Claudeで設備の取扱説明書・保守マニュアルを保全の問い合わせ窓口にする手順
設備メーカーの取扱説明書と保守マニュアルのPDFをClaudeのProjectsに置き、保全担当の問い合わせ窓口にする手順です。ページ番号つきで答えさせる指示文と、図面・表の読み取りを原本で確かめる方法をまとめます。
設備の取扱説明書や保守マニュアルは、PDFで数十から数百ページになります。夜間に設備が止まったとき、目次から該当章を探す時間が復旧の足を引っ張ります。ClaudeのProjectsにそのPDFを置いておけば、保全担当は「E-23のアラームが出た。確認項目は」と聞くだけで、該当箇所とページ番号つきの答えを受け取れます。
この記事では、資料の整え方、ページ番号つきで答えさせる指示文、図面・表の読み取りを原本で確かめる手順、保全担当への配り方を順に説明します。1台分の家電マニュアルを読む使い方は家電の取扱説明書をPDFでClaudeに読ませる手順にあります。ここでは、複数の型式・複数の版が並ぶ設備の窓口に絞ります。
窓口に置く資料と置かない資料
置くのは、メーカーが発行した文書です。取扱説明書、保守・点検マニュアル、部品表、故障・アラーム対応表がこれに当たります。
置かないほうがよいのは、現場の判断が入る記録と更新の速い文書です。
| 区分 | 例 | 扱い |
|---|---|---|
| 置く | 例取扱説明書、保守マニュアル、アラーム一覧、部品表 | 扱い型式と版を名前に入れてアップロード |
| 慎重に置く | 例自社の点検手順書、作業標準 | 扱い改訂のたびに差し替える担当を決める |
| 置かない | 例点検実績、故障履歴、個人名の入る記録 | 扱い集計は別の手段で行う |
故障履歴の集計と優先度づけは、Claudeの定期タスクが得意とする仕事です。Coworkで設備保全の優先度を週次で見直す手順で扱っています。マニュアル検索の窓口は、その記録とは別のプロジェクトに分けます。
Projectsの上限と、PDFの置き方
Projectsは、専用のチャット履歴と知識ベースを持つ作業スペースです。プロジェクトに置いた文書は、そのプロジェクト内のすべてのチャットで文脈として使われます。
アップロードの上限は、チャットに添付する場合とプロジェクトの知識に置く場合で違います。
チャット添付とプロジェクトの違い
チャットに添付
- 1ファイル500MBまで、1チャット20ファイルまで
- PDFは1,000ページまで
- 100ページ以下のPDFは、文字に加えて図やグラフも解析される
プロジェクトの知識
- 1ファイル30MBまで
- ファイル数は無制限だが、中身がコンテキストウィンドウに収まる必要がある
- 内容はテキストの抽出が基本(マルチモーダル対応のPDFを除く)
保守マニュアルは図面を多く含むため、30MBを超えやすい資料です。上限に当たったら、章ごとに分割します。分割は上限回避だけでなく、検索の精度にも効きます。
有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)では、知識が上限に近づくとRAGモードに自動で切り替わり、容量は最大で約10倍に広がります。RAGでは、Claudeが必要な箇所を検索して拾います。仕組みの詳細はClaude ProjectsのRAG検索の仕組みと全文投入との違いにあります。設備マニュアルの窓口では、次の点が効いてきます。
- ファイル名に型式・版・文書の種類を入れておくと、検索の手がかりになる
- 質問にもファイル名や型式を書くと、狙った資料に絞られる
ファイル名の例を挙げます。命名はあくまで一案で、社内の文書管理ルールがあれば合わせて構いません。
取説_充填機FX-200_第3版_2024-04.pdf
保守_充填機FX-200_第3版_2024-04.pdf
保守_充填機FX-200_第2版_2019-10.pdf
部品表_コンプレッサCP-55_2023-09.pdf
アラーム一覧_コンベアCV-8_第5版.pdf同じ設備の旧版を残すときは、版が名前で区別できるようにします。旧版を消し忘れると、質問の答えに古い版の記述が混ざるためです。現場に旧型が残っていないなら、旧版は置かない運用が安全です。
手順: 窓口プロジェクトを立ち上げる
窓口を立ち上げる5つの手順
- 1
PDFを整える
型式別・文書の種類別にファイルを分け、前節の例のように名前を付けます。30MBを超えるものは章で分割します。
- 2
プロジェクトを作る
claude.ai/projectsを開き、右上の「+ New Project」を押して名前と説明を入力します。ここで入れた名前と説明はClaudeから参照できないため、設備の情報はファイル名か指示文に書きます。
- 3
PDFを知識に追加する
プロジェクトページ右側のナレッジ欄にある「+」から、整えたPDFをアップロードします。
- 4
指示文を保存する
「Set project instructions」を押し、次節の指示文をもとに書いて「Save instructions」を押します。
- 5
手元の資料でテストする
答えを自分で知っている質問を3〜5個投げ、答えとページ番号を原本と突き合わせます。図面や表の質問も含めます。
Freeプランで作れるプロジェクトは5つまでで、RAGは使えません。複数の設備を1つの窓口に置くなら、有料プランが前提になります。
ページ番号つきで答えさせる指示文
保全の現場で一番困るのは、もっともらしいが根拠のない答えです。指示文では、根拠の提示を必須にし、資料にないことは答えさせない方向に絞ります。次は書き方の一例です。
あなたは製造設備の保全担当を補助する問い合わせ窓口です。
- プロジェクト知識にある資料だけを根拠に答えます。資料にないことは「資料に記載なし」と答え、推測で補いません。
- 回答の末尾に、根拠の「ファイル名」と「PDFビューアー上のページ番号」を列挙します。
- 質問に型式の指定がないときは、先に型式を聞き返します。
- 同じ設備に複数の版があるときは、どの版を根拠にしたかを明記します。
- 感電・巻き込み・高温・圧力・薬液など、安全に関わる手順を答えるときは、該当ページの原本を開いて確認するよう必ず添えます。
- 表の数値(トルク、すきま、交換周期など)は、読み取った行と列の見出しをあわせて書きます。ページ番号の流儀は、PDFビューアーの通し番号に揃えます。公式ヘルプも、ページを指すときはPDFビューアーに表示される番号を使うよう勧めています。誌面に印刷されたページ番号は、表紙や目次の分だけずれることがあるためです。
指示文を書いても、誤りが出なくなる保証はありません。指示文は誤りを減らす手段で、原本の確認の代わりにはなりません。
質問の型: 症状、手順、部品
保全担当の質問は、大きく3種類に分かれます。型を決めておくと、答えの検証も楽になります。
| 質問の型 | 例 | 検証のポイント |
|---|---|---|
| 症状から引く | 例FX-200 でアラームE-23。原因と確認項目は | 検証のポイント根拠ページのアラーム表を開き、コードの一致を見る |
| 手順を引く | 例FX-200 のシール部の交換手順を、停止から再起動まで | 検証のポイント手順の抜けと順序を原本と比べる |
| 部品・数値を引く | 例CP-55 のフィルタの品番と交換周期は | 検証のポイント部品表の行と列を直接確認する |
症状から引くときは、アラームコードを質問にそのまま書きます。コードが資料の表と一致すれば、検索で拾われやすくなります。逆に、「変な音がする」のような曖昧な質問は、マニュアルに該当する記述がなく「資料に記載なし」と返るのが正常な動きです。
図面・表の読み取りは原本で確かめる
窓口の使い方で最も注意が要るのは、図面と表です。理由は、取り込みの経路で読める範囲が変わるからです。
- チャットに添付した100ページ以下のPDFは、文字に加えて図やグラフも解析される
- 101〜1,000ページのPDFは、文字だけが処理され、図は解析されない
- プロジェクトの知識は、テキストの抽出が基本で、例外はマルチモーダル対応のPDFだけと書かれている
- PDF以外の文書(WordやHTMLなど)は、文字だけが抽出され、埋め込まれた画像は読まれない
つまり、窓口に置いたPDFで、配管図や配線図、部品の分解図の「どの線がどこにつながるか」まで正しく答えられるとは限りません。表の数値も、行と列の対応を原本で見ないと確かとは言えません。
落とし穴
図の中にしかない情報は、答えの材料にならない範囲がある
図が解析されない経路では、分解図の部品番号や配線図の線の接続は、答えの材料に入りません。本文の説明文だけで組み立てた答えは、もっともらしく見えても図面と食い違う余地があります。図に関わる質問は、原本のページで必ず確かめます。
確かめ方は、導入時と運用時の2段階に分けます。
- 導入時: 図面や表の中にしか答えがない質問を、3〜5個用意する。例として、配線図のある端子の番号、表の中の特定のトルク値など。窓口の答えと原本を並べ、読み取れているかを確かめる。読み取れていなければ、図面を含む章だけを取り出す。
- 運用時: 図面や数値の質問は、答えに添えられたページ番号を開いて、目で照合する。指示文の「原本を開いて確認するよう添える」は、この習慣を回答に埋め込む役目を持つ。
図面を含む章が100ページ以下に収まるなら、その章をチャットに直接添付する方法があります。図やグラフまで解析される範囲に入るためです。窓口プロジェクトには本文中心の資料を置き、図面の質問は章を添付した別チャットで聞く、という二本立てにもできます。
分割した章のPDFは、ページ番号が1から振り直されます。回答のページ番号が「分割後のファイルのページ」なのか「元のマニュアルのページ」なのか、ファイル名に章の範囲を入れておくと混ざりません。
保全担当に配る
チームで使うなら、TeamまたはEnterpriseプランでプロジェクトを共有します。プロジェクトを開き、名前の右の「Share project」から、名前やメールアドレスで保全担当を追加します。権限は2段階です。
- Can view: プロジェクトの内容・知識・指示文を見て、プロジェクト内でチャットできる。編集はできない
- Can edit: 指示文と知識を変更し、メンバー設定も更新できる
窓口として配るだけなら、多くの人はCan viewで足ります。マニュアルの差し替えを担当する人だけをCan editにすると、知識の勝手な書き換えを防げます。共有したプロジェクトでも、各自のチャットは本人だけのもので、手動で共有しない限り他のメンバーには見えません。
注意点が1つあります。プロジェクト内でも、チャット同士の文脈は共有されません。ある担当者が聞いて解決した内容は、知識に追加しない限り、次のチャットには引き継がれません。現場で得た知見(実際の対処や注意点)を蓄えたいときは、文書にして知識に追加する運用にします。
なお、新しい形式のProjects(ベータ)がClaude Codeのユーザーから順に展開されています。チャットとCoworkの既存のプロジェクトは当面これまでどおり動くとされています。この記事の手順は既存のプロジェクトに沿ったものです。
よくあるつまずき
答えに古い版の記述が混ざる
旧版のPDFが同じプロジェクトに残っていると、版をまたいだ答えが返ることがあります。旧版を外すか、指示文で版を指定する書き方にします。
資料にあるはずの記述が「記載なし」と返る
質問に型式やファイル名を入れると、検索が狙った資料に絞られます。それでも見つからなければ、該当ページがスキャン画像で、文字として選択できない形になっていないかをPDFビューアーで確かめます。
ページ番号が原本とずれる
PDFビューアーの通し番号と、紙面に印刷されたページ番号が混ざっています。指示文で「PDFビューアーの通し番号で答える」と決め、確認する側も同じ番号で開きます。
表の数値の行を取り違える
行と列の見出しをあわせて回答させる指示にしていないと、隣の行の値が混ざる場合があります。数値は必ず原本の表で照合します。
まとめ
設備マニュアルの窓口は、PDFを置くだけでは完成しません。型式と版が分かるファイル名、根拠のページを必ず返させる指示文、図面と表を原本で照合する習慣の3つがそろって、はじめて保全の現場で使える窓口になります。最初は、答えを知っている質問で試し、図面を含む質問が読み取れるかを確かめるところから始められます。