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ClaudeでEVP候補を社員アンケートの自由記述から根拠つきで抜く手順

ClaudeでEVP候補を社員アンケートの自由記述から根拠つきで抜く手順

社員アンケートの自由記述から採用メッセージ(EVP)の候補を、原文ID付きで抜く手順です。根拠の本数で「言える点」と「言えない点」を分けます。

社員アンケートの自由記述から採用メッセージ(EVP)の候補を抜くときは、Claudeに「良さそうな訴求」を書かせる前に、回答1件ずつへIDを振り、訴求の候補ごとに根拠のID一覧を出させます。根拠が複数の部署に散らばる訴求は言い切り、1〜2件しかない訴求は採用メッセージに載せない。この線引きを先に決めておくと、人事が「社員の声」として胸を張れる文面だけが残ります。

EVP(Employee Value Proposition)は、会社が社員に提供できる価値を、採用の場で伝わる形にしたものです。給与・働き方・成長機会・人間関係・仕事の意義といった軸で語られることが多く、アンケートの自由記述はその裏づけに使えます。ただし自由記述は、声の大きい少数の意見が印象に残りやすい素材です。

この記事では、Claudeのプロジェクトに自由記述を入れ、原文付きで分類し、根拠本数で訴求を仕分けるまでを手順にします。

結論は「根拠の本数」で3段に分ける

最初に、出力の形を決めます。Claudeに頼むのは「EVPを考えて」ではなく、次の3段への仕分けです。

区分目安(自社で決める)採用メッセージでの扱い
言い切れる訴求目安(自社で決める)複数の部署・職種から根拠が出ている採用メッセージでの扱い見出し級の訴求にしてよい
条件つきで言える訴求目安(自社で決める)特定の部署・職種に偏る採用メッセージでの扱い「◯◯部門では」と範囲を限定して書く
使わない訴求目安(自社で決める)根拠が1〜2件で、言い回しも似ている採用メッセージでの扱い採用メッセージに載せない

本数のしきい値は、一次ソースに定めがありません。回答者数と部署数に応じて自社で決めるものです。たとえば回答者80人なら「5件以上かつ3部署以上」を言い切りの目安にする、といった置き方になります。大事なのは、Claudeの出力を見る前にしきい値を決めておくことです。見た後に決めると、載せたい訴求に合わせて基準が動きます。

何をClaudeに渡すか — プロジェクトの使いどころ

自由記述は、チャットに貼るより、プロジェクトの知識として置く運用が向きます。プロジェクトは、独自のチャット履歴と知識ベースを持つ作業スペースで、文書をアップロードし、プロジェクトごとに指示(トーンや役割)を設定できます。無料アカウントのプロジェクトは最大5つまでです。

アップロードの制限は、チャットとプロジェクトで異なります。

数字

アップロードの上限

  • チャット1回あたり

    20ファイル

    1ファイル500MBまで

  • プロジェクトのファイル

    30MB

    1ファイルあたり。本数は無制限

ファイルの扱いは面ごとに異なる

アンケートのCSVが数MBに収まっていれば、どちらでも入ります。注意したいのは、プロジェクトのファイルが「テキスト抽出のみ」で扱われる点です(マルチモーダルPDFを除く)。手書きアンケートをスキャンしたPDFや、画像のまま貼った回答表は、文字として読まれない可能性があります。入力は、テキストのCSVかDOCXに整えてから渡します。

対応するドキュメント形式にはCSV・DOCX・PDF・TXTなどがあります。XLSXは、コード実行とファイル作成を有効にしたアカウントでのみアップロードできます。設定を触りたくなければ、CSVで書き出して渡すのが近道です。

手順

手順

自由記述から採用訴求の候補を抜く流れ

  1. 1

    回答にIDを振る

    1回答に1行、IDを付けます。ID列は、あとで根拠を辿る唯一の手がかりです。

  2. 2

    訴求の軸(コードブック)を固定する

    分類の軸を、Claudeに任せず人が先に書きます。

  3. 3

    原文付きで分類させる

    分類結果には、必ず原文の抜粋とIDを付けさせます。

  4. 4

    本数は表から数える

    根拠の本数はClaudeの文章ではなく、出力された表から数え直します。

  5. 5

    3段に仕分けて文面にする

    言い切れる訴求から順に、採用メッセージの文案へ落とします。

1. 回答にIDを振る

元のCSVに、先頭列としてIDを足します。回答の途中に改行がないCSVなら、awkで足りる作業です。

awk 'BEGIN{FS=OFS=","} NR==1{print "id",$0; next} \
  {printf "R%03d,%s\n", NR-1, $0}' survey.csv > survey_id.csv

回答の中に改行が含まれるCSVは、この方法だと行が壊れます。その場合は表計算ソフトで連番の列を足して書き出します。

IDを付けたあとの形は、次のようになります(列名と内容は例示です)。

id,部署,勤続,回答
R001,営業,3年,上司に相談しやすく、判断を任せてもらえる場面が多い
R002,開発,7年,在宅の日数を自分で決められるのが大きい
R003,管理,2年,研修は手厚いが、評価の基準は分かりにくい

属性は「部署」と「勤続」の2つに絞っています。属性を増やすほど、分類の切り口は増えますが、匿名性は下がります。

2. 訴求の軸を固定してプロジェクトの指示に書く

採用の訴求に使える軸を、先に5〜7個決めます。軸を決めずに「自由に分類して」と頼むと、実行のたびに分類名が変わり、前回との比較ができません。決めた軸は、プロジェクトの指示に書きます。指示は、プロジェクト内のすべてのチャットに効く固定の前提になります。

指示の断片は、たとえば次の形です(軸の名前は自社に合わせて置き換えます)。

あなたは採用広報の分析担当です。添付の survey_id.csv を読み、
各回答を次の軸に分類してください。軸に当たらない回答は「その他」とします。
 
軸: 裁量・任せ方 / 働く場所と時間 / 学びと成長 / 上司・同僚との関係 / 評価と報酬 / 仕事の意義
 
ルール:
- 回答1件に付ける軸は最大2つ。
- 分類の根拠として、必ず回答の原文を抜粋し、IDを併記する。
- 原文にない内容を補って言い換えない。
- 否定的な回答(「分かりにくい」など)も、同じ軸に「懸念」として分類する。

最後の行が効きます。ポジティブな声だけを拾うと、採用メッセージは実態より甘くなります。「評価の基準は分かりにくい」という声が同じ軸に積み上がっているなら、その軸は言い切りに向きません。

3. 原文付きで分類させる

プロンプトは短くて足ります。

全回答を軸ごとに分類し、次の表で出してください。
列: 軸 / 肯定か懸念か / 回答ID / 原文の抜粋 / 部署
同じ軸の回答は、IDの昇順で並べてください。

出力の表で見るのは、原文の抜粋が実際の回答と一致しているかです。Claudeが要約や言い換えを混ぜると、原文と食い違うことがあります。IDを頼りに、抜粋を数件抜き打ちで元のCSVと突き合わせます。食い違いが出るなら、指示の「言い換えない」を強めて、やり直します。

4. 本数は表から自分で数える

「何件あったか」の数字は、Claudeの文章をそのまま信じません。ここには2つ理由があります。

1つ目は、プロジェクトの知識が大きくなると、検索で必要な箇所を取り出す方式(RAG)に切り替わることです。有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)では、プロジェクトの知識がコンテキストウィンドウの上限に近づくと、自動でRAGが有効になり、容量が最大10倍まで広がります。RAGが有効なとき、Claudeはプロジェクトの知識検索ツールで関連する箇所を取り出して答えます。切り替えは自動で、手動では制御できません。数百件の自由記述を全件読んだ上での集計が必要な場面では、取り出し漏れが起こりうる構造です。回答数が多いときは、アンケートを分割して投入するか、集計は表から人が数える運用に寄せます。

2つ目は単純で、文章での集計はほかの数字とずれやすいからです。分類表をCSVで出させれば、数えるのはシェルで済みます。

# 分類表を result.csv(列: 軸,区分,回答ID,原文,部署)として保存した場合
cut -d, -f1 result.csv | sort | uniq -c | sort -rn

軸ごとの件数の次に、同じ軸が何部署に跨がっているかも数えます。件数だけを見ると、営業部の10人が同じ言い回しで書いた軸が「10件」として並びます。部署が1つしかない軸は、上の仕分けでは「条件つき」へ回ります。

言える点と言えない点を分ける

数え終えたら、軸ごとに3段へ仕分けます。例として、回答80人・6部署のアンケートで次のような集計が出たとします(数字は例示です)。

軸肯定の件数懸念の件数跨がる部署判定
裁量・任せ方肯定の件数14懸念の件数2跨がる部署5判定言い切れる
働く場所と時間肯定の件数11懸念の件数1跨がる部署4判定言い切れる
学びと成長肯定の件数7懸念の件数6跨がる部署3判定条件つき
上司・同僚との関係肯定の件数9懸念の件数0跨がる部署2判定条件つき
評価と報酬肯定の件数2懸念の件数9跨がる部署4判定使わない
仕事の意義肯定の件数2懸念の件数0跨がる部署1判定使わない

判定の理由を、軸ごとに言葉にしておきます。

  • 裁量・任せ方: 件数が多く、懸念が少なく、部署が散らばっている。見出しに使える。
  • 学びと成長: 肯定と懸念が拮抗している。「研修の手厚さ」と「成長実感」のように、肯定が当たる部分を切り分けて書く。
  • 上司・同僚との関係: 肯定は多いが2部署に偏る。「◯◯部門では」と限定する。
  • 評価と報酬: 懸念が肯定を大きく上回る。訴求には使わず、入社後のギャップを避けるために面接で正直に触れる材料にする。
  • 仕事の意義: 根拠が2件で、1部署だけ。使わない。

「使わない」に仕分けた訴求は、捨てるのではなく記録に残します。回答が増えたときに、再び判定できるからです。

採用メッセージ案に落とすときの書き方

仕分けが終わったら、言い切れる訴求から文案にします。Claudeには、根拠のIDと原文を渡したまま、次のように頼みます。

「言い切れる」に仕分けた2つの軸について、求人票に載せる文案を各2案つくってください。
条件:
- 回答の原文にある事実だけで書く。原文にない制度や数字を足さない。
- 文案ごとに、根拠にした回答IDを併記する。
- 「条件つき」の軸は、範囲を限定した一文にする。

文案ごとに根拠IDを残すのは、公開後に「この表現は何に基づくのか」を問われたとき、答えられる状態にするためです。

求人など募集の情報には、守るべき線があります。職業安定法は、募集に関する情報の提供で、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めています(第5条の4第1項)。労働者の募集を行う者には、情報を正確かつ最新の内容に保つ義務もあります(同条第2項)。アンケートに書かれた声を材料にしても、「社員の声」として一般化しすぎた文面は、誤解を生じさせる表示になりえます。「全員が裁量を持っています」と書けるのは、アンケートでそこまで言える場合に限られます。「アンケートでは、多くの部署から〜という声がありました」のように、根拠の範囲を文面に残せば、書き過ぎを防げます。

また、アンケートの実施時期は、文案の欄外に記録します。1年前のアンケートは、組織が変わった今の姿とずれている可能性があります。採用メッセージを更新するときの判断材料になります。

つまずきやすい点

分類名が実行のたびに変わる。軸を指示に書かず、毎回プロンプトで頼んでいると起きます。軸は上のようにプロジェクトの指示へ固定します。大量の回答をAPIのバッチで回す場合のコードブック固定は、自由記述の分類をClaude APIのバッチで回すで扱っています。

少数の強い声に引っぱられる。長く具体的な回答は印象に残りますが、1件は1件です。件数と部署数で判定する仕組みは、この偏りを抑えるためにあります。

肯定ばかり拾う。懸念を同じ軸に分類させないと、採用メッセージは入社後の実態とずれます。懸念の件数は表に残します。

アンケートの母集団が偏っている。回答率が低い部署や、在籍の短い社員の声が入っていないことがあります。回答者数と部署別の回答率は、表の脇に添えておきます。

社員本人の言葉をそのまま公開する。自由記述の原文を求人ページへ引用する場合は、匿名のアンケートであっても、公開の可否を本人に確認できません。引用を使うなら、社員インタビューの形で許諾を取り直す進め方になります。手順は採用広報の社員インタビュー記事をClaudeで作るにあります。

チームで使うとき — プロジェクトの共有範囲

人事チームで同じアンケートを扱うなら、プロジェクトの共有範囲を決めます。Team・Enterpriseプランでは、プロジェクトを組織のメンバーと共有できます。権限は「Can view」(閲覧とプロジェクト内のチャットのみ)と「Can edit」(指示や知識の編集、メンバーの追加まで)の2段です。

アンケートの原データは、非公開(招待した人だけが見られる設定)のプロジェクトに置きます。プロジェクトが組織全体に公開されていても、メンバーそれぞれのプロジェクト内のチャットは、手動で共有しない限り他のメンバーに見えません。ただしプロジェクトの知識(アップロードしたCSV)は、公開プロジェクトでは組織の全員に見えます。個人が特定されうる自由記述を置く場所は、非公開のプロジェクトにします。

採用の歩留まりと合わせて訴求の効き方を見たいときは、採用の歩留まりをClaudeで分析する手順につなげられます。媒体別の応募や内定承諾の数字を見て、どの訴求が届いたかを振り返る流れです。

次の見直しにつなげる

最後に、今回の集計を次回に使える形で残します。残すものは3つです。

  • 軸の定義(指示の文面)
  • 判定のしきい値
  • 軸ごとの件数と部署数の表

次の調査で同じ軸と同じしきい値を使えば、「学びと成長」が条件つきから言い切りへ上がったか、といった変化が比べられます。変化が見えれば、採用メッセージの更新に根拠が付きます。

顧客側のペルソナを作る場合は、考え方が別になります。顧客の声は顧客ペルソナをClaudeで作るの型で扱い、採用の訴求軸とは分けて扱います。

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