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Claude Mythosで脆弱性の悪用連鎖を発見 — ComcastとBooz Allenの検証

Claude Mythosで脆弱性の悪用連鎖を発見 — ComcastとBooz Allenの検証

Comcastは258システム・約1.7億行を評価し、Booz Allenは8システム・138リポジトリを12日で見直しました。両社が語る「発見の次に詰まる検証」と、悪用連鎖の見つけ方をまとめます。

Comcastは258の事業基幹システム、約1.7億行のコードを評価し、公開プラットフォームの重大な認証の欠陥をClaude Mythos Previewで見つけました。同社のCISOは「発見は速く、簡単になった。検証が新しいボトルネックだ」と語っています。Booz Allenでは、1人のアナリストが8つの本番システム・138リポジトリを12日で見直しました。2026年10月6日に公開された2社の事例は、脆弱性対応の重心が「見つける」から「確かめる」へ移っていることを示しています。

要点

  • Comcastの発見は、複数のシステムと前提の相互作用から生じた認証バイパスで、悪用の形跡が観測される前に修正された
  • Booz Allenは、起動直後のコードに潜む「鍵の保護漏れ」を、2つの言語で書かれた2つのプログラムをまたいで追跡して見つけた
  • 2社とも、モデルが候補を大量に出したあとの検証・重複排除・担当割り当てを人が担っている
  • 事例のモデルはClaude Mythos Preview。現行のClaude Mythos 5.1は、Cyber Verification Programの審査を通った組織が使える

悪用連鎖とは何か

悪用連鎖(exploit chain)とは、それぞれは小さな弱点を攻撃者が数珠つなぎにして、深刻な結果に至る経路にしたものです。1つ1つは見過ごされる程度の設定ミスや前提の食い違いでも、つながると認証の突破や端末の乗っ取りになります。

Anthropicの記事によると、既存のセキュリティツールは単独の脆弱性を孤立した状態なら見つけられます。連鎖は追うのが難しい。Mythos級のモデルは、コード・設定・実際のアプリの挙動をつなげて読むことで、単一ファイルのバグと、部品どうしが作用したときだけ現れる欠陥の両方を拾えるとされています。

観点単発の検出連鎖の検出
見る範囲単発の検出1ファイル・1部品連鎖の検出コード・設定・ID・デプロイ設定の横断
欠陥の姿単発の検出個別の不具合連鎖の検出個別には正しく見える前提どうしのずれ
人手での追跡単発の検出比較的短い連鎖の検出大きなソフトウェア群では熟練者でも遅い

Comcast: 発見・脆弱性・悪用可能性は別の段階

Comcastの事例の中心は、結果の大きさよりも、結果をどう確かめたかにあります。評価の対象は258システムで、約1.7億行。見つかったのは、攻撃者が認証の制御を迂回しうる欠陥です。

この欠陥は、1つの部品の不具合ではありませんでした。複数のシステムと、それぞれ単独で見れば正しく見える前提が重なって生じています。モデルがコード・設定・アプリの挙動をまたいで文脈を保ったことで、従来の手法では見つけにくいすき間が浮かび上がった、という説明です。

CISOのNoopur Davis氏の発言は、検証の位置づけを3段階に分けています。

段階成立する条件(Davis氏の発言)
発見(finding)成立する条件(Davis氏の発言)モデルが大量に出せる。速く、簡単になった
脆弱性成立する条件(Davis氏の発言)検証によって、根本の問題が確認されたとき
悪用可能成立する条件(Davis氏の発言)対象の環境で実際に悪用できると確認されたとき

この3段階の表は、発言を並べ直した編集上の整理です。Comcastの実際の作業は次の順で進みました。

手順

Comcastが認証の欠陥を確定させた流れ

  1. 1

    実行中のアプリで再現する

    エンジニアが、動いているアプリケーションに対して指摘を検証し、問題の箇所に実際に到達できることを確かめました。

  2. 2

    根本原因をたどる

    欠陥が1箇所のコーディングミスではないため、原因は複数システムの相互作用までさかのぼって特定されました。

  3. 3

    修正し、悪用されていないことを確認する

    修正を実装したうえで、修正前に悪用されていなかったことも検証しています。結果として、悪用の形跡が観測される前に直せました。

Davis氏は、影響の大きい指摘の一部が「個々のコーディングミスではなく、複雑な環境での微妙な相互作用」から出てきたとも述べています。参加の効果については、フロンティアモデルのセキュリティ能力への理解が約1年早まった、と語りました。

Booz Allen: 固定期間の診断で網羅の限界を超える

Booz Allenは防衛・行政・国家安全保障などの案件を手がけ、レッドチーム演習や、AIを使う攻撃者に備える防御の構築も担っています。同社の診断は期間が決まっていて、その間に読めるソースコード・設定・コンパイル済みソフトウェアの量には上限があります。

問題は、読める量を増やすだけでは足りない点でした。実際の攻撃は、コード・設定・ID・デプロイ設定にまたがる小さな弱点をつなぐため、大きなソフトウェア群で手作業の追跡をするのは熟練者でも遅いのです。そこでBooz Allenは、短い診断期間では普通は届かない量のソフトウェアをMythos Previewに見直させ、連鎖になりうる弱点を探させました。

VP of AI EngineeringのSahil Sanghvi氏は、モデルが境界をまたいで推論できたことを驚きとして挙げています。アプリの挙動・設定・ID・権限・デプロイの文脈が、一貫したセキュリティ上の仮説につながったという評価です。修正案の下書きや、担当エンジニア向けの証拠の整理まで、想定より早く進んだとも話しています。

起動時のコードで見つかった、鍵が保護されていない欠陥

具体例として挙がっているのは、端末の電源を入れた直後、OSが読み込まれる前に動くコードの欠陥です。このコードは、端末を自分でロックするかデータを消去するかを、機器に保存された鍵で判断します。

鍵が保護されていなかったため、本来は制限される側のOSが、攻撃者の用意した鍵に差し替えられます。そのうえで、端末が信頼する命令を流し込めました。攻撃者はロックか消去の実行を無期限に先延ばしでき、紛失・盗難・乗っ取りに遭った端末が使える状態のまま残ります。

経緯

鍵を守る機会は3回あり、すべて逃された

  • 1. 鍵の保存時

    最初に鍵を保存した時点で、保護のための設定が無効になっていました。

  • 2. ハードウェアへの書き込み時

    書き込みを担うコードは、その設定を修正せずにそのまま渡していました。

  • 3. 保存後の別の保護

    あとから鍵をロックできるはずの別の安全策は、有効化されていませんでした。

モデルは、この1つの設定を、2つの言語で書かれた2つのプログラムをまたいで追い、最後まで鍵がロックされないことを確かめました。1つの設定が2つのプログラムにまたがるため、片方だけを読んでも全体は見えません。

1人で12日、数か月分の仕事

President of National CybersecurityのBrad Medairy氏によれば、1人のアナリストが、本番8システム・138リポジトリを12日で見直しました。同じ規模のポートフォリオ診断は、モデルなしでは、大きめのチームで数か月かかったと言います。

同氏は同時に、モデルが大きな候補の集合を素早く作るのに対し、チームは検証・システム的なパターンの重複排除・担当者への振り分けを引き続き行う必要がある、とも話しました。Booz Allenはこれを、判断を人が持ち、モデルがポートフォリオ全体で見張れる範囲を広げる運用と位置づけています。

検証がボトルネックになる理由

2社の発言から読み取れる検証の仕事は、次の4つです。

  • 動いている環境で、指摘の箇所に実際に到達できるかを確かめる(Comcast)
  • 同じ根を持つ指摘をまとめる(Booz Allenの重複排除)
  • 直せる担当者へ振り分ける(同じくルーティング)
  • 修正の前に悪用されていなかったかを確かめる(Comcast)

候補を出す速度はモデルの側で上がりますが、この4つは環境と組織の知識に依存します。発見の件数が増えるほど、後段の人手が律速になるのは自然な帰結です。Comcastの「検証が新しいボトルネック」という言葉は、その状態を一言で表しています。

読むときの注意点が2つあります。まず、この記事にはComcastの発見件数が載っていません。258システム・約1.7億行は評価の範囲であって、見つかった数ではない点を取り違えないでください。次に、事例はAnthropicが当事者に聞き取ってまとめたものです。数値や評価は各社の発言で、独立した第三者による検証ではありません。

自分のチームで同じ構成を試すなら、モデルへの指示より先に、指摘を受け取った後の受け皿を決めておく手があります。再現環境、重複をまとめる担当、修正の持ち主を決めておけば、候補の山が増えても滞留しにくくなります。サイバー領域での導入事例の全体像は、Claudeをサイバーセキュリティ業務でどう使うかにあります。

Glasswing全体の数字の中での位置

同じ10月6日にAnthropicはCyber Verification Program(CVP)の拡大を発表しています。CVP拡大の詳細はCyber Verification Programの拡大にまとめています。そこで示されたProject Glasswingの成果は次のとおりです。

数字

Glasswingのパートナーが見つけた脆弱性

  • パートナーが発見した検証済みの脆弱性

    12.9万件以上

    2026年4月〜7月

  • AnthropicのOSSスキャンで追加

    5,500件

    2026年4月〜10月

  • 重大・高に評価された件数

    3.3万件超

    これまでの累計

33件のパートナー報告とAnthropicのOSS協業に基づく、部分データ

Anthropic自身が、この数字を過小評価の可能性が高いと断っています。調査はパートナーの一部の回答に基づき、トリアージの方法も組織ごとに異なり、修正済み件数を開示したのは半数未満だったためです。実際の影響は少なくとも5倍と見込まれています。ここでも「見つけた数」に対して「直した数」が見えにくい、という検証側の詰まりが現れています。

同じ使い方をするための入口

2社が使ったのはClaude Mythos Previewです。現行世代のClaude Mythos 5.1は、CVPの各段階に含まれています。仕様と位置づけはClaude Mythos 5.1の解説にあります。

CVPは、防御業務向けのDefense Access、認可された侵入テストとレッドチーム向けのRed Team Access、人命や市場に響く安全系システム向けのSpecialized Accessの3段階です。脆弱性の分析と検証は、Defense Accessの対象業務に挙がっています。Defense Accessの返答の目安は数日、Red Team Accessの審査は数週間です。Glasswingの既存メンバーはSpecialized Accessに移り、現行モデルでは再審査が要りません。

承認からMythosの利用開始までは、およそ5営業日の差があります。申請の流れはCyber Verification Programの申請手順で、段階ごとの要件はCyber Verification Program要件で確認できます。OSSの保守側の入口には、Anthropic OSS Scannerもあります。

事例が示す、見直しの頻度

Booz AllenのMedairy氏は、フロンティアモデルが攻撃の一連の流れ(キルチェーン)全体を自律的に実行しうることを、同社の調査結果として挙げ、継続的なセキュリティレビューと防御が要ると述べました。診断を年に数回の行事として扱う運用は、この前提と合いません。

検証の体制を先に作った組織ほど、モデルの発見力を成果に変えられます。逆に、受け皿がないまま候補だけが増える状況が最も苦しくなります。2社の事例が伝えているのは、モデルの性能よりも、その後ろの運用の話です。

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