Claude Consumer Terms改定 — 学習利用の同意方式と保持5年への変更
AnthropicがConsumer TermsとPrivacy Policyを改定し、Free・Pro・Maxの学習利用を利用者が選べる方式に変更しました。同意時は保持期間も5年に延びます。
Free・Pro・Maxの学習利用が選択制になりました
Anthropicは2025年8月28日、Consumer TermsとPrivacy Policyを改定したと発表しました。核心は1点です。個人向けのFree・Pro・Maxプランで、会話やコーディングセッションをモデル学習に使うかどうかを、利用者が自分で選べるようになりました。
Claudeに会話を学習させたくない場合は、プライバシー設定にあるモデル改善(Model Improvement)の項目をオフにします。オフなら保持期間は従来の30日のままです。Team・Enterprise・APIなどCommercial Termsの契約は、この選択の対象外で、既定で学習に使われません。
対象の線引きは、契約がConsumer Termsか、Commercial Termsかで決まります。
今回の改定の適用範囲
適用されない
Team・Enterprise(Claude for Work)、Claude for Government、Claude for Education、そしてAmazon BedrockやGoogle Cloud Vertex AI経由を含むAPI利用です。
個人向けと商用で扱いを分けているのは今回に始まった話ではなく、2つの規約の構造そのものの違いです。
既存ユーザーはアプリ内のポップアップで選択を求められ、新規ユーザーはサインアップの途中で選びます。日付の流れは次のとおりです。
選択をめぐる日付
- 2025年8月28日改定の発表
新規ユーザーはサインアップで選択。既存ユーザーにはアプリ内の通知が出始めました。新しい規約に今すぐ同意した場合は、その時点から有効です。
- 2025年10月8日選択の期限
この日までは「あとで」を選べました。以降は、学習利用の設定を選ばないとClaudeを使い続けられません。
- 随時設定の変更
プライバシー設定から、いつでもオン・オフを切り替えられます。
保持期間が30日から5年に伸びる条件
学習利用を許可すると、データの保持期間が既定の30日から最長5年に延びます。延長が効くのは、許可した後の新規または再開されたチャットとコーディングセッションだけです。許可しなければ、従来どおり30日の保持期間が続きます。
追加も再開もされないまま残っている過去のチャットは、今回の改定で学習対象に自動的に加わることはありません。逆に、古い会話でもやり取りを再開すれば「再開されたチャット」として扱われます。
保持期間は、データの種類によって次のように分かれます。
データ種別ごとの保持期間
通常(学習を許可しない)
30日
会話を削除すると、履歴から即座に消え、バックエンドからは30日以内に削除
学習を許可した場合
最長5年
学習の工程では、ユーザーIDから切り離した形で保持
利用規約違反としてフラグが立った場合
入出力2年 / 分類スコア7年
自動の信頼性・安全性システムが違反と判定したチャットやセッション
フィードバック送信
5年
サムズアップ・ダウンやバグ報告に紐づくデータ
表の期間には例外もあります。法令上必要な場合、紛争の解決のため、Usage Policy違反への対処に必要な場合は、チャットやセッションがより長く保持されることがあります。研究や統計のために匿名化・非識別化したデータも、さらに長く保持されることがあります。
学習の設定とは別枠で動くものが、2つあります。
1つ目は、安全性レビューのためにフラグが立った会話です。学習をオフにしていても、Usage Policyの検出・執行能力を高めるために利用・分析される場合があり、Safeguardsチーム向けのモデル学習にも使われることがあります。2つ目は、サムズアップ・ダウンのボタンなどで自分から送ったフィードバックです。こちらは関連する会話全体が保存の対象になります。
フィードバックは、ユーザーIDから切り離したうえで、サービスの効果の分析・調査・ユーザー行動の研究、そしてモデルの学習に使われる場合があります。ほかの会話とは結合されません。Trusted Tester Programへの参加のように、明示的にオプトインした場合も学習に使われます。
学習に使われないもの
次のものは、学習利用をオンにしていても対象に含まれません。
- シークレット(Incognito)チャットの内容
- 削除した会話(削除した時点から、以後の学習には使われません)
- コネクター(Google Driveなど)や、リモート・ローカルのMCPサーバーから取得した生のコンテンツ
最後の項目には但し書きがあります。コネクター経由のデータでも、ユーザーが会話の中に直接コピーして貼り付けた分は、会話の一部として含まれる場合があります。学習対象になるのは、会話全体に加えて、カスタムスタイルや会話の設定、Claude for Chromeの利用で集まったデータです。
オフに切り替えた時点で、それ以前に保存されていたチャットとセッションも、今後の学習の実行には使われなくなります。アカウント自体を削除した場合も同じ扱いで、将来のモデル学習からその利用者のデータが外れます。
設定の変え方と、状況別の切り分け
設定はデスクトップ・ブラウザーでもモバイルでも、プライバシー設定の同じスイッチです。
学習利用の設定を切り替える
- 1
設定メニューを開く
自分の名前を選び、ドロップダウンから「Settings」に進みます。デスクトップ・ブラウザーでもモバイルでも入口は同じです。
- 2
Privacyを選ぶ
Settingsの中の「Privacy」を開きます。ブラウザーなら、設定のデータプライバシー画面(claude.ai/settings/data-privacy-controls)へ直接移ることもできます。
- 3
スイッチを切り替える
モデル改善(Model Improvement)に関する項目のスイッチをオン・オフします。切り替えた時点から扱いが変わります。
スイッチの扱いは、状況によって判断が分かれます。
- 一部の会話だけ学習に回したくない場合: 設定はオンのままでも、その会話をシークレットチャットにするか、削除する選択肢があります。
- 学習をオフにしているのに不安が残る場合: 気になるのは上で触れた別枠の2つです。フィードバックのボタンを押す前に、その会話が保存の対象になる点を意識しておくと迷いません。
学習データに含まれる個人情報への権利
Claudeの学習データには、公開されているウェブ上の情報、商用契約で入手したデータセット、利用者やクラウドワーカーが提供したデータ、そして許可された会話やコーディングセッションが含まれます。個人情報が含まれうる点は、Anthropic自身が認めています。
プライバシーポリシーは、自分の個人データの写しを求める権利、処理への異議を述べる権利、削除を求める権利を挙げています。ただし、学習データセットに対するこれらの権利は限られており、要求に対応する手順も複雑だと説明されています。
なお、Anthropicが利用者に代わって処理する商用サービスでは、Privacy Policyは適用されません。その場合は商用顧客がデータの管理者にあたり、個人データの扱いは顧客側の方針に従います。
学習に使うデータはどう扱われるか
許可した会話は、Anthropicが使う前に、メールアドレスなどのユーザーIDから自動的に切り離されます。加えて、プライバシー保護の分析ツールから派生した自動処理で、機微なデータをフィルタリングまたは難読化しているという説明です。
用途も限定されています。データは連絡や、利用者のプロファイル作成、販売・マーケティングのためには使わず、第三者へ販売もしません。
ここは見落とされがちですが、学習利用への同意と、データの外部提供は別の話です。同意で変わるのは、モデル改善への利用と保持期間であり、第三者への提供は含まれません。
なぜこのタイミングで変更したか
理由は大きく2つです。1つは、実際の利用データがモデル改善に直結することです。コーディングでのデバッグのやり取りは、似た課題への応答精度を上げる材料になります。もう1つは、乱用検知の精度向上です。長期間のデータで学習した分類器は、スパムや悪用のパターンを見分けやすくなります。
この精度向上は、取り締まりを厳しくするだけではありません。無害な会話を誤って有害と判定する誤検知を減らす方向にも働くと、改定の発表で述べられています。
保持期間を5年にした背景は、開発サイクルの長さです。今日リリースされるモデルは、18〜24か月前から開発が始まっています。学習データを工程全体で揃えておけば、モデルの応答や推論の傾向が一貫し、モデルを切り替えたときの変化も穏やかになるとされています。
個人向けと商用契約の分岐点をどう読むか
商用契約(Team・Enterprise・API)は、契約そのものが「学習に使わない」を前提に設計されています。個人向けは逆に、同意を得たうえでデータを還元する設計に踏み込みました。
この分岐は、収益モデルの違いがそのまま規約構造に現れたものと読めます。無料・低価格帯のプランは同意ベースでモデル改善へデータを還元し、業務データを扱う商用契約は非流用を契約条件に組み込んでいます。個人アカウントの現在の設定や、契約形態ごとの既定を具体的に見たい場合は、Claudeを学習させない設定にプラン別の早見表があります。
商用契約の非流用は企業顧客との取引条件そのものなので、ここが動く余地は小さいでしょう。個人向けの側は、同意という形を取りながらデータ還元の比重を増やす方向へ調整が続く余地があり、今回の改定はその一歩と読めます。
会社の業務でPro・Maxを使っている場合は、契約主体に注意が必要です。個人向けプランのアカウントを業務に使っても、適用されるのはConsumer Termsです。2つの規約のどちらが当たるかの境界はClaude Consumer TermsとCommercial Terms、どちらが適用されるかで扱っています。
利用形態ごとの影響
どの契約で使っているかによって、今回の改定が効く度合いは大きく分かれます。
| 利用形態 | 影響度 | 理由 |
|---|---|---|
| 個人でFree・Pro・Maxを使う開発者 | 影響度明確な恩恵あり | 理由設定次第で保持期間が30日か最長5年かに分かれ、選択が直接効く |
| 個人契約のPro・Maxを業務で使う従業員 | 影響度条件次第 | 理由業務のプロンプトやコードも、本人の学習設定に従って扱われる |
| Team・Enterpriseの管理者 | 影響度ほぼ影響なし | 理由Commercial Termsの契約は対象外で、既定の非学習利用が続く。ただしthumbs up/downのフィードバックは最長5年保存され、学習に使われうる |
| API・Bedrock・Vertex AI経由の開発者 | 影響度ほぼ影響なし | 理由Consumer Termsではなく別契約が適用され、設定変更は不要 |
Free・Pro・Maxの3プランは同じ選択の仕組みで、有料プランだから学習利用が免除されるという区別はありません。
組織の側では、まず従業員がどの契約形態でClaudeを使っているかの実態を押さえることが出発点になります。個人アカウントと組織契約の切り分けはClaude組織のデータ所有権は誰にあるかでも扱っています。
まとめ
自分の会話が学習に使われるか、5年残るかは、プライバシー設定の1つのスイッチで決まります。Pro・Maxを業務で使っている場合は、そのスイッチが個人の手元にあることが、組織側にとっての論点です。