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Claudeで論文の投稿規定への適合をチェック表で点検する手順

Claudeで論文の投稿規定への適合をチェック表で点検する手順

投稿規定(Instructions for Authors)から語数・図表・参考文献・開示事項を条項ごとに抜き出し、原稿と1行ずつ突き合わせるチェック表をClaudeのProjectsで作る手順。照合の落とし穴も示します。

投稿直前の原稿が規定違反で差し戻される原因は、たいてい内容ではなく体裁です。語数の超過、図の解像度、参考文献の書式、利益相反やAI利用の開示の抜けなど、投稿規定(Instructions for Authors)には守る項目が散らばっています。

ClaudeのProjectsに投稿規定と原稿を置き、規定側を先に「要求事項の表」に分解してから原稿と1行ずつ突き合わせると、見落としを減らせます。この記事は、その表の作り方と、Claudeに任せてよい範囲、著者が自分で確かめる箇所を順に示します。

規定側と原稿側を分けて作業する理由

「この原稿は投稿規定に合っていますか」と一括で聞くと、答えは「おおむね合っています」のような総評になりがちです。総評では、どの条項を見たのかが分かりません。

そこで作業を2段に割ります。1段目は規定だけを読み、要求事項を条項ごとに表へ抜き出します。2段目は、その表を物差しにして原稿を点検します。1段目の表が正しければ、2段目は「原稿の該当箇所の引用」と「合否」を並べるだけの作業になります。同じ型の手順を規格書に当てた例がJIS規格の適合チェック表にあり、投稿規定でも骨格は同じです。

段入力出力著者が確かめること
1段目入力投稿規定だけ出力要求事項の表(条項・要求・数値)著者が確かめること表の数値が規定の文言と一致するか
2段目入力1段目の表と原稿出力該当箇所の引用と合否著者が確かめること引用が原稿に実在するか、数え方が規定と同じか

Projectsに置くものと置き方

Projectsは、独自のチャット履歴とナレッジベースを持つ作業場です。文書や資料をナレッジベースに置くと、そのプロジェクト内のチャットで文脈として使われます。プロジェクトごとの指示(project instructions)も設定できます。

注意点が3つあります。

  • プロジェクトの名前と説明は、Claudeには渡されません。投稿先の雑誌名や論文の種別は、名前に入れるだけでなく、ファイルや指示の中に書いておきます
  • チャットをまたいで文脈は共有されません。1段目で作った要求事項の表は、ナレッジベースにファイルとして保存しておかないと、2段目のチャットから参照できません
  • 無料プランで作れるプロジェクトは最大5つです。論文ごとにプロジェクトを分ける運用は、投稿中の論文が増えると上限に当たります

投稿規定の取り込み方

投稿規定は多くの場合、雑誌のWebページに載っています。取り込み方は2通りあります。

  1. ページをPDFとして保存する。ブラウザの印刷機能でPDF化し、ファイル名に取得日を入れる(例: guidelines_2026-10-17.pdf)
  2. ページの本文をテキストにコピーして .txt で保存する

アップロードできる文書形式には、PDF、DOCX、TXT、HTMLなどがあります。取得日をファイル名に入れておくのは、規定が改訂される可能性があるためです。投稿の直前にもう一度ページを開き、版が変わっていないかを見ます。

アップロードの上限も確認します。プロジェクトのファイルは1ファイル30MBまでで、内容は原則テキストが抽出されます。図表が多い規定をPDFで置く場合、PDFだけは例外で、100ページ以下なら図や表の視覚要素も解析されます。101〜1000ページのPDFはテキストのみです。

原稿は図が読めるかで形式を選ぶ

原稿をWordなど非PDFの形式で置くと、テキストだけが抽出され、埋め込まれた画像は読み取られません。つまり、図の中身(軸ラベルの大きさ、凡例、色)に関する要求は、Word形式の原稿ではClaudeが確かめられません。図の体裁を点検したいときは、図入りの原稿をPDFにして置きます。

PDFのページを指して聞くときは、原稿に印字されたページ番号ではなく、PDFビューアーに表示されるページ番号を使います。点検結果のページ番号と、投稿システムに入力するページ番号が食い違わないよう、チェック表には「PDF上のページ」と明記させます。

1段目: 規定から要求事項の表を作る

抜き出す項目のひな型

投稿規定は雑誌によって構成が違いますが、体裁に関わる要求はおおよそ次の分類に収まります。分類を先に指定しておくと、Claudeが規定の並び順に引きずられず、同じ型の表を作れます。

分類抜き出す例数え方の定義も一緒に抜く
語数・分量抜き出す例本文の上限語数、抄録の上限語数、ページ数数え方の定義も一緒に抜く参考文献・図表・キャプションを含むか
構成抜き出す例必須の節、節の順序、タイトルの字数数え方の定義も一緒に抜く節見出しの指定表記
図表抜き出す例図表の上限点数、解像度、ファイル形式、キャプション数え方の定義も一緒に抜く点数にパネル(a, b)を数えるか
参考文献抜き出す例引用形式、番号か著者年か、上限件数数え方の定義も一緒に抜く本文中の引用記号の形式
開示事項抜き出す例利益相反、資金源、倫理審査、データ公開、AI利用数え方の定義も一緒に抜く記載する位置(本文末、別ファイルなど)
提出物抜き出す例提出ファイル形式、匿名化、カバーレターの要否数え方の定義も一緒に抜く著者情報を原稿に書いてよいか

右の列を設けたのは、数値より数え方の食い違いが事故になりやすいためです。たとえば「本文3,000語以内」という規定の語数が、参考文献を含めるのか除くのかで、原稿が収まるかどうかが変わります。数値だけを抜かせると、この条件が表から落ちます。

プロンプトの例

次は1段目の指示の例です。投稿先の規定は雑誌ごとに違うため、分類は読み替えてください。

guidelines_2026-10-17.pdf を読み、原稿の体裁に関わる要求事項を
次の列の表にしてください。
列は「ID / 分類 / 要求事項 / 数値・条件 / 数え方の定義 / 規定の原文引用」です。
分類は、語数・構成・図表・参考文献・開示事項・提出物の6つです。
- 規定の原文を引用できない項目は、表に入れないでください
- 規定に書かれていない項目は「記載なし」とだけ書き、推測で埋めないでください
- 数え方の定義が規定に無い場合は、その旨を明記してください

「原文引用がない項目は入れない」と指定するのは、Claudeが一般的な投稿規定の常識で表を補ってしまうのを避けるためです。「語数は参考文献を除く」のような、その雑誌に書かれていない条件が表に混ざると、2段目の判定が狂います。

表を著者が検収する

出来上がった表は、そのまま2段目に使わず、まず規定のページと見比べます。確認するのは次の3点です。

  1. 数値(語数、点数、dpi)が規定の文言と一致しているか
  2. 「記載なし」とされた項目が、本当に規定にないか。規定が複数のページに分かれている場合は、別ページに書かれている可能性がある
  3. 規定の原文引用が、規定のページに実在するか

雑誌によっては、投稿規定のページに加えて、別ページのテンプレート案内や、出版社共通のポリシーページに要求が分散しています。Claudeに渡したのが1ページだけなら、他のページの要求は表に入りません。規定の入口ページからリンクされている関連ページを著者が開き、必要なものは追加でファイルに置きます。

検収した表は、requirements_table_checked.xlsx のような名前でプロジェクトに保存します。ClaudeはExcelやWordのファイルを作れます(コード実行とファイル作成の機能を有効にしている場合)。Free・Pro・Maxプランでは設定の「機能」から切り替えます。Team・Enterpriseプランでは、組織の管理者が無効にしている場合があります。ファイル形式を選べない環境では、表を .txt や .md で貼り付けて保存しても同じ目的を果たせます。

2段目: 表を物差しに原稿を点検する

合否の3段階と判定の根拠

2段目は、新しいチャットを開いて行います。1段目と同じチャットで続けると、直前の会話に引きずられ、表の誤りを前提にした点検になりがちだからです。プロジェクトに置いたファイルは新しいチャットでも使えます。

合否は「合・不合・判定不能」の3段階にします。「判定不能」を設けるのが要点で、これがないと、Claudeが確かめようのない項目まで「合」と答えます。

requirements_table_checked.xlsx の各行を物差しに、
manuscript_v3.pdf を点検してください。
出力の列は「ID / 判定(合・不合・判定不能) / 原稿の該当箇所(PDF上のページと原文引用) / 理由」です。
- 判定は原稿の引用を根拠にしてください。引用できない場合は「判定不能」とします
- 語数や点数など数えて確かめる項目は、数え方の定義を示したうえで、
  数えた結果と数え方を書いてください
- 図の解像度やフォントなど、PDFから読み取れない項目は「判定不能」とします

数える項目はClaudeの数字を信じない

語数・図の枚数・参考文献の件数は、Claudeに答えさせても、そのまま採用しません。Claudeが数えた値は、著者が一度確かめるべき値として扱います。

確かめ方は単純です。語数は、Wordやワープロの文字数カウントを、規定の数え方に合わせて設定して読みます。参考文献を含めるかどうかは、範囲を選択してカウントすれば切り替えられます。図の枚数は、規定がパネル(a, b)を別に数えるのかを確認したうえで、原稿を目で数えます。

コード実行が有効なら、Claudeに原稿ファイルを処理させて数えさせることもできます。その場合も、数え方(どの節を除いたか)を答えに書かせ、手元の数と照らします。数が合わないときの原因は、たいてい数え方の違いです。

判定不能になりやすい項目

次の項目は、原稿のテキストからは判定できないことが多く、著者が自分で見る項目として分けておきます。

項目判定不能になる理由著者の確かめ方
図の解像度(dpi)判定不能になる理由PDFやWordの本文からは、元画像の解像度が読み取れない著者の確かめ方図のファイルのプロパティを開く
図内のフォントサイズ判定不能になる理由Wordからは図が画像として扱われ、PDFでも文字の大きさの数値は出ない著者の確かめ方規定のサイズで印刷、または拡大して目視
提出ファイルの形式判定不能になる理由ファイルの中身ではなく、投稿システムの要件著者の確かめ方投稿システムの手順に沿って確認
匿名化判定不能になる理由文書のプロパティの作成者名や、図の中の所属は見えない著者の確かめ方ファイルのプロパティと図を確認

図に関する要求は、元の図を作る側で揃えるのが確実です。matplotlibで描く図なら、dpiとフォントを投稿規定の値に合わせる手順がClaude Codeでmatplotlibの論文図を投稿規定のdpiとフォントに揃えるにあります。本記事のチェック表の「図表」の行は、そちらで揃えた結果を最後に確かめる位置づけです。

開示事項は「ある」ではなく「規定の位置にある」まで見る

利益相反、資金源、倫理審査、データの利用可能性、AIの利用は、開示事項としてまとめて要求されることが多い項目です。雑誌によって、記載する場所(本文末、独立した節、カバーレター、投稿システムの入力欄)が違います。

このため、チェック表の開示事項の行には「記載する位置」の列を足します。

ID開示事項規定が指定する位置原稿の該当箇所判定
D1開示事項利益相反規定が指定する位置規定の原文から転記原稿の該当箇所PDF上のページと引用判定合・不合・判定不能
D2開示事項資金源規定が指定する位置同上原稿の該当箇所同上判定同上
D3開示事項倫理審査規定が指定する位置同上原稿の該当箇所同上判定同上
D4開示事項AI利用の開示規定が指定する位置同上原稿の該当箇所同上判定同上

表の項目名は例です。実際の行は、1段目で抜き出した規定側の項目から作ります。AI利用の開示を求める規定がある場合に、Claudeを使って原稿を磨いた事実をどう書くかは、著者が決める事項です。何を開示するかをClaudeに書かせると、実際の利用範囲と食い違う文面が出る可能性があります。

参考文献の書式は、全部を見ずに型を見る

参考文献の書式は、件数が多く、Claudeにすべて直させたくなる箇所です。ここは直す前に、まず点検の範囲を絞ります。

  1. 規定が示す形式(番号式か著者年式か、著者名の略し方、雑誌名の略記)を1段目の表に入れる
  2. 原稿の参考文献リストから、種類の違うものを数件ずつ(雑誌論文、書籍、Web資料など)選び、規定の形式に合うかをClaudeに判定させる
  3. 型の不一致が見つかれば、同じ型のものを著者が全件直す

全件をClaudeに書き換えさせると、書誌情報(巻号、ページ、年)を取り違える危険があります。型の判定にとどめ、書誌情報そのものは元の文献と突き合わせます。本文中の引用と参考文献リストの対応を点検する手順は、卒論を例にしたClaudeで卒論の参考文献と本文引用を点検する手順がそのまま使えます。

知識ベースが大きくなったときの落とし穴

有料プラン(Pro、Max、Team、Enterprise)では、プロジェクトの知識がコンテキストウィンドウの上限に近づくと、RAGモードに自動で切り替わります。RAGモードでは、全文を読み込まずに「プロジェクト知識検索ツール」で関連箇所を探して答えるため、容量は最大10倍まで広がります。切り替わると、プロジェクトにその表示が出ます。

投稿規定が長く、補足資料や過去の版の原稿も置いてあると、RAGに入りやすくなります。RAGでは、検索で拾われなかった条項が点検から落ちる可能性があります。次の対策で補います。

  • 2段目の点検では、規定の全条項を表の行として固定し、1行ずつ判定させる。規定を探させる使い方をしない
  • ファイル名は中身が分かる名前にし、聞くときに文書名を指定する(「manuscript_v3.pdf の方法の節」のように)
  • 過去の版の原稿は、プロジェクトから外すか、ファイル名に版を入れて最新版が一目で分かるようにする

未公開の原稿を置く前に確認すること

投稿前の原稿は、未公開の資料です。Team・Enterpriseプランでは、プロジェクトを組織のメンバーと共有できます。権限は「閲覧のみ」と「編集可」の2段階で、管理者が共有を止めている組織では使えません。作成時の公開範囲には、自分と招待したメンバーだけの「非公開」と、組織全体で使える設定があります(管理者が許可している場合)。

投稿先の規定や所属機関の方針が、未公開の原稿を生成AIに入力することを制限している場合があります。入力してよいかは、投稿先と所属機関の規程で決まります。プロジェクトに原稿を置く前に、その点を確認してください。査読の段階に進んだあとの回答書づくりはClaudeで査読コメントへの回答書を下書きするで扱っています。

よくある質問

投稿規定が英語でも、日本語の表にできるか

できます。規定の原文引用は英語のまま残し、要求事項の列だけを日本語にするよう指示すると、後で規定のページと照らしやすくなります。数値や用語の訳は、著者が原文と見比べて確かめます。

規定のPDFが複数ある場合はどうするか

雑誌の本体の規定と、出版社共通のポリシーのように複数ある場合は、ファイル名の先頭に種類を付けて両方置きます。1段目の表には、各行の出典ファイル名の列を足し、どちらの規定に基づく要求かを分かるようにします。両者の要求が食い違うときは、投稿先の編集部に問い合わせて決めます。

再投稿や別の雑誌への投稿のときはどうするか

同じ論文を別の雑誌に出すなら、規定のファイルと要求事項の表だけを差し替えます。原稿のファイルは同じプロジェクトに残せます。古い雑誌の表は、ファイル名に雑誌名を入れて外すか、別のプロジェクトに退避します。2つの雑誌の要求が混ざった表を使うと、判定がずれます。

英語の原稿の読み込みに不安があるときは

英語の論文PDFをClaudeで読む際の注意は英語論文PDFをClaudeで読む方法にまとめています。点検の結果は、必ず原稿の引用とページ番号で裏を取ってから採用します。

まとめ

投稿規定の点検は、規定を要求事項の表に分解する段と、その表で原稿を判定する段に分けると、Claudeの答えを引用で検証できる形になります。

特に効くのは、数え方の定義を表の列に入れることと、判定に「判定不能」を設けることです。この2つがないと、語数が「合」なのに規定の数え方では超過、という食い違いが残ります。最後の合否は、規定のページの最新版と原稿を見比べて、著者が決めます。

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