Claude for Excelで台割と進行表を作成し、遅れている工程を洗い出す手順
章ごとのページ数を1枚の台割にし、原稿・初校・再校・校了の予定と実績を進行表に並べて、遅れが校了期限に響く章を先に出すまでを、Claude for Excelで進める手順です。
書籍の台割は、章ごとのページ数と開始・終了ページを並べた1枚の表です。進行表は、その章ごとに原稿から校了までの予定日と実績日を持たせた表です。この2枚を同じブックに置くと、「ページ数の大きい章が、校了期限に間に合わない位置で止まっていないか」を式で拾えます。Claude for Excelは、開いているブックの式を保ったまま列を足し、判定列を作り、並べ替えまでを同じ画面で進められます。この記事では、2枚のシートの作り方と、遅れている章を洗い出す判定式、Claudeに任せる範囲と人が確かめる範囲を手順で示します。
章立てそのものを固める段階はClaudeでKindle出版の構成・目次を作る手順にあります。ここでは章立てが決まったあとの、ページ配分と工程管理を扱います。日付を並べて差を出す考え方は月次変動分析の理由メモとも近く、列を足して判定する流れの参考になります。
台割と進行表を1つのブックにまとめる理由
台割と進行表を別々のファイルで持つと、ページ数を直したときに進行表の「重い章」の判断が古いまま残ります。1つのブックに3枚のシートを置き、進行表のページ数を台割から引くようにしておけば、章を増やしても削っても、遅れの優先順位が追随します。
| シート | 役割 | 主な列 |
|---|---|---|
| 設定 | 役割基準日・校了期限・折単位を置く | 主な列基準日、校了期限、折単位 |
| 台割 | 役割章ごとのページ数と開始・終了ページ | 主な列章、タイトル、ページ数、開始P、終了P |
| 進行表 | 役割工程ごとの予定・実績と遅れ判定 | 主な列予定4列、実績4列、遅れ日数、余裕日数、判定 |
工程は「原稿」「初校戻し」「再校戻し」「校了」の4つに絞ります。出版社や印刷所によって工程の呼び方は違うので、自分の現場の呼び名に置き換えて構いません。
前提: Claude for Excelが動く環境
Claude for Excelは、Pro・Max・Team・Enterpriseの各プランで一般提供されているExcelアドインです。動作するのは次のExcelです。
- Excel on the web
- Microsoft 365版のExcel on Windows(ビルド16.0.13127.20296以降)
- Excel on Mac(バージョン16.46以降、ビルド21011600以降)
Excel 2016・2019の永続ライセンスまたはボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません。出版社や制作会社の共有PCに古いExcelが残っているなら、先にここを確かめます。マクロ(VBA)とデータテーブルも非対応なので、この記事の手順は通常の式と条件付き書式だけで組んであります。
手順1: 設定シートに前提の3値を置く
最初に、判定式が参照する3つの値を設定シートに置きます。
| セル | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| B1 | 中身基準日(今日の日付、検証時は手で上書き) | 例=TODAY() |
| B2 | 中身校了期限(印刷所への入稿に間に合う最終日) | 例2027-02-05 |
| B3 | 中身折単位(印刷所に確認した値を入れる) | 例16 |
折単位は、本文の総ページ数をいくつの倍数にそろえるかを決める値です。一般に16ページ単位の本が多いとされますが、判型や製本方法で変わるため、印刷所の指定を入れる欄にしておきます。
B1とB2には名前を付けておくと、式が短く読めます。Claudeへの指示は次の程度で足ります。
設定シートのB1に「基準日」、B2に「校了期限」、B3に「折単位」という名前を付けて。手順2: 台割シートで開始・終了ページを式にする
台割シートには、章の順に行を並べ、ページ数だけを手で入れます。開始Pと終了Pは式にして、章の前後入れ替えやページ数の増減に追随させます。
| 章 | タイトル | ページ数 | 開始P | 終了P |
|---|---|---|---|---|
| 前付 | タイトル扉・目次 | ページ数8 | 開始P1 | 終了P8 |
| 1 | タイトル導入 | ページ数24 | 開始P9 | 終了P32 |
| 2 | タイトル基本 | ページ数40 | 開始P33 | 終了P72 |
| 3 | タイトル実践 | ページ数56 | 開始P73 | 終了P128 |
| 4 | タイトル事例 | ページ数48 | 開始P129 | 終了P176 |
| 後付 | タイトルあとがき・奥付 | ページ数16 | 開始P177 | 終了P192 |
数字は説明用の例です。式は2行目を1、3行目以降を前行の終了P+1にします。
D2: =1
D3: =E2+1
E2: =D2+C2-1台割の下に、ページ総数が折単位で割り切れるかの確認行を置きます。
C8: =SUM(C2:C7)
C9: =IF(MOD(C8,折単位)=0,"折単位にそろっています","あと"&折単位-MOD(C8,折単位)&"ページ")上の例は合計192ページで、折単位16なら12折ちょうどです。端数が出たら、どの章か後付で調整する案をClaudeに出させます。
「あと何ページ足りないか」は式で出ますが、足りない分を埋める案は編集判断です。Claudeには「各章のページ数を2ページ以内で動かして折単位にそろえる案を3通り出して。元の台割は変えず、新しいシートに書いて」のように、元を壊さない形で頼みます。
手順3: 進行表に予定と実績の8列を置く
進行表は、予定を4列、実績を4列、その右に判定の3列を置きます。予定と実績をそれぞれ隣り合わせにしておくのが、次の式を短くするためのコツです。
| 列 | 中身 |
|---|---|
| A〜B | 中身章、タイトル |
| C | 中身ページ数(台割から参照) |
| D〜G | 中身予定: 原稿、初校戻し、再校戻し、校了 |
| H〜K | 中身実績: 原稿、初校戻し、再校戻し、校了 |
| L | 中身遅れ日数 |
| M | 中身余裕日数 |
| N | 中身判定 |
C列は台割のページ数を引きます。実績の列は、工程が終わるまで空欄にしておきます。
C2: =台割!C3手順4: 遅れ日数・余裕日数・判定を式にする
遅れ日数は、予定日を過ぎても実績が空の工程について「基準日 − 予定日」を出し、その最大値を取ります。
L2: =MAX(0,MAX(IF(H2:K2="",基準日-D2:G2,0)))
M2: =校了期限-G2
N2: =IF(L2=0,"順調",IF(L2>M2,"要対応","遅れあり"))M列の余裕日数は、その章の校了予定から校了期限までの日数です。N列は次のように読みます。
- 順調: 予定日を過ぎて実績が空の工程がない
- 遅れあり: 遅れはあるが、余裕日数の範囲に収まっている
- 要対応: 遅れ日数が余裕日数を超えている
「要対応」は、遅れた日数がそのまま後ろの工程に響くと仮定した判定です。実際には、遅れた章の後ろにある工程を詰められることもあります。式の結果は、人が連絡を入れる順番を決める材料として使います。
基準日を2026年12月1日、校了期限を2027年2月5日とした場合の、4章分の例を示します。
| 章 | ページ数 | 原稿予定 | 原稿実績 | 校了予定 | 遅れ日数 | 余裕日数 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ページ数24 | 原稿予定11/20 | 原稿実績11/18 | 校了予定1/29 | 遅れ日数0 | 余裕日数7 | 判定順調 |
| 2 | ページ数40 | 原稿予定11/27 | 原稿実績空欄 | 校了予定1/29 | 遅れ日数4 | 余裕日数7 | 判定遅れあり |
| 3 | ページ数56 | 原稿予定11/20 | 原稿実績空欄 | 校了予定2/3 | 遅れ日数11 | 余裕日数2 | 判定要対応 |
| 4 | ページ数48 | 原稿予定12/4 | 原稿実績空欄 | 校了予定2/3 | 遅れ日数0 | 余裕日数2 | 判定順調 |
第3章は遅れが11日で、余裕が2日しかありません。ページ数も最大です。第2章は遅れが4日でも、余裕が7日あるため「遅れあり」に収まります。同じ「原稿が来ていない」でも、校了予定の置き方で優先順位が逆転する点が、この表の見どころです。
手順5: Claudeに式を入れさせ、動作を確かめる
ここまでの式を自分で打つ必要はありません。次のような指示で、Claudeに組ませます。
進行表のL列に、予定日(D〜G)を過ぎても実績(H〜K)が空の工程の
最大の遅れ日数を入れて。基準日は設定シートの「基準日」を使う。
M列は校了期限と校了予定の差、N列は遅れ日数と余裕日数の比較で
「順調」「遅れあり」「要対応」を返して。Claude for Excelは、数式の関係を保ったまま値を更新でき、回答にはクリックして移動できるセル単位の引用が付きます。ここを使うと、式を入れた後の検証が速くなります。
検証は次の順で行います。
式を入れたあとの検証
- 1
セル引用で式の根拠を見る
「L3の遅れ日数がどのセルから出ているか、説明して」と頼み、引用されたセルが予定と実績の列を指しているかを確かめます。
- 2
基準日を動かして結果の変化を見る
「基準日を2026-12-15に変えて、判定が変わる章を一覧にして」と頼みます。上の例なら、第4章は原稿予定(12/4)を11日過ぎ、余裕2日を超えるので「順調」から「要対応」へ動くはずです。動かなければ式が間違っています。
- 3
手計算と3章分だけ突き合わせる
遅れ日数と余裕日数を、電卓か暗算で3章分だけ確かめます。全章を確かめなくても、式の型が合っているかは判断できます。
- 4
基準日を元に戻す
検証が終わったら、B1の値を=TODAY()に戻します。戻し忘れると、翌日以降も固定の日付で判定が出続けます。
手順6: 条件付き書式と並べ替えで「先に連絡する章」を出す
Claude for Excelは、並べ替え、フィルタ、ピボットテーブルの編集、条件付き書式、プルダウンの入力規則を直接頼めます。進行表では次の2つを頼みます。
N列が「要対応」の行を赤、「遅れあり」の行を黄色にする条件付き書式を付けて。
そのうえで、判定が「要対応」→「遅れあり」→「順調」の順、
同じ判定の中では遅れ日数が大きい順に並べ替えて。実績列には日付の入力規則を付けておくと、「11/18」のような半端な文字列が入って式が空欄と誤判定する事故を避けられます。ここも「H2:K20に日付だけを許可する入力規則を付けて」と頼めば済みます。
並べ替えの前に、元の並びを残しておきます。台割の章順と進行表の行順がずれると、台割の参照が崩れるためです。並べ替えは、元の進行表をコピーした別シートで行うと安全です。
落とし穴
並べ替えで台割の参照がずれる
進行表のC列が「台割!C3」のように行番号で参照していると、進行表だけを並べ替えたとき、章とページ数の組み合わせが入れ替わります。参照を章番号による検索(XLOOKUPなど)に変えるか、並べ替え用の別シートに値だけを貼ってから並べ替えます。
繰り返し使う指示は、サイドバーの設定に置く
台割や進行表づくりは、書籍ごとに同じ指示を繰り返します。アドインのサイドバーで設定を開くと、Excelの全会話に効く指示を置けます。
日付は「2026-12-01」の形式で入力・表示する。
進行表の列構成(予定4列→実績4列→遅れ日数→余裕日数→判定)は変えない。
式を入れたら、必ずセル参照つきで何を参照したかを説明する。この指示はExcelだけに効き、PowerPointやWordの指示とは別です。有効にしたSkillsは、作業内容に応じて自動で適用されます。Skillsの利用状況はClaudeの設定で管理します。
使えない場面と、確認が要る場面
次の場面は、この手順の外です。
- 最終的な納品物を、人の確認なしで出す
- 監査に直結する計算を、検証なしで任せる
- 機密性の高い、または規制対象のデータを、管理なしで載せる
進行表そのものは納品物ではありませんが、そこから出す連絡文や、印刷所への入稿日程は人が確認してから使います。
外部から届いたブックには注意が要ります。著者や外注先から届いた台割や進行表、印刷所のテンプレートには、隠れた指示が埋め込まれている可能性があります。そうしたファイルでは、Claudeに操作を任せる前に、信頼できるコピーを作ってから始めます。危険な操作を提案したときは確認が求められるので、外部ファイルでは内容をよく読んでから許可します。
既存のデータを上書きする前には、Claudeが警告を出します。それでも、広い範囲を編集させる前には、ブックのコピーを取っておくのが安全です。
会話が長くなると、自動で圧縮されて新しい会話に引き継がれます。長い会話の中で式の方針を決めた場合は、設定の指示に残しておくと、引き継ぎ後も同じ方針で動きます。
書籍の工程で、遅れが出やすい箇所を式で先に拾う
進行表の判定は、遅れをもれなく拾うためではなく、連絡する順番を決めるために使います。手順を回したあと、次の観点を足すと使い勝手が上がります。
- ページ数が大きい章を先に見る: 遅れ日数が同じなら、ページ数の大きい章のほうが初校・再校の作業量が増えます
- 校了予定の置き方を見直す: 余裕日数が2日しかない章が複数あるなら、校了予定を前倒しするかを検討する材料になります
- 実績が空のまま予定日が近づく章を見る: 遅れ日数が0でも、予定日の3日前にまだ実績が空なら、先に連絡を入れられます
最後の観点は、判定式に「予定日まで3日以内」の注意を加えれば実現できます。Claudeには「実績が空で、予定日まで3日以内の工程があれば、判定を『注意』にして」と頼みます。日数の3は、現場の運用に合わせて変えます。