Cyber Verification Program要件 — 72時間報告と個人サインインのセキュリティ条件
Cyber Verification Program(CVP)の承認後に守る運用要件を解説します。72時間・24時間の報告期限、48時間の調査、共有サインインの禁止、段階ごとの上乗せ条件まで扱います。
Cyber Verification Program(CVP)は、承認されて終わりの制度ではありません。承認を受けた組織は、保有するアクセスレベルごとに定められたセキュリティ要件を、使い続ける間ずっと満たす必要があります。要件は承認を受けたユーザー(Approved User)と、CVPを割り当てたワークスペース(Granted Workspace)の両方にかかります。
全アクセスレベルに共通する要件は7つです。疑わしい漏えいや悪用は72時間以内に報告し、Anthropicが指摘した悪用は48時間以内に調べます。サインインは本人のものだけが認められ、共有は認められません。
全アクセスレベルに共通する7つの要件
要件ページの「All Access Levels」には、次の7項目が並びます。Defense Access・Red Team Access・Specialized Accessのどれを持っていても、この7項目が土台になります。
| 要件 | 求められること |
|---|---|
| セキュリティ連絡先 | 求められること通知を受けて動ける担当者の名前を、Anthropicに届ける |
| インシデント報告 | 求められること疑わしい漏えい・悪用は72時間以内、セキュリティインシデントは24時間以内 |
| 調査への協力 | 求められることAnthropicが指摘した悪用を48時間以内に調べ、是正に協力する。悪用の問い合わせには7日以内に答える |
| 個人でのアクセス | 求められること承認を受けたユーザーは、各自の名前でサインインする |
| 利用の帰属 | 求められることワークスペースでユーザープロファイルを有効にしたままにする |
| 変更の通知 | 求められることセキュリティ体制・所有関係・本拠地・連絡先が大きく変わったら30日以内に知らせる |
| 継続的な確認 | 求められること要件を満たす証拠の提出をAnthropicが求めることがある |
申請の窓口や対象外の条件はCyber Verification Programの申請手順で扱っています。ここでは承認後に毎日の運用で効いてくる側を掘り下げます。
報告と調査の期限を時系列で並べる
共通要件のうち、時間の制約があるのは報告・調査・応答・通知の4種類です。期限の起点と長さが違うので、並べておくと担当者が迷いません。
CVPの共通要件で動く時計
- 24時間以内セキュリティインシデントを報告
セキュリティ上のインシデントが起きたときの報告期限です。
- 48時間以内指摘された悪用を調査
Anthropicが見つけて知らせた悪用について、調べて是正に取りかかります。
- 72時間以内疑わしい漏えい・悪用を報告
CVPの付与に関わる漏えいや悪用の疑いが対象です。
- 7日以内悪用に関する問い合わせへ回答
調査とは別に、問い合わせへ返答する期限です。
- 30日以内体制の大きな変更を通知
セキュリティ体制・所有関係・本拠地・連絡先の重要な変更が対象です。
72時間と24時間の使い分け
報告は「疑わしい漏えいや悪用」なら72時間、「セキュリティインシデント」なら24時間と書かれています。疑いの段階でも報告の義務が始まる点に注意が要ります。原因の特定や被害範囲の確定を待っていると、72時間は短く感じます。
どこからが「セキュリティインシデント」かは、要件ページに定義がありません。判断に迷う事象は、24時間の枠で扱う前提で運用手順に入れておくのが安全です。
報告先は、要件ページのメールアドレスか、Anthropicのアカウント担当者です。アドレスの実体はページ上で伏せ字になっているので、社内の手順書には要件ページを開いて確かめた宛先を転記します。
48時間の調査には、見つかる前の備えが要る
調査の48時間は、Anthropicが悪用を指摘した後の期限です。起点の定義は要件ページにありません。指摘を受けてからログを探し始めると間に合いません。誰が・いつ・どのワークスペースで使ったかを即座に引ける状態が前提になります。ここで後述するユーザープロファイルの有効化が効いてきます。
社内の運用メモには、たとえば次のような項目を持たせておくと、報告と調査の時計を同じ書式で追えます。要件ページにある書式ではなく、運用側で用意する雛形の一例です。
受付時刻:
種別: 疑わしい漏えい・悪用 / セキュリティインシデント
報告期限: 受付から72時間 / 24時間
Anthropic への報告日時と宛先:
対象ユーザー・ワークロード:
調査開始日時(Anthropic 指摘の場合は 48 時間の起点):
是正内容と資格情報の失効日時:「個人サインインのみ」はどこまでを禁じるか
共通要件の「Personal Access」は、承認を受けたユーザーが各自でサインインすることを求めます。禁じられているものは次のとおりです。
- 共有のサインイン
- 共有のシート
- 共有のセッション
- 共有のワークロード用ID
さらに、ブラウザー拡張機能やプロキシーツールを使って、承認を受けたユーザー以外の人にセッションを見せる構成も認められません。ただし例外が1つあります。そうした人が、下に続く要件をすべて満たした承認済みユーザーである場合です。
つまり、1つのアカウントを複数人で使い回す運用は、人数を絞っていても対象外です。画面共有ではなく、セッションそのものが他人に届く構成が問題とされています。
実務でよく起きるのは次の3パターンです。
- チームで1つのログインを共有して、交代で使う
- 共通のサービスアカウントを、複数人が手元から使う
- 自社の中継サーバーやプロキシーに、承認外の社員も接続できる
3つ目は、段階によってはゲートウェイの要件(後述)と重なります。承認を受けたユーザーを増やしたいなら、アカウントを共有せず、承認を受けたユーザーとして追加するのが筋です。
ワークロード用IDは「禁止」ではなく「共有の禁止」
要件ページは、ワークロード用IDそのものを禁じてはいません。次項の利用の帰属では「名前の付いたユーザーまたはワークロード用IDに結び付けられること」を求めています。ワークロード用IDはあってよく、禁じられているのは共有です。自動処理ごとに別のIDを払い出す設計が、この要件とも整合します。
ユーザープロファイルを切らない理由
利用の帰属の要件は、割り当て先のワークスペースでユーザープロファイルを有効に保つことです。目的は、リクエストを名前の付いたユーザーかワークロード用IDに結び付けられるようにすることです。
個人サインインの要件と対で働きます。サインインが共有されていると、プロファイルが有効でも「誰が使ったか」は分かりません。逆に個人で入っていても、プロファイルを切ると帰属が消えます。48時間の調査と72時間の報告が成立する条件は、この2つがそろっていることです。
ワークスペースの状態や、承認後にConsoleで何を確認するかはCVPをワークスペースで有効にする手順にまとまっています。
段階ごとに上乗せされる要件
共通要件のうえに、アクセスレベルごとの条件が加わります。要件ページは「Defense Access」「Defense Access for Individuals」「Red Team Access」「Specialized Access」の4つに分かれています。
共通要件の上に載る条件
Defense Access
アクセス時点でMFAが必須で、2026年12月15日までにフィッシング耐性のあるMFAへ移ります。同じ日までに、APIキーのような長期の静的資格情報を使うのをやめます。承認を受けたユーザーの数に既定の上限はありません。
Red Team / Specialized
アクセス時点からフィッシング耐性のあるMFAが必須です。承認を受けたユーザーは25人までで、組織のドメインのアカウントでサインインします。資格情報の失効は24時間以内、退職者の削除は3営業日以内です。
Defense Accessは12月15日が分かれ目
Defense Accessでは、2026年12月15日(要件ページではCutoff Date)を境に条件が変わります。それまでのMFAは種類を問いません。その日以降は、次のいずれかだけが認められます。
- FIDO2/WebAuthnのセキュリティキー
- パスキー(端末内でもパスワードマネージャー内でも可)
- スマートカード/PIV
SMS、音声、メールで届くコード、認証アプリのコード、プッシュ承認は、フィッシング耐性があるとは認められません。メールのマジックリンクによるサインインも無効にする必要があります。
資格情報の側も同じ日に切り替わります。ダウンロードしたりエクスポートしたりした長期の静的資格情報は、APIキーを含めてモデルへのアクセスに使えなくなります。提供経路ごとの具体的な禁止対象は次のとおりです。
| 経路 | 使えなくなるもの |
|---|---|
| Anthropic(直接のAPIとConsole) | 使えなくなるもの静的・長期のAPIキー。Console・Claude for Enterprise・Claude Codeの対話利用も含む |
| Google Vertex | 使えなくなるものダウンロードしたサービスアカウントのJSONキー |
| Amazon Bedrock | 使えなくなるものIAMユーザーのアクセスキー。12時間以内に切れる短期のBedrock APIキーは例外 |
| Azure AI Foundry | 使えなくなるものAPIキー、エクスポートしたサービスプリンシパルのシークレットや証明書 |
期日までの移行措置もあります。Defense Accessの付与のもとでは、APIキーは次の4条件をすべて満たすときだけ使えます。
- シークレット管理ツールかパスワードマネージャーに保管する
- 1人または1つのワークロードに割り当てる
- ソースコードに置かない
- 少なくとも7日ごとに入れ替える
Anthropicはキーの有効期間を7日に制限でき、期日以降はワークスペースのAPIキーを無効にすることがあります。Claude Codeを自動処理に組み込んでいるチームは、期日の前に認証方式を短命な資格情報へ切り替える段取りが要ります。
個人で持つ付与は、適用される共通要件が絞られる
個人は、Defense Accessだけが対象です。個人の付与には「Defense Access for Individuals」の節が適用され、共通要件のうち適用されるのは、インシデント報告・調査への協力・継続的な確認の3つだけです。セキュリティ連絡先・利用の帰属・変更の通知は、個人には課されません。
その代わり個人向けの節に固有の条件があります。
- 付与を持つAnthropicアカウントには、Googleかそれと同等のIDプロバイダー経由でしかサインインできない
- アクセスの時点からMFAが必須で、12月15日からはフィッシング耐性のあるMFAになる
- Claude Code・Claude Console・claude.aiはOAuthで認証する。ワークロードのプログラム的なアクセスは、提供される場合に限りWorkload Identity Federationを使う
- 本人だけが使える。共有のサインインやセッション、他人に見せる拡張機能やプロキシーは認められない
- 付与のもとの通信はすべて保持され、監視される。ゼロデータリテンションは使えない
期日までは、APIキーは1つだけ、パスワードマネージャーかローカルのシークレット保管庫に入れ、共有せず、7日ごとに入れ替えるという条件つきで認められます。
Red TeamとSpecializedで増える運用要件
Red Team AccessとSpecialized Accessでは、MFAの対象範囲が大きく広がります。承認を受けたユーザーのIDプロバイダー上のアカウント、モデルを呼べるAWS・Google Cloud・Azureのアイデンティティ、モデルの資格情報を発行・保管する仕組みの管理アクセス、要件を満たすための仮想デスクトップまで含まれます。
運用の面では、次の要件が加わります。
- 承認を受けたユーザーは25人までで、実際の作業を行うか直接監督する人に限る。ワークロード用IDは人数に数えない。追加は書面(メールでよい)で依頼する
- メンバーの追加・ロール変更・ワークロード用IDや資格情報の作成は、名前の付いた管理者だけが行う
- 自社のゲートウェイやプロキシーは、承認を受けたユーザーとそのワークロード用IDだけを通し、自身も短命な資格情報を使う
- 自社システムが発行する資格情報は12時間以内に失効させ、端末・ソースコード・共有ストアに静的な資格情報を残さない
- 侵害された資格情報やIDを24時間以内に失効できる
- 退職・異動した承認ユーザーとそのワークロード用IDを、3営業日以内にワークスペースから外す
- 攻撃的作業やエージェント作業を行う場所では、外向き通信を、ホストの外で強制する許可リストに限り、ログも取る
- 承認を受けたユーザーは、組織が管理し、OS更新が自動または定期的に入る端末からだけ接続する
- 承認を受けたユーザーは契約者を含めて、身元確認と、法的に可能な範囲で犯歴確認を通過している
- 資格情報の失効とシートの停止を含む、侵害や悪用の疑いに対する手順書を持つ
Specialized Accessでは、端末要件がマルウェア対策つきに変わります。アプリケーションの許可リストか拒否リストを強制モードで動かすか、EDRエージェントをブロックモードで動かす必要があります。インシデント手順書には、Anthropicへの通知も含めます。サインインは、組織のドメインのID(シングルサインオンで連携したもの)に限られます。
政府機関は、FISMAの運用認可と、NIST SP 800-53に対する年1回の独立した監察総監の評価、または同等の国の制度があれば、端末・身元確認・インシデント手順書の要件を満たしたとみなされます。それ以外の要件は引き続き適用されます。
既存メンバーと、守らなかった場合
すでにProject GlasswingやCVPに参加している組織は、再申請が要りません。現行のモデルへのアクセスは従来の条件のまま続き、各段階のセキュリティ要件も従来の条件が維持されます。新しい段階に移るのは、Claude Opus 5.5・Claude Sonnet 5.5・Claude Mythos 5.1へのアクセスです。段階の全体像はCVPの3段階とMythos 5.1対応で追えます。
要件を満たさなかったときの措置は、要件ページに書かれていません。分かっているのは、Anthropicが証拠の提出を求めることがある点と、期限つきの調査・報告が義務になっている点までです。違反時にアクセスがどうなるかは、契約書面かアカウント担当者に確かめる事項になります。
運用に落とすときの優先順位
7つの共通要件のうち、体制づくりで最初に詰まるのは「報告の窓口」と「サインインの切り分け」です。連絡先の登録は1回で終わりますが、72時間・24時間の判断は担当者が不在でも回る必要があります。連絡先は名前の付いた担当者が条件なので、交代要員の扱いを社内で決めておく必要があります。
もう1つは、共有アカウントの棚卸しです。申請時には問題にならなかった使い回しが、承認後は要件違反になります。個人サインインと利用の帰属は、監査に耐える運用を支える一対なので、承認前の段階から揃えておけば、後の是正コストが下がります。
12月15日は、Defense Accessの組織にとって最も近い期日です。MFAの種類とAPIキーの扱いは、同じ日に同時に切り替わるため、片方だけ先に進めても期日には間に合いません。
まとめ
CVPの運用要件は、報告の期限と、使う人を特定できる状態の2点が軸です。72時間と24時間の報告、48時間の調査、7日の問い合わせ回答、30日の変更通知という時計を手順に入れ、サインインは個人ごとに分け、ユーザープロファイルは有効のまま保ちます。個人で持つ付与は適用される共通要件が3つに絞られる一方、MFAと資格情報の条件は厳密です。
段階が上がるほど、25人の上限、24時間の失効、管理端末、身元確認と、人と環境の管理が増えていきます。自分の組織がどの段階を持つかで、読む節を選べます。