら、他社が計上済みでも自社に計上します。

まとめ

回収の成否は、依頼文の巧さより回答票の列設計で決まります。バウンダリ・単位・期間の3列を必須にし、そのほかは任意にして、毎年少しずつ埋めていく運用が現実的です。Claudeの出番は、下書きと不整合の洗い出しに絞り、配分と原単位の選択は人の判断として残します。

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