Claude Media
Coworkの並列実行の仕組みと指示のコツ

Coworkの並列実行の仕組みと指示のコツ

Coworkは独立した作業同士を並列に進めます。公式ページごとの説明の温度差、並列を頼む依頼文の型、並列にならないときの見分け方と遅いときの診断を扱います。

Coworkは、1つの依頼の中に互いに依存しない作業が複数あるとき、それらを同時に進めます。製品ページは「大きな仕事は、一緒に走る小さな塊に分割される」と説明しています。ただし説明は、ページによって「自動で並列」と「頼めば並列」の間で揺れています。その差を知っておくと、依頼文をどこまで具体的に書くかを決めやすくなります。

公式は並列実行をどう説明しているか

Cowork製品ページの「More than one thing at a time」という項目が、この挙動の一番短い説明です。

Big projects are split into chunks that run together. While it drafts, it researches and organizes at the same time. You review polished work.

裏方の実行単位は「サブエージェント」と呼ばれます。ヘルプセンターの「Get started with Claude Cowork」には、これに関する記述が3か所あります。1つ目は「Claudeは複雑な作業を小さなタスクに分け、並列のワークストリームを調整する」という機能説明です。2つ目は、Anthropicのサーバー上で動く実行環境の説明にある「必要に応じて複数のワークストリームを並列に調整する」という一文です。3つ目は「複雑なタスクでは、複数のサブエージェントが同時に動くことがある」という記述です。

2つ目と3つ目は「if appropriate(適切なら)」「may(することがある)」という留保付きです。1つ目の機能説明だけは断定形で、ヘルプセンター内でも書き方が揃っていません。並列にするかどうかの判断はClaude側にあり、この記事で参照したページには、並列数を利用者が指定する方法は載っていません。

ページによって「自動」と「頼む」が揺れる

3つの事例ページを並べると、並列化の書き方が微妙に違います。

事例ページ並列化の書き方
ベンダーオンボーディング並列化の書き方独立した部分があれば並列で走る。tipsでは「サブエージェントを立ち上げて並列に、と頼める」
フィードバック横断分析並列化の書き方説明では全ソースから「並列に」引くと書く。tipsでは「サブエージェントを頼んでみる」
日次ブリーフィング並列化の書き方「Coworkはそれらを並列に問い合わせる」と断定形。頼む方法の記載なし

フィードバック分析のページは、説明では並列を前提にしながら、tipsで「頼んでみる」と勧めています。前提なら頼む必要はないはずなので、字面どおりに読めば、頼むことで並列化の判断が狙いどおりになりやすくなる、という意味合いです。ブリーフィングのページは頼む方法に触れず、コネクターを足せば並列で問い合わせると書くだけです。

並列になる依頼の形は「共通の材料、独立した成果物」

並列化の可否を分けるのは、作業同士が互いの結果に依存しているかどうかです。ベンダーオンボーディングの事例ページは、この境界を1文で示しています。

Updating the vendor tracker and generating the contract don't depend on each other — so you can ask Claude to spin up subagents and run them in parallel.

トラッカーの更新と契約書の生成は、どちらも同じベンダー情報を読むだけで、片方の出力がもう片方の入力にはなりません。もう1つの型は、複数の情報源への読み取りです。Slack、Linear、Salesforce、Notionへの問い合わせは互いに依存しないので、並列化の対象になります。

同じ事例ページのサンプル依頼文は、ベンダーごとにNDAとMSAをテンプレートから作り、オンボーディングフォームに記入する内容です。最後に全情報をトラッカーへ追加し、新しい書類をデスクトップで仕分けます。ページは「終わった状態を書く」よう勧めています。ただしサンプル自体は作業の列挙で、トラッカーへの追加は「Afterwards(そのあと)」と後ろに置かれています。tipsの「トラッカー更新と契約書生成は独立」とは、順序の扱いが揃っていません。計画はClaudeが立て、独立した部分があれば並列で走る、というのが同ページの説明です。

並列で集めたあとに、突き合わせが入る

並列化の価値は、速さだけではありません。ブリーフィングの事例は、並列に集めた結果が1つの項目に合成される様子を出力例で示しています。

ダッシュボードに「パイプライン速度が今週15%低下」という警告があり、Slackの#salesでは商談2件が翌四半期にずれ込むという投稿がありました。出力例はこの2つを別々に並べず、「関連するスレッドを見つけた」と紐づけた1項目にしています。タグ付けされていないが、自分の採用依頼に関わる#leadershipの議論も拾っています。

顧客フィードバックの事例では、同じ構造が数字で現れます。

数字

「モバイルアプリの不具合」テーマの集計(公式の出力例)

  • 通話の文字起こし

    11件

    ローカルフォルダのファイル

  • Slack

    31件

    最も多いソース

  • CRM(Salesforce)

    1件

    商談メモ・失注理由

  • Linear

    14件

    機能要望・不具合報告

4ソースの合計57件

出力例は、4ソースすべてに現れるこのテーマを「一部の声の大きい利用者ではなく本当の課題」と評価しています。逆にSSO連携は件数が少ないのにCRMの失注メモに集中して出るため、「利用の問題ではなく商談を止める要因」として別枠で扱われます。並列で集めた生データは、そのまま並べられていません。ソース別に数え、複数ソースにまたがるかで重みを変えています。この後処理を引き出しているのは、依頼文の「ソース別の件数、横断パターン、代表的な引用がほしい」という指示です。

並列を頼むときの依頼文の組み立て方

並列化を狙うなら、依頼文で「終わった状態」に加えて、独立した作業の境界を名指しします。公式のサンプル依頼文に足すと、次のような形になります。以下は事例ページのサンプルを元にした筆者の組み立て例で、公式の文面そのものではありません。

新規ベンダーごとに次を行ってください。
- テンプレートからNDAとMSAを作成する
- 調達ポータルのオンボーディングフォームに記入する
- ベンダー情報をトラッカーのスプレッドシートに追加する
トラッカーの更新と契約書の生成は互いに独立しているので、
サブエージェントを立ち上げて並列に進めてください。
全員分が終わってから、新しい書類をデスクトップのフォルダに整理してください。
手順

依頼文に入れる3つの要素

  1. 1

    独立している作業を名指しする

    「トラッカーの更新と契約書の生成は互いに依存しない」のように、どの作業とどの作業が別々に進められるかを書きます。Claudeの独立性判断に任せず、境界を利用者側が示す部分です。

  2. 2

    サブエージェントでの並列を頼む

    ベンダー事例とフィードバック事例の2ページで、ほぼ同じ言い回し(spin up subagents)が使われています。

  3. 3

    集約の工程を別の文で書く

    集まった結果に対する「突き合わせて優先度を付ける」「最後にまとめて整理する」は、並列の後ろに置く工程です。並列の指示と混ぜず、順序を文で示します。

Coworkは指示がなくても独立性を探しますが、複雑な依頼では、どこまでが独立かをClaudeの判断に任せきりにしない方が、意図どおりに分かれやすくなると考えられます。依頼文の側で境界を示すのは、その補正です。事例ページ3本は、最初の依頼のあとにClaudeが質問を返し、サイドバーに計画を出すと述べています。この計画が、並列の切り分けが意図どおりかを確かめる場所になります。分割の結果を確かめる手段として参照ページに書かれているのは、このサイドバーの計画だけです。

並列にならないのは、どんなときか

「並列化されない条件」の一覧は、参照したページにありません。事例ページに書かれているのは「独立した部分は並列に進む」という条件の側だけです。そこから逆に読める範囲を、記述とは分けて書きます。

  • 1手順で終わる依頼: ファイルを1つ要約するだけの依頼には、切り分ける部分がありません。並列の話は生じないと考えるのが自然です
  • 前の工程の出力が次の入力になる作業: 契約内容を確認してから承認メールを書く、のような依存のある作業は、依存する側が待つ形になるはずです。これは記述そのものではなく「独立した部分が並列になる」という条件からの推論です
  • 追加の依頼: フィードバック分析のフォローアップ例(特定テーマの深掘り、ロードマップ提案)は、別のプロンプトとして紹介されています。既に出た統合結果を材料にするため、性質上は前の結果に依存する依頼です。ブリーフィングのページにも「最初の依頼が文脈を作り、フォローアップは全部を問い合わせ直さずに絞り込める」という趣旨の記述があります

3つ目は特に注意が要ります。フォローアップが直列か並列かは、書かれていません。並列にならない条件として断言できるのは、依存関係のある作業は前提の結果を待たざるを得ない、という論理の部分だけです。

遅いとき、どの応答が全体を引っぱっているか

進捗パネルには、Claudeが読んでいるファイルや問い合わせ中のコネクターが、ステップごとに表示されます。ブリーフィングのページは、生成に想定より時間がかかるとき、この表示から「どのプラットフォームがボトルネックか」が分かると説明しています。フィードバック分析のページには、あるプラットフォームからの結果が少なすぎるときは、進行中に調整できるという記述もあります。

並列は全体の完了時間を縮める仕組みですが、遅いソースが1つあれば完了はそこに引きずられます。原因の切り分けは、次の順が手がかりになります。

症状見る場所手を打てること
完了が遅い見る場所進捗パネルで問い合わせ中のコネクター手を打てること進行中に依頼を調整する
あるソースの結果が少ない見る場所進捗パネルの取得内容手を打てること依頼を途中で修正する
中断した見る場所Desktopアプリが開いたままか(ローカルセッション、またはローカルのファイル・ブラウザーを使うクラウドのタスク)手を打てること再開する、またはクラウドセッションで実行する

最後の行の根拠は、ヘルプセンターのトラブルシューティングです。ローカルセッションでは、タスクの間ずっとClaude Desktopアプリが開いていて、コンピューターがスリープしていない必要があります。閉じたりスリープしたりすると、セッションが終わることがあります。クラウドのセッションはバックグラウンドで動き続けます。ただしクラウドでも、ローカルのファイルやブラウザー、コンピューターを使うタスクでは、Claudeが届くようにデスクトップアプリを開いておく必要があります。ProとMaxでは、2026年10月6日以降、新しいCoworkタスクはクラウドで動き、設定の「Only on your computer」は削除されます。

並列にしたことで使用量は増えるのか

並列実行が使用量にどう影響するかは、参照したページに数字がありません。ヘルプセンターが明記しているのは次の点です。

  • コードの実行、ファイル作成、コネクターやブラウザーを使う複数ステップのタスクは、簡単な質問より多く使用量を使う。ステップごとにトークンを使うため
  • 使用量の上限に頻繁に当たるなら、関連する作業を1つのタスクにまとめ、無関係な作業は新しい会話に分ける
  • 承認モードの「Auto」は、Claudeが追加のチェックを行うため、ほかのモードより使用量を多く消費する

並列の数と消費量の関係は書かれていないので、サブエージェントを増やせば必ず消費が増える、とも減る、とも言えません。使用量の設計はCoworkのコスト管理で扱っています。

サブエージェントの解説記事との切り分け

並列実行を支えるサブエージェントの導入方法や制約は、Coworkサブエージェントの使い方にあります。この記事は一歩手前の挙動、つまりどんな依頼が並列で進み、どう頼めば狙えるかを扱いました。ヘルプセンターはプラグインが「スキル、コネクター、サブエージェントを1つにまとめたもの」だと説明しています。並列そのものがプラグインの導入を前提にしているかは、事例ページには書かれていません。

自然言語で独立性を推定させる設計の賭け

GitHub ActionsのようなCIツールは、依存関係をワークフローとして利用者が書きます。Coworkは、依存関係を依頼文の自然言語から推定します。書く手間が要らない代わりに、推定が外れたときは、利用者からは何が起きたのか見えにくくなります。

「サブエージェントを頼める」余地が残されているのは、この推定を利用者が補正する手段と読めます。ただし補正が効くのは、利用者が作業の独立性を正しく把握している場合だけです。依存があるのに「独立している」と書けば、その依頼文は誤った前提を渡すことになります。並列の指示を書く前に、片方の出力がもう片方の入力になっていないか、一度確かめる価値があります。

まとめ

並列を頼む価値があるのは、共通の材料から独立した成果物を作る依頼と、複数ソースへの読み取りです。遅いときは進捗パネルで問い合わせ先を見て、原因のソースを切り分けます。Cowork全体の内部構造はClaude CoworkのComputer Use・VMサンドボックスで扱っています。

この記事を共有:XはてブLinkedIn