学校評価アンケートの自由記述をClaude for Excelで分類し改善案にまとめる手順
保護者・生徒アンケートの自由記述を評価項目ごとに分類し、件数化して改善案の素案にするまでを、Excelの検算式と抜き取り確認つきで示します。
学校評価アンケートの集計で時間がかかるのは、選択式の設問ではなく自由記述です。保護者と生徒を合わせて数百件の記述を読み、評価項目ごとに仕分けし、件数を数え、関係者評価の資料に載せる改善案へつなげます。
この仕分けと件数化は、Excelの上で完結させられます。Claude for Excelに分類列を作らせ、件数はExcelの式で数え、分類の正しさは人が抜き取りで確かめる。本記事はこの3段構えの手順です。
自由記述の分類結果は、どこで使われるのか
学校評価は、学校が自ら評価して結果を公表するところから始まります。学校教育法の施行規則は、小学校について、教育活動その他の学校運営の状況を自ら評価して結果を公表するものとしています(第66条第1項)。評価に当たっては、実情に応じて適切な項目を設定します(同条第2項)。
保護者などの関係者による評価は、この自己評価の結果を踏まえて行い、公表に努めるものです(第67条)。自己評価と関係者評価の結果は設置者に報告します(第68条)。中学校は第79条、高等学校は第104条で、これらの規定が準用されています。
文部科学省の「学校評価について」のページには、学校評価ガイドラインや関係法令、実施状況調査へのリンクが並んでいます。評価項目の立て方や様式は、このガイドラインと設置者の定めが先です。アンケートの自由記述は、その評価項目に対する根拠資料の一つとして扱うことになります。
つまり分類の軸は、Claudeに考えさせるのでなく、学校がすでに設定している評価項目に合わせるのが筋です。
作業の前に決める3つのこと
入力前の確認事項
使える環境か
Claude for Excelは、Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで使えるExcelアドインです。Excel 2016と2019の永続版・ボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません。校務用PCのExcelが対象版かを先に確かめます。
入力してよい内容か
自由記述には、教員名や児童生徒の名前、病名、家庭の事情が書かれていることがあります。外部サービスに入力してよい範囲は、設置者の情報セキュリティ規程が先です。考え方は自治体職員の生成AI利用と総務省ガイドラインと要配慮個人情報の入力にまとめています。
どの評価項目で分けるか
学校評価の項目(学習指導、生徒指導、保健・安全、保護者・地域との連携など)を、自校の様式どおりに一覧にしておきます。分類の軸になります。
手順1: ブックの形を決めて、個人が特定される語を外す
元データはアンケートの集計システムから出したCSVやExcelです。コピーを作り、次の2枚のシートに整えます。
シート「回答」: 回答ID | 回答者区分(保護者/生徒) | 学年 | 評価項目 | 自由記述
シート「分類」: 回答ID | 評価項目 | 分類 | 傾向(肯定/要望/課題) | 根拠(20字以内)氏名の列や、クラス・出席番号の列は渡しません。回答IDだけを共通キーにします。IDと個人の対応表は、別ファイルとして手元に残します。
本文の中の固有名詞は、検索と置換で先に置き換えます。教員名は「担任」「部活動顧問」のような役職名に、児童生徒名は「本人」「友人」にします。置換の考え方は、360度評価の自由記述を要約する手順と同じです。
記述が数千件を超え、Excelの画面で扱いにくいときは、Claude APIのバッチで自由記述を分類する方法のほうが向きます。数百件までなら、Excelの上で完結させるほうが確認も楽です。
手順2: 20〜30件で分類基準を作る
最初から全件を分類させません。評価項目ごとに先頭の数十件を見せて、基準の案を出させます。
シート「回答」の評価項目「学習指導」の自由記述から、先頭30件を読んで
分類のカテゴリ案を出してください。
・カテゴリは6個以内。名前は10字以内で、定義を1文で書く
・各カテゴリに、該当する回答IDを2件ずつ示す
・複数のカテゴリにまたがる記述の扱いも案を出す
・セルは変更せず、案は会話に書く「セルは変更せず」と添えるのは、この段階でシートを書き換えさせないためです。Claude for Excelには、既存データを上書きする前に警告する機能がありますが、元の回答シートは触らせない運用にしておけば確認の手間が減ります。
案が出たら、人が線引きを決めます。たとえば「宿題が多い」という記述は、課題(負担)なのか、要望なのか。「先生が丁寧」は、評価項目「学習指導」の肯定なのか、「生徒指導」の肯定なのか。こうした境界は、定義文に例を添えて固定します。
手順3: 分類列を作る
基準を固めたら、分類を依頼します。出力先は「分類」シートで、回答シートには手を入れません。
シート「回答」の全行を、決めた基準で分類し、シート「分類」に書いてください。
・1行につき回答ID、評価項目、分類、傾向、根拠(本文からの引用20字以内)
・1つの記述に複数の論点があるときは行を分け、回答IDは同じものを残す
・基準にない記述は分類「その他」とし、無理に当てはめない
・書き終えたら、回答シートの行数と、分類シートの回答IDの種類数を示す「その他」を許すのが大事です。許さないと、基準に合わない記述が最も近いカテゴリに押し込まれ、件数が膨らみます。
件数の一致は、Claudeの返答でなく、Excelの式で確かめます。
=COUNTA(回答!A2:A500) ← 入力の行数
=SUMPRODUCT((分類!A2:A800<>"")/COUNTIF(分類!A2:A800,分類!A2:A800&"")) ← 分類済みの回答ID数(空白セルは数えない)2つの数が合わなければ、分類されていない記述があります。回答IDの一覧同士を突き合わせ、欠けたIDを見つけて再依頼します。これは確認の考え方を示す例で、範囲は自分のブックに合わせて読み替えます。空白セルが範囲に残っていても、上の式はエラーにならず数えません。Microsoft 365なら =COUNTA(UNIQUE(FILTER(分類!A2:A800,分類!A2:A800<>""))) でも同じ数が出ます。
手順4: 評価項目ごとに件数化する
分類が済んだら、評価項目とカテゴリのクロス集計を作ります。Claude for Excelはピボットテーブルの編集や並べ替え、フィルターなどのExcel標準の操作を直接頼めます。式で作ることもできます。
=COUNTIFS(分類!$B:$B,$A2,分類!$C:$C,B$1)A列に評価項目、1行目にカテゴリ名を置いたとき、この式で項目とカテゴリの交差する件数が出ます。回答者区分でも分けたいときは、分類シートに区分の列をXLOOKUPなどで引いておき、COUNTIFSの条件を足します。保護者と生徒で課題の出方が違う項目は、改善案を分けて考える材料になります。
件数を示すときは、記述数と回答者数を分けて書きます。1人が複数の論点を書いていれば、論点の延べ数は回答者数より多くなります。区分の回答者が1〜2人しかいないとき、集計をそのまま載せると誰の意見かが推測できてしまいます。学年や学級などの区分を束ねてから集計します。
手順5: 抜き取りで原文と突き合わせる
分類の正しさは、人が原文で確かめます。
抜き取り確認の流れ
- 1
カテゴリごとに5〜10件を無作為に選ぶ
「その他」と「要望」は多めに選びます。境界の判断が割れやすいからです。
- 2
根拠の引用が本文にあるか見る
根拠欄の20字が、原文にそのまま入っているかを確かめます。本文にない言い回しが引用されていたら、その行は信用しません。
- 3
ずれたら基準に戻して、再分類する
1件だけ直すのでなく、定義文を直して該当カテゴリをやり直させます。そのうえで、手順3の件数照合をもう一度行います。
件数が多いカテゴリほど、確認の価値があります。「課題」に300件入ったうちの1割が実は肯定だった場合、改善の優先順位が変わるからです。
手順6: 件数を、関係者評価の資料に使える改善案へ
分類と件数が固まったら、評価項目ごとの改善案の素案を作ります。ここでClaudeに任せるのは、文章の形を整えるところまでです。
シート「集計」の評価項目「保健・安全」について、次の表を作ってください。
・上位3カテゴリ、件数、代表的な記述(回答IDつき)
・「課題」に分類された記述に共通する論点を3文以内で
・改善案の素案は、私が下に書いた学校の方針だけを使う
方針にない対策を、あなたが補って書かないでください。
方針: 登下校時の見守りは地域ボランティアと調整する。…方針を渡さずに「改善案を出して」とだけ頼むと、もっともらしいが学校の実情に合わない案が並びます。人員、予算、年間計画との整合は、学校側にしか分かりません。素案は、提案の叩き台としてだけ使い、採否と文言は職員会議で決めます。
関係者評価の場では、件数の表と、代表的な声の引用が、議論の根拠になります。代表的な声は、回答IDから原文に戻れる形で残しておくと、後から問われたときに説明できます。
前年度と比べるなら、基準を固定して持ち越す
学校評価は毎年繰り返すので、「昨年より課題が減ったか」が問われます。年度ごとにClaudeへカテゴリ案を出させ直すと、カテゴリの名前と範囲が毎年変わり、件数を比べられません。
今年度の基準が固まったら、カテゴリ名、定義文、境界の例を「基準」シートとして同じブックに残します。翌年度は、そのシートを渡して「この基準で分類する」と頼みます。新しい論点が増えたときだけカテゴリを足し、足した年度と理由を基準シートに書き残します。基準を動かした年は、前年度との比較に注記が要ります。
保護者と生徒では、同じ項目でも書くことが違います。保護者は連絡の頻度や行事の運営を、生徒は授業の進め方や校則を書く傾向があるなら、区分別に件数を出す価値があります。区分の違いは、分類を終えた後の集計で見ればよく、分類の基準自体を区分ごとに分ける必要はありません。
外部から来たファイルに紛れる指示文に備える
自由記述は、保護者や生徒が自由に書いた文章です。Claude for Excelのドキュメントは、外部の入手元から来たファイルに、アドインを意図しない動作へ誘導する隠れた指示が含まれうると注意しています。危険な操作を提案するときは、確認を求められる仕組みがあります。
学校評価のアンケートは、通常は学校が管理する集計システムから出したデータで、リスクは低めです。それでも、次の運用は省かないでください。
- 変更を確定する前に必ず確認する
- 信頼できる元データのコピーで作業し、元のブックは別に保管する
- 確認の求めが出たら、内容を読んでから許可する
Claude for Excelで頼めないこと
ドキュメントが挙げる非対応は、データテーブルとマクロ・VBAです。自校のExcelテンプレートがマクロで集計している場合、その部分はClaudeに任せられません。集計は上記のようにCOUNTIFSや標準のピボットテーブルで組み直します。
最終成果物を人の確認なしで出すこと、監査に耐える計算を検証なしで任せることも、推奨されていません。学校評価の結果は公表されるものです。件数と分類の確認は、必ず人が行います。