Claudeで取引照合し経理を自動化する — 銀行明細と勘定科目表の差分を仕訳案にする
Coworkに銀行の明細と勘定科目表を渡すと、取引を突き合わせて不一致を洗い出し、レビュー可能な仕訳案まで作ります。手順と注意点をまとめました。
銀行の明細ファイルと勘定科目表(chart of accounts)のふたつをCoworkに渡すと、取引を1件ずつ突き合わせ、記録漏れや重複といった不一致を洗い出し、そのままレビューできる仕訳案までまとめます。人の作業の中心は、突き合わせそのものではなく、Claudeが示した不一致の妥当性を確認する部分に移ります。なお、Claude自体の利用料をこの科目表のどこに計上するかはClaude利用料の勘定科目の選び方で扱っています。
Claudeで取引照合を自動化するとは
Coworkにフォルダを渡すと、銀行明細と勘定科目表を読み込み、すべての取引を出典の書類と照らし合わせます。プロンプトで指定するのは「何を受け取りたいか」だけです。照合レポートが欲しいのか、修正仕訳が欲しいのか、その両方かを伝えれば、突き合わせ自体はClaudeが進めます。その間、人は別の作業をしていられます。
この作業は、成果物の正しさをその場で検算しやすい部類です。仕訳は貸借が一致するかどうかで機械的に確かめられ、金額も明細の生データと1件ずつ突き合わせられます。経理でCoworkを試す最初の題材として、結果の良し悪しを自分で判定しやすい作業だと言えます。
この記事の数字と画面は、Claude Academyのユースケースページ「取引を口座間で照合する」に載っている2024年1月分の出力例に沿っています。実際の件数や文言は、渡すファイルによって変わります。
財務ファイルを渡す前に決める3点
手順に入る前に、公式の2つのページが別々の方向を向いている点を押さえておきます。
同じ財務ファイルでも、ページごとに向きが違う
ユースケースページ
当座預金口座の明細と勘定科目表が入ったフォルダを渡し、照合から仕訳案までを頼む流れです。
安全ガイド
財務書類のような機微情報を含むローカルファイルへのアクセスは避け、専用の作業フォルダを作り、重要なファイルはバックアップを取るよう書かれています。
この2つを両立させる線引きは、読者が自分で決めることになります。判断材料になるのは次の3点です。
処理はAnthropicのサーバー側で行われる
Coworkのセッションは、Anthropicのサーバー上の隔離された一時環境(ベータ)で動きます。環境はセッションごとに作られ、終了時に消えます。デスクトップアプリ経由で開いたローカルファイルも、処理はサーバー側です。
タスクがファイルを必要とするとき、Claudeはそのファイルだけのコピーを取得します。セッションを削除すれば、取得されたコピーも削除されます。タスクを削除すると履歴から即座に消え、バックエンドの保存領域からは30日以内に削除されます。
2026年10月6日から、ProとMaxプランの新しいCoworkタスクはクラウドで動きます。Settings > Generalの「Only on your computer」という選択肢はなくなり、すでに手元で始めたタスクは手元に残ります。
財務ファイルを手元から出したくない場合の選択肢として、デスクトップアプリのClaude Codeがあります。こちらはPC上で動き、フォルダと履歴が手元に残る方式です。いま開いているセッションがどちらで動いているかは、Coworkがクラウド実行かローカル実行か見分ける方法で見分けられます。データの置き場所とプラン別の違いはCoworkセキュリティ — データはどこに置かれ誰が触れるかに詳しくあります。
権限モードは手前に寄せておく
Coworkには、Claudeが行動の前に許可を求める度合いを決めるモードがあります。
| モード | 動き方 |
|---|---|
| 手動承認(Manual、旧「Ask before acting」) | 動き方行動のたびに許可を求め、許可か拒否かを選ぶ |
| 自動承認(Auto) | 動き方止まらずに進めるが、各行動の安全性をClaudeが審査し、危ないと判断したものはブロックする |
| 全承認スキップ(Skip、旧「Act without asking」) | 動き方確認も自動審査もなく進める |
新しい体験では、メッセージ欄の権限設定がAutoと手動承認(既定)の2つになります。お金が絡む作業については、そばで見守って確認するか、手動承認に戻すことの検討が公式ヘルプに書かれています。自動承認は安全確認の分だけ使用量を多く消費する点も、同じ場所に書かれています。
ファイルを完全に削除する前には、許可プロンプトが出て、「Allow」を選ぶまで削除は実行されません。それでも仕訳の書き出し先に既存の帳簿ファイルがあるフォルダを選ぶときは、バックアップを別に取っておく方が安心です。
渡すファイルは専用フォルダに絞る
照合に必要なファイルだけを入れた専用フォルダを作り、無関係な財務資料は見せません。銀行明細には取引先名や口座番号が含まれます。口座番号の列を除いたコピーでも照合の目的を果たせるなら、そのコピーを渡す方法もあります。
新しい体験のデスクトップ版では、許可したフォルダが設定の「Trusted folders」に一覧で並びます。照合が終わったら、渡したままのフォルダが残っていないかを見直せます。
ステップ1: Cowork Desktopとフォルダの準備
照合の前に整えるもの
- 1
Claude Desktopを入れてCoworkを開く
Coworkは有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)向けです。ローカルのフォルダを読み書きするにはデスクトップアプリが必要で、アプリは開いたままにします。メッセージ欄に「Cowork」の選択肢が出ない場合は新しい体験なので、会話の中でそのまま依頼します。
- 2
財務ファイルの入ったフォルダへのアクセスを与える
チャット欄の「Work in a folder」を選ぶか、「+」ボタンで個別のファイルを追加します。
- 3
明細と勘定科目表を同じフォルダにまとめる
銀行からエクスポートした当座預金口座の明細と、現行の勘定科目表を置きます。
ステップ2: 明細と勘定科目表を渡して照合を依頼する
フォルダをアタッチしたら、欲しい成果物を明示してチャットで依頼します。
2024年1月の銀行明細を照合したいです。当座預金口座の明細エクスポートと
現行の勘定科目表をアップロードしました。
取引を分析して正しい科目にマッチさせ、合わない箇所にフラグを立てて
ください。不一致があれば、修正のための仕訳もお願いします。初回のプロンプトのあと、Claudeが口座について質問を返すことがあります。質問のあとはサイドバーに計画が出るので、内容を確認してから進めます。口座の性質や社内の計上ルールを先に知らせたい場合は、質問を待たずに最初のプロンプトへ書いておく方法もあります。
出力先のフォルダを先に指定しておく
最終的な仕訳を保存したいフォルダは、最初に伝えておきます。「仕訳が固まったら、このフォルダに直接書き出してください」と頼んでおけば、Claudeは照合結果をチャット上に留めず、指定した場所へ直接出力します。ファイルをあとからチャット履歴の中で探す手間がなくなります。
ステップ3: 照合結果と仕訳案を読む
Claudeは両方のファイルを分析し、取引を科目にマッチさせたうえで、直す必要がある箇所を提示します。
ユースケースページの出力例(2024年1月分)
取引件数
147件
入金45,230.00ドル・出金38,892.45ドル
既存科目にマッチ
128件
全体の87%
新規の科目分類が必要
13件
不一致で仕訳が必要
6件
見つかった不一致は、銀行手数料の記帳漏れ(35.00ドル)、受取利息の記帳漏れ(12.45ドル)、支払いの二重計上(234.00ドル)の3種類です。3つの金額を足すと281.45ドルです。
3つの分類を足すと128件、13件、6件で、取引総数の147件に一致します。
一方、仕訳案は13件・合計2,563.23ドル分がまとまり、いずれも貸借が一致し、既存の勘定科目表のIDに沿っています。出力例では、不一致6件、新規分類13件、仕訳案13件の対応関係は示されていません。件数が揃わないのは異常ではないので、仕訳案と不一致の一覧を並べて、どの仕訳がどの不一致に対応するかを自分で追います。
仕訳をそのまま確定に使わないことが基本です。Claudeが作るのはレビュー用の下書きで、実際に帳簿へ反映する前に、金額と科目の妥当性を人が確認します。
「新規の科目分類が必要」な13件は、既存の科目にあてはまらない取引を指すと考えられます。記帳の誤りを直す不一致6件とは性質が異なり、どの科目へ計上するかは経理担当者が判断する領域です。
複数月へ範囲を広げる
1か月分の照合がうまくいったら、同じ会話の中で範囲を広げられます。ユースケースページには、追加のプロンプトとTipsが載っています。
- 仕訳をCSVで書き出す: 「この仕訳を承認するので、会計システムに取り込めるCSVで書き出してください」と頼むと、インポート用のファイルが得られます。補足として、取り込み先が列名や日付形式を固定しているなら、仕様書を先に渡しておきます。列のずれによる出力し直しを避けやすくなります
- 正式な照合サマリーを作る: 自社の記録用や監査人に見せる用に、フォーマット済みの照合レポートを別に生成できます
- 調整のパターンを分析する: 「どの費用科目に修正が多かったか、記帳の仕方に直すべきパターンがあるか」と尋ねると、個別の不一致ではなく根本原因の側を挙げてくれます。毎月同じ科目で修正が出るなら、記帳ルールの見直しにつながります
- 複数月を並行して進める(Tips): 数か月分の照合が滞留しているときは、1月を進めながら2月の作業も並行して走らせられます
サイドバーの「Artifacts」パネルには、仕訳案のスプレッドシートのような生成物が随時表示されます。「Context」パネルでは、Claudeが参照している元ファイルを確認できます。別の作業を新しいセッションで進めている間は、確認が必要になるとサイドバーに灰色のドットが出ます。
月次で繰り返すなら定期タスクにする
毎月同じ照合を回すなら、Coworkのタスクの中で/scheduleと入力するか、左サイドバーの「Scheduled」から定期タスクを作れます。定期タスクはクラウドで動くため、PCの電源が入っていなくても走ります。ただし、手元のファイルを使うタスクはデスクトップアプリを開いておく必要があります。
留守中に動くタスクには、仕訳案を作るところまでを任せ、承認は手元で行う分け方が考えられます。
ただし安全ガイドは、定期タスクで機微なファイルに触れる作業を避けるよう書いています。財務ファイルを使う定期実行は、渡すファイルを絞り、毎回出力を見直す前提で判断します。設定の手順はCoworkの定期タスクの設定方法にあります。
取引照合をどこまでClaudeに任せられるか
同じ「照合」という言葉でも、任せられる範囲と人に残る範囲は分かれます。
| 工程 | Coworkの役割 | 人に残るもの |
|---|---|---|
| 明細と科目表の読み込み | Coworkの役割全件を機械的に突き合わせる | 人に残るものファイル自体の取り違えがないかの確認 |
| マッチングと不一致の抽出 | Coworkの役割記帳漏れ・重複・誤科目を検出する | 人に残るもの検出結果が業務上妥当かの判断 |
| 仕訳案の作成 | Coworkの役割貸借が一致する形式で下書きする | 人に残るもの帳簿への実際の反映と最終承認 |
| パターン分析 | Coworkの役割繰り返し起きる不一致の傾向を示す | 人に残るもの記帳ルール自体を見直すかどうかの決定 |
この線引きはCowork経理の実践で扱った「集める・読み取る・揃える・照らす・決める」という5段階の分類とも一致します。取引照合は4段階目の「照らす」に当たり、差分を出すところまでがCoworkの守備範囲です。その差分が業務上どういう意味を持つかは、人に残ります。
この線引きが崩れやすいのは、不一致の件数が少ないときです。6件程度なら「全部Claudeの案どおりで良さそう」と流し読みで承認しがちですが、件数の少なさと金額の重要性は別の軸です。1件が高額な誤りなら、件数の少なさは確認を省く理由になりません。
状況別の進め方
使い方は、手元の状況によって変わります。
| 状況 | 取れる選択 |
|---|---|
| 財務データを手元のPCに留めたい | 取れる選択デスクトップアプリのClaude Codeを使う。Coworkの定期タスクとプロジェクトは引き継がれない |
| 口座番号などを渡したくない | 取れる選択該当列を除いたコピーを作って専用フォルダに置く |
| 会計システムへ直接つなぎたい | 取れる選択ファイルの受け渡しでなく、API・MCPコネクタ経由の別設計にする |
| 数か月分が滞留している | 取れる選択月ごとに区切って進める。並行して走らせることもできる |
| 毎月同じ手順を繰り返す | 取れる選択定期タスクにして、承認は手元で行う |
この記事の手順は、ファイルのアップロードとエクスポートで完結する方式です。会計システム側から直接データを取りに行く構成は、Claudeとマネーフォワード クラウド会計の連携のような専用の接続手順が必要になります。摘要から科目を決めるルールの蓄積は記帳代行の仕訳を半自動化するルール表で扱っています。
銀行明細照合でよくあるつまずき
- 勘定科目表が古いまま渡す: 科目の新設・統合が反映されていないと、Claudeが読み取る科目と帳簿の実態がずれます。照合の直前に最新版を用意します
- 不一致の理由を確認せず仕訳を承認する: 重複払いのように原因が明確な不一致もあれば、口座間の資金移動のように文脈が要る不一致もあります。理由を確認しないまま仕訳をまとめて承認するのは避けます
- 月をまたぐ調整を1回で片付けようとする: 複数月分の記帳漏れが積み重なっている場合、1回のセッションで全部を解決しようとすると確認すべき項目が埋もれます。月ごとに区切るほうが、不一致の原因を追いやすくなります
- 口座間の資金移動を通常の入出金と同じに扱う: 複数の自社口座を照合すると、片方の口座の出金と、もう片方の入金が対になる取引が出ます。送金元と送金先の両方の明細で日付と金額が一致するかを確かめ、一致すれば口座間振替として仕訳案を作り直してもらいます。確認できた組み合わせは仕訳案の備考欄に残しておくと、翌月に同じ2口座間の入出金が出たとき、根拠を洗い直さずに済みます
- フォルダ内のファイルが読まれない・出力が見つからない: セッションがクラウドで動いている場合、手元のPCにつながるのはデスクトップアプリが開いている間だけです。アプリが閉じていたりPCがスリープしていたりすると、セッションは続いても手元のファイルには届きません。許可したフォルダと、Claudeが指定した出力先も見直します
- 使用量が早く減る: コードの実行やファイルの作成を伴う複数ステップのタスクは、短い質問より多くの使用量を使います。関連する作業は1つのタスクにまとめ、無関係な作業は新しい会話に分けます。使用量はSettings > Usageで確かめられます
Coworkの基本機能や料金体系の全体像はClaude Coworkとは — 機能・料金・安全性にまとめています。
まとめ
取引照合は、差分の抽出と仕訳案づくりをClaudeに任せ、帳簿への反映と科目の判断を人が持つ形で成り立ちます。財務ファイルを渡す前に、専用フォルダ・権限モード・実行場所の3点を決めておけば、あとの手順はユースケースページのとおりに進められます。