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取締役会の実効性評価アンケートをClaudeで分析する手順 — 自由記述の分類から開示文案まで

取締役会の実効性評価アンケートをClaudeで分析する手順 — 自由記述の分類から開示文案まで

取締役会の実効性評価アンケートの自由記述をClaude for Excelで分類し、前年との比較、改善課題、開示する概要の下書きまでつなげる手順です。匿名性の扱いも示します。

取締役会の実効性評価は、アンケートを配るところより、集まった自由記述を読み解いて「何を直すか」に落とすところに手間がかかります。回答者は少人数で、書かれる内容は経営の根幹に触れ、しかも結果の概要は開示する必要があります。

この作業は、Claude for Excelに分類列を作らせ、件数はExcelの式で数え、分類の正しさは事務局が原文で確かめる、という分担で進められます。本記事は、回答の分類から前年比、改善課題、開示文案の下書きまでの手順です。匿名性の扱いは手順の前に決めます。

実効性評価の結果は、どこで求められるのか

東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)は、原則4-13の(3)で、取締役会が毎年、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきだとしています。

コードの解釈指針は、評価の進め方も示しています。取締役会としてどのような機能を発揮すべきかを踏まえた評価が効果的であること、手法は様々だが、まず各取締役が自ら及び取締役会全体について評価を行う方法が考えられること、の2点です。

根拠

コードが求めている範囲

  • 毎年やる

    実効性の分析・評価は、毎年行う前提で書かれています。前年との比較が必要になるのはこのためです。

  • 開示するのは結果の概要

    開示の対象は「結果の概要」です。自由記述の原文や回答者別の集計を出す規定ではありません。

  • 手法は決まっていない

    解釈指針は、各取締役の自己評価を例に挙げるにとどまり、手法を一つに指定していません。アンケートは選べる手法の一つです。

コードの各原則は法的拘束力を持つ規範ではなく、プライム市場・スタンダード市場の上場会社は全原則について、グロース市場の上場会社は基本原則について、実施しないものがあれば理由の説明が求められます。原則4-13は基本原則4の下に置かれた個別の原則です。自社の市場区分での扱いは、コーポレート・ガバナンスに関する報告書の記載と合わせて確認してください。

コード自身も、実施しない場合の説明は「ひな型」的な表現で済ませず、丁寧に行うべきだとしています。開示文案を作るときも同じです。他社の文面を写すだけでは、自社の評価が何だったかが伝わりません。

作業の前に決める3つのこと

前提

入力前の確認事項

  • 匿名性をどこまで守るか

    取締役会は人数が少ないので、記述の内容や文体から書き手が分かることがあります。氏名欄を消すだけでは匿名になりません。次の節で扱います。

  • 使える環境か

    Claude for Excelは、Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランのExcelアドインです。Excel 2016と2019の永続版・ボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません。

  • 評価の軸を先に持っているか

    分類の軸は、Claudeに考えさせるのでなく、取締役会が前年から使っている評価項目に合わせます。項目がまだ無い会社は、手順2で人が決めます。

匿名性と機密情報は、入力の前に処理する

実効性評価の自由記述は、特定の取締役への批判や、未公表の経営判断への言及を含みやすい文章です。Claude for Excelのドキュメントは、機密性の高い、または規制対象のデータを含むモデルを、適切な管理なしに扱うことを推奨していません。データの取り扱いは次のように書かれています。

  • 入力と出力は、受領または生成から30日以内にバックエンドから削除される(例外は別の保存期間の案内に従う)
  • チャット履歴は、ブラウザーのIndexedDBにローカルで保存され、Anthropicのサーバーには保存されない
  • 組織が設定した独自のデータ保持設定は引き継がれない

これらは、社内の情報管理規程が外部サービスへの入力を認めているかの判断材料です。規程の判断が先で、Claudeの仕様が許すかどうかは二番目です。未公表の重要事実が記述に含まれる場合は、入力する前に事務局が伏せ字にします。

匿名性の処理は、事務局が次の順で行います。

  1. 回答者の氏名・役職の列は、Claudeに渡すシートに含めない。回答IDと回答者の対応表は別ファイルに残す
  2. 回答者区分(社内取締役・社外取締役・監査役など)は、区分に1〜2人しか属さないなら分けない。分けると誰の意見か推測できる
  3. 記述に出てくる個人名は「A取締役」のような記号か、職名に置き換える
  4. 具体的な案件名や取引先名は、一般的な呼び方に置き換える
  5. 文体で書き手が分かりそうな記述は、意味を変えない範囲で事務局が言い換えるか、原文のまま扱う範囲を決めておく

置き換えは、Excelの検索と置換で機械的に行い、置換後のシートだけをClaudeに読ませます。自由記述の匿名化の考え方は、360度評価の自由記述を要約する手順や退職面談の離職理由を分類する手順と共通です。

手順1: ブックの形を決める

元データはアンケートツールから出力したExcelです。コピーを作って、次の2枚に整えます。

シート「回答」: 回答ID | 区分 | 設問ID | 評価点(5段階) | 自由記述
シート「分類」: 回答ID | 設問ID | 分類 | 傾向(良い/要望/課題) | 根拠(20字以内)

評価点は数値の設問で、Claudeには触らせません。平均や分布はExcelの式で出します。Claudeに任せるのは自由記述の分類だけです。

取締役の人数が十数人以下なら、記述の総数は多くても数十件〜数百件でしょう。Excelの上で十分に扱えます。数千件を超える場合は、Claude APIのバッチで自由記述を分類する方法のほうが向きます。

手順2: 評価項目に沿って分類基準を作る

コードの解釈指針は、取締役会が発揮すべき機能を踏まえた評価が効果的だとしています。分類のカテゴリは、自社の取締役会の機能に合わせます。たとえば次のような切り口が例になります。

カテゴリ(例)記述の例
経営戦略の議論記述の例中期計画の議論に使える時間が足りない
リスク管理・内部統制記述の例重要リスクの報告が定例化していない
経営陣の監督記述の例後継者計画の進捗が見えにくい
運営(資料・時間・頻度)記述の例資料の事前配布が遅い
構成・スキル記述の例不足しているスキルがある
社外役員への情報提供記述の例現場の情報に触れる機会が少ない

表は考え方の例で、自社の項目に置き換えてください。最初の20〜30件を見せて、基準の案を出させます。

シート「回答」の自由記述から、先頭30件を読んで、分類カテゴリの案を出してください。
・カテゴリは8個以内。名前は10字以内、定義は1文
・各カテゴリに該当する回答IDを2件ずつ示す
・1つの記述に複数の論点があるときの扱いも案を出す
・セルは変更せず、案は会話に書く

案が出たら、事務局が境界を決め、定義文に例を添えて「基準」シートに固定します。ここを固めておくことが、手順4の前年比較の前提になります。

手順3: 分類列を作り、件数の一致を式で確かめる

基準が決まったら、「分類」シートに書かせます。

シート「回答」の自由記述を、シート「基準」のカテゴリで分類し、シート「分類」に書いてください。
・1行につき、回答ID、設問ID、分類、傾向、根拠(本文からの引用20字以内)
・複数の論点があるときは行を分け、回答IDは同じものを残す
・基準にない記述は「その他」とし、無理に当てはめない
・書き終えたら、入力の記述数と分類済みの回答ID数を示す

「その他」を許すのが肝心です。許さないと、当てはまらない記述が近いカテゴリに押し込まれ、件数が膨らみます。

Claudeの返答する件数は信用せず、式で数えます。

=COUNTA(回答!E2:E200)
=SUMPRODUCT((分類!A2:A400<>"")/COUNTIF(分類!A2:A400,分類!A2:A400&""))

1つ目が入力された記述の数、2つ目が分類済みの回答ID数です。範囲は自分のブックに合わせて読み替えます。2つが合わないときは、分類から漏れた回答IDを探して再依頼します。

落とし穴

分類の件数が、回答者の人数と違って見える

1人が複数の論点を書くと、論点の延べ数は回答者数を超えます。件数を資料に載せるときは「記述数」と「回答者数」を別の列にして、どちらの数かを明記します。取締役が10人なら、特定カテゴリの件数が3件でも、書いたのは1人かもしれません。

分類の正しさは、事務局が抜き取りで原文と突き合わせます。カテゴリごとに5〜10件を無作為に選び、根拠の引用が本文にそのまま入っているかを見ます。「その他」と「要望」は境界が割れやすいので多めに確認し、ずれがあれば1件ずつ直さずに定義文を直して該当カテゴリをやり直させます。そのうえで件数照合も繰り返します。

手順4: 前年と比べる

実効性評価は毎年行うので、「昨年の課題は解消したか」が問われます。カテゴリを毎年Claudeに作り直させると、名前や範囲が変わり、件数を比べられません。

  • 前年の「基準」シートを今年のブックに持ち込み、同じ基準で分類させる
  • 新しい論点が出たときだけカテゴリを足し、足した年度と理由を基準シートに書く
  • 基準を動かした年は、前年との比較に注記を付ける

件数は、取締役の人数が変わると単純には比べられません。件数の推移でなく、「そのカテゴリに言及した回答者の割合」で見るほうが安全です。人数が少ないので、割合の増減は1人の違いで大きく動きます。数字の増減より、前年に挙がった課題が今年の記述に残っているかどうかを、原文で確かめることを優先します。

前年の改善課題と今年の分類を並べる作業は、Claudeに頼めます。

シート「前年課題」の各課題について、シート「分類」に今年も同じ論点の記述があるか調べてください。
・課題ごとに、該当する回答IDと件数を示す
・同じ論点か判断に迷う記述は、迷った旨を添えて別に挙げる
・解消した、と結論づけないでください。記述の有無だけを示す

「記述が無い」ことは「解消した」ことの証拠になりません。解消の判断は、取締役会での議論と実際の取組みを踏まえて人が行います。

手順5: 件数を改善課題に落とす

分類の件数が固まったら、課題をまとめます。Claudeに任せるのは、課題の論点を短くまとめ、代表的な記述に回答IDを付けるところまでです。

カテゴリ「運営(資料・時間・頻度)」の傾向「課題」の記述を読んで、共通する論点を3文以内でまとめてください。
・代表的な記述を3件、回答IDつきで挙げる
・原因の推測は書かない。記述にあることだけを使う

原因の推測を禁じるのは、アンケートの記述だけでは原因が決まらないからです。対応案も、会社の体制や予算を知らないClaudeが補うと、実情に合わない案になります。対応案は取締役会の議論と事務局の知見で作り、Claudeには表の形に整える作業を頼みます。

整えた表の列は、課題、根拠となる件数と代表的な記述、対応案、担当、期限が基本です。前年から継続している課題には、前年の対応内容を添えます。

手順6: 開示する「結果の概要」の下書きを作る

コードが求めるのは結果の概要の開示です。下書きの材料として渡すのは、取締役会で確認された課題の一覧と、実施した対応だけにします。生の自由記述をそのまま渡しません。

次の材料だけを使って、実効性評価の結果の概要を、コーポレート・ガバナンスに関する報告書に載せる文体で下書きしてください。
・評価の方法(アンケート、対象、実施時期)
・評価の結果(取締役会で確認された課題と、評価できる点)
・前年の課題への取組み状況
・今後の取組み方針
材料にない事実、数字、評価できる点は書かないでください。

出力は、例えば次のような形になります(書式の例で、数字や内容は会社ごとに入れます)。

当社は、取締役会の実効性について、全取締役・監査役を対象にアンケートを実施した。
その結果、[評価できる点]が確認された一方、[課題]が課題として挙げられた。
前年度に課題とした[項目]については、[取組み]を実施した。
今後は[方針]に取り組む。

下書きは、コードが戒める「ひな型」的な文面になりやすい点に注意が要ります。課題を抽象化して「更なる議論の活性化を図る」と書くのでなく、何をどう変えるかを書き込めるよう、材料の側に具体を用意しておきます。評価できる点だけを並べて課題を書かない文面も、実効性評価の趣旨に合いません。

開示文案は、必ず取締役会の確認を経て確定します。Claude for Excelのドキュメントも、最終成果物を人の確認なしに出すことを推奨していません。

作業中に気をつけること

切り分け

入力前の最終確認

  1. Q氏名・役職の列と、個人が特定できる固有名詞を外したか?
    答えが外す

    置換後のシートだけで作業してください。対応表は別ファイルに分けます。

    答えがはい
  2. Q未公表の重要事実や案件名が、記述に残っていないか?
    答えが伏せ字にする

    事務局が伏せ字にしてから入力します。

    答えがはい
  3. Q作業用のブックは、信頼できる元データのコピーか?
    答えがコピーを作り直す

    外部から来たファイルには、アドインを意図しない動作へ誘導する隠れた指示が含まれることがあります。

    答えがはい

分類を依頼できる

変更を確定する前に確認を求められる仕組みがあります。内容を読んでから許可してください。

Claude for Excelは、データテーブルとマクロ・VBAの操作に対応していません。自社の集計テンプレートがマクロ依存なら、その部分はCOUNTIFSなどの標準の式で組み直します。既存データを上書きする前には警告が出ますが、元の回答シートは触らせない運用にしておくと、確認の手間が減ります。

同じ手法の別の題材は、学校評価アンケートの自由記述をClaude for Excelで分類する手順と研修後アンケートを集計・分析する手順にあります。取締役会の議事録の作成と点検は、Claude for Wordで議事録の抜けを点検する手順が扱っています。

まとめ

実効性評価で大切なのは、分類の精度より、分類基準を毎年固定して持ち越すことと、開示する概要に具体的な課題と取組みを書き込めることです。Claudeは、分類と整形の下書きを速くします。匿名性の処理、件数の検算、課題の採否、開示文案の確定は、取締役会の事務局と取締役会自身が行います。

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