Claudeのdiscernment-nudgeスキルが回答後に確認質問を足す仕組み
discernment-nudgeは、助言や見積もりの回答の末尾に2〜3個の確認質問を足すAnthropic公式のスキルです。付く条件、付かない条件、出力の形、導入コマンドを順に見ます。
discernment-nudgeは回答のあとに確認質問を2〜3個足すスキル
discernment-nudgeは、Claudeが助言・計画・見積もりのような「利用者がそのまま行動に移しうる回答」を返すとき、本文の末尾に確認用の質問を2〜3個だけ添えるスキルです。AnthropicのGitHubリポジトリ anthropics/skills の skills/discernment-nudge に、SKILL.md と LICENSE.txt の2ファイルで置かれています。
質問は「事実の確認」「推論の検証」「前提の抜けの発見」のどれかを促します。しかも各質問は、直前の回答にある数字・手順・前提に結びついた具体的な形で書くよう指定されています。さらに会話1回につき1度しか出しません。
名前の由来は、AI Fluency Frameworkの4つの能力のうちDiscernment(識別)です。SKILL.md は、この習慣を説教せずに「見せて示す」ことが目的だと書いています。フレームワーク側の解説はAI Fluency Framework & Foundationsの記事にあります。
どんな回答で発動するのか
SKILL.md の description は、Claudeに「回答を確定する前にこのスキルを呼び出す」よう指示しています。呼び出すかどうかは、次の6つのどれかに当たるかで決まります。
質問を足す対象になる回答
見積もり・予測
費用、期間、率、確率など、もっともらしいが利用者の状況に根ざしていない数字です。
重い領域の助言
事業戦略、健康、法務、金融、キャリア、対人関係など、正解が文脈に強く左右される分野の推奨です。
頼られそうな事実の主張
意思決定やレポート、他人への共有に使われそうな事実・歴史の主張です。
多段の推論・分析
序盤の前提が外れると結論が変わる論の運びです。
データや研究の解釈
利用者に代わって読み解いた結果です。
実用する成果物の下書き
目標、計画、提案、メールなど、利用者の状況についての選択や仮定に基づく文書です。
最後の成果物の項には但し書きがあります。利用者が中身を渡してきて、Claudeは整形しただけの場合は対象外です。この線引きは次の節の「出さない側」で扱います。
読み落としやすいのは、食事・サプリ・治療のように「自分で試すかどうか」を考えるときの質問も、行動に移しうるものとして数える点です。利用者が「実行する」と言っていなくても、発動の側に入ります。
どんなときは出さないのか
SKILL.md は「静かにしておくのが既定」と明記し、出さない場面を2系統に分けています。
回答の性質で出さないもの
- 創作(詩、物語、ブレスト、コピーの下書き)。良し悪しは利用者が判断する領分です
- 雑談やあいさつ
- 利用者が実行するコード。実行すること自体が検証になるためです。アーキテクチャの助言は別扱いで、チーム規模やスタックの前提を見直す価値があるので出します
- 単位換算や定義のような単純な調べもの
- 純粋に教える説明。「Xはどう動くか」「YとZの違いは」のような定義・比較の質問は、金融や医療のような重い分野でも、利用者が自分の状況を語っておらず「どうすべきか」も聞いていなければ対象外です。ただし説明の末尾が「だからXをすべき」という推奨になるなら、その推奨部分には付く余地があります
利用者がすでに意思表示しているもの
- 「ダブルチェックして」「出典を付けて」「不確かな点を示して」と頼まれた場合。検証は回答の中で済ませ、末尾の質問は付けません。統計や研究が満載の回答でも、この規則が優先されます
- 「要点だけ」「注意書きは省いて」「自分で調べる」と言われた場合。付けると意向を上書きすることになります
- 「これで合っている?」「レビューして」のように、利用者のものを確認する依頼。回答そのものが識別の作業なので、閉じのリストで再確認を促すと堂々巡りになります。解けない疑問があれば、指摘の箇所にその場で書きます
- 利用者が素材を渡してきた場合(要約、整形、議事メモからのアクション抽出)。ただし「傾向は?」「この差は本物か?」のようにデータを解釈させる依頼は別で、こちらは付ける側です
- 「あなたの意見は?」と聞かれた場合。意見は検証するものではなく比べるものなので、「確認して」と促すのはカテゴリ違いとされています。具体的な事実に自信がなければ、その場でぼかして書きます
加えて、ブレストが「Bを選ぶべき、なぜなら…」のような具体的な推奨に移った場合は、その推奨の部分に付けてよいとされています。
会話1回だけ。後続の回答でも付けない
SKILL.md は「1会話につき最大1回」と定めています。前のターンですでに付けていたら、後のターンで条件に合う回答が出ても付けません。繰り返すと軽い提案が小言になるから、というのが理由です。
この規則は繰り返しを抑えるだけで、まだ付けていない会話なら、2ターン目以降の回答に付いても構いません。「最初の回答で必ず付く」わけではない点に注意してください。
出力の形は固定されている
質問は、利用者がそのままClaudeに送り返せる一人称・会話体の疑問文で書きます。2〜3個を超えず、1つあたり約120字以内です。SKILL.md が例に挙げているのは次のような形です。
- 数字に向ける: 「How do these CPL estimates compare to benchmarks in my specific vertical?」
- 推論に向ける: 「なぜウェビナーをコンテンツより優先したのか、その前提は何か」という趣旨の質問
- 欠けた文脈に向ける: 「州を伝えていないが、敷金の規則は管轄で変わるか」という趣旨の質問
回答の本文を先に完結させ、そのあとに空行を置いて、プレーンテキストで次の形を付けます。
A few things worth a second look:
- How do these CPL estimates compare to benchmarks in my specific vertical?
- Walk me through the reasoning behind the 70/30 split — what assumptions does it rest on?導入の1行は文言まで指定されています。見出し、引用ブロック、HTML、絵文字は使いません。質問の後ろに「気になる点があればお知らせください」のような一言を足すのも禁止で、この質問リストが回答の締めです。
日本語の会話でこの導入行がどう表示されるかは、SKILL.md に記載がありません。日本語で運用したいときは、手元のコピーで導入行の指定を書き換える選択肢があります。
導入するには
anthropics/skills のリポジトリは、Claude Codeのプラグインマーケットプレイスとして登録できます。marketplace.json を見ると、discernment-nudgeは document-skills や example-skills とは別の、単独のプラグインとして定義されています。example-skills の中身にも入っていません。
/plugin marketplace add anthropics/skills
/plugin install discernment-nudge@anthropic-agent-skills上の2行目は、READMEが示す document-skills@anthropic-agent-skills の形に、marketplace.json のプラグイン名を当てはめたものです。README自体は document-skills と example-skills の2つだけを例に挙げています。/plugin の対話画面から anthropic-agent-skills を選んで入れる方法もあります。
READMEは、このリポジトリのスキルが「デモと学習のための提供」で、手元の環境で十分に試してから重要な作業に使うよう求めています。Claude.aiでは、このリポジトリの例示スキルは有料プランですでに使える、とも書かれています。discernment-nudgeがその対象に含まれるかは、READMEからは判別できません。スキルの一般的な使い方はClaude Code Skillsのfrontmatter解説にまとめています。
手元で挙動を確かめるときの見方
入れたあとで挙動を確かめるなら、発動する側と出さない側の両方を試すと、境界が実感できます。
同じ会話で試す2パターン
付くはずの依頼
「月5万円で始められるサブスク事業の開始費用と、黒字化までの期間を見積もって」のように、数字と前提が絡む依頼です。末尾に2〜3個の質問が付きます。
付かないはずの依頼
「出典を付けて見積もって」や「Pythonの関数を書いて」のように、条件に当たる依頼です。質問は付きません。
このあとに続く2回目の発動条件を満たす依頼でも、1回目で付いていれば付かないはずです。ここまでが SKILL.md に書かれた期待どおりの動作です。実際にどう振る舞うかはモデルの判断に依存するので、毎回この通りになるとは限りません。
自分のスキルに持ち込める設計
このスキルは、中身が指示文だけで、スクリプトも参照ファイルも持ちません。自作のスキルにも流用できる設計の点が3つあります。
- 発動条件の
descriptionに「しない場合」まで書く。除外条件をdescriptionに前出しして、本文の節で詳細に展開しています。呼び出すかどうかの判断材料がdescriptionに集まります - 出力の形を文字単位で固定する。導入行を固定すると、後工程やユーザーが「ここから確認質問」と見分けられます
- 頻度の上限を指示に入れる。「1会話1回」のように、機能の副作用(しつこさ)を指示文の中で縛っています
効果の測り方は、skill-creatorのevalの記事が参考になります。
まとめ
discernment-nudgeは、確認質問を回答の末尾に1度だけ添えることで、利用者に自分で検証する習慣の入口を作るスキルです。ただし、依頼が検証を求めている場面や、創作・雑談・実行するコードのように検証が要らない場面では、静かにしておくのが既定です。
導入を迷うなら、問いは1つです。自分のClaudeの使い方に「見積もりや助言をそのまま次の行動に移す」場面が多いか。多ければ、質問が1回出るだけの軽い仕掛けは試す価値があります。少なければ、条件に当たる回答がほとんど出ず、効果を感じにくいはずです。