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Claude Partner Networkの契約条件 — CPNAの中身と参加前の確認点

Claude Partner Networkの契約条件 — CPNAの中身と参加前の確認点

Claude Partner Networkに参加する条件を定めるCPNAを条文ベースで読みます。特典の返還、政府案件の資金条件、関連会社の責任、責任上限5万ドルまで、参加前に見る点を表にしました。

Claude Partner Networkに参加すると、ロゴ使用や資金面の特典を受けられる一方で、Claude Partner Network Agreement(CPNA)という契約に同意することになります。CPNAは2026年6月3日に施行されました。導入支援会社が申請前に法務と読むべき論点は、特典の扱い、政府案件、関連会社の責任、終了と変更の5つに集約できます。

要点

  • 参加には、Claude Partner Hubでの申請、Anthropicの書面承認、CPNAへの同意の3つが要る。承認と階層(ティア)の判断はAnthropicの裁量
  • 資金などの特典は保証されない。対象外だったと判断されれば返還を求められる
  • 特典は本来の用途以外に使えず、従業員の私的利用にも使えない
  • 政府機関が絡む案件で資金特典を受けるときは、追加の条件がある
  • 関連会社の違反は、参加者本人の違反として扱われる
  • 契約に同意しても、Claudeの再販やサブライセンスの権利は得られない

参加は誰が決めるのか

CPNAは、Claude Partner Networkプログラム(以下、プログラム)への参加を定める契約です。Partner Program Guide、Anthropic Policies、Program Specific Termsも契約に組み込まれます。CPNAの本文だけ読んでも全体像は見えません。

参加の要件は3つです。

  1. Claude Partner Hubで申請を完了する
  2. Anthropicから書面で参加の承認を受ける
  3. CPNAに同意し、契約が終了していない状態にある

承認は「Anthropicの単独の裁量」で、階層の決定も含まれます。申請すれば入れる仕組みではありません。階層の要件そのものは、同時期に発表されたServices Trackの内容としてClaude Partner Networkの実績ランクとパートナーハブの記事にまとめています。CPNAは階層の数値を定めず、Partner Program Guideに委ねる構造です。

契約主体は所在地で分かれます。EEA、スイス、英国に所在する場合はAnthropic Ireland, Limited、それ以外はAnthropic, PBCです。日本の会社は後者に当たります。

同意は電子的に成立する

CPNAは、Anthropicが用意した方法で電子的に同意した日に発効します。同意する人は、自分が契約を結べる年齢であること、会社の代理なら会社を拘束する権限があることを表明します。申請担当者が権限を持つかどうかは、参加前に社内で確かめる項目です。

特典は保証されず、返還を求められることがある

プログラムでは、Claudeの利用・宣伝・認知を支える活動に対して、資金などの特典を受けられる場合があります。CPNAは、この特典について次の線を引いています。

  • 特典も、その継続的な提供も保証されず、変更されることがある
  • 受け取る資格がないとAnthropicが判断した特典は、求めに応じて返還する。Anthropicは特典を取り消すか、将来の特典を減額することもできる
  • 特典はPartner Program Guideに定める本来の用途、またはAnthropicが伝えた用途にしか使えない
  • 従業員が私的な利益のために使うことはできない

特典の細目はPartner Program Guideにあり、追加のProgram Specific Termsが付くこともあります。契約の優先順位は、Program Specific Terms、Partner Program Guide、CPNAの順です。CPNAの文言が穏当でも、下位の文書で条件が上書きされることがある点は見落としやすいところです。

たとえば、資金特典を前提に案件の見積もりを組んだ場合を考えます。特典が後から対象外と判断されると、返還請求か将来分の減額が起こることがあります。特典を売上や原価の前提に置くなら、この条文を社内の予算承認に添えておく価値があります。

政府機関の案件で資金特典を受けるとき

政府顧客案件は、既存または将来の取引関係が政府機関(Governmental Entity)に及ぶ案件のうち、そのために特典を受けるものを指します。政府機関の定義は広く、国・自治体・省庁・国際機関に加え、政党や政党関係者、公職候補者、政府が30%以上を出資・支配する企業やファンドまで含みます。

この案件で特典を受けるときの条件は次のとおりです。

条件内容
資金特典の場合内容政府機関が、自社の消費から独立した経済的利益を得ること。つまり自社の製品・サービスの無償または値引き提供
調達関連法令内容値引き・リベートや、贈答・贈賄・不当な便宜・虚偽申告の禁止を含む調達関連の法令と契約条項を守る
利益相反内容特典の使い方が、自社にもAnthropicにも利益相反(またはその外観)を生まない
開示内容法令、政府機関の調達要件、Anthropicの求めがある範囲で、特典の受領内容を政府機関に開示する
推奨との関係内容Anthropicのサービスを政府機関に推奨する場合、特典が推奨に影響してはならない。書面で開示するまで、その案件に特典を使わない

Anthropicは、特典の使用が適法・倫理的か、政府機関の契約担当官や倫理担当者に確認することを推奨しています。開示内容の正確さをAnthropicが確認する責任は負わない、とも書かれています。

公共案件を扱う導入支援会社は、この5行を案件ごとのチェックリストに落とし込めます。政府機関の範囲は上記の定義で読むため、自治体や公的ファンドが絡む案件も対象に入ることがあります。

関連会社と担当者の行為は自社の行為になる

関連会社(Affiliate)もプログラムに参加できます。ただし条件が2つあります。CPNAを守ることと、必要なProgram Specific Termsを別途締結することです。

責任の重さは次のとおりです。

  • 関連会社の作為・不作為とCPNAの遵守について、参加者本人がAnthropicに対して全責任を負う
  • 関連会社によるCPNA違反は、参加者本人の違反とみなされる
  • Anthropicは、書面の通知で個別の関連会社の参加を終了できる
  • 従業員・代理人・助言者(Representative)の行為も、自社の行為として扱われる

グループ会社が多い導入支援会社では、どの会社がプログラムの活動に関わるかを絞り込む設計が現実的です。支社や子会社が独自に営業資料へ「Anthropicパートナー」と書くだけでも、契約違反の火種になることがあります。

支配権が変わる場合の定めもあります。50%超の議決権の取得、合併、事業の実質的な全部譲渡が該当します。発生から30日以内にAnthropicへ書面で通知する必要があり、Anthropicは通知の受領から30日以内なら契約を直ちに終了できます。M&Aを控える会社は、参加時点でこの条項を認識しておく必要があります。

契約に同意しても得られないもの

CPNAは、権利の範囲を狭く設定しています。

  • Claudeの利用権・再販権は付かない: プログラムへの承認は、Anthropic Servicesへのアクセス、利用、再販、サブライセンスを認めるものではない。利用は各社のCustomer Agreementが別に定める
  • 商標は条件付き: 世界的・非独占・サブライセンス不可・譲渡不可のライセンスで、参加者として「良好な状態」にある間だけ。Anthropic Brand & Trademark Guidelinesにも従う
  • 広報には事前承認が要る: 参加についてのプレスリリースなど公の発信は、Anthropicの事前の書面同意が必要。Anthropicが承認済みの内容と実質的に同じ内容の再掲は許される
  • 代理権はない: 両者は独立した契約当事者で、提携・共同事業・代理関係は生じない。Anthropic名義で第三者に表明や保証をすることもできない
  • 数量の保証もない: 売上、案件紹介、取引量の保証は含まれず、相手の製品・サービスを購入する義務もない。契約は非独占で、他社との同種の取り決めも妨げない

顧客の連絡先をAnthropicへ渡す場合は、Anthropicや認定パートナーが直接連絡することに対する顧客の同意を得ておく必要があります。両者は各々が独立した管理者(controller)で、相手の処理者にはなりません。

秘密情報の定めでは、確認済みのセキュリティインシデントを72時間以内に書面で通知する義務があります。守秘義務違反は、責任上限の例外に入ります。

終了・変更・責任範囲はAnthropic側に厚い

契約の出口と変更の条項を並べると、力関係が読み取れます。

論点条文の内容
任意終了条文の内容どちらも30日前の通知で終了できる
重大な違反条文の内容10営業日前の通知で終了できる。その期間内に是正すれば終了しない
Anthropicの即時停止・終了条文の内容法令上の禁止、重大なセキュリティ・評判リスク、プログラム自体の終了、贈収賄法違反の疑い、制裁対象になった場合、階層を含む虚偽表示、商標ガイドライン違反などの事由がある
契約変更条文の内容Anthropicが単独の裁量で、いつでも、プログラムや特典の変更・廃止、CPNAの変更ができる。Hubへの掲載で直ちに発効する場合がある
参加者側の対抗手段条文の内容変更が権利を大きく減らすか義務や責任を増やす場合に限り、通知して直ちに終了できる
責任上限条文の内容双方の責任は間接損害などを含まず、合計で5万ドルが上限。補償義務や守秘義務違反などは例外
紛争解決条文の内容45日の協議後、英語による仲裁。EEA・スイス・英国以外はサンフランシスコで、JAMSの規則に基づく

変更の条項には注意点があります。特典の変更や廃止は、Program Specific Termsに関わらない限り、参加者側の終了の理由になりません。つまり、特典が減っても契約は続き、参加者にできるのは30日前通知による任意終了にとどまります。

終了後は、プログラムの活動を止め、Anthropicの素材や商標入りの資料を返却・削除し、パートナーとしての表示をやめます。ウェブサイト上のバッジやロゴも対象です。

賠償の関係では、参加者は「プログラムへの参加から生じる第三者の請求」についてAnthropicを防御・補償します。Anthropic側が直接引き起こした部分は除かれます。一方でAnthropicは、条文どおりに商標を使った結果の第三者の知財侵害の主張について、参加者を防御・補償します。責任上限5万ドルの外にある義務なので、参加者側の補償範囲は契約の中でも影響が大きい部分です。

参加前に社内で確認する項目

条文から、法務・営業・経理が分担して確認できる項目を並べます。

部署確認すること関係する条項
法務確認すること申請担当者に会社を拘束する権限があるか関係する条項同意・表明
法務確認すること贈収賄・制裁・輸出管理の表明が事実か、関連会社を含めて確認できるか関係する条項表明保証、コンプライアンス
法務確認すること政府系の株主・役員・その親族がいないか(いれば事前開示)関係する条項表明保証
営業確認すること政府顧客案件で特典を使う場合の開示手順関係する条項政府顧客案件
営業確認すること「Anthropicパートナー」表記の社内ルール、プレスリリースの承認フロー関係する条項広報、商標
経理確認すること特典の返還・減額を前提にした収益計画関係する条項特典
全社確認すること関連会社のうち、実際に活動する会社の範囲関係する条項関連会社

贈収賄などの表明は、参加時だけでなく再認証(recertification)でも求められます。前提が変わった場合は、遅滞なくAnthropicへ通知する義務があります。捜査、行政措置、訴訟を知った時点も通知の対象です。

契約書の読み方のヒント

CPNAは英語のみの契約で、翻訳版と食い違う場合は英語版が優先します。通知も英語で行います。日本語の要約をそのまま社内承認に使うと、細かい条件を取りこぼします。

条文の論点を整理するために、Claudeに契約書を読ませる方法はClaudeに契約書を読ませてわかりにくい条項を確認する方法にあります。ただし最終的な判断は弁護士に確認する領域です。Anthropicの別のプログラムの条件はDevelopment Partner Programの記事にあります。大手SIerが参加を公表した例はAnthropicとTCSの提携で確認できます。

CPNAは入口が広く、出口の条件がAnthropicに寄る契約

Services Trackの発表は、参加の敷居の低さを強調しています。参加自体は無料で、新規申請者は最下位のRegisteredから始まると説明されています。CPNAの条文は、その入口の広さに対して、運用の主導権を明確にAnthropicに置いています。承認、階層、特典の継続、契約の変更のいずれも、Anthropicの裁量です。

これは不公平と断じられる話ではありません。多数の会社を同じ条件で受け入れるプログラム契約は、一方的な約款の形をとるのが普通です。ただ、特典を収益の柱にした事業計画は、条文上の根拠を欠きます。特典は「あれば助かる」程度の変動要素にとどまり、契約上の資産としては数えられません。

参加者側の守りは、変更で不利になったときの終了権と、責任上限の5万ドルにあります。補償義務は上限の外に出ているため、営業活動の中で第三者とトラブルが起きたときの想定は、上限の数字よりずっと重い可能性があります。

まとめ

CPNAは、承認・階層・特典・契約変更のすべてをAnthropicの裁量に置く一方、参加者には関連会社を含む広い責任を負わせます。特典は保証されず、返還を求められる場合があります。政府案件と関連会社の扱い、支配権変更の通知は、事前に社内ルールへ落とせる論点です。契約の全文はAnthropicの法務ページで公開されているため、申請前に法務と読み合わせる手順を組み込めます。

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