Claudeで論文の生成AI利用開示文を下書きする手順 — 記載位置と書く3要素
論文に入れる生成AI利用の開示文を、Elsevierの規定とICMJEの勧告に沿ってClaudeで下書きする手順。記載位置、書く3要素、利用記録の残し方、事実と食い違わせない照合まで。
論文の生成AI利用開示文は、書く場所と書く要素が出版社の規定で決まっています。Claudeに任せられるのは、決まった型に自分の利用記録を流し込む下書きまでです。何に使ったかを決めるのは著者で、Claudeは利用の実態を知りません。
この記事では、Elsevierのジャーナル向けポリシーとICMJEの勧告を物差しに、開示文を起こす手順を示します。先に利用記録を作り、それを材料にClaudeで下書きし、最後に記録と突き合わせます。
開示文に必要なのは「ツール名・目的・人の確認」の3要素
Elsevierのジャーナル向けポリシーは、開示文に3つを求めています。使ったツールの名前、使った目的、出力を確認して内容に責任を持つこと、の3点です。ICMJEの勧告は、AIの利用を投稿時に開示させ、使い方をカバーレターと本文の該当する節の両方に書くよう求めています。
Elsevierが示す雛形は次の1文です。
During the preparation of this work the author(s) used [NAME OF TOOL / SERVICE] in order to [REASON]. After using this tool/service, the author(s) reviewed and edited the content as needed and take(s) full responsibility for the content of the publication.角括弧は2つだけです。ツール名と目的を埋め、後半の確認文はそのまま残します。この雛形が使えるかどうかは投稿先次第なので、まず位置と要件を表で押さえます。
| 出典 | 書く場所 | 書く内容 |
|---|---|---|
| Elsevierジャーナル | 書く場所原稿末尾、参考文献の直前の独立した節 | 書く内容ツール名・目的・確認と責任 |
| Elsevier書籍・委託コンテンツ | 書く場所原稿末尾、参考文献の直前。見出し指定あり | 書く内容ツール名・目的・人の監督の範囲 |
| ICMJE | 書く場所カバーレターと、本文の該当する節 | 書く内容どのように使ったか |
| 研究手法としてのAI利用 | 書く場所Methodsの節 | 書く内容再現できる形での詳細 |
Elsevierのジャーナル向けでは、この節の見出しは「Declaration of generative AI and AI-assisted technologies in the manuscript preparation process」といった形です。書籍向けは「in the writing process」で、表題の語尾が違います。開示文は公開される論文に載ります。表題の一語まで自分の投稿先の指定に合わせてください。
開示が要る使い方と、要らない使い方
先に見るのは、そもそも書く必要があるかどうかです。Elsevierのジャーナル向けポリシーでは、綴り・文法・句読点の基本的なチェックには開示が要りません。ただし、AIが文の構造や一部の構成を実質的に変えたときは開示が必要です。
Claudeを使った作業を、この線引きに当てはめると次のようになります。
| Claudeでやったこと | Elsevierジャーナル向けの扱い |
|---|---|
| 誤字や助詞の修正だけ | Elsevierジャーナル向けの扱い開示は不要(基本的なチェック) |
| 文の構造や段落の並びを書き換えさせた | Elsevierジャーナル向けの扱い開示が必要 |
| 自分で書いた日本語を英訳させた | Elsevierジャーナル向けの扱い開示が必要。両言語と専門内容を分かる人が確認する |
| 先行研究の要約を作らせた | Elsevierジャーナル向けの扱い使い方としては例示されている。開示対象 |
| 参考文献の整理や選別をさせた | Elsevierジャーナル向けの扱い参考文献の選択・照合・生成・編集に使ったなら開示 |
| 解析コードを書かせた | Elsevierジャーナル向けの扱いMethodsに詳しく記載 |
| 図を作らせた | Elsevierジャーナル向けの扱い種類による。図の節で扱う |
参考文献管理ソフトの基本機能だけを使った場合は、開示は要りません。MendeleyやEndNoteの生成AI機能を使った場合は別です。選択や編集にAI機能を使ったなら、宣言に含めることになります。
障害に関する支援技術に組み込まれたAI機能を、アクセシビリティの目的だけで使った場合は、開示不要と明記されています。ここは例外なので、Claudeを一般の執筆補助で使ったときには当てはまりません。
図とコードは開示文では足りない
図と解析コードは、宣言の節に1行書けば済む話ではありません。
Elsevierのジャーナル向けポリシーでは、説明用の図(フローチャートや概念図など)に生成AIを使うことは認められ、図のキャプションと宣言の両方に書きます。データから導いたグラフは、再現できる手法で作り、Methodsに記載します。顕微鏡像やウェスタンブロットなど一次の研究画像は、AIでの作成・加工が認められていません。
グラフィカルアブストラクトに汎用の生成AIは使えません。書籍向けのポリシーは、画像の作成・加工を原則認めておらず、研究手法に含まれる場合だけが例外です。ジャーナルと書籍で扱いが違うので、投稿先の種別を確かめてください。論文の図を探す作業はClaudeのBioRenderコネクタで論文の図を探して作る手順で扱っています。
コードは、AIで書いたり編集したりした場合にMethodsで詳しく宣言します。コードの体裁を整えただけでも、人の管理のもとで行い、宣言に載せるとされています。
手順1: 作業しながら利用記録を残す
開示文の質は、記録の質で決まります。Elsevierは、使ったツールとモデル、使い方を別に記録しておくよう求めています。ツールが出すログの保存、プロンプトと出力の保存、確認・編集の証拠(変更履歴や注釈付きの原稿)を残すことが例として挙がっています。編集者に求められたら、提出できる状態にしておく必要があります。
記録は表1枚で足ります。列は次の6つです。
| 列 | 書くこと |
|---|---|
| 日付 | 書くこと作業した日 |
| ツールとモデル | 書くこと「Claude」と、画面のモデル選択で見えるモデル名 |
| 対象 | 書くこと原稿のどの節、どの文か |
| 依頼内容 | 書くこと校正・要約・英訳・構成案など |
| 採用した範囲 | 書くこと全文採用・一部採用・不採用 |
| 確認方法 | 書くこと何と照らして確かめたか |
モデル名の記録は、Elsevierのテキスト向けの宣言では求められていません。図の節ではモデル名・版・提供元が求められています。後から聞かれたときに答えられるよう、テキストのときも残しておく運用が安全です。これは規定の要求ではなく、筆者の勧めです。
利用記録は著者が付けるものです。Claudeに「この会話でやったことを表にして」と頼むと、会話内の依頼は拾えます。それでも、別の会話や他のツールでの作業、採用したかどうかは、Claudeには分かりません。Claudeがまとめたものはメモにとどめ、採用範囲の列は著者が埋めてください。
手順2: 記録と規定の原文をClaudeに渡して下書きさせる
記録がそろったら、Claudeに下書きを頼みます。材料は2つです。投稿先の規定の該当部分を原文のまま貼ったものと、手順1の記録です。投稿前の原稿そのものは貼りません。
指示には、書いてよい範囲を絞る一文を入れます。Claudeは足りない情報を自然な文で補いがちなので、補うことを禁じておきます。
次の2つを材料に、論文の生成AI利用の開示文を英語で下書きしてください。
【規定の原文】
(投稿先の該当箇所を貼る)
【利用記録】
(手順1の表を貼る)
条件:
- 規定の雛形がある場合は、その文型を保つ
- ツール名と目的は、利用記録に書かれていることだけで埋める
- 記録に無い用途は書かない。足りない情報は[要確認]と置く
- 最後に、記録のどの行が文のどの部分になったかを対応表にする例えば、次のような下書きが返ってくる想定です。これは公式の雛形に沿った例示で、Claudeの実際の出力ではありません。
During the preparation of this work the author(s) used Claude (Anthropic) in order to improve the language and readability of the Discussion section and to draft an English translation of the Japanese-language manuscript. After using this tool/service, the author(s) reviewed and edited the content as needed and take(s) full responsibility for the content of the publication.対応表を一緒に出させるのが肝です。文のどの部分が記録のどの行に由来するかが見えれば、記録に無い語が混じっていないかを目で追えます。
Projectsに投稿先の規定を置いている場合は、規定の貼り付けを省けます。ただし、未公開原稿を生成AIに入力してよいかは、投稿先と所属機関の規程で決まります。Elsevierは、使うツールの規約を読んで、入力した内容が保持されないか、モデルの学習に使われないか、出版に必要な権利が得られるかを確かめるよう求めています。Claudeの利用規約と学習設定の確認はClaudeの利用規約で商用利用はどこまで可能かにまとめてあります。
手順3: 下書きを記録と突き合わせる
下書きの確認は、Claudeに再度やらせ、さらに人が最終判断します。新しい会話で、記録と開示文の2つだけを渡します。
次の利用記録と開示文を突き合わせてください。
1. 開示文にあって記録に無い用途や数量を列挙する
2. 記録にあって開示文に無い用途を列挙する
3. 「reviewed and edited」と書かれた内容に対応する確認方法が記録にあるか
判断はせず、差分だけを出してください。差分の判断は著者です。特に3番目が重要です。雛形の後半は、著者が出力を確認し、内容に全責任を負うと宣言する文です。書いた以上、確認は実際に行われている必要があります。
確認の中身は、Elsevierの規定から次のように具体化できます。
- 引用した文献を原典で1件ずつ確かめる。AIが出す参考文献は誤りや捏造を含むことがある
- 数値と主張を、自分の表・図・一次データと突き合わせる
- 自分の分析・解釈・結論が文章に反映されているか読み直す
参考文献について、Elsevierのジャーナル向けポリシーは、捏造された文献の混入が原稿の却下につながりうると明記しています。確認欄に「全件原典で照合」と書けるかどうかが、宣言を真実にする分かれ目です。
開示文は、具体的に書くほど確認しやすい
曖昧な書き方
AIを使用した。
記録と対応する書き方
Claude (Anthropic) was used to improve the language and readability of the Discussion section. The authors verified all references against the original sources.
開示を省いたときに起きること
ICMJEの勧告は、AI利用の不開示が是正措置の対象になり、状況によっては不正行為とみなされうると述べています。AIを著者に挙げることも認められていません。責任を取れないからです。出力にある盗用や引用の不備は、著者が責任を負います。AI生成物を一次資料として引用することも認められていません。
Elsevierの書籍向けポリシーも、AIを著者や共著者として挙げることを認めていません。AIエージェントやディープリサーチの出力を原稿の本文としてそのまま使うことも認めておらず、出力は着想の材料にとどまります。ジャーナル向けでも、AIは著者自身の科学的判断や分析の代わりにならないとされています。
よくある質問
日本語で書く論文でも英語の宣言文が必要ですか
雛形は英語ですが、言語の指定は投稿先の規定で決まります。日本語の学会誌で独自の様式がある場合は、そちらに従います。決まりがなければ、Claudeに指定言語で書かせたうえで、記録との対応表は日本語で出させると照合しやすくなります。
科研費の申請書にも同じ文を使えますか
使えません。科研費の申請書での生成AIの扱いは、科研費の申請書に生成AIを使える条件と利用料の支払いにあるように、公募要領の条件に従う別の話です。ここで扱ったのは投稿論文の本文に入れる開示文です。
開示文もClaudeの出力のまま載せてよいですか
文面は下書きにとどめ、載せる前に自分の言葉で確定します。使ったツール・目的・確認は著者だけが知る事実だからです。
まとめ
開示文は短い文ですが、中身は手順1の記録がすべてです。記録があれば下書きは数分で済み、無ければClaudeにもどんな文が正しいのか分かりません。
投稿の直前に慌てて書くと、やった作業と宣言がずれます。作業の最中に表へ1行ずつ足し、投稿時にそれを雛形へ移す流れにしておくと、規定が変わっても文面だけを差し替えられます。