Claude ConsoleにIP allowlist、Admin APIに全端末サインアウトがbetaで追加
2026年11月5日、Claude Consoleに組織単位のIP allowlist(beta、最大1,000件)が登場。Claude EnterpriseのメンバーをAdmin APIで全端末からサインアウトさせる機能も追加されました。
2026年11月5日のAPIリリースノートに、組織のセキュリティ管理に関わる2つのbeta機能が載りました。Claude Consoleの組織単位のIP allowlistと、Claude EnterpriseメンバーをAdmin APIで全箇所からサインアウトさせる機能です。
要点
11月5日に追加された2つのbeta機能
- Claude Consoleで、組織全体に効くIP allowlistを設定できる(beta)
- 登録できるのはIPv4とIPv6のアドレスまたはCIDR範囲で、1組織あたり最大1,000件
- リストにないアドレスからの対象サービスへのリクエストは拒否される
- Claude Enterprise(claude.ai)のメンバーを、Admin APIで全箇所からサインアウトさせられる(beta)
- サインアウトしてもメンバーは組織に残り、すぐ再ログインできる
どちらも「鍵や認証情報が漏れたとき、被害をどこまで抑えられるか」を扱う機能です。IP allowlistは漏れた鍵の使える場所を絞り、サインアウトAPIは盗まれた端末や疑わしいアカウントのセッションを管理者側から切ります。
IP allowlist: 漏れたAPIキーの使える場所を絞る
仕組み
組織の管理者かオーナーが、設定画面でIPレンジのリストを登録します。リストは組織全体に効きます。対象のリクエストごとに、Anthropicがリクエスト元の公開IPアドレスとリストを突き合わせ、許可されていなければ拒否します。
Messages APIの場合、拒否されたリクエストは403のpermission_errorで、メッセージはYour IP address isn't in this organization's allowed range.です。ブラウザで接続した人には「Your current network can't access this organization」というタイトルのページが出ます。
何が対象か
Claude Platform組織では、次の範囲にリストが適用されます。
| 対象 | 範囲 |
|---|---|
| Claude Console | 範囲UIへのアクセスが制限される |
| Claude APIのエンドポイント | 範囲Messages / Message Batches / Token Counting / Models / Files / Skills(APIキーまたはWorkload Identity Federationトークンで呼ぶ場合) |
| Claude Managed Agentsのエンドポイント | 範囲Agents / Sessions / Environments / Vaults / Memory stores |
| 組織向けAPI | 範囲Admin API / Compliance API(その組織だけを対象にするキーで呼ぶ場合) |
対象外もあります。Managed Agentsについては、エンドポイントへのリクエストが対象で、エージェント自体やランタイム内のネットワークには適用されません。Claude in Amazon Bedrock、Claude Platform on AWS、Claude Models on Google Cloud、Claude in Microsoft Foundryにも適用されません。
登録できる形式
エントリの上限と形式
登録できる上限
1,000件
1組織あたり
IPv4のCIDR
/8まで
/8より広い範囲は不可
IPv6のCIDR
/32まで
/32より広い範囲は不可
各エントリは単一のアドレス(203.0.113.5)かCIDR範囲(203.0.113.0/24、2001:db8::/32)です。10.0.0.0/8のようなプライベートレンジは登録できず、自社のトラフィックが外に出ていく公開アドレスを書きます。共有プロキシのアドレスを入れた場合、漏れた鍵を持つ攻撃者がそのプロキシ経由で使える可能性があります。
設定の流れと締め出しへの備え
設定はConsoleの「Identity and access」ページで、トグルをオンにして範囲を追加し、保存して確認する流れです。トグルをオンにしただけでは何も変わらず、保存して初めて有効になります。変更の反映には最大15分かかります。
見落とすと痛いのは、保存時の自己チェックの範囲です。設定画面は今の接続元アドレスがリストに入っているかだけを確かめます。サーバー、チームメンバー、明日の接続元は確かめません。
落とし穴
登録漏れは、週次ジョブが動いた日に403で見つかる
データセンター、CI、オフィス、VPN、プロキシ、自前サンドボックスのワーカーが使う公開IPv4とIPv6を先に洗い出す必要があります。反映後は403のpermission_errorを見張り、毎日や毎週しか動かないジョブも含めて、漏れたアドレスを足します。自宅やモバイルの回線のアドレスは予告なく変わることがあります。
管理者の逃げ道として、「Allow admins to access this settings page from any IP address」のチェックボックスが用意されています。Anthropicはこれを選んでおくことを勧めています。選ぶと、リスト外の管理者でも設定ページだけは開けて、リストを直せます。代わりに、管理者のセッションが乗っ取られると、遠隔からリストを書き換えられるリスクが残ります。
それでも誰も入れなくなった場合の順序は、許可済みのネットワークに接続して「Try again」を押す、別の管理者に頼む、チェックボックス経由で直す、の順で、最後はAnthropicのサポートにリストの無効化を依頼します。
鍵の有効期限は別の話
allowlistが制限するのは鍵が使える場所で、使える期間ではありません。短い有効期限を鍵に設定するか、静的な鍵をやめてWorkload Identity Federationに移すほうが、allowlist単独より安全です。allowlistは多層防御の一層と考えるのが妥当です。
Anthropic側の固定IP(inbound・outbound)の一覧はClaudeのIPアドレス制限に使う固定IP一覧にあります。今回のallowlistは「どこからAnthropicに入れるか」をAnthropic側で絞る設定です。固定IPは、自社のファイアウォールでAnthropicとの通信を許可するための情報で、自社からAnthropicへ向かう通信(inbound)と、Anthropicから自社のMCPサーバーなどへ来る通信(outbound)の両方があります。どちらの側で絞るかが違うので、取り違えやすい点に注意が要ります。
Admin APIでメンバーを全箇所からサインアウト
エンドポイントとベータヘッダー
Claude Enterprise組織のメンバーに対して、POST /v1/organizations/users/{user_id}/sign_outでClaudeのすべてのブラウザとデバイスからサインアウトさせられます。使いどころとして挙げられているのは、端末の紛失・盗難、セキュリティインシデント、削除するかどうか決める前のアカウント調査です。
必要なものは3つあります。
サインアウトAPIを呼ぶ前提
- 1
write:membersスコープのキー
その組織の主オーナー(primary owner)が作ります。キーは作成した組織でしか使えず、リンクされた組織ごとに別のキーが要ります。メールアドレスでメンバーを引くなら、
read:membersも選びます。 - 2
betaヘッダー
すべてのリクエストに
anthropic-beta: admin-user-sign-out-2026-10-08が必要です。付けないと、値の名前を示すメッセージとともに400が返ります。 - 3
メンバーのid
リクエストにボディは不要で、List membersが返す
user_で始まるidをパスに入れます。
SDKとCLIはヘッダーを自動で付けますが、使っているバージョンにこのエンドポイントがなければ、HTTPで直接ヘッダー付きで送ります。ドキュメントのPython例は次の形です。
client = anthropic.Anthropic()
user = client.beta.organization.users.sign_out(
"user_01AbCdEfGhIjKlMnOpQrSt"
)
print(f"id: {user.id}")成功すると200でメンバー情報が返り、ロールなどのフィールドは変わりません。レスポンスの意味は次のとおりです。
| ステータス | 意味 |
|---|---|
| 200 | 意味サインアウト完了。再送しても安全 |
400 cannot_sign_out_primary_owner | 意味主オーナーは対象外 |
400 organization_not_enrolled_in_beta | 意味その組織ではまだ使えない |
| 403 | 意味キーにwrite:membersがない |
| 404 | 意味その組織にidのメンバーがいない |
| 429 | 意味Admin APIで共有するレート制限超過。retry-afterヘッダーに従う |
| 503 | 意味必要なサービスが一時的に使えない。終了済みの分は終了したままで、再送すると残りを終了する |
このほか、betaヘッダーの欠落やuser_で始まらないidでも400になります。401はキーの欠落・無効・削除済み、または親組織向けで単一の組織に紐付いていないキーのときです。
終了させるもの、させないもの
ここが運用上いちばん大事な部分です。リクエストが終了させるのは、サインインセッション全部、信頼済みデバイスの登録、この組織向けに発行されたOAuthトークン(Claude Codeやサードパーティアプリなど)です。2段階認証を省略したブラウザの記録も消え、次回サインインでは再び第2要素が求められます。プッシュ通知の登録も外れます。
逆に、終了させないものは次のとおりです。
サインアウトでは止まらないもの
APIキー
本人が作ったAdmin APIキーも使い続けられます。止めるには、claude.aiのOrganization settings > APIのKeysで削除します。
他組織のOAuthトークン
組織を指定せず、アカウントに対して発行されたトークンも有効なままです。他の組織の分は、その組織のキーで同じリクエストを送ります。
Claude Codeのクラウドセッションとルーチン
Anthropicのインフラや自前環境で動くセッションは動き続けます。スケジュールやGitHubイベントで起動するルーチンも、新しいセッションを始めます。
進行中のサインインとCowork
すでに始まっているサインインは、リクエスト中か最大5分後に完了することがあります。Coworkにリンクされたコンピューターもリンクされたままです。
200が返っても、プッシュ通知の登録解除は非同期で、通常は1分以内に終わるものの、まれにそれより長くかかります。200はその完了を保証しません。サインアウト後にサインインが記録されていたら、監査ログのエクスポートまたはActivity Feedを見て、リクエストを再送します。Claude Codeなどのアプリへのサインインはそこに記録されないため、その場合は5分待ってから再送します。
追い出す操作ではない
サインアウトは締め出しではありません。メンバーは席もロールも保ったまま、すぐ再サインインできます。人を入れないようにするには、組織から削除するか、SSO必須の組織ならIdPでアカウントを無効化します。
さらに、サインアウトの範囲はアカウント全体に及びます。個人プランや他の組織でのセッション、信頼済みデバイス、プッシュ通知登録も対象です。OAuthトークンだけが、この組織向けのものに限られます。影響が広いので、実行前に本人へ知らせておくのが無難です。
APIキーを作った人の退職時の扱いはAdmin APIキーの削除と再発行の手順に、メンバー管理APIの全体像はClaude User Management APIにまとめています。
背景: claude.ai側のIP許可リストとの違い
IP allowlistingのページは、Claude Platform組織とClaude Enterprise組織の2種類を同じページで扱います。Enterprise組織には独自のリストがあり、ブラウザ、デスクトップ・モバイルアプリ、ClaudeアカウントでサインインしたときのClaude Code、Cowork、Chrome拡張などが対象になります。その組織だけを対象にするキーで呼ぶAdmin APIとCompliance APIにも効きます。Enterprise側では管理者はリストを変更できず、オーナーと主オーナーが設定します。
claude.ai側の設定の流れと締め出し対策はClaudeのIP許可リストをEnterpriseで設定するで扱っています。11月5日のリリースノートが告げているのはConsole側の追加で、APIキーが漏れたときの影響範囲を絞る用途です。
2つの機能は同じ場面で組み合わせられる
IP allowlistは「漏れた鍵・盗まれたサインインがどこから使えるか」を絞り、サインアウトAPIは「すでにある有効なセッションを管理者が切る」操作です。時間軸が違うので、役割は重なりません。
ただし、組み合わせる前に押さえておきたい点が1つあります。サインアウトAPIを呼ぶEnterprise組織でallowlistを有効にしているなら、自動化スクリプトを動かすサーバーの公開IPを登録しておかないと、緊急時の呼び出しが拒否されます。IP allowlistingのページが拒否例として挙げているのはMessages APIとClaude Codeの403で、Admin APIの拒否ステータスは載っていません。拒否の理由をスコープ不足の403と取り違えないよう、先にIPを疑います。
また、サインアウトAPIを呼ぶキーは、事前に主オーナーが作っておく必要があります。インシデントの最中に鍵を作る手順は避け、先にwrite:membersのキーを用意しておくのが、ドキュメントの「Create the key before you need it」の趣旨です。キーが手元にないときは、オーナーがclaude.aiのMembersページの「Sign out everywhere」から同じ範囲を終了できます(自分のアカウントには使えません)。
まとめ
IP allowlistは、有効にした日よりも、週次ジョブなど普段は動かない経路が止まる日に真価が問われる設定です。保存前に、サーバー・CI・VPNの公開IPを洗い出し、管理者用の逃げ道を残しておくかどうかを決めておくと、締め出しを避けやすくなります。
サインアウトAPIは、止まるものと止まらないものの線引きが運用の核心です。APIキーとクラウドセッションは残るため、インシデント手順にはキーの削除を別の工程として入れておく必要があります。どちらもbetaなので、設定や挙動は変わりうる前提で読んでください。
参照した一次ソース
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