Claudeで寄稿の依頼に応える原稿を作る — 媒体規定と数値の照合
業界媒体から寄稿を頼まれたとき、媒体の規定と社内の知見資料をClaudeのProjectsに置き、規定の条件表、骨子、原稿の順に進める手順。数値と固有名詞を元資料と照合する二段目の確認までを示します。
業界媒体から「寄稿をお願いできませんか」と連絡が来る。広報担当には嬉しい話ですが、そこからが長い道のりです。字数や掲載方針を読み込み、社内の知見をどう束ねるかを考え、数字や固有名詞を間違えずに原稿へ落とします。締め切りは短く、元になる資料は複数部署に散らばっています。
ClaudeのProjectsに、媒体の寄稿規定と社内の知見資料を置くと、この流れを4段階に分けて進められます。規定を条件表にする、骨子を作る、原稿を書く、数値と固有名詞を元資料と照合する、の4つです。最後の照合を書いた会話とは別の会話で行う点が、この記事の中心です。
寄稿の原稿づくりでClaudeに任せる範囲
Claudeに任せるのは、規定の読み取り、資料からの骨子づくり、原稿の叩き台、照合の下ごしらえです。何を書くか、どこまで社外に出すか、競合にどう触れるかは、人が決めます。
Projectsは、チャット履歴と知識ベース(ナレッジ)を持つ独立した作業場です。文書、文章、コードなどを知識ベースに置き、プロジェクトごとに指示(project instructions)も設定できます。寄稿は「同じ規定と同じ資料を何度も見返す」作業なので、この仕組みに向いています。
| 作業 | Claudeに任せる | 人が決める |
|---|---|---|
| 規定の読み取り | Claudeに任せる字数・締切・掲載方針・禁止事項を条件表にする | 人が決める条件表と規定の原文を見比べる |
| 骨子づくり | Claudeに任せる資料から論点を拾い、章立て案を2案出す | 人が決めるどの案で書くか、何を載せないか |
| 原稿の叩き台 | Claudeに任せる骨子に沿った本文の下書き | 人が決める主張の強さ、社の公式見解との整合 |
| 数値・固有名詞の照合 | Claudeに任せる原稿と元資料を突き合わせた差分表 | 人が決める差分の採否、元資料自体の正しさ |
| 競合への言及 | Claudeに任せる規定に照らした該当箇所の洗い出し | 人が決める書き換えるか削るか |
Projectsに置く資料と、置かない資料
置くもの
寄稿のプロジェクトには、次の4種類を置きます。ファイル名は中身が分かる名前にします。
- 媒体の寄稿規定(例:
media_guideline.pdf) - 依頼メールの全文(例:
request_mail.txt。テーマの指定や締切が書かれています) - 媒体の過去の寄稿記事(例:
past_articles_2025.pdf。文体と構成の手本になります) - 社内の知見資料(例:
internal_survey_2026.pdf、case_study_notes.docx)
ファイル名は、Claudeが関連箇所を探すときの手がかりにもなります。公式ヘルプも、RAGが有効なプロジェクトでは分かりやすい名前を付け、質問のときに文書名で指定するよう案内しています。
ファイル形式と上限
プロジェクトに置くファイルは1ファイル30MBまでです。ファイル数に上限はなく、全体の内容がClaudeのコンテキストウィンドウに収まることが条件になります。内容は原則としてテキストが抽出されます。例外はPDFで、100ページ以下ならグラフや図などの視覚要素も解析されます。101〜1000ページはテキストのみで、1000ページを超えるPDFはアップロードできません。
Wordなど非PDFの文書は、テキストだけが抽出され、埋め込まれた画像は読み取られません。調査結果のグラフが載った社内資料は、PDFで置くのが確実です。グラフの数値が本文に書かれていないWordは、数値を照合できません。
有料プランではRAGに切り替わる
有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)では、知識ベースがコンテキストの上限に近づくと、RAGモードに自動で切り替わり、容量が最大10倍まで広がります。切り替わると、全文を読み込まず、プロジェクト知識検索ツールで関連箇所を探して答えます。切り替えは画面の表示で分かり、利用者が制御することはできません。
過去の寄稿記事を何本も置くと、切り替わりやすくなります。RAG時は、資料の特定の1箇所が検索で拾われないこともあります。仕組みの詳細はClaude ProjectsのRAG検索はいつ発動する?で扱っています。この記事では、次の2つの運用で備えます。
- 質問のたびに、文書名と節を指定する
- 該当箇所は、資料の文言をそのまま引用させる
置かないもの
社内の知見資料には、公開前の数値や取引先名が混ざります。Projectsに置く前に、寄稿で使ってよい範囲を決めます。Team・Enterpriseでは、プロジェクトを「Everyone at [organization]」で組織全体に公開することも、「Only people invited」で招待した人だけに限ることもできます。公開前の資料を置くプロジェクトは、招待制にしておきます。
プロジェクト内の自分のチャットは、共有しない限り他のメンバーに見えません。一方、知識ベースとプロジェクト指示は、招待された人に見えます。寄稿の担当が広報部と事業部で分かれるなら、招待する範囲を決めてから資料を置きます。
手順1: 媒体の寄稿規定を条件表にする
最初にやるのは、規定の原文から条件表を作らせることです。ここを飛ばして書き始めると、字数超過や、規定で禁じられている表現が原稿に残ります。
media_guideline.pdf と request_mail.txt を読み、寄稿の条件を表にしてください。
列は「項目 / 条件 / 規定の原文引用(ファイル名とページ)」です。
項目は次を最低限含めてください。
字数、締切、掲載方針、競合・他社への言及、社名や製品名の扱い、
画像・図表の扱い、掲載前の確認プロセス、著作権の扱い
規定に書かれていない項目は「記載なし」と書き、推測で埋めないでください。表ができたら、原文引用の列を人が規定のPDFと見比べます。「記載なし」の項目は、担当編集者への問い合わせ事項です。字数が「目安」なのか「上限」なのかのような曖昧さも、ここで洗い出します。
手順2: 社内資料から骨子を作る
規定の条件表を踏まえて、骨子を作らせます。寄稿でよく起きる失敗は、社内の事例を詰め込みすぎて、読者に伝えたい主張が埋もれることです。主張を1つに絞らせます。
条件表と、internal_survey_2026.pdf、case_study_notes.docx を使って、
依頼メールのテーマに沿った寄稿の骨子を2案作ってください。
各案には、主張を1文、章立て、各章で使う資料の箇所(ファイル名と節)を
付けてください。各章の字数配分は、条件表の字数に収まる前提で出してください。
資料にない数字や事例は使わないでください。2案を出させる理由は、比べると採らない論点が見えるからです。どちらの案を採るかは、社の見解とのずれを見て人が決めます。
寄稿の原稿を仕上げる4段階
- 1
条件表を作る
規定と依頼メールから、字数・締切・禁止事項を表にします。
- 2
骨子を2案出す
主張を1文に絞り、各章の根拠資料の箇所を付けさせます。
- 3
原稿の叩き台を書く
採った骨子と手本の過去記事の文体で下書きを作ります。
- 4
別チャットで照合する
原稿の数値と固有名詞を、元資料と1つずつ突き合わせます。
手順3: 原稿を書かせる指示の置き方
プロジェクトの指示に、寄稿の規約を入れておくと、毎回の聞き方が短くなります。下は例示で、そのまま使う文面ではありません。
あなたは企業広報の寄稿原稿を手伝います。
- 数字・年月・固有名詞は、資料の記載のとおりに使い、丸めない
- 数字や事例には、出典の資料名と節を括弧で添える(原稿の仕上げで外す)
- 資料にない事例や数字は書かず、「資料に記載なし」と伝える
- 他社・競合の名前と評価は、書く前に確認を求める
- 断定が強い表現は、根拠の資料があるものに限るプロジェクト指示は、プロジェクト内のすべてのチャットに効きます。指示を入れたら、原稿は骨子の章ごとに書かせます。一度に全文を頼むより、章ごとのほうが、資料のどこを使ったかを追えます。
文体は、置いてある過去の寄稿記事に寄せるよう頼みます。たとえば「past_articles_2025.pdf の2本目と同じくらいの硬さで」と指定します。ただし、手本記事の表現をそのまま使うと、媒体の既存記事との重複になります。文体だけを参考にして、文は書き下ろすよう添えます。
手順4: 数値と固有名詞を、別のチャットで元資料と照合する
原稿の叩き台ができたら、書かせたチャットとは別のチャットを新しく開いて照合します。同じチャットで続けると、直前の会話に引きずられて、原稿を正しいものとして読みがちになります。プロジェクト内のチャットは知識ベースを共有しますが、会話の内容は引き継がれません。この性質を使います。
照合用のチャットには、原稿の本文だけを貼ります。
次の原稿に出てくる数値、年月、固有名詞(社名・製品名・人名・地名)を
すべて抜き出し、元資料と突き合わせた表を作ってください。
列は「原稿の記述 / 元資料の記載(ファイル名・節・原文引用) / 判定」です。
判定は「一致」「不一致」「元資料に記載なし」のいずれかにしてください。
原文を引用できない行を「一致」としないでください。
(ここに原稿を貼る)差分表の読み方を、次の表にまとめます。
| 判定 | 起きていること | 人の作業 |
|---|---|---|
| 一致 | 起きていること原稿と元資料が同じ | 人の作業引用元を開いて確認する |
| 不一致 | 起きていること数値の丸め、単位の違い、旧版の数字など | 人の作業どちらが正しいかを資料の作成部署に確認する |
| 元資料に記載なし | 起きていること骨子づくりや執筆の途中で混ざった記述 | 人の作業根拠を示せなければ削る |
「元資料に記載なし」の行は、寄稿で一番怖い箇所です。一般論として正しそうな数字でも、社の名前で出す原稿には、根拠を示せる数字だけを載せます。
引用が資料の中に実在するかは、人がPDFや文書内の検索で確かめます。RAGの場合は特に、Claudeが示した引用を検索で1件ずつ確かめるところまでが照合です。
競合への言及と社外秘の点検
寄稿規定には、競合名の扱いが書かれていることがあります。条件表の「競合・他社への言及」の行を使い、原稿全体を点検させます。
条件表の「競合・他社への言及」の条件に照らして、原稿の中で他社名、
他社製品名、他社を連想させる比較表現を洗い出してください。
該当箇所は原文を引用し、条件のどの文言に触れるかを書いてください。
書き換え案は出さず、洗い出しだけにしてください。書き換え案を出させないのは、削るか言い換えるかが編集判断だからです。同じ流れで、社外秘の点検もします。「internal_survey_2026.pdfの中で、公開前と注記されている数値が原稿に使われていないか」と聞きます。注記が資料に書かれていなければ、見つかりません。公開前かどうかは、資料の作成部署が決めることです。
担当者の署名入りで出る原稿は、最終的に自社の確認プロセスを通します。承認が必要な部署や、媒体側の掲載前確認の有無は、条件表の「掲載前の確認プロセス」の行に戻って確認します。
よくあるつまずき
落とし穴
規定の字数を超えた原稿が、そのまま出てくる
Claudeに字数を数えさせても、日本語の文字数がずれることがあります。字数の確認は、原稿をWordやエディターの文字数カウントに貼って行います。条件表に「目安」とあれば、編集者に上限か目安かを聞きます。
資料に載っていない一般論が混ざる
骨子づくりの段階では、資料にない事例や数字が補われることがあります。指示に「資料にない数字や事例は使わない」を入れ、照合の表で「元資料に記載なし」の行を削ります。
手本の記事が文体を超えて写り込む
過去の寄稿記事を手本にすると、言い回しが似すぎることがあります。文体だけを参考にし、文は書き下ろす指示を添えます。仕上げに、原稿から数文を選び、過去記事の検索で同じ文がないかを見ます。
依頼メールの前提が古いまま進む
依頼メールで決めたテーマや字数が、やり取りの途中で変わることがあります。編集者から新しい指示が来たら、メールを知識ベースに足し、条件表を作り直させます。古い条件表をそのまま使うと、原稿が古い前提で書かれます。
よくある質問
無料プランでも使えますか
Projectsは無料アカウントも含む全ユーザーが使えます。無料ユーザーが作れるプロジェクトは最大5つです。RAGによる容量拡張は有料プランに限られます。
寄稿の原稿を、チャットで直接Claudeに貼るだけではだめですか
1本だけ軽く直すなら、チャットでも足ります。規定、依頼メール、社内資料、過去記事を毎回貼り直す手間が出るなら、Projectsに置いたほうが続けられます。
まとめ
寄稿対応は、媒体の規定を条件表にして、人が規定の原文と見比べるところから始まります。骨子と原稿はClaudeに叩き台を作らせ、採否は人が決めます。数値と固有名詞は、書かせたチャットとは別のチャットで、引用付きの差分表にして元資料と照合します。
自社のブログ向けの書き方はClaudeでブログ記事を作成・校正する手順、取材記事のゲラの照合はClaudeで取材記事のゲラを事実照合するに手順があります。査読コメントへの回答書を扱う場合は、Claudeで査読コメントへの回答書を下書きするの流れが近い作業です。