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SWOT・3C分析の下書きをClaudeで作る — 公開資料に出典と事実・解釈の別を付ける

SWOT・3C分析の下書きをClaudeで作る — 公開資料に出典と事実・解釈の別を付ける

顧客企業の有報・IR資料・プレスリリースをProjectsに置き、SWOTと3Cの各項目に出典ページと事実・解釈の別を付けて下書きする手順です。先に根拠台帳を作る順番が要点です。

顧客企業のSWOTや3Cの下書きをClaudeに作らせるときは、枠に文章を埋めさせる前に、公開資料から拾った事実を「根拠台帳」にしておきます。台帳の各行には、資料名・ページ・原文の引用を付けます。SWOTも3Cも、その台帳の行番号を指す形でしか書かせません。

こうしておくと、完成した表の1セルごとに「これは資料に書いてある事実か、Claudeを含めた解釈か」「どのページを見れば確かめられるか」が分かります。提案書や社内共有に出す前の検証が、セル単位で回せます。

手順

下書きから検証までの4段

  1. 1

    資料をProjectsに集める

    有価証券報告書・決算説明資料・プレスリリースを1社1プロジェクトに置き、指示文でルールを固定します。

  2. 2

    根拠台帳を先に作る

    資料から事実だけを、ページと原文付きで1行ずつ抜き出します。枠には触れません。

  3. 3

    台帳の行番号でSWOT・3Cを埋める

    各項目に「事実」か「解釈」かのラベルを付け、根拠の行番号を必須にします。

  4. 4

    人が原本で突き合わせる

    事実ラベルの項目を、原本のページに戻って確かめます。

枠に直接埋めさせると、何が起きるか

「A社のSWOTを作って」と頼むと、整った表が返ってきます。ただし、強みに「高い技術力」、機会に「市場の拡大」と書かれても、それが資料の記載なのか、Claudeがもっともらしく補った一般論なのかは見分けられません。

SWOTと3Cには、この問題が構造的に出やすい事情があります。

  • SWOTの機会(O)と脅威(T)は外部環境の話で、顧客企業の自社資料は自社の見方しか書いていません
  • 3CのCustomer(顧客)とCompetitor(競合)も、本来は顧客企業の外側の事実です
  • 強み(S)と弱み(W)は、自社資料では「強み」とは書かれても「弱み」とはまず書かれません

つまり、顧客企業の公開資料だけで確かに言えるのは、企業自身が語っている範囲です。外部の話を足すなら、別の資料(競合の資料や業界統計)を台帳に入れるか、解釈として明示するかのどちらかになります。この線引きを最初に決めるのが、この手順の中心です。

1社1プロジェクトに資料を置き、指示文でルールを固定する

Projectsは、独立した作業スペースとして、専用のチャット履歴とナレッジベースを持ちます。資料や文脈をアップロードしておくと、そのプロジェクト内のチャットでClaudeが背景として使います。無料アカウントでも使えますが、作れるプロジェクトは5つまでです。

顧客ごとに分けるなら、1社1プロジェクトが扱いやすい構成です。資料の混線を避けられ、Team・Enterpriseプランなら、担当者以外に閲覧だけを許可する共有もできます。共有の権限は「Can view」(閲覧とチャット)と「Can edit」(指示文とナレッジの編集)の2段階です。

置く資料の例を挙げます。

資料主に拾える事実
有価証券報告書主に拾える事実事業の内容、セグメント、事業等のリスク、設備投資の計画
決算説明資料主に拾える事実直近の業績、通期見通しの修正、重点施策
統合報告書・中期経営計画主に拾える事実自社が掲げる強みと戦略
プレスリリース主に拾える事実新製品、提携、組織変更などの個別の動き

ファイルの上限にも触れておきます。Projectsに置くファイルは1ファイル30MBまでで、数に上限はありませんが、内容全体がClaudeのコンテキストウィンドウに収まる必要があります。抽出されるのはテキストが基本で、図表の画像まで読めるのはマルチモーダルなPDFの場合です。チャットに直接添付する場合は、1チャット20ファイル・PDFは1,000ページまでで、グラフなどの視覚情報まで読むのは100ページ以下のPDFに限られます。101ページ以上は文字だけが処理されます。

有価証券報告書は100ページを超えることが多いので、グラフの中の数字は読まれない前提で使います。セグメント別の売上のように、文字として入っている表を根拠にします。数字をグラフ画像から読ませた場合は、そのセルを必ず原本で確かめます。

また、有料プランではナレッジがコンテキストの上限に近づくと、RAGモードが自動で有効になり、容量が最大10倍まで広がります。資料を大量に置けるのは便利ですが、RAGは関連しそうな箇所を引いてくる仕組みなので、「資料全体を見渡して漏れなく抜き出す」作業とは相性がよくありません。台帳づくりでは、資料を1本ずつ指定して抜き出させると安全です。

指示文に書くルール

プロジェクトの指示文(Set project instructionsから設定)は、そのプロジェクトのすべてのチャットに効きます。ルールをここに置いておけば、チャットのたびに貼り直す必要がありません。例えば次のような形です。

あなたは顧客企業分析の下書き係です。
ナレッジにある資料だけを根拠にします。
 
1. 資料に書いてあることを「事実」、そこからの推論を「解釈」と呼び、
   必ずどちらかのラベルを付ける
2. 事実には資料名・PDFのページ番号・原文の引用(1文以内)を付ける
3. 解釈には、根拠にした事実の台帳番号(F-01 など)を付ける
4. 資料に書かれていないことは、事実として書かない。
   外部環境(市場・競合・顧客)の記述は、資料に載っていなければ
   「資料なし」と書く
5. ページ番号はPDFビューアーが示す番号を使う

5番の理由は、Claudeのヘルプにある注意書きです。ページを指すときはPDFビューアーの番号を使い、紙面に印刷された番号は使いません。両者がずれている資料では、紙面の番号で頼むと別のページを指してしまいます。

先に根拠台帳を作る

台帳づくりは、枠の存在を忘れて「事実だけを抜く」作業です。資料を1本ずつ指定して、次のように頼みます。

添付の有価証券報告書(第〇期)を読み、
事実だけを次の表で抜き出してください。SWOTや3Cの枠は使いません。
 
| 台帳番号 | 資料名 | PDFページ | 原文の引用 | 区分 |
 
区分は次の語から選びます。
事業内容 / 顧客 / 競合 / 強みとして語られている点 /
課題・リスクとして語られている点 / 数値 / 計画
 
条件:
- 台帳番号は F-01 から連番
- 引用は原文のまま。要約しない
- 1項目1行。複数の事実を1行にまとめない
- 書いていない項目の行は作らない

区分に「強みとして語られている点」「課題・リスクとして語られている点」を設けているのがポイントです。顧客企業が自分で強みと書いた記述は、それ自体が「事実」(企業がそう述べているという事実)です。それが本当に競争優位かどうかは、解釈の側に回します。

有価証券報告書なら、事業等のリスクの章に、企業が自分で挙げた課題が並びます。ここはWの下書きの素材になりますが、台帳の段階では「課題・リスクとして語られている点」としか書かせません。

台帳ができたら、結果をテキストファイルかスプレッドシートにして、プロジェクトのナレッジに追加します。ヘルプの注意書きどおり、プロジェクト内のチャット同士では、情報がナレッジに追加されない限り文脈は共有されません。台帳を新しいチャットで使い続けたいなら、ナレッジに入れておく必要があります。

台帳は人が一度通読して、原文の引用とページが合っているかを抜き打ちで3〜5行確かめます。ここでずれていたら、後続の表は全部やり直しになるので、最も手を掛ける価値のある工程です。

台帳の行番号でSWOTを埋める

台帳が固まったら、枠を埋めます。ここで初めてSWOTを出させますが、各項目に「ラベル」と「根拠番号」を必須にします。

台帳(F-01〜)だけを根拠に、A社のSWOTの下書きを作ってください。
 
| 象限 | 項目 | ラベル(事実/解釈) | 根拠の台帳番号 | 弱さ |
 
条件:
- ラベルが「事実」の項目は、台帳の記載をほぼそのまま書く
- ラベルが「解釈」の項目は、根拠の台帳番号を2つ以上付ける
- 台帳に根拠がない項目は作らず、象限の末尾に
  「資料に根拠なし」と1行で書く
- O(機会)とT(脅威)は、台帳に「顧客・競合・市場」の区分の行が
  ある範囲だけ書く

出力の例を、架空の数字で示します(実在の企業とは関係ありません)。

象限項目ラベル根拠弱さ
S項目主力セグメントの売上構成比が高いラベル事実根拠F-04弱さなし
S項目特定分野での継続的な取引基盤があるラベル解釈根拠F-04, F-09弱さ取引の継続性は資料に明記なし
W項目調達先が限られると自ら記載しているラベル事実根拠F-12弱さなし
O項目新製品の市場投入を計画しているラベル事実根拠F-15弱さ市場規模は資料なし
T項目資料に根拠なしラベル—根拠—弱さ競合の資料を追加するまで空欄

右端の「弱さ」の列は、Claude自身に「この項目の根拠のどこが弱いか」を書かせるための列です。解釈が強引なセルほど、この列に弱点が出ます。自己申告なので完璧ではありませんが、人が検証する順番を決める目安になります。

象限の末尾に「資料に根拠なし」を許すのは大事な設計です。これを禁じると、Claudeは枠を埋めるために一般論を作ります。空欄は欠陥ではなく、「この資料だけでは言えない」という情報です。

3Cは、顧客と競合の資料を足して作る

3Cは、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つで事業環境を見る枠組みです。顧客企業の分析で使う場合、Companyは顧客企業の資料で埋まりますが、CustomerとCompetitorは顧客企業の外側の事実が必要になります。

方法は2つあります。

  • 顧客企業の資料に出てくる範囲だけで書く。有価証券報告書の「主要な顧客」「競合」「市場環境」に当たる記述を台帳の区分に入れ、それだけを根拠にする
  • 競合企業の資料を別のプロジェクトに置き、同じ型で台帳を作ってから突き合わせる

後者の手順は、決算説明資料で競合を比べる競合4社の決算説明資料を出典ページ付きの表にする手順と、開示項目で比べる統合報告書の比較が詳しく扱っています。ここでの違いは、比較表ではなく、3Cの枠に落とすために台帳の区分を揃えておく点です。

3Cの下書きを頼むときも、SWOTと同じ型を使います。

台帳を根拠に、3Cの下書きを作ってください。
 
| C | 項目 | ラベル | 根拠の台帳番号 |
 
Company は顧客企業の台帳から、
Competitor と Customer は「顧客・競合・市場」区分の行が
ある範囲だけ書いてください。
行がない場合は「資料なし(要追加調査)」と書きます。

「資料なし(要追加調査)」が並ぶ場合は、それが次の調査の宿題リストになります。Coworkに調べさせる方法はCoworkリサーチの進め方にまとまっています。調べた結果は、根拠が出た時点で台帳に行として追加し、同じ型で作り直します。

SWOTと3Cで、台帳のどの区分が効くか

区分S・WO・T3C
強みとして語られている点S・WSの素材O・T—3CCompany
課題・リスクとして語られている点S・WWの素材O・TTの素材になることがある3CCompany
顧客・競合・市場S・W—O・TO・Tの素材3CCustomer・Competitor
数値・計画S・W裏付けO・T裏付け3C裏付け

企業が自ら挙げた事業等のリスクは、Wの素材にも、外部要因ならTの素材にもなります。どちらに入れるかは解釈なので、ラベルを「解釈」にして、根拠番号を付けたままにします。

完成後に人が確かめる順番

下書きを使う前の検証は、全セルを均等に見るのではなく、順番をつけると短く済みます。

  1. 「事実」ラベルの項目から、台帳番号を引いて原文の引用を確認します。一致しなければ、台帳の行が誤っています
  2. 台帳の引用とページを、PDFビューアーで原本に当たります。ここでページ番号が紙面とPDFビューアーのどちらの数え方かが食い違っていないかも見ます
  3. 「解釈」ラベルの項目は、根拠の台帳番号を並べて、その行から本当にその解釈が導けるかを読みます。弱さの列に書かれた項目から優先します
  4. 数値を含む項目は、グラフ由来でないかを確認します。100ページを超えるPDFでは、グラフ内の数字は読まれていません

この順番は、不具合の位置を絞るためです。台帳に誤りがなければ、事実ラベルのセルは原本とずれません。ずれるとすれば、解釈ラベルのセルです。

つまずきやすい点

落とし穴

事実ラベルの項目に、解釈が混ざる

「強みは〇〇」と資料が書いている場合と、「〇〇が強みと読み取れる」と推論した場合は別です。前者は「資料がそう述べている」という事実、後者は解釈です。台帳の区分を「強みとして語られている点」のように、語り手を含めた名前にしておくと、混ざりにくくなります。

  • 古い資料が混ざる: 前期と今期の有価証券報告書を両方置くと、Claudeが数字を取り違えることがあります。台帳の「資料名」の列に期と日付を必ず入れ、古い資料は別プロジェクトに分けます
  • 台帳が長くなりすぎる: 全ページを抜かせると行数が膨れ、SWOT・3Cの段階で読み切れません。区分ごとに分けて頼み、最初は重要そうな章だけに絞ります
  • 同じチャットで続けて、台帳が参照できなくなる: チャットが長くなると前半の台帳が遠くなります。台帳はナレッジに追加して、新しいチャットで開き直すほうが安定します
  • 企業名を変えた別プロジェクトへ、前の指示文を流用する: 指示文に特定企業の名前が残っていると、別の企業の分析にも影響します。使い回す型は企業名を空欄にして保存します

どこまでを下書きとして扱うか

出てくるSWOTや3Cは、あくまで下書きです。公開資料は、企業が外に見せたい姿を書いたものです。企業が外に見せたい姿を前提に、解釈の段階で人が読み方を補正します。

営業で使うなら、完成した表をそのまま顧客に見せるのではなく、仮説の質問に変えて持っていきます。有価証券報告書から営業の提案仮説を作る流れは、有価証券報告書から営業の提案仮説を作る手順にあります。そちらは「訪問で聞く質問」に落とす手順、本記事は「分析の枠に出典を付ける」手順という違いです。

なお、Claudeのヘルプでは、Projectsの新バージョンがClaude Codeを皮切りにベータで段階的に展開されています。既存のチャットとCoworkのプロジェクトは、これまでどおり動きます。本記事の手順は、現行のProjectsのナレッジと指示文の機能に沿っています。

まとめ

SWOT・3Cの下書きで、出典が付けられるのは「企業が自分で語った範囲」までです。外部の話は、競合や顧客の資料を台帳に足すか、解釈として明示するかのどちらかになります。

台帳(資料名・PDFページ・原文)を先に作り、枠はその行番号でだけ埋めさせる。この順番にすると、枠の中身が事実と解釈に分かれ、人が原本で確かめる箇所が絞れます。空欄は「資料なし」として残し、次の調査の宿題に回します。

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