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自治体職員の生成AI利用と総務省ガイドライン — Claudeで庁内文書を下書きする線引き

自治体職員の生成AI利用と総務省ガイドライン — Claudeで庁内文書を下書きする線引き

総務省の導入手順編(第4版)が示す機密性の分類と個人情報の考え方に沿って、庁内文書の下書きでClaudeに入力してよい情報とそうでない情報を確認します。

庁内文書の下書きにClaudeを使う前に決めておくこと

総務省の「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>」(令和7年12月・第4版)は、あいさつ文案や議事録の要約のような文書作成を、生成AIの代表的な使い道として挙げています。同時に、住民の個人情報を含む入力は、扱いを丁寧に決めたうえで進めるものと位置づけています。

線引きの軸は3つです。入力する情報が自団体の情報セキュリティポリシー上どの機密性に当たるか。個人情報保護法の観点で入力が許されるか。そして、入力データが学習に使われず、どこに送られるかです。Claudeで下書きをする職員は、この3つを入力の前に確認します。

本記事は、ガイドブックが示す考え方をClaudeの実務に当てはめる整理です。ガイドブックはClaudeを名指ししていません。自団体の生成AI利用ルールと、情報政策担当課の判断が常に優先します。Claudeの全体像はClaude完全ガイドにあります。

ガイドブックが挙げる庁内文書の活用事例

ガイドブックは、自治体の生成AI利用のうち、文字起こし・議事録の作成・文章要約を部局共通の使い方として紹介しています。総務省の導入状況調査(令和7年6月30日版)の活用事例では、次の用途が上位に並びます。

  • あいさつ文案の作成
  • 議事録の要約
  • 企画書案の作成
  • メール文案の作成
  • 議会の想定問答の文案の作成

住民等からの質問に対する回答案の作成、記者発表資料案の作成、マニュアル案の作成も同じ調査に入っています。庁内文書のたたき台、住民案内文の下書き、議事録整理は、どれもこの延長にあります。

導入効果の例も載っています。あいさつ文の作成では1件あたり40分(60分から20分)の削減見込み、議事録の要約では1件あたり1時間45分の削減です。

効果の数字より先に押さえたいのは、出力の扱いです。ガイドブックは、生成AIの出力に偽情報・誤情報・偏向情報が含まれうることを前提に、生成物を人が確認するルールを設けることが重要だとしています。岡山県西粟倉村の事例では、生成物を職員が必ず確認・修正するルールが明記されています。下書きはあくまで下書きです。

機密性の分類で入力できる範囲はどう変わるか

ガイドブックは、「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(令和7年3月28日改訂)の整理を引いて、パブリッククラウドサービスを使える範囲を機密性ごとに示しています。

自治体機密性パブリッククラウドの扱い
1パブリッククラウドの扱い可
2パブリッククラウドの扱い可。ただし約款への同意だけで使えるサービスでは扱えない
3B・3Cパブリッククラウドの扱いISMAP登録サービスは利用可(アクセス制御と暗号化等が必要。3Cは追加の対策基準も必要)
3Aパブリッククラウドの扱い行政文書の管理に関するガイドライン等に則る(極秘文書はインターネット非接続の媒体等での保存が求められる)

この表をClaudeの下書きに当てはめると、次のようになります。

  • 機密性1にあたる公表前提の情報は、入力の制約が最も小さい領域です。公開済みの制度説明をもとに、住民向けの案内文を整えるような使い方です。
  • 機密性2以上を扱うなら、画一的な約款への同意だけで使えるサービスは避ける前提になります。個人向けプラン(Free・Pro・Max)は、個人が利用規約に同意して使う形態です。庁内の業務情報をそこへ入力してよいかは、自団体のセキュリティ担当が判断する事項です。
  • 機密性3のうち3Bと3Cは、ISMAP登録サービスであることが手がかりになります。Claudeの提供経路ごとの登録状況は官公庁がClaudeを使うにはISMAP登録がどう関わるかで整理しています。
  • 機密性3Aは、生成AIに入力する情報ではなく、そもそもクラウドに置かない前提の領域です。

住民の個人情報はどこまで入力してよいのか

ガイドブックは、個人情報に該当するデータだからといって生成AIの利用をすべて否定することは、業務効率化や住民サービス向上にとって必ずしもプラスにならないとしています。そのうえで、個人情報を含む入力では次の点の確認を求めています。

観点確認事項
情報セキュリティポリシー確認事項クラウド利用規定の整備、ISMAP登録の有無、事業者の所在国とサーバ設置場所(適用される法令)
個人情報保護法確認事項入力それ自体で特定の個人が識別されるか、利用目的に対して必要最小限か、本人同意が必要な取扱いか
生成AI特有のリスク確認事項学習データにならない仕様か、生成AIエンジンへ送られたデータの扱い

入力データを学習させない仕組み(オプトアウトの徹底)も、生成AI特有の配慮事項として挙がっています。

Claude側の事実として、AnthropicはClaude EnterpriseやAPIなどの商用製品で生成されたデータを、既定ではモデルの学習に使いません。個人向けのFree・Pro・Maxでは、会話をモデル改善に使うかどうかを設定で選ぶ形です。学習を使わない設定にしても、安全性の分類器に引っかかった会話は例外として扱われることがあります。会話を誰が見られるかの詳細はClaudeプライバシー — 会話を誰が閲覧し、いつ学習に使われるかにまとめました。

個人向けプランの公式ヘルプには、金融情報、医療情報、パスワード、機密性の高い業務文書のような情報の入力に慎重になるよう書かれています。庁内の住民情報は、この慎重さの対象そのものです。

海外リージョンへの送信が気になる場合は、データの所在の考え方をClaude Data Residencyは個人情報保護法の「外的環境の把握」にどう効くかで確認できます。ガイドブックも、事業者の所在国やサーバの場所によってどの国の法令が適用されるかを確認項目に挙げています。

先行自治体はどこで線を引いているか

ガイドブックの生成AI導入事例には、線の引き方が異なる3つの型があります。

大阪市は、ISMAP登録サービスであるMicrosoft Azureを庁内ネットワークと閉域接続した「大阪市共通クラウド」に、市独自の生成AI環境を構築しました。入力データは学習されない仕様です。この環境では、一連の処理で1,000人分までなら個人情報の入力を運用上認めています。対象は特定個人情報(マイナンバーを含む情報)以外で、要配慮個人情報も含みます。試行利用の段階では個人情報の入力をすべて禁止していましたが、本格導入で条件付きに緩めた経緯です。

千葉県他の福祉相談の事例と横須賀市は、個人情報を入力しない形を取っています。千葉県他のシステムは人名・地名を自動でマスキングし、相談員が適切なマスキングかを判断してから生成AIへ入力します。横須賀市も、個人情報にあたる部分をマスキングしてから、相談内容の要約などに使っています。

西粟倉村は、個人情報等の機密性の高い情報の入力自体をマニュアルで禁止し、住民の意見が書かれた付箋の文字データなどを対象にしています。

つまり、入力してよい情報の範囲は、環境の安全性で決まります。閉域の専用環境なら少数の個人情報まで、汎用の環境ならマスキングしたうえで、という段階です。個人アカウントのClaudeで、この大阪市の運用を真似することはできません。

用途別に見る入力の線引き

ガイドブックの考え方をClaudeでの下書きに当てはめると、用途ごとの目安は次のとおりです。表は本記事の整理であり、ガイドブックがこの形で示しているわけではありません。

用途入力する材料目安
あいさつ文・式辞のたたき台入力する材料行事名、日時、公開済みの取組目安公表前提の情報が中心で、入力しやすい
住民向け案内文の下書き入力する材料公開済みの制度概要、条文の要旨目安公開情報の言い換えなら入力しやすい。制度の解釈は担当課が確認する
庁内通知・メール文案入力する材料内部の連絡事項目安機密性2にあたりうる。約款だけで使えるサービスは避ける前提で、自団体の判断を確認する
議事録の整理入力する材料会議の要旨、発言のメモ目安発言者名や住民の相談内容が混じるなら個人情報の扱いに入る。伏せてから入力する
住民の相談・申請記録の要約入力する材料相談記録、申請内容目安個人情報そのもの。庁内で許された環境がなければ、マスキング前提にとどめる

議会の想定問答や記者発表資料案のように、公表前の政策情報を含む文書は、住民の個人情報とは別に、公表前情報として機密性の判断が必要です。

Claudeでできる下書きの型

線引きが決まれば、Claude側では手順を固定できます。プロジェクトのカスタム指示(または毎回の入力の冒頭)に、入力ルールを置いておく形です。次の文面は、そうした指示の一例です。

あなたは自治体職員の文書作成を補助します。
入力は、氏名・住所・電話番号・個人番号を伏せた状態で受け取ります。
伏せ字は【氏名A】【住所】のように、種類が分かる形で残します。
個人を特定できそうな情報が残っていたら、下書きの前に指摘してください。
出力は下書きです。根拠のない数字や条例の条文番号は書かず、
確認が必要な箇所に【要確認】と付けてください。

この指示は、入力側のマスキングを補助するもので、法的な安全を保証するものではありません。マスキングが適切かどうかは職員が判断します。千葉県他の事例でも、自動マスキングのあとに相談員が適切さを判断する手順が入っていました。

出力の【要確認】は、ガイドブックが求める「人が確認するルール」を下書きの段階から形にする工夫です。条例の条文番号や補助金の金額のように、誤りが住民に届くと影響が大きい箇所が対象になります。

職員が単独で決めないこと

ガイドブックは、生成AIの利用に伴う判断を職員個人に任せない方向で書かれています。CAIO(AI統括責任者)のような責任者を置いてガバナンスを明確にすること、利用ガイドライン(ひな形を別添として掲載)を整えること、研修で基本事項を全職員に周知することです。

基本事項の例として、私用デバイスに私的にインストールした生成AIに職務上知り得た情報を入力してはいけない、という点が挙げられています。個人のスマートフォンのClaudeアプリで、庁内文書を下書きするのは、この基本事項に反する使い方です。

Claudeを庁内で使えるか、どのプランで契約するかは、部署単位ではなく団体として決める事項です。組織向けプランの管理面はClaude Enterpriseとはにまとめています。国のデジタル庁が示した生成AIガイドラインを社内規程へ落とす考え方は、デジタル庁の生成AIガイドラインをClaude社内規程に転用するが参考になります。

まとめ

自治体職員がClaudeで庁内文書を下書きするときの線引きは、入力する情報の機密性、個人情報保護法での許容範囲、学習とデータの送信先の3点で決まります。公表前提の情報なら入力しやすく、住民の個人情報を含む文書は、庁内で認められた安全な環境が前提です。それがなければマスキングして入力しない形にとどめます。

出力は必ず職員が確認します。線引きそのものは、ガイドブックが求めるとおり、団体のルールとして整えておく事項です。

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