Cypress CloudのMCPをClaude Codeで使う方法
Cypress Cloud MCPをClaude Codeに接続し、テスト結果・失敗原因・フレーキーテストをエージェント経由で照会する手順と、公式MCPがCloud限定である理由を解説します。
Cypress Cloud MCPは、CypressのSaaS版であるCypress CloudのMCPサーバーです。2026年5月20日に正式リリースされ、Starterプランを含む全プランで追加費用なしに使えます。Claude Codeから「このブランチの最新実行結果を教えて」と聞くだけで、CIとエディタの間を人手で行き来せずにテスト失敗の調査が進みます。
一方で、公式MCPが提供されているのはCypress Cloud側だけです。OSSのテストランナー本体(cypress runでテストを実行する側)には公式MCPがなく、コミュニティからの提案がGitHub Issueに上がっている段階にとどまります。
Cypress Cloud MCPとは何ができるか
Cypress Cloud MCPは、Cypress Cloudに蓄積されたテスト実行結果をAIエージェントから直接照会できるようにするリモートMCPサーバーです。実行ステータスの確認、フレーキーテストの特定、失敗の詳細(Test Replayへのリンクを含む)の取得を、エージェントが会話の流れの中で自律的に呼び出します。
MCPの仕組みは「AI向けのUSBポート」に例えられます。AIクライアント(Host)がCypress Cloud(Server)にプラグインし、OAuthまたは個人アクセストークン(PAT)で認証された安全な経路(Connection)を通じてリアルタイムのデータを取得します。読み取り専用で、テストコードの変更やRunの削除はできません。
導入前の準備 — 組織の有効化と認証方式
利用開始までに3つのステップが要ります。①組織の管理者がCypress CloudのIntegrationsページからCloud MCPを有効化する。②各ユーザーがOAuthまたはPATでCypress Cloudに認証する。③各ユーザーが自分のAIクライアントにリモートMCP設定を追加する。
認証方式は2つあります。
| 方式 | 特徴 |
|---|---|
| OAuth(推奨) | 特徴ブラウザ経由のサインインのみ。トークンの手動発行・更新が不要で、セッションは30日間自動的に再接続される |
| 個人アクセストークン(PAT) | 特徴OAuthに対応しないクライアント向け。Cypress Cloudのプロフィール画面で発行し、有効期限を選べる |
PATはCypress Cloudにサインイン後、プロフィール画像→Manage Profile→MCP personal access token→Generate tokenの順で発行します。トークンは発行時にしか表示されないため、その場でコピーします。
Claude Codeへの接続手順(claude mcp add)
Cloud MCPはリモートのHTTPサーバーで、URLはhttps://mcp.cypress.io/mcp固定です。OAuth対応クライアントならURLを登録するだけでブラウザ認証が走ります。
claude mcp add cypress-cloud \
https://mcp.cypress.io/mcp \
--transport http追加後、claudeでセッションを開始し、「mcp cypress」のようにCypress Cloudを指す一言をプロンプトに含めると、Claude Codeがブラウザウィンドウを開いてCypress Cloudへのサインインを求めます。
PATを使う場合はヘッダーでトークンを渡します。
claude mcp add cypress-cloud \
https://mcp.cypress.io/mcp \
--transport http \
--header "Authorization: Bearer YOUR_MCP_TOKEN"スコープは--scope user(全プロジェクトで共有、推奨)・--scope local(既定、現在のプロジェクトのみ)・--scope project(.mcp.jsonでチーム共有)の3種類から選べます。チームで同じ設定を配りたい場合は--scope projectにして.mcp.jsonをリポジトリにコミットします。
使えるツールとプロンプトの書き方
接続後にエージェントが自律的に呼び出す主なツールです。
| ツール | できること |
|---|---|
cypress_get_runs | できることプロジェクト・Run URL・ブランチ単位でRunのサマリーを取得 |
cypress_get_failed_tests | できること失敗テストのスタックトレースとTest Replayリンクを取得 |
cypress_get_flaky_tests | できることRun内のフレーキーテストを特定 |
cypress_get_accessibility_report | できることアクセシビリティ違反を深刻度別・ルール別に要約 |
cypress_get_ui_coverage_report | できることUI Coverageスコアと未テスト要素の多いビューを要約 |
効果的なプロンプトには3つの原則があります。①「Cypress Cloud」と明示して正しいツールを呼ばせる。②「このブランチ」「このコミット」やRun URLを直接貼って文脈を渡す。③「何が落ちたか」だけでなく「直して」まで指示に含める。使用回数には全プラン共通で1時間あたり100リクエストの上限があります。
実際に使うプロンプトの一例です。ブランチ名だけを渡して調査からスタートさせます。
Check Cypress Cloud for the latest run on this branch.
Give me a high-level summary of any failures.これだけで、該当ブランチの最新Run取得(cypress_get_runs)から失敗テストの詳細取得(cypress_get_failed_tests)まで、エージェントが必要なツールを自分で選んで実行します。
Cloud MCPとCloud CLIの使い分け
Cypress Cloudには、プログラムからのアクセス手段がもう1つあります。ターミナルで使うcy-cloud(Cloud CLI)です。両者は同じCypress Cloudのデータに触りますが、想定する使い手が違います。
| Cloud MCP | Cloud CLI(cy-cloud) | |
|---|---|---|
| 主な利用者 | Cloud MCPAIクライアント(エージェントが自律的にツールを選ぶ) | Cloud CLI(cy-cloud)人・スクリプト・シェルコマンドを実行するエージェント |
| 向く場面 | Cloud MCPエディタ内での対話的なデバッグ | Cloud CLI(cy-cloud)ターミナルからの深い調査、自動化、独自ツールへの組み込み |
| 出力形式 | Cloud MCPMCPツールの構造化レスポンス | Cloud CLI(cy-cloud)JSON |
両方を併用するチームも珍しくありません。会話しながらデバッグするならCloud MCP、ターミナルで完結させたい・スクリプトに組み込みたいならCloud CLIという住み分けです。どちらも全プラン無料で使えます。
セキュリティ — Cypressが見えるもの・見えないもの
Cloud MCPはAIエージェント向けのAPIとして動作し、アプリケーションがAPIを呼ぶのと同じ形でしかCypress側にデータは渡りません。Cypressが受け取るのはgetRuns(projectId: 100, runNumber: 45, limit: 10)のようなツール呼び出しの引数だけで、AIとのチャット履歴やコンテキストウィンドウの中身には一切アクセスできません。テスト結果やスタックトレース、Replayリンクはリクエストに答える目的にのみ使われ、LLMの学習データにも使われません。
権限面では、Cloud MCPは読み取り専用でテストコードの変更やRunの削除はできず、各ユーザーは自分のCypress Cloudアカウントが持つ権限の範囲でしかデータにアクセスできません。組織側はIntegrationsページからいつでも統合を無効化でき、無効化した瞬間にOAuth・PATを問わず全ユーザーのアクセスが失効します。契約を切り替えたい・一時停止したいだけなら、MCPサーバー設定をAIクライアント側から削除するよりも、この組織単位の無効化のほうが確実です。
公式MCPはCloud限定 — テストランナー本体にはまだ無い
Cypress Cloud MCPが公式に存在する一方、cypress runを実行するOSSのテストランナー本体を対象にした公式MCPは存在しません。Cypressのリポジトリには2026年2月25日に「Proposal: Official MCP server for Cypress(@cypress/mcp)」というIssueが立ち、9件のコメントを集めていますが、実装には至っていません。
提案されている構想では、cypress_run(スペック実行と結果取得)、cypress_write_spec(テストファイルの生成)、cypress_snapshot(ページのARIAツリー取得)のようなツールでテストの生成・実行・デバッグをAIに任せる形が想定されています。Playwrightチームが@playwright/mcpを先行してリリースしたことが、この提案の直接のきっかけになっています。
つまり現状は、実行結果の照会と分析はCloud MCP、テストの実行・記述そのものはClaude Codeのシェル実行やコマンド呼び出しという役割分担になります。既存のCI連携にCypress Cloudを使っているチームであれば、Cloud MCP単体でも「落ちたテストの原因を聞く」という主要なユースケースはカバーできます。提案されているツール名(cypress_runやcypress_write_spec)がPlaywright MCPの命名と近いのは、先行するPlaywright MCPの設計を参考にしている裏返しでもあります。
よくあるつまずき
エージェントがRunを見つけられない。組織でCloud MCP統合が有効になっているか、CIで記録されたGitブランチ名とエージェントに伝えたブランチ名が一致しているかを確認します。CIジョブが赤(失敗)で終わっていても、Cypress自体がRunを記録していればCloud上にデータは残っているため、失敗ジョブ=データなしと決めつけずブランチ名やRun URLで直接問い合わせます。CIとGitHub MCPを併用している場合は、Run URLがCypress CLIの出力末尾近くに出力される点も見落としやすいポイントです。
OAuthのブラウザ認証が開かない。https://cloud.cypress.ioにブラウザから到達できるか、ファイアウォールやプロキシがhttps://mcp.cypress.ioを許可しているかを確認します。改善しない場合は、AIクライアント側のMCP設定を一度削除して再登録します。PATを使っている場合は、Manage Profile画面でトークンの有効期限が切れていないかも合わせて確認します。
PATからOAuthへの切り替え。AIクライアントの設定からAuthorizationヘッダーやトークンの環境変数を削除して保存するだけで、次回接続時にOAuthのブラウザサインインへ自動的に切り替わります。
まとめ
Cypress Cloud MCPは全プラン無料・GA済みの成熟した機能で、claude mcp addにリモートURLを渡すだけで数分で使い始められます。認証はOAuthを既定にし、CIで動かすような対話に向かないクライアントだけPATに切り替えるのが基本方針です。テストランナー本体への公式MCPはまだ提案段階にとどまるため、「テスト結果の照会」と「テストの実行」でツールが分かれている現状を前提に運用します。ターミナルからの深い調査や自動化にはCloud CLI、エディタ内での対話的なデバッグにはCloud MCPという役割分担も合わせて覚えておくと、必要なときに迷わず選べます。
同じくテスト自動化ツールのMCP化ではPlaywright MCPサーバーの使い方も参考になります。ブラウザ自動化そのものをAIに任せたい場合の選択肢の1つです。Claude CodeのMCP設定全般(スコープ・.mcp.json・OAuth)はClaude Code MCP設定ガイドにまとめています。