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Claude Projectsで就業規則の質問に回答案を返す — 人事向け運用

Claude Projectsで就業規則の質問に回答案を返す — 人事向け運用

従業員から届く就業規則の質問に、規程をProjectsの知識に置いて条文番号つきの回答案を作らせる運用です。Claudeに任せる範囲と人が決める線引きも示します。

就業規則の質問への回答案は、規程の本体と別冊をProjectsの知識に置き、プロジェクト指示で「条文番号つきで根拠を示す」「規程に無いことは無いと書く」を決めておくと、人事担当者の下書きとして使えます。回答案を作るのはClaude、従業員へ返すかどうかと個別事情への当てはめは人事担当者です。この線引きを先に決めておくと、運用が崩れにくくなります。

「有給は半日単位で取れるか」「子の看護のための休暇は何日か」「副業の届出はどこに出すか」。こうした問い合わせは同じ規程の同じ条文に戻ってくることが多く、担当者は毎回、条文を開いて読み直しています。この条文を探して文面に直す部分が、Claudeに任せやすい作業です。

従業員の側が自分の就業規則PDFを読ませる使い方は、就業規則PDFをClaudeに読ませて副業規定を確認する方法にあります。本稿は逆の立場で、質問を受ける人事部門が回答案を作る運用を扱います。

規程をProjectsの知識に置くと何が変わるか

Projectsは、チャット履歴と知識ベースを持つ独立した作業スペースです。知識ベースに置いた資料は、そのプロジェクト内のすべてのチャットで文脈として使われます。資料を毎回チャットに添付し直す必要がなくなるのが、就業規則との相性のよい点です。

押さえておきたい仕様は次の4つです。

仕様

規程運用で効くProjectsの仕様

  • 知識はチャット間で共有されない

    プロジェクト内でも、チャットの文脈は別のチャットに引き継がれません。引き継ぎたい情報は、知識ベースに追加します。

  • プロジェクト指示は全チャットに効く

    「Set project instructions」で書いた指示は、プロジェクト内のすべてのチャットで使われます。回答の型はここに置きます。

  • 知識が増えるとRAGに切り替わる

    有料プランでは、知識がコンテキストウィンドウの上限に近づくと自動でRAGが有効になり、容量は最大10倍に広がります。

  • プロジェクトごとにメモリが分かれる

    プロジェクトのメモリは他のプロジェクトと別です。完全に分けたいときは、プロジェクトのページで「Use account memory」をオフにします。

無料アカウントでもProjectsは使えますが、作れるのは5つまでです。RAGによる容量の拡張は有料プラン(Pro、Max、Team、Enterprise)の機能です。就業規則の本体に賃金規程、育児・介護休業規程、出張旅費規程と別冊が増えていく会社では、有料プランが前提になります。

RAGが有効になると、Claudeはプロジェクト知識の検索ツールで関連する箇所だけを取り出して答えます。全文を一度に読み込む方式とは違うため、質問の書き方が回答の質に響きます。この点は後の節で運用に落とします。

知識に置く資料を決める

置く資料は、従業員の質問に根拠を示せるものに限ります。目安は次のとおりです。

資料置く理由置く前の確認
就業規則の本体置く理由回答の根拠となる条文置く前の確認最新の改定版か
賃金規程・育児・介護休業規程などの別冊置く理由本体が「別に定める」とする内容置く前の確認本体の条文との対応
規程の改定履歴置く理由いつから何が変わったかの説明置く前の確認施行日の記載
社内の申請様式の一覧置く理由手続きの案内に使う置く前の確認様式の最新版か

回答案の根拠にしない資料は置きません。過去の個別相談の記録や従業員の個人情報を知識に入れると、回答案に他人の事情が混ざる原因になります。個別事情は、質問のたびにチャットへ書き込む扱いにします。

ファイル名には、規程名と施行日を入れます。RAGの案内にも、わかりやすいファイル名が検索の精度に役立つとあります。「就業規則_本則_2026-04-01施行.pdf」のように、版が名前から読める形にしておくと、旧版が紛れ込んだときにも気づけます。

プロジェクト指示に回答の型を書く

プロジェクト指示は、全チャットに効く共通ルールです。人事担当者の読み方に合わせて、根拠の出し方と、規程にないときの振る舞いを決めておきます。例えば次のような書き方です。

あなたは人事担当者の下書きを手伝います。従業員からの質問に対する
回答案を、プロジェクト知識の規程だけを根拠に作成してください。
 
【回答案の形式】
1. 結論(1〜2文)
2. 根拠(規程名・条文番号・条文の該当部分の引用)
3. 手続き(申請先・様式・期限。規程に記載がある場合のみ)
4. 人事担当者への確認事項(質問者の個別事情で結論が変わる点)
 
【守ること】
- 規程に記載がない事項は「規程に記載がありません」と書き、推測で補わない
- 本則と別冊で定めが食い違うときは、両方の条文を示して指摘する
- 条文番号は知識の原文から引用し、記憶で書かない
- 賃金の額や日数の計算は、計算式と使った数値も示す
- 回答案は人事担当者が確認する下書きであり、従業員へ送る文面ではない

ポイントは3つあります。1つ目は、根拠の欄に条文の引用を求めることです。引用があれば、担当者は原文と見比べて数秒で確かめられます。2つ目は、4番目の「人事担当者への確認事項」です。これが個別事情を人に戻す出口になります。3つ目は、規程にない事項を推測で補わせないことです。

この指示は例示です。社内の規程の構成や、回答の宛先(従業員本人か、上長か)に合わせて書き換えてください。

質問から回答案までの流れ

実際の運用は、質問の貼り付けから始まります。質問文は、そのままチャットに貼ります。個人を特定する情報は、回答案に必要な範囲に絞ります。

手順

回答案ができるまで

  1. 1

    質問を貼り、論点を絞らせる

    質問文を貼り、「どの規程のどの条文が関係するか、先に条文番号だけ挙げてください」と頼みます。

  2. 2

    条文を引用させる

    挙がった条文の該当部分を、原文のまま引用させます。引用が出てこない条文は、根拠として使いません。

  3. 3

    回答案を書かせる

    プロジェクト指示の形式で、結論、根拠、手続き、確認事項の順に回答案を作らせます。

  4. 4

    人事担当者が原文と照合する

    引用された条文を知識の原文と見比べ、確認事項に挙がった個別事情を本人に聞いて、結論を確定します。

手順1を独立させるのは、RAGの特性への備えです。関連箇所の検索で答える以上、最初から「回答案を書いて」と頼むより、まず条文を特定させたほうが、拾い漏れに気づきやすくなります。質問の中に規程名や条文の見出し語を入れるのも有効です。RAGの案内には、特定の文書を名前で指定すると検索が絞られるとあります。

質問の例と、回答案の骨格の例を並べます。これは書式を示すための例示で、実際の出力ではありません。

項目例
質問例子どもの発熱で急に休むとき、有給と別に使える休暇はありますか
先に挙げさせる条文例休暇の章、子の看護に関する条文、別冊の育児・介護休業規程の該当条
回答案の結論例規程の定める休暇の名称・対象・日数を条文の引用つきで示す
確認事項例子の人数・年齢、勤続期間、取得済み日数など、本人の事情で変わる点

結論の欄に日数を直接書かせるのではなく、「条文の引用つき」と指定している点に注目してください。数字は条文の引用と並んでいれば、担当者がその場で検算できます。

回答案をもう一段階チェックさせる

回答案ができたら、同じチャットで検証をかけます。作らせた本人に点検させるより、「根拠だけ」を抜き出させたほうが、飛んだ条文に気づきやすくなります。

作成した回答案の根拠欄の条文を一つずつ取り上げ、
プロジェクト知識の原文と食い違う点がないか確認してください。
- 条文番号は実在するか
- 引用は原文と一字一句同じか
- 別冊に例外や読み替えの定めがないか
問題があれば、該当箇所と原文を並べて示してください。

この検証もClaudeの出力なので、担当者の確認を置き換えるものではありません。とはいえ、引用の食い違いを担当者が読む前に洗えるため、確認の負担は軽くなります。

Claudeに任せる範囲と、人が決める範囲

回答案づくりの価値は、条文探しと文面化を肩代わりすることにあります。一方で、規程の文言を個別の事情に当てはめる判断は、人事担当者の仕事です。次の表を運用ルールの出発点にしてください。

質問の種類Claudeに任せる人事担当者が決める
規程の内容を尋ねる(休暇の日数、申請先)Claudeに任せる条文の特定、引用、文面化人事担当者が決める引用が原文と合うかの確認
手続きを尋ねる(様式、期限)Claudeに任せる規程に記載のある手続きの整理人事担当者が決める記載のない運用慣行の扱い
本人の事情に当てはめる(私の場合は取れるか)Claudeに任せる結論が分かれる要件の洗い出し人事担当者が決める事情の事実確認と結論
規程の解釈が割れる(文言があいまい)Claudeに任せる該当条文と考えうる読み方の並記人事担当者が決めるどの読み方を会社の見解とするか
規程にない事項(新しい制度への要望)Claudeに任せる「規程に記載がない」旨の明示人事担当者が決める制度化の要否、社労士や弁護士への相談

上から下に行くほど、人の判断の比重が増えます。3行目以降では、回答案は結論の候補を並べる役割に留めます。

もう一つ、規程の外にあるものにも注意が必要です。労働基準法第106条は、就業規則のほかに、労使協定や労使委員会の決議も周知の対象に挙げています。36協定のように、規程の本体には載らない協定が回答の前提になる質問もあります。知識に置いた規程だけでは答えが閉じない質問は、確認事項に「協定の有無と内容」を書かせると、漏れにくくなります。協定を含めた規程の整備は、Claudeで36協定届とモデル就業規則のたたき台を作るでも扱っています。

共有範囲を決める

Team・Enterpriseプランでは、プロジェクトを組織内で共有できます。権限は2段階です。

  • Can view: プロジェクトの内容、知識、指示を見て、チャットできる。編集はできない
  • Can edit: プロジェクト指示と知識を変更でき、メンバーも管理できる

規程の差し替えを担当する人にはCan edit、回答案を作るだけの人にはCan viewを与えると、知識の書き換え事故を避けられます。プロジェクトの作成時には、非公開(招待した人だけ)と組織全体への公開が選べます。人事のプロジェクトは、非公開から始めて必要な人だけを招待する形が無難です。

共有しても、プロジェクト内のチャットは共有されません。他のメンバーのチャットは、本人が共有しない限り見えません。担当者Aが作った回答案を担当者Bが見たいときは、チャットの共有リンクを使います。共有リンクは、共有した時点までのメッセージのスナップショットで、その後のメッセージは非公開のままです。更新するときは「Update」を押します。

管理者がプロジェクトの共有をオフにしている組織では、新しいメンバーを追加できません。公開プロジェクトも非公開に戻ります。共有ができないときは、管理者に問い合わせてください。

規程を改定したときの更新

運用で一番の落とし穴は、旧版の規程が知識に残り続けることです。改定のたびに、次の順で入れ替えます。

  1. 新しい版のファイルを、施行日つきの名前で追加する
  2. 旧版のファイルを知識から外す(必要なら別のアーカイブ用プロジェクトに移す)
  3. 改定履歴のファイルに、変更点と施行日を追記する
  4. 代表的な質問を2〜3件流し、回答案の根拠が新版の条文になっているか確かめる

旧版が必要な質問もあります。改定前の期間の出来事を尋ねられる場合です。その場合は、旧版を入れた別のプロジェクトで回答案を作ると、新旧の条文が混ざりません。

改定そのものの手続きにも、人事の仕事が続きます。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則の作成と届出、変更時の届出を求めています。第90条は、作成・変更時に労働者の過半数で組織する労働組合、またはそれがなければ労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことを求めています。届出に添える意見書の点検は、就業規則の変更届と意見書をClaudeで点検する手順で詳しく扱っています。

よくあるつまずき

運用を始めてから出やすい症状を、原因別にまとめます。

落とし穴

条文番号が、知識の原文と違う

記憶に頼った書き方になっているサインです。プロジェクト指示に「条文番号は知識の原文から引用する」と書き、手順2で原文の引用を先に出させます。

落とし穴

「全部の条文で該当するものを挙げて」と頼むと漏れる

RAGが有効なプロジェクトは、関連箇所の検索で答えます。網羅したい質問は、章や規程名で範囲を区切って複数回に分けて聞きます。

落とし穴

前のチャットで決めた解釈が、次のチャットで使われない

プロジェクト内でも、チャットの文脈は引き継がれません。会社として確定した解釈は、「規程解釈メモ」のようなファイルにして知識へ追加します。

落とし穴

本人の事情を書き込みすぎる

回答案に必要なのは、結論が分かれる要件に関わる事実だけです。氏名や病名などは、回答案づくりの時点では伏せても成立します。

4つ目の項目は、機微な情報の扱いに関わります。社内のルールとして、チャットに書いてよい個人情報の範囲を、あらかじめ決めておくと迷いません。

新しい版のProjectsとの関係

Projectsには、新しい版がベータで段階的に展開されています。新しい版では、プロジェクトは一つの会話になり、Claudeが作業を並列のスレッドに分けてクラウドで進めます。展開はClaude Codeを使うProとMaxの一部のユーザーから始まっており、チャット、Cowork、Team、Enterpriseは順次です。

本稿で扱ったのは、現行のプロジェクト(知識ベースとプロジェクト指示を持つ形)です。TeamやEnterpriseで人事部門が使う場合は、この現行の形が対象になります。新しい版へ移ると、既存のプロジェクトの指示、ファイル、チャット履歴、スケジュールされたタスクは引き継がれるとされています。

まとめ

就業規則の質問対応で、時間を食っているのは判断より前の「条文を探す」「文面にする」の部分です。ここをProjectsに任せ、判断は人事担当者に残す。この分担が、回答案づくりの出発点です。

最初の一歩は小さくて構いません。本則と、問い合わせの多い別冊を1つだけ知識に置き、プロジェクト指示に条文の引用ルールを書き、過去に答えた質問を3件流して、担当者が書いた回答と見比べます。食い違いの原因がファイル名なのか、指示の書き方なのか、規程自体のあいまいさなのか。その切り分けが見えてくれば、対象の規程を広げる準備が整います。

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