Claude Enterprise HIPAA構成の適用前に確認すること — BAAの範囲と止まる機能
Claude CodeとCoworkに効くHIPAA構成は、Primary Ownerが押すと組織全体で一部機能が止まります。BAAが覆う範囲、覆わない機能、クラウドセッションが戻らない点を、適用前に確かめます。
Claude EnterpriseのHIPAA構成は、Primary Ownerが「Apply HIPAA configuration」を押した時点から、組織全体で一部の機能が止まり始めます。止まった機能のうち、Cowork、Claude DesktopのCodeセクション、スキルなどはOwnerが戻せます。Claude Code on the webのようなクラウド機能は戻りません。
この記事は、ボタンを押す側であるPrimary Ownerと、適用の可否を一緒に判断するOwnerに向けて書いています。確認する順番は、BAAが覆う範囲、覆わない機能、適用前の準備、適用後の確認です。端末の準備はIT管理者の仕事で、Claude CodeをHIPAA対応Enterpriseで使う端末準備にまとめています。
適用できるのはPrimary Ownerだけ
HIPAA構成はEnterpriseプランだけの組織設定です。適用できるのは、メールアドレスを確認済みのPrimary Ownerに限られます。他のOwnerやAdminには適用できません。適用の操作にAnthropicのBAAへの同意が含まれるためです。各ロールの違いはTeam/Enterpriseの権限ロール一覧で比べられます。
構成の効き方にも前提があります。
- 適用先は、メンバーがチャットに使っている既存のEnterprise組織です。別アカウントは作りません
- Claude CodeとCoworkに同時にかかります
- 適用は組織の全メンバーに及びます
HIPAAを組織で有効にする手順だけでは、Claude Code(ローカルモード)もCowork(ローカルモード)もBAAの対象になりません。有効化で対象に入るのはチャットまでです。ローカルモードを対象に入れる操作が、この構成の適用です。
BAAが覆うのは3つの製品、それぞれ条件つき
構成を適用すると、次の3つがBAAの対象に入ります。条件を満たさない使い方は、同じ製品でも対象外のままです。
| 製品 | BAAが覆う条件 |
|---|---|
| ターミナルのClaude Code | BAAが覆う条件Enterpriseアカウントでサインインし、クラウドプロバイダーやゲートウェイを通さずAnthropicへ直接つなぐ |
| Claude DesktopのCodeセクション | BAAが覆う条件Ownerが「Organization settings > Claude Code」で「Desktop」のトグルをオンにしている |
| Claude DesktopのCowork | BAAが覆う条件Ownerが「Organization settings > Cowork」で「Enable for your organization」をオンにしている |
適用すると、CoworkとCodeセクションは、それまでオンだった組織でもオフになります。表の2行目と3行目の条件は、適用後にOwnerがトグルを入れ直して初めて満たされます。適用直後は、デスクトップで使っていたメンバーが一度使えなくなる前提で日程を組みます。
ZDR(ゼロデータリテンション)は適用の条件ではありません。ただし、すでにClaude CodeでZDRを使っている組織は次の節の判断が要ります。
BAAの対象外のまま残る機能
構成を適用しても、次の機能にPHI(保護された医療情報)を入れてはいけません。BAAの対象外だからです。
- VS Code拡張とJetBrains拡張のClaude Code。適用後も動き続けます
- ベータまたはリサーチプレビューと表示された機能すべて
- Amazon Bedrockなどのクラウドプロバイダー、LLMゲートウェイ、独自のベースURLを通すClaude Codeセッション
- Claude ConsoleのAPIキーを使うセッション。Console組織でZDRが有効な場合を除きます
- コネクタ、MCPサーバー、プラグイン、デスクトップ拡張、Claude in Chrome、スキル。Ownerがオンにした後も対象外です
- Claude Code on the webなどのクラウド・リモート機能。構成が使えなくします
3つ目と4つ目は、端末側で締められます。managed settingsは各端末に置くポリシーファイルで、Enterpriseアカウントでのサインインへ誘導し、クラウドプロバイダーとゲートウェイを拒否させる用途に使えます。配布はIT管理者に依頼します。
見落としやすいのは5つ目です。コネクタやスキルは、構成の適用後にOwnerが入れ直せます。入れ直せることと、BAAが覆うことは別です。トグルを戻したからPHIを扱ってよい、とはなりません。
ボタンが押せない組織と、ZDRからの切り替え
「Apply HIPAA configuration」は、「Organization settings > Data and privacy」にあります。Anthropicが組織向けに有効化するまで、ボタンはグレーのままです。有効化はAnthropicのアカウントチームに依頼します。アカウントチームのない組織は、構成を適用できません。
適用前のBAAの扱い
適用前でも、ローカルモードをOwnerがオンにしていればメンバーは使えます。ただしBAAが覆うかどうかは、ZDRの有無で変わります。
| 状態 | Claude Code | Cowork |
|---|---|---|
| Claude CodeにZDRなし | Claude CodeBAAの対象外 | CoworkBAAの対象外 |
| Claude CodeにZDRあり | Claude CodeZDR経由でBAAの対象 | CoworkBAAの対象外 |
Claude CodeにZDRがあるかどうかは、アカウントチームに聞けば分かります。
ZDRを手放すかどうか
この構成は、ローカルモードのClaude Codeに関するZDRを置き換えるためのものです。適用してもZDRはオフになりません。ZDRを使い続けたいなら、適用しない判断になります。
ZDRからの切り替えを選ぶ場合は、アカウントチームにメールで相談します。ZDRが外れると、Claude Codeのデータはチャットと同じ標準の保持期間で扱われます。ClaudeのZDRとHIPAAのデータ保持の違いは、APIの側から同じ論点を整理した記事です。
適用で止まるものと、事前に控えておくもの
適用の直後から、組織の設定がいくつか初期状態に戻ります。メンバーが気づきやすい変化と、適用前にやることを並べます。
| 起きること | 適用前にやること |
|---|---|
| Cowork、Codeセクション、スキル、Claude in Chromeがオフになる | 適用前にやること戻したいものと、承認者を決める |
| HIPAA有効化でオフになる他の設定が、再びオフになる(チャット設定を含む) | 適用前にやることHIPAA有効化の後にOwnerがオンにした設定を洗い出す |
| コネクタがオフになり、ツール権限が「Blocked」になる。Ownerが追加時に利用条件へ同意していたものは除く | 適用前にやることコネクタごとのツール権限を記録する。オンに戻しても元の権限は復元されない |
| 組み込みのGitHub連携がオフになる | 適用前にやること戻すかどうかを決める |
| デスクトップ拡張が許可リストから外れる。追加時に同意していたものは除く | 適用前にやること追加し直すものを一覧にする |
| スケジュールタスクの承認が失効する(CoworkとCodeセクション) | 適用前にやることメンバーに再承認が要ると伝える |
コネクタのツール権限は、記録しておかないと戻せません。コネクタが多い組織では、適用前の記録作業がいちばん時間を食います。
チャットも同じコネクタ、スキル、Claude in Chromeの設定を使います。そのためCodeやCoworkのつもりで止めた機能が、チャットでも止まります。
クラウドセッションは戻らない
数分以内に、メンバーはClaude Code on the webとクラウド版Coworkでセッションを始められなくなります。すでに動いているセッションも止まり、メンバーはそこに戻れません。Remote ControlとClaude Tagも使えません。Claude Designは、Ownerがオンにするまでオフです。
ターミナルでも、機能が一部変わります。IT管理者のサポート窓口に来やすい例は次のとおりです。
- WebFetchツールが使えなくなる。Web検索は使える
--cloud、/teleport、Remote Controlが拒否される/feedbackと/bugが使えないANTHROPIC_API_KEYを読むMCPサーバーやフックが認証できなくなる
最後の項目は、Claude Codeが起動するプロセスからAnthropicの認証情報を取り除くためです。GitHubやクラウドプロバイダーの認証情報は取り除かれません。
適用日の決め方と、適用の手順
構成の適用後にCowork、Codeセクション、一部のコネクタを戻すのはOwnerの作業です。戻す間は使えないので、組織が静かな時間帯を選びます。適用後にOwnerを一人待機させ、コネクタを一つずつ有効化する時間も見込みます。
メンバーへの連絡に入れる項目は、日時、止まる機能、戻す予定の機能の3つです。
法務とコンプライアンスは、事前にBAAとImplementation Guide for HIPAA Entitiesを読みます。適用すると、BAAに同意し、ガイドを確認したことになるためです。
Primary Ownerの適用手順
- 1
Data and privacyを開く
Primary OwnerとしてClaudeにサインインし、「Organization settings > Data and privacy」を開きます。
- 2
Complianceの行を探す
「Compliance」セクションで、Claude Code(ローカルモード)とCowork(ローカルモード)の行を見つけます。
- 3
ダイアログで資料をダウンロード
「Apply HIPAA configuration」を選び、ダイアログで変更内容を読みます。Implementation Guideをダウンロードします。組織にBAAがなければBAAもダウンロードします。ダウンロードするまでダイアログ内のボタンは押せません。
- 4
確定する
ダイアログ内の「Apply HIPAA configuration」を選ぶと、Anthropicの更新版BAAに同意したことになり、確定の通知が出ます。
ボタンが押せないときは、Primary Ownerとしてサインインしているか、メールアドレスが確認済みかを見ます。それでも押せなければ、アカウントチームにAnthropic側の有効化を頼みます。
反映の確認と、適用後に残る責任
メンバーにClaude CodeとClaude Desktopを再起動してもらうと、構成がすぐ届きます。再起動しない場合、実行中のClaude Codeには約1時間で届きます。Claude Desktopは、再起動か再読み込みまで届かないことがあります。
反映は3か所で見られます。
| 場所 | 見るもの |
|---|---|
| Organization settings > Data and privacy | 見るものClaude Code(ローカルモード)とCowork(ローカルモード)の行に、HIPAA構成済みの表示と適用日 |
| Claude Code | 見るもの/statusのStatusタブ、Organization configuration行にHIPAA |
| Claude Desktop | 見るものタイトルバーの「HIPAA configured」ラベル。Macではサイドバーを開く |
端末側の確認は、メンバーに次のコマンドで頼めます。
/statusHIPAAの表示かラベルが自分の端末で出るまで、PHIを扱わないよう伝えておきます。出ない端末は、IT管理者が原因を順に確認します。
端末のデータと監視は組織の責任
Claude Code(ローカルモード)とCowork(ローカルモード)は、トランスクリプトなどのセッションデータを各メンバーの端末に保存します。その保護と削除は組織の責任です。メンバーを組織から外しても、端末のデータは消えません。退職時は端末を消去し、ディスク全体の暗号化は常にオンにします。
監視の手段は、中身を含むかどうかで分かれます。
| 手段 | セッションの内容 |
|---|---|
| Compliance API | セッションの内容含む。30日間、または組織の保持期間が短ければそれまで読める |
| 監査ログとデータエクスポート | セッションの内容含まない。HIPAAの有効化や構成の適用などの管理操作が残る |
| OpenTelemetry | セッションの内容組織が送り先を決める。送ったデータの管理は組織の責任 |
落とし穴
CoworkのOpenTelemetryにPHIが混ざる
CoworkのOpenTelemetryイベントは、既定でプロンプトの本文、Claudeの応答、ツールの入力を含みます。そのため、セッション中のPHIが監視ツールに届くことがあります。これを止める組織設定はありません。IT管理者が端末ごとにオフにします。送り先はCoworkなら「Organization settings > Data and privacy > Monitoring」で、Claude Codeならmanaged settingsで決めます。
Compliance APIには、ZDRのClaude Codeはセッションを取り込まない、という例外もあります。
適用の前に決める5つのこと
適用前に答えを持っておくとよい問いは、次の5つです。
- アカウントチームはいて、Anthropic側の有効化は済んでいるか
- Claude CodeにZDRがあり、置き換えてよいか
- クラウドセッションを使うメンバーがいて、止まる日を伝えたか
- 戻す機能とコネクタごとのツール権限を、記録したか
- 適用日にOwnerが待機し、IT管理者の端末準備が済んでいるか
質問があれば、BAA、Implementation Guide、構成のどれもアカウントチームに聞く形です。サポートへの問い合わせにPHIを書いてはいけません。