Claudeで警備員の教育記録を点検する — 新任と現任の時間不足を洗う
警備業法の施行規則が定める新任教育と現任教育の区分・時間数を、教育実施簿のExcelに写してClaude for Excelで不足者を洗う手順。台帳の列、時間数の判定式、記録の保存期限まで。
警備員の教育は「区分」と「時間」で足りているかが決まる
警備業者は、警備員に法定の教育を行い、その記録を営業所に備える義務があります。教育の中身は施行規則が定めていて、新たに従事させる警備員か、すでに従事している警備員か、どの警備業務に就くか、資格を持っているかで、必要な時間が変わります。
この区分の多さが、点検を面倒にします。実施簿を眺めても、「この人は20時間なのか、13時間なのか」が頭の中で決まらないと、足りているかを判断できません。
そこで、警備員ごとの教育実施簿をExcelに置き、Claude for Excelに時間数の突き合わせを手伝わせます。Claudeに任せるのは、台帳の列の設計、判定式の作成、不足者の一覧化です。区分の決定、教育の実施、記録への確認の署名は、指導教育責任者が行います。
この記事の根拠は、警備業法の施行規則(昭和58年総理府令第1号)の第38条と第66条です。別の法令の研修は扱いません。介護事業所の法定研修は、Claudeで介護の年間研修計画と法定研修の記録を点検する手順にあります。
施行規則が決めている教育の種類
警備員教育は、基本教育、業務別教育、そして必要に応じて行う知識・技能向上のための教育の3つです(第38条第1項)。時間数が決まっているのは、基本教育と業務別教育です。
基本教育の教育事項は、新任と現任で違います。
| 対象 | 教育事項 |
|---|---|
| 新たに従事させる警備員 | 教育事項警備業務実施の基本原則、資質の向上、警備業法などの法令、事故時の警察機関への連絡など応急の措置、護身用具の使用方法など護身の方法 |
| 現に従事させている警備員 | 教育事項警備業務実施の基本原則、警備業法などの法令、事故時の警察機関への連絡など応急の措置 |
業務別教育は、警備員を主に従事させる業務の区分ごとに決まっています。施設警備(法第2条第1項第1号、機械警備を除く)、雑踏警備・交通誘導(第2号)、運搬警備(第3号)、身辺警備(第4号)、機械警備の5つです。
教育の方法にも決まりがあります。護身の方法や応急の措置など一部の事項は、講義と実技訓練の両方で行います。講義を電気通信回線で行う場合は、受講者が本人かどうか、受講の状況、知識の習得状況を確認できること、質疑応答の機会があることが条件です。実施簿に方法の列がないと、この条件を後から確かめられません。
新任教育の時間数は7つの区分で決まる
新たに従事させる警備員の教育時間は、第38条第4項の表で7区分に分かれます。時間数は「以上」で、足りない人がいれば不足です。
| 区分 | 該当する警備員 | 教育の種類 | 時間数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 該当する警備員2〜7以外の警備員(資格のない新人など) | 教育の種類基本教育と業務別教育 | 時間数20時間 |
| 2 | 該当する警備員合格証明書または指導教育責任者の資格者証を持つが、別の種別・区分の業務に就く(3と6を除く) | 教育の種類業務別教育 | 時間数10時間 |
| 3 | 該当する警備員2のうち、最近3年間に当該業務へ通算1年以上従事した | 教育の種類業務別教育 | 時間数3時間 |
| 4 | 該当する警備員機械警備の業務管理者の資格者証を持ち機械警備に就く(5と6を除く) | 教育の種類基本教育 | 時間数10時間 |
| 5 | 該当する警備員4のうち、最近3年間の警備業務従事または警察官の職が通算1年以上 | 教育の種類基本教育 | 時間数3時間 |
| 6 | 該当する警備員最近3年間に当該区分の業務へ通算1年以上従事し、同じ区分に就く(3と5を除く) | 教育の種類基本教育と業務別教育 | 時間数7時間 |
| 7 | 該当する警備員最近3年間に別の区分の業務へ通算1年以上従事、または警察官の職が通算1年以上(2〜6を除く) | 教育の種類基本教育と業務別教育 | 時間数13時間 |
台帳づくりで効くのは、区分1が20時間で、区分6が7時間、区分7が13時間という差です。同じ「新任」でも、経験者の再入社は区分6や7になりえます。区分の決定は職歴の確認が要るので、Claudeに推測させず、指導教育責任者が根拠の書類を見て決め、台帳の列に書き込みます。
なお、合格証明書を持つ警備員が、その証明書に係る種別の業務に就くときは、この新任教育の対象から外れます。指導教育責任者の資格者証や機械警備の業務管理者の資格者証にも、同様の除外があります。台帳には「資格による除外」の列を持たせ、除外の根拠が書かれていない行を点検の対象に残します。
現任教育は毎年度、10時間または6時間
すでに従事している警備員には、第38条第5項が毎年度の時間数を定めています。
- 区分1(区分2以外):基本教育と業務別教育を合わせて10時間以上
- 区分2(合格証明書や指導教育責任者の資格者証を持つ警備員のうち、証明書の種別や区分以外の業務に就いている人など):業務別教育を6時間以上
表の下の備考に、点検で見落としやすい規定が2つあります。
- 区分1の基本教育は、新任として基本教育を行った日の属する年度は、行わなくてもよい
- 業務別教育は、新任として業務別教育を行った日の属する年度は、その区分の業務については行わなくてもよい
つまり、4月に入社して新任教育を受けた警備員は、その年度の現任教育の要求がゼロになります。台帳の判定式がこの免除を知らないと、新人が全員「不足」と出ます。逆に、免除を広く解釈しすぎて、基本教育だけ受けて業務別教育が未実施の人を見逃すのも避けたいところです。
実地教育で代えられる時間には上限がある
業務別教育は、講義と実技訓練で行うのが原則です。ただし、一人以上の指導教育責任者などが付く実地教育で、一部の時間を代えられます。
| 新任の区分 | 実地教育にできる上限 |
|---|---|
| 1と7 | 実地教育にできる上限業務別教育の時間数の半分、または5時間のいずれか少ないほう(端数は30分以上で切り上げ、30分未満で切り捨て) |
| 2 | 実地教育にできる上限5時間 |
| 3 | 実地教育にできる上限2時間 |
| 6 | 実地教育にできる上限業務別教育の時間数の半分、または2時間のいずれか少ないほう |
実地教育を行えるのは、指導教育責任者、国家公安委員会が定める同等の者、または2年以上継続して当該業務に従事している警備員です。
ここで注意が要ります。区分1の20時間のうち、基本教育と業務別教育の内訳は、施行規則の第38条には書かれていません。実地教育の上限を計算するには業務別教育の時間数が要るので、内訳は管轄の公安委員会や警備業協会の運用で確認し、台帳に「業務別教育の必要時間」の列として入れます。この数字が分からないまま、Claudeに上限を計算させないでください。
実施簿に必要な記録事項と保存期間
第66条は、営業所に備える書類を定めています。教育に関わるのは、次の3つです。
教育に関わる備付け書類
警備員の名簿
教育ごとの実施年月日、内容、時間数、実施者の氏名を載せます。
教育計画書
年度ごとに、実施時期、内容、方法、時間数、実施者の氏名、対象とする警備員の範囲を書きます。
教育の実施記録
年度ごとに、実施年月日、内容、方法、時間数、実施場所、実施者の氏名、対象になった警備員の氏名を記録します。指導教育責任者と実施者が誤りのないことを確認する旨の付記も要ります。
保存期間は、名簿が退職後1年間、教育計画書と実施記録が年度の終了後2年間です。教育計画書は、当該年度の開始日の30日前までに備えておく決まりで、年度が4月1日に始まる事業者なら3月2日が期限です。
記録が電磁的方法で残され、必要なときに電子計算機などで直ちに表示できる状態なら、その記録で書類に代えられます(第67条)。Excelの台帳で運用する場合も、この「直ちに表示できる」状態を保てるかが条件です。
台帳は3枚のシートに分ける
1枚に詰め込むと、名簿の行と実施の行が混ざって集計できません。次の3枚に分けます。
【シート1: 警備員名簿】(警備員ごとに1行)
警備員ID / 採用日 / 主たる業務区分 / 資格(合格証明書の種別など) /
新任の区分(1〜7) / 区分の根拠書類 / 新任教育の完了年度 /
業務別教育の必要時間
【シート2: 教育実施簿】(実施のたびに1行)
警備員ID / 実施日 / 年度 / 教育の種類(基本・業務別) /
方法(講義・実技・実地) / 時間数 / 実施者 / 実施場所 / 確認付記の有無
【シート3: 判定】(警備員ごとに1行)
警備員ID / 対象年度 / 必要時間 / 実績時間 / 不足時間 / 判定警備員は氏名でなく警備員IDで持ち、氏名との対応表は別のファイルに置きます。Claudeに渡す台帳から、個人が特定される情報を外せます。
実施簿の年度は、日付から式で出します。実施日がB列にある場合の例です。
年度(C列): =YEAR(B2)-IF(MONTH(B2)<4,1,0)判定シートの実績時間は、警備員IDと年度で合計します。
実績時間(D列): =SUMIFS(教育実施簿!$F:$F, 教育実施簿!$A:$A, $A2, 教育実施簿!$C:$C, $B2)
不足時間(E列): =MAX(0, C2-D2)
判定(F列): =IF(E2=0,"充足",IF(D2=0,"未実施","不足"))新任の必要時間は、区分から引きます。区分と時間の対応表を別シートに置き、次のように参照します。
必要時間(C列): =INDEX(区分表!$B$2:$B$8, MATCH(新任の区分, 区分表!$A$2:$A$8, 0))区分表には1〜7の区分と、20・10・3・10・3・7・13の時間を入れます。
Claudeに頼む手順
Claude for Excelは、開いているブックのセルを読み、書式や数式を保ったまま編集を手伝います。変更はセルの強調表示で確認でき、了承するまで保存されません。有料プランで使えます。
点検の進め方
- 1
区分表と判定式を入れる
区分表と上の式をシートに入れ、ClaudeにSUMIFSの範囲が実施簿の列と合っているか確認させます。
- 2
記録事項の欠けを洗う
実施簿のうち、実施者、場所、確認付記が空の行を一覧にさせます。第66条の記録事項に当たる列です。
- 3
不足者を一覧にする
判定シートで「不足」「未実施」の行を抜き出させ、不足時間の大きい順に並べます。
- 4
免除の判定を人が見る
新任教育を受けた年度の行は、備考の免除に当たる可能性があります。区分と完了年度を指導教育責任者が確かめます。
頼み方の例です。出力は台帳の中身で変わるので、実際に返ってくる内容はそのつど確かめてください。
シート「教育実施簿」と「警備員名簿」を使って、対象年度2026の判定を
シート「判定」に作ってください。
- 新任の区分は名簿のE列を使い、必要時間は「区分表」から引く
- 新任教育の完了年度が対象年度と同じ警備員は、判定を「免除候補」にして
不足とは数えない
- 実施簿で、実施者または確認付記が空の行はシート「要確認」に抜き出す
- 区分や必要時間の値は書き換えない「区分や必要時間は書き換えない」と書くのは、Claudeが入力値を補完してしまうのを避けるためです。式と抜き出しだけを任せ、決めごとの列は人が持ちます。
何度も使う点検は、手順をスキルとして保存してチームで使い回せます。毎年度の初めと、新任教育を実施した月の末に回す運用にすると、教育計画書の期限(年度開始の30日前)にも間に合います。
判定の落とし穴
落とし穴
時間数が足りていても、記録が足りないことがある
判定が「充足」でも、実施簿に実施者の氏名や確認の付記がなければ、第66条の記録としては欠けています。時間の突き合わせと、記録事項の欠けの確認は、別の点検として回します。
次の3点も、台帳で見落としやすい箇所です。
- 経験者の再入社で、区分6や7の根拠になる職歴が書類で残っていない
- 実地教育の時間を、上限を超えて業務別教育に数えている
- 年度をまたぐ教育で、実施日の年度と計画の年度がずれている
点検の結果をどう扱うか
不足が出たときの補講の日程、区分の決定、教育計画書の改訂は、指導教育責任者と警備業者の判断です。施行規則の条文には、基本教育と業務別教育の時間の内訳のように、書かれていない部分があります。迷う項目は管轄の公安委員会に確認してください。
同じ「記録を台帳に写して不足を洗う」作業は、他の業種にも使えます。運行管理の点呼記録は運行管理の点呼記録・運転日報の確認にClaudeを使う、医療安全の研修記録は医療安全の管理指針を点検し職員研修の記録を整える手順で、同じ型を扱っています。