Anthropic Referral Partner Programの規約 — 紹介料の条件と注意点
Anthropicに顧客を紹介して紹介料を受け取る規約を条文ベースで読みます。対象は受理後6か月以内の契約で、初回注文書の支払いだけが基準です。支払い時期、禁止事項、責任上限まで整理しました。
Anthropicに顧客を紹介して紹介料を受け取るには、Referral Partner Program Terms and Conditions(2025年3月26日施行)に従う必要があります。紹介料が出るのは、Anthropicが受理した紹介先が、通知から6か月以内に対象サービスの契約を結んだ場合だけです。しかも紹介料の計算に入るのは初回の注文書に基づく支払いに限られ、更新や拡張は含まれません。
この規約は代理店契約ではありません。紹介者はAnthropicのサービスを販売できず、価格も請求も回収もAnthropicが握ります。日本のSIerやコンサルティング会社が紹介の窓口になる前に、条文のどこが収益と責任を決めるかを順に見ていきます。
紹介料が発生する条件は何か
紹介料の対象になるのは「Eligible Referral(適格な紹介)」だけです。規約は次の3つを満たしたものをそう呼びます。
紹介が適格になるまでの流れ
- 1
書面で通知する
紹介者は紹介先をAnthropicへ書面で通知します。通知方法はAnthropicが指定します。
- 2
Anthropicが受理する
Anthropicは速やかに、受理するかどうかを返答します。
- 3
役員への引き合わせを行う
受理後、紹介者は最低限、購入部門の予算責任を持つ役員をAnthropicの営業担当に紹介し、初回の面談を設定します。
- 4
6か月以内に契約が成立する
紹介先が、通知日から6か月以内に対象サービスの契約を結びます。
名刺を渡すだけでは足りません。予算権限のある役員への紹介と初回面談の設定が、適格になるための最低ラインとして条文に書かれています。
適格になった後は、紹介先とのやり取りはAnthropicの指示で進みます。価格の設定も、料金の回収もAnthropicが行います。紹介者が値引きや条件交渉を主導する余地は、規約上ありません。
受理されない紹介
Anthropicは、次のどれかに当てはまる紹介を受理しないことがあります。
- すでにAnthropic、または別の紹介パートナーや紹介代理人の顧客である
- すでにAnthropicとサービス利用の予備的・本格的な協議に入っている
- 第三者がすでに紹介として提出している
- 紹介料の支払いが複数の当事者への手数料になる、またはAnthropicの事業上の利益に反すると判断される
4つ目は範囲が広く、Anthropicの判断に委ねられています。さらに、Anthropicは適格な紹介先と契約を結ぶ義務を負いません。契約するかどうかは、Anthropicの単独の裁量です。
既存の取引先を紹介する場合は、先方がすでにAnthropicや他の紹介経路と接点を持っていないかを通知の前に確かめておく必要があります。接点があれば、受理されない側に入ります。
紹介料はいつ、何に対して払われるのか
支払いの基準は狭く作られています。
紹介料の時間軸
契約の期限
6か月
通知日から契約成立まで
支払い期限
60日
契約料を受領した四半期の末日から
紹介料の対象
初回注文書のみ
更新・アップグレード・拡張は除く
紹介料は、紹介先が初回の注文書に基づいて支払った料金に対してだけ発生します。更新、アップグレード、拡張、税、割引に関する紹介料は出ません。初回の契約が小さく、後から利用が大きく伸びるタイプの案件では、紹介料は初回の金額分で止まります。
支払いは後払いです。Anthropicが紹介先から料金を受け取った暦四半期の末日から60日以内に支払われます。たとえば2月に入金があった場合、四半期末は3月31日なので、期限は5月30日です(規約の文言に沿った計算例)。
紹介先が注文書の支払条件どおりに支払わなければ、紹介料は発生しません。紹介者の努力とは別に、先方の支払い遅延や不払いが紹介料に直結します。
返金が発生した場合や請求ミスで過払いがあった場合、Anthropicは紹介料から差し引けます。差し引く前には紹介者へ知らせる義務があります。
料率は規約ページに載っていない
規約は、紹介料を「Referral Fee Table」に記載された料率で払うと定めています。ただし、公開されている規約ページにその表は含まれていません。料率、通貨、対象サービスの範囲は、別の資料で示される形です。
紹介を始める前に、表の入手を済ませておく必要があります。対象は「approved Anthropic Services」、つまり承認された対象サービスに限られるため、どの製品が承認済みかも同じ資料で確かめることになります。
紹介者がしてはいけないこと
規約は、紹介者の役割を「引き合わせ」までに絞っています。
| 項目 | 規約の内容 |
|---|---|
| サービスの提供 | 規約の内容紹介先へAnthropicのサービスを提供してはならない |
| アカウントの貸与 | 規約の内容紹介先のアカウントの全部または一部をホスト・リースしてはならない |
| アクセスの共有 | 規約の内容紹介先が契約したサービスへのアクセスを、紹介者や関連会社を含む第三者に与えてはならない |
| 利用権 | 規約の内容この規約は、紹介者にAnthropicのサービスを使う権利を与えない |
| 表明の範囲 | 規約の内容公開された技術文書と食い違う仕様・機能の説明、保証の範囲を広げる説明をしてはならない |
紹介者自身が検証目的でClaudeを使う場合は、別途の利用契約が必要です。この規約は利用権を一切与えません。
最後の行は、営業資料に直結します。提案書に載せるモデルの能力や機能の説明は、Anthropicが公開する技術文書と矛盾してはいけません。「この規模なら確実にこの精度が出ます」といった保証めいた表現は、標準契約書の免責条項の範囲を超える表明に当たりかねません。
Anthropicのサービスの契約は、紹介先とAnthropicの間で結ばれます。規約の統合条項は、利用契約はこの規約に含まれず、規律されないと明記しています。
共同マーケティング・商標・秘密保持の扱い
共同のマーケティング活動は、事前の書面による相互承認が必要です。ロゴなどの商標は、承認されたマーケティングの範囲でだけ、非独占・譲渡不可・取り消し可能な形で使えます。使い方はAnthropicの書面の指示とブランドガイドラインに従い、いつでも使用許諾を取り消されます。商標の使い方の問い合わせ先は、規約にマーケティング窓口のメールアドレスとして記載されています。
秘密保持は双方向です。相手の秘密情報は、この契約の履行にだけ使い、知る必要のある従業員・代理人・アドバイザーにだけ開示できます。開示する相手には、同等以上の守秘義務が必要です。漏えいの疑いがあれば、速やかに相手へ通知します。破棄を求められたら速やかに応じますが、自動バックアップ内の複製は、保存されている間も守秘義務の対象のまま残ります。
フィードバックを出す義務はありません。出す場合は、第三者の秘密情報を含めてはならず、Anthropicは対価なしで自由に使えます。
終了・紛争・責任の条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | 内容発効日から、終了されるまで続く |
| 都合による終了 | 内容双方とも、30日前の通知でいつでも終了できる |
| 重大な違反 | 内容違反の内容を示した30日前の通知で終了。その期間内に是正されれば終了しない |
| 即時終了 | 内容履行の継続が適用法令に違反するとAnthropicが合理的に判断したとき、Anthropicは通知して直ちに終了できる |
| 終了後の紹介料 | 内容発生済みの紹介料は支払われる。ただしAnthropicが違反を理由に終了した場合は別 |
| 準拠法 | 内容カリフォルニア州法 |
| 紛争解決 | 内容45日間の誠実な協議の後、サンフランシスコで英語・単独仲裁人によるJAMSの包括的仲裁規則に基づく最終的な仲裁 |
| 陪審・集団訴訟 | 内容双方とも権利を放棄する |
| 責任上限 | 内容間接損害や逸失利益は対象外。直接損害も、契約に基づく過去12か月の支払額と1万ドルのいずれか大きい額が上限 |
責任上限の例外は2つです。補償義務(第三者から商標の侵害を主張された場合の防御と賠償)と、商標の使用条項への違反には、上限がかかりません。
補償義務の対象は、相手方の商標を規約どおりに使ったことが第三者の知的財産権を侵害したと主張される場合に限られます。双方が互いに負う、対称な内容です。ただし、詐欺、故意の違法行為、法令違反、規約違反に由来する部分は除外されます。
英語での仲裁、サンフランシスコ、カリフォルニア州法の組み合わせは、日本企業の法務が事前に読み込む箇所です。紛争の入口は、まず45日間の協議と書面の通知です。
紹介者の贈賄・不正利益供与は、海外での腐敗行為を禁じる米国法(FCPA)の対象です。公的機関への案件を紹介する場合は、先方の窓口との接点を含めて、社内の贈答・接待のルールを揃えておく必要があります。
規約は紹介者を独立した契約者と位置づけています。どちらにも相手を拘束する権限はなく、共同事業者にもなりません。また、非独占の契約で、他社との紹介・再販契約を妨げません。
日本のSIer・コンサルが紹介前に確かめる点
条文から読み取れる確認点を、実務の順に並べます。
- 紹介先がすでにAnthropicや他の紹介経路と接点を持っていないか(受理されない4条件)
- 役員レベルへの引き合わせと初回面談を、受理後に自社で設定できるか
- 契約までの6か月を超えそうな案件を、通知の時期で調整できるか
- 紹介料は初回注文書の分だけという前提で、案件の採算を見積もれるか
- Referral Fee Tableの料率、対象サービス、通貨を、書面で受け取っているか
- 提案資料の機能説明が、公開された技術文書と矛盾していないか
- 紛争は英語・サンフランシスコ・カリフォルニア州法で扱われることを、法務が了承しているか
Claude Partner Networkとの関係
Claude Partner Network Agreement(CPNA)は別の文書です。参加条件、特典の返還、責任上限などを定めており、内容はClaude Partner Networkの契約を読む記事にまとめています。CPNA自体は、案件紹介や売上の保証をしていません。
2026年6月に発表されたServices Trackでは、新規ビジネスの紹介は階層(ティア)とは別の枠で評価され、紹介クレジットと案件保護で報われると説明されています。詳細はServices TrackとPartner Hubの解説に整理しています。
ただし、Referral Partner Program Termsの本文には、CPNAや紹介クレジットとの関係を示す記載がありません。両者を同時に使う場合に、紹介料とクレジットがどう扱われるかは、規約の文面だけでは判断できず、Anthropicへの書面での確認が前提になります。
落とし穴
紹介料と階層の評価は別物
紹介料の対象になる条件(受理、6か月、初回注文書)と、パートナー階層の評価基準(認定された担当者数や本番導入の実績など)は、それぞれ別の文書で決まります。紹介が成約しても階層に直結するとは限らず、階層が上がっても紹介料が増えるとは書かれていません。
規約の施行日は2025年3月26日で、改定の取り扱いは、書面で双方が署名しない限り変更は有効にならないと定められています(修正条項)。自社が同意した版の控えを、契約時点で保管しておく必要があります。