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Claudeで有価証券報告書から営業の提案仮説を作る手順

Claudeで有価証券報告書から営業の提案仮説を作る手順

訪問前にEDINETで先方の有価証券報告書を取り、Claudeに事業リスク・設備投資・セグメントを読ませて課題仮説を作る手順です。章の絞り方、仮説シートの形、裏取りの線引きまで。

上場企業への訪問前に、先方の有価証券報告書をClaudeに読ませて課題仮説を作る手順を扱います。流れは、EDINETで書類を取る、読む章を絞る、仮説シートの形で出させる、訪問で確かめる質問に変える、の4段です。

仮説は「当たるかもしれない問い」であって、先方の課題そのものではありません。Claudeが出すのは問いの下書きまでです。そこから先は営業担当が現場で確かめます。

手順

訪問前の仮説づくり、4つの段取り

  1. 1

    EDINETで書類を取る

    提出者名か証券コードで検索し、直近の有価証券報告書をPDFで保存します。

  2. 2

    読む章を絞って渡す

    全ページではなく、事業のリスク・設備・セグメントに当たる章だけを渡します。

  3. 3

    仮説シートの形で出させる

    根拠の該当箇所、仮説、自社が触れられる余地、確かめる質問を1行にそろえます。

  4. 4

    訪問で確かめる質問に変える

    断定せず、面談で聞く言葉に直してから持っていきます。

EDINETで先方の有価証券報告書を取る

有価証券報告書は金融庁のEDINETで検索できます。書類の検索方法は「書類簡易検索」「書類詳細検索」「全文検索」の3つで、日本語画面でも英語画面でも使えます。ただし英語画面には全文検索がありません。

営業の下調べなら、まず書類簡易検索で足ります。提出者名、EDINETコード、証券コードのいずれかを入れて、書類種別に有価証券報告書を選びます。提出期間の初期値は「過去1年」なので、前期以前の報告書も見たいときは期間を広げます。選んだ書類種別の訂正報告書も検索対象に入ります。同じ期の報告書が複数並ぶときは、訂正の有無を提出書類の欄で見比べます。

検索条件の入れ方には癖があります。簡易検索は完全一致で探します。詳細検索では、証券コードだけは部分一致でなく前方一致(先頭からのコード)で検索されます。社名の表記ゆれで見つからないときは、証券コードか、EDINETコードの一覧(EDINETコードリスト)で調べた番号から入ります。

取れる形式も押さえておきます。

形式向く使い方注意
PDF向く使い方Claudeに章を渡して読ませる注意ページ数が多い。章を絞る
XBRLからのCSV変換ファイル向く使い方数値を表計算で並べる注意タブ区切り・UTF-16LE
全文検索の結果CSV向く使い方複数社で同じ語の出方を見る注意同じくタブ区切り・UTF-16LE

CSVをExcelで開くときは、1セルに入る文字数が32,767文字までという制限があります。超えた分は次の行の先頭セルに回り、改行ごとに行も分かれます。本文のように長い文章が入る項目を表計算で扱うと崩れるので、文章はPDFで読み、数値だけCSVで拾う分け方が安全です。

Claudeに渡す前に、読む章を絞る

有価証券報告書は長い書類です。全体を渡せば読んでくれるとは限りません。ここは容量の制約を見ておく必要があります。

チャットへのアップロードでは、1回のチャットに最大20ファイル、PDFは1,000ページまでです。画像やグラフまで読み取れるのは100ページ以下のPDFで、101〜1,000ページのPDFは文字だけが処理され、図表の視覚情報は読まれません。Projectsに置くファイルは1ファイル30MBまでで、内容全体がコンテキストウィンドウに収まる必要があります。APIでPDFを送る場合は、リクエスト全体で32MB、1リクエストあたり600ページが上限です(コンテキストウィンドウが1Mトークン未満のときは100ページ)。

数字の意味は読み方で変わります。100ページを超える報告書は、図表の画像部分が読まれない前提で使います。セグメント別の売上表のように文字として入っている表は読めても、グラフに数字が埋まっている箇所は拾えません。

そこで、渡す章を先に決めます。仮説づくりに効く読みどころは、次の3か所です。

  • 事業等のリスク: 先方が自分で「気になる」と書いた項目の一覧です。府令でも「第3 事業の状況」の項目名として「事業等のリスク」が使われています。
  • 設備投資や設備の計画に当たる章: どこへ金を使っているか、これから使うかが出ます。
  • セグメント情報: 事業の柱ごとの動きです。セグメント情報は、財務諸表等規則に定めるものとして府令が定義しています。

PDFを分割してから渡すと、読み落としが減ります。ページ番号を指して質問するときは、書類の紙面に印刷された番号でなく、PDFビューアーが示すページ番号を使います。取り違えると、Claudeが別の箇所を指してしまいます。

仮説シートの形で出させる

自由に「課題を考えて」と頼むと、どの会社にも当てはまる一般論が返ります。出力の型を先に決めると、根拠のある問いに絞れます。次の依頼文は、そのまま貼って使える形の例です。

添付は〇〇社の有価証券報告書(第〇期)の抜粋です。
事業等のリスク、設備投資、セグメント情報の3章を読み、
当社(〇〇を扱う営業)が訪問前に持つ課題仮説を作ってください。
 
出力は次の表に統一します。
| 根拠の引用 | 該当ページ | 読み取れる事実 | 仮説 | 当社が触れる余地 | 訪問で聞く質問 |
 
条件:
- 根拠の引用は原文のまま、1行以内
- 「読み取れる事実」と「仮説」を別の列に分ける
- 書類に書いていないことは仮説の列にも事実として書かない
- 仮説は最大5件。弱いものは「弱い」と明記する

列を分けたのは、事実と推測を混ぜないためです。「事実」の列には書類の記載だけが入り、「仮説」の列には解釈が入ります。ページ番号と原文の引用を必須にすると、後で自分で確かめるときの入り口になります。

同じ型を複数社に使うなら、Projectsに依頼文と自社の商材の説明を置いておく手があります。商材説明は、扱う製品、導入が進みやすい条件、よく出る反論を数行にまとめたもので足ります。

1つの章から、1つの問いに落とす例

事業等のリスクに「特定の部材の調達先が限られる」という趣旨の記載があったと仮定します。ここから作る仮説は、たとえば次の形になります(架空の例です)。

欄内容の例
読み取れる事実内容の例主要部材の調達先が限られると、事業等のリスクに書かれている
仮説内容の例調達の代替先を探す、または在庫を厚くする動きがあるかもしれない
当社が触れる余地内容の例代替調達の情報提供、在庫管理の支援
訪問で聞く質問内容の例調達先の分散は、どの程度まで進んでいますか

仮説の列が「かもしれない」で終わっているのが要点です。報告書の記載から言えるのはリスクの存在までで、先方が動いているかは書類からは分かりません。それは質問で聞きます。

設備投資とセグメントの読み方を足す

事業等のリスクだけでは、守りの話に偏ります。設備と事業の柱を足すと、攻めの側の話題が出ます。

設備の章からは、投資の向きを拾います。新設や増強の計画があれば、その分野が伸びている、あるいは伸ばしたいという手がかりになります。ただし計画は変わるものなので、「計画が書かれている」ことと「実行された」ことは分けて質問します。

セグメントの章からは、前期との比較で伸びた柱と縮んだ柱を並べます。依頼文には次のように添えます。

セグメント情報の表から、売上と利益が前期より増えた区分と
減った区分を表にしてください。数字は表の値のまま写し、
増減率は計算式も併記してください。

計算式の併記は、検算のためです。Claudeが出す増減率は、元の数字と突き合わせて確かめます。表をCSVで持っているなら、集計は表計算側でしてもらい、Claudeには「その数字が何を意味しうるか」を考えさせる分担にすると、数字の誤りが入りにくくなります。

複数の章を読ませた後は、章をまたいだ矛盾も見ます。たとえばリスクで人手不足を挙げながら、設備の章では省人化の投資がなければ、単なる一般的な記載かもしれません。逆に両方に出ていれば、訪問で触れる優先度が上がります。この「章をまたぐ重なり」を探す指示は、1章ずつ読ませた後の最後の一手として効きます。

裏取りと、渡してよい情報の線引き

仮説シートは、そのまま上司や顧客に出さない前提で使います。確認するのは次の4点です。

  1. 引用が原文と一致しているか。該当ページを開いて目で見ます。
  2. 数字が書類の値のままか。丸めや換算が入っていないかを見ます。
  3. 「かもしれない」の仮説を、事実の言い方に変えていないか。
  4. 提出時点からの変化を踏まえているか。有価証券報告書は決算期ごとの書類で、その後の動きは載りません。

4点目は、営業では特に効きます。直近の動きは、決算説明資料やニュースリリースで補います。取引先の最新動向を調べる流れは、Claudeで取引先与信の見直しを進める手順にあるResearchの使い方がそのまま使えます。

渡す情報にも線を引きます。有価証券報告書は公開書類なので、Claudeに渡すこと自体に秘匿上の問題は生じにくい資料です。ただし、仮説に自社の見積もり条件、顧客別の価格、未公表の案件情報を混ぜるなら話は別です。その入力が秘密管理の観点でどう扱われるかは、営業秘密の秘密管理性と生成AIへの入力で整理されています。仮説づくりの段階では、自社の情報は商材の一般的な説明にとどめるのが無難です。

仮説を訪問の質問に変え、記録に残す

仮説シートの最後の列「訪問で聞く質問」が、持っていく成果物になります。依頼文に次を足して、質問を磨きます。

上の仮説から、初回訪問で聞く質問を3つに絞ってください。
- 答えが「はい/いいえ」で終わらない形にする
- 報告書の記載を知っている前提を、相手に押しつけない言い方にする
- 質問ごとに、答えで仮説が当たりか外れかを判断できる基準を1行添える

質問を絞るのは、1回の面談で聞ける数に限りがあるからです。基準を添えておけば、面談後に「当たり」「外れ」を記録しやすくなります。

面談の後は、結果をCRMに戻します。仮説が当たった理由、外れた理由を営業レポートの形で蓄積すると、次の企業での読み方が磨かれます。CRMのデータから営業レポートを作る流れは、ClaudeでCRMデータから営業レポートを作る方法が参考になります。仮説に対する競合の見え方を整えておきたいときは、Claudeで営業バトルカードライブラリを構築する方法と組み合わせられます。

よくあるつまずき

報告書の古い期を拾ってしまう

提出期間の初期値は過去1年なので、決算期をまたぐ時期は旧期の書類だけが出ることがあります。提出日が新しい書類から開き、表紙の事業年度を確かめてから保存します。

引用が原文と微妙に違う

要約を引用として出す癖が出ることがあります。依頼文で「引用は原文のまま」と指定し、返ってきた引用は本文を検索して一致を見ます。一致しなければ、その行は仮説の根拠に使いません。

100ページ超でグラフの数字が抜ける

画像として入っている図表は、100ページを超えるPDFでは読まれません。必要な数字は、表の形で載っている箇所か、CSV変換ファイルから取ります。

仮説が一般論に寄る

「どの会社にも言える」仮説が出たら、依頼文に「この会社の報告書にしか書かれていない記載だけを根拠にする」と足して、作り直させます。根拠の列に原文引用を必須にしておくと、一般論は根拠が書けずに落ちます。

まとめ

有価証券報告書は、先方が自分の言葉で書いたリスクと投資の記録です。Claudeには章を絞って渡し、事実と仮説を別の列に分けて出させると、訪問前の問いの質が上がります。

断定は避け、最後は「聞く質問」の形で持っていきます。書類に載らない直近の動きと自社の機密情報の扱いだけは、人が管理する領域として残します。

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